第十六話 翔馬『桜が咲き散る街で』
「愛を込めて。っと」
子供部屋の机で。をグッと心の中でだけ力を入れて桜模様の便箋に書き、それを畳み白い封筒に入れ、使い終わったコスパ最高なお気に入りのボールペンを筆入れに仕舞う。
生まれた時からずっと暮らして来たこの家に、僕達は明日はいない。とは言え小物類は詰めたけど家具のほとんどは残すのであまり実感は湧かないかな。そして明日には、
「姫様の暮らす桜花市にっ!」
……まあ、死神やら狂王もいるんですけどね。
「……とりあえず僕はしばらく平気だけど姉ちゃんはなー」
同じクラスに狂王と冷酷眼鏡がいるんだよね……、
「んー、でも史君が守ってくれるし」
ペラリと書いたばかりの手紙を透かす、ここには学園の危険人物達の、僕が持ちうる情報を書き込んである。それをお気に入りのメッセンジャーバッグに筆入れと共に仕舞い、自室に別れを告げ台所に向かった僕は、
「頑張ろ? 姉ちゃん」
引っ越しの手伝いをしてくれた皆さんへの賄いを作っている姉ちゃんにニヒヒと笑いかけた。
「……キモい」
……愛する姉がつれないです。
引っ越しは冬休み中にあらかじめ買って置いた家具と、淳司おじさん経由で借りたグランドピアノ──圓城寺の第三ピアノらしいです──が既に置いてある、圓城寺グループの社宅らしいマンションの一室に、細々とした物を仕舞うだけだったので、意外と早く終わりました。
そして四月、新学期に合わせて通い始めた城生院学園初等部で、
「桃園翔馬です! 多分皆さんがわからないくらいの関西の田舎町から来ました! よろしくお願いしますね?」
僕は全体的に小綺麗なクラスメート達にニッコリとちょっと挑発的な笑顔を作り挨拶する。紺のセーラーなんて男子はどうよな制服を着こなしてる僕に、女子から好意的な悲鳴が上がる。男子は……うん、反感かな?
「はい、では翔馬君は……後ろと窓側の二番目の席に、拓君、色々サポートしてあげてくださいね」
「はーい! 翔馬君、ここだよー!」
先生の言葉に明るい態度と容姿の好少年、二条拓が頷き手を振る。彼とは今まで何度も仲の良いクラスメートになっていたので、結構、かなり安心してます。
「よろしくね! 翔馬君、オレ、二条拓」
「よろしく、拓君」
当たり前だけど転入生を迎えたこのクラスに姫様も拓君の主人もいない。……とは言え隣のクラスだからもちろん、
「……はあ、ロリロリな姫様……最高っ!」
こっそり観賞出来ました。そしてこちらももちろん、
「お前調子に乗ってる?」
やんちゃな男子達に睨まれています。
ま、こういう連中は、
「な、ハットトリック!?」
実力を見せ付けてから、
「ナイスアシスト!」
ニッと笑ってハイタッチをすれば、
「翔馬運動神経良いな! 運動会が楽しみだよ!」
陥落するのは楽です。
つー訳でクラスメートは、
「翔馬君おはよう!」
「翔馬はよー!」
攻略完了しました。




