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己の歩むべき道は己で見つけてみせる  作者: 飛来針
第二章 ─ ミセリア国 ─
18/48

終わらないバジリスク討伐

 ──少し時間を(さかのぼ)り、アデスラン王国のカミーザにて。


 この国は魔法に力を入れている。

 そしてカミーザという巨大都市は、首都をも凌ぐ人口と賑わいがある。

 そんな街ある噂が囁かれ始めていた。


「脱毛症に悩まされていた商人が、とある薬を飲んだら一発で脱毛が治ったらしいぞ。」

「そんな薬あったらとっくに皆飲んでるわ」

「いや新しく開発されたのかも知れんぞ」

「魔法薬か何かか?」

「だが魔法薬ならどっちにしろ、高くて俺らには買えん」

「だよなー、ヅラも高くて手が出せんし」

「ヅラは貴族様専用みたいなもんだろ」

「安くてこの脱毛病が治る薬はないのか」

「もう少し待ってたら、この街にも薬が入ってくるかも知れんぞ」

「そうなると良いなあ」


 そんな話をする数名の若者達。

 アデスランの東部は風土病がある、通称脱毛病。

 子供の頃は問題ないのだが、十六の成人を超えると個人差はあるが

 徐々に毛が抜けていく。二十歳頃になると大半の人がそれに悩まされる。


 それが嫌で西部に住むようになった者もいるが、収入が大幅に減ってしまう。

 カミーザは物価も高いが、収入が段違いに高いのだ。

 結局髪より金をとる人が多く、カミーザに住み続けることになるのだ。

 一応カミーザを含む東部には、ヅラ職人と言うのが居るのだが

 高すぎて平民には、買えない物となっている。



 そんな折に巨大な黒/緑のバジリスクが出てきて、

 エル商国シュツー~カミーザ間の、中央街道が封鎖されてしまった。

 討伐隊が結成され、一般人の通行が禁止されてしまった。


 モンザリオ国のマウラス~カミーザ

 ミセリア国ヒルリア~首都ロク経由~カミーザ

 この二経路は封鎖されていないが、マウラス~カミーザはエルの商人は使わない。

 売れない経路に、薬を流す商人なんて聞かない。

 ロクを経由すると便利なものは、ロクで全て買い占められる。

 こちらに治す薬が流れてきても、ロクで買い占められる。


 カミーザの平民たちの希望は、バジリスクによって失われたのである。

 何故ならばこのバジリスク討伐、いつ終わるか先の見えない膠着(こうちゃく)状態になってしまったからだ。



 強過ぎる攻撃き・ちょっとした冒険者では攻撃が通らない硬さ

 魔法に対する異常なまでの耐性性・そして全ての攻撃に付きまとう毒攻撃。


 しかし今回はこれだけでは無かった。

 普通の紫のバジリスクでは、特殊な毒攻撃には猛毒はあったが

 所詮猛毒止まりなのであったが、今回のバジリスクはすべての攻撃が猛毒で

 即効性では無い物の特殊攻撃が劇毒であった。


 殆どの者が劇毒の解毒剤なんて用意してなかった。

 劇毒を解毒出来る魔導士も来ていたが、圧倒的に数が足らない。

 そして土壌汚染による常時通常毒。

 何をするにしても毒・毒・毒と、一般的な解毒剤も不足していく始末であった。



 ──そして時は戻り、エル商国シュツーにて。

 バジリスク討伐で解毒剤の数が、明らかに足らないと言う話が駆け巡る。

 一般的な薬師はどんどん解毒薬を作り、さらに優秀な者は猛毒の解毒剤を作る。

 そしてここでも人材不足が発生していた。


 そう劇毒の解毒剤なんて作れるものは、指折り数えるくらいしか居ないのである。

 そして劇毒解毒剤の高騰が始まる。

 平時には極小瓶で金貨2枚のものが、今は金貨10枚まで高騰している。

 そしてまだまだ上がり続けていると言う。


 そんな話はもうどの商人にも回っている話で、中心街に来る商人を介してアールの耳にも入る事となる。



 アウル村から戻った、アールは中心街に来る商人を介し、

 ドズの町で目星を付けていた、小さな元商家を買う算段をしていた。


 この商人こそ巷で噂になっていた商人である。

 名前はホール=ズィン=クーオンズと言う虎豹(こひょう)族の商人で、実はミセリア国の上流階級の三男である。

 三男の為家を継ぐ事は無く、武装商人になった剛の者でもある。


 脱毛症で悩んでいたがアールの薬を飲むと一発で治ったので、その事を他の商人に話したのだ。

 誰から買ったかまでは言っては居ない。それは情報料が発生するからだ。

 だがこの話を流す事で、噂は東へ広がるだろうと考えていた。

 思惑通りカミーザまで噂は広がって行ったのだが、そこに来てこのバジリスクである。

 ホールの思惑は、このバジリスクによって潰されたようである。


 そしてバジリスクの話を聞いた後に、商談をする。

「例のドズの商家、買うことにするよホール。値段は前言ってた値段でいいか?」

「前貰った薬で、悩みの脱毛症が治ったから安くするよ。」


 以前金貨80枚と言っていたのに今は60枚でいいと言う。


「その代わりに、あの薬を売ってくれと?」


「話が早くて助かりますよ」


「俺もあれで稼ごうとしてるんだよ、だから今出回るのは不味い。

 代わりと言っちゃなんだが猛毒解毒剤買わないか?」


 ホールとしては思わぬ所で、儲け話が転がり込んで来た。

 しかもこの男の薬の腕は、自分で飲み理解している。


「どれくらいの数あるんで?」

「小瓶で50個、極小瓶に分ければ150から200になるんじゃないか」


 極小瓶の猛毒解毒剤で今は金貨3枚、そして計算中なのか少し会話が止まる。


「それをお幾らで・・・?」

「おいホール普通の猛毒解毒剤じゃないぞ、黒字で即効性、内服後7分間の猛毒耐性が付く優れ物だ。値段の計算間違えるんじゃないぞ。」


「こんな良い解毒剤、自分で売らないので?」

「実績も何もない俺が、こんな追加効果のある物を上手く売り捌けると思うか?」

「厳しいですな」


 上手くいくと金貨10枚を超えそうな代物であるが、だが高く見積もり過ぎると失敗した時が怖い。

 金貨8枚で考えたホール、極小150瓶で金貨1200枚であり、僅かに口角が上がったのだがアールにバレた。


「予想額出たようだな」

「あまりに高額で、つい顔に出てしまいましたね。そしてこれをお幾らで売って貰えるのでしょうか?」


「シュツーだともっと吹っ掛けるんだが、ホールには世話になりっぱなしな上に、

 今後も仲良くしていからな。今回に限り50瓶で金貨300枚で売る。但し条件を付けたい。

 空になった50瓶を返してくれる事と今後各種瓶を投資して欲しい。」


「これを断ったら商人失格ですな」

「商談成立かな?」

「いえ、例の元商家金貨50枚で、即使えるように修理もしておきましょう」

「それは有難い」


 そして差額の金貨250枚を貰い、小瓶50瓶を渡していく。


「今回だけだからな、次は倍は貰うぞ」

「分かってますよ、毎回こんな美味しい話があるわけないですよ」


 結果この一件でホールは、予想もしていなかった莫大な利益を生む。



 ***

 ドズの家は確保した。そこにレイチェルを薬の販売員として住ませる。

 ここで売る薬は、在庫の溜まってきたエリオ作の薬である。

 練習で作ったエリオの薬は黄字・黄緑字・緑字とある。


 分かると思うがかなりのペースで作っている為、能力の上がり方も早い。

 タノールBを作りそれを服用し、自分の魔力を回復しながら作っている。

 ごり押しも良いところだ。



 最近は瓶が足らなくなるから、纏めて買っている。

 エリオ作が既に400瓶くらいある。

 すべてに固有名称がついているが、"銘"のないエリオでも名称ありで作れる。

 まず俺が名前を付け、それをエリオに判別させる。

 エリオは"判別"能力はないので、名称だけは確認できる。

 名称の分かった雑草で、俺と同じ方法で薬を作る。

 すると出来上がった雑草薬は、固有名称が付いている。


 "銘"は個人だけでは無い様で、かなり影響力の大きいスキルと言える。

 しかし材料の名前を知らぬ雑草を使い、同じ方法で作らせると名称はただの雑草薬になる。


 流石にこの世界の能力の仕組みなんて分からないから、特に考えないようにして放置している。


 レイチェルを迎えに行くまで、まだまだ余裕がある。ならばシュツーへ稼ぎに行くしかない。

 冒険者はパーティを組んで行動しているはずだから、数回使える小瓶や細い小瓶でも売れるはずだと信じて。


 今回は対バジリスク用の薬に絞った方が良いだろう。

 エラギは予備の数瓶を残し、ホールに売ってしまったので今回は無し。


 劇毒解毒剤のエクラグは、大瓶5個分生産してある物を細い小瓶に分ける。

 大瓶1個で細い小瓶60個に分けられるので、300個出来上がる。


 次にツメリAだ。これは黒字になり一時間半ぐっすり眠れるようになった睡眠薬だ。

 何故バジリスク討伐に売りに行くかは簡単な事だ。

 討伐隊に参加する者達なら、ちょっとした怪我なら回復薬を温存する。

 だがその反作用で寝付きにくく、体力の回復が遅くなる。小瓶30瓶。


 そしてチベラギBは毒の効果を和らげる。細い小瓶100本。

 通常毒・猛毒・劇毒の全てにに効果はあるが、劇毒に対しては気休め程度である。



 タノールAは、二十五分の集中力・命中力増加。魔導士や弓を使う者が欲しがる筈である。

 バジリスクには遠距離攻撃の方が、リスクが少ないのは誰の目にも明白である。細い小瓶50瓶・小瓶30瓶。


 タノールBは、魔力の回復を助ける。魔導士は勿論の事、能力を使い戦う者は、

 少しずつ魔力を使いながら戦うので、魔力切れは死に値する。小瓶50瓶。


 アンシーBは、体力二倍の優秀薬。今まであまり売らずに溜めておいた一つだ。細い小瓶100瓶。


 ケングスBは、完全なる鎮痛剤ではないが、六時間痛みを軽減してくれる。小瓶50瓶。


 シズーBは、丸一日喉の渇かなくなる。細い小瓶50瓶。


 今更だが瓶の容量は

 極小瓶:細い小瓶:小瓶:中瓶:大瓶で

 1:2:3:30:120である。大瓶で3リットル位入る事から

 25ml:50ml:75ml:750ml:3Lとなる。

 入れるときに、多少の誤差は出るのは仕方ない。



 合計細い小瓶550小瓶160瓶で約便の重さも入れると約60kgである。

 他の装備品も入れると、一人で持って行く事が出来ない。

 そこでだホールがあと二日街にいるはずである。



 ──その日の夜、酒場にて。


「やっと見つけたわホール」

「どうしたアール」

「頼みごとが出来た、金も払う。シュツーに売りに行く、薬の運搬を手伝って欲しい。ドズに馬車置いて来てるだろ?」


「持ちきれないって、どれだけあるんだ?」

「細い小瓶550本に小瓶160個ある」

「この騒ぎに乗るつもりか、ちょっと分けてくれよ」


「ハハハ・・・まだ俺の稼ぎを奪うつもりか」

 俺の目は笑って無かった。

「やはり止めておくよ」


「だが何がそんなにあるんだ、こっそり教えてくれよ」

「金払うなら教えてやるよ」

「良いものだと言う事だけは、分かった」

「あまり欲張ると取引相手を無くすぞ」

「・・・・・・」

「今回のバジリスク討伐の必需品だよ。今回は特需だから、これを機に稼がないとな」


「なら金貨10枚だ」

「高くないか?」

「どうせ稼ぐだろうと、足元を見ておる」

「教えなかった分上乗せか。まあいい払うさ。二回に分けて乗り遅れる方が不味い。」

「毎度ありっ」


 俺もこんな所でホールとの縁を、良くない物にしたくないから快く払っておく。これも先行投資の一環だ。


「出発は明後日の朝8時だ」

「わかった、それまでに準備を済ませておく」


 そして出発までの間に減ってしまった薬の増産をすることになる。

 主に殆ど無くなった、エラギの作成とエクラグの下準備になったが。



 翌朝裏庭に出てみると、ノーム達が声を掛けてきた。

「いつも貰ってる飲み物美味しいんだが、エールで割ったら駄目か?」


 仕事の前に酒を飲飲みたいと言う事らしい。


「酒が入ってもしっかりと仕事が出来るなら構わんぞ」

「ノームはエール一杯じゃ全く酔えんよ」

「最低十杯は欲しいわい」

「そう言えば、ノームやドワーフは酒豪だったな」


 そしてエリオを呼び水で薄めるのを、エールを使うように指示した。


「エールはこっちで用意しないから、毎朝エリオに渡せばやってくれる様に言っておいたぞ」

 有難てぇと言いながら、一気に飲み干すノーム四人衆。

 これでやる気を出して、頑張ってくれるなら良いだろう。


 昼の休憩になると他の提案をしてきた。


「畑の横に、農具小屋と休憩場所を作らいないのか?」

 言われてみると確かに畑の事だけ考えて予定してなかった。


「お金を追加すれば作ってくれるのか?」

「俺らノームは物を建てるのは向いてないが、知ってるから呼んで来れる」

「幾らくらいだ?」

「最近仕事が無いと言いたから、少し安い筈だ」

 ひとっ走り行って呼んで来てくれるそうだ。


 ・・・またか、またこの種族なのか。筋肉ムキムキの熊猛(ゆうもう)族がノームに連れられて来た。

「あんたかい、仕事くれるって人は。何を作りたいかはもう聞いてる。」

「話が早くていいな。材料代と工賃で幾らで建てて貰える?」

「簡単な小屋でいいなら、材料込で金貨3枚。しっかりした倉庫付きが欲しいなら、材料込で金貨10枚だ。」

「金はあるから倉庫付きで、金貨10枚の方を作って貰いたい。」

「値交渉はしないんだな。」

「ここでケチってもノーム達の顔を潰すし、良い仕事して貰えるようになるか分からんしな。」


 グハハハと笑ってやがる。前金で10枚と言おうとしたが、どうやら半金ずつで良いらしい。

「材料代があるから、半分は前金貰って行くぞ。」

「残り半分とそれ以外は出来高だ」


 仕上がり次第では、報酬の追加もしてやると言うと俺の本気を見ておくがいい、とやる気が出た様だ。

 今日は材料仕入れて明日から取り掛かるようだ。場所は南向きで、畑の北側にするらしい。

 暫くシュツーに行ってるから、その間に出来上がったならば、こっちから金を持っていくと言い家の場所を聞く。



 そして翌日。

 荷物の半分をホールに持ってもらい、森を出てドズに向かう。

 流石は虎豹(こひょう)族、軽々と荷物を持つ。

 ドズから荷馬車でシュツーへは、大凡(おおよそ)半日で着くという。


 シュツーに着いたらまず[闇の通用門]に寄って欲しいと伝えると、

 あそこに全部売るのかと聞かれたが、義理で少し売るだけだと言っておいた。


 そうして俺達の乗った荷馬車はシュツーへ着いた。


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