第十五話 翔馬『三年間の猶予を手に入れました』
桃園翔馬を繰り返していることを姉ちゃんに告白してから、半年ちょっとが経ちました。
「……わ、本当に北の球団が日本一……あんたの妄想じゃなかったのねぇ」
リビングのテレビで、日本シリーズの第六戦を胴上げまで見終わったところで姉ちゃんがしみじみと言いました……いや、そりゃ信じ切ってなかっただろうとは思ってたけど、
「……普通口にしないよ」
「あら、たった二人の姉弟だもの、隠しごとは酷いでしょ?」
カラカラと笑う姉ちゃん……今世の彼女は竹を割ったようなカラッとした性格です。
「……うううそれはこれまでの僕に対す…………あ、そういえば明日、淳司おじさんがこっちに来るんだよね? なんでか姉ちゃん聞いてる?」
突き詰めるとドツボな気がしたんで話題を変えました。
「んー、私も聞いてない……お父さんのお仕事についてかなぁ?」
んー、と姉弟で似てないようで似ている顔を傾げさせてたけど、
「こら二人とも! 寝ないと! いくら明日もお休みだからって夜更かししすぎ!」
怒らせちゃいけない母ちゃんに叱られてベッドに即座に潜り込んだのです。
翌日、お土産をいっぱい抱えた淳司おじさんを出迎えた僕ら姉弟は一緒にお墓参りをして帰ってきた家である提案をされました。
「城生院学園へ入学?」
父ちゃんの本社勤務と同時に、だそうです。
「……えっと、城生院ってすごいお金持ち学校じゃなかったですっけ? おじ様」
「ええまあ……ですけれど本社勤務の給料なら初等部の学費は払えますし、百合ちゃんのピアノなら特待生として誰もが認めますよ」
そうなんだ、僕達は来年入学や進学をするんだ。そのタイミング、ってのもわかるけど……、
「でも私、まだコンクールとか出たことないし」
姉ちゃんは教わっている先生の方針から実績がないし、
「僕みたいな庶民が入って平気?」
僕は僕で城生院の初等部は入学基準がものすごく高いって知ってるんですけど……と、姉弟で不安を口にしたんだけれど、
「ふふ、大丈夫ですよ。表立って私に喧嘩を売る者など存在しませんから」
そんなことをおじさんがふんわりと笑いながら言ったことから、
「いや、あっ君!? 問題発言でしょそれ!?」
「おや、権力は使わないと損でしょう? ……欲しくないのに手に入れちゃったんですから」
「うう、あっ君が黒い、子供の頃から黒かったけど再会してから、さらに」
「ヨシヒコは変わらず真っ直ぐですよね……顔に似合わず」
「ほっといて!」
と、仲良し幼なじみが漫才みたいなやり取りに突入したので僕達姉弟は子供部屋で話し合うことにしました。そこで、
「で、あんたの希望は? 大好きな『僕が姫』? と、同じ学校よ? 受けるの? ……私はどっちでも構わないわよ?」
実績はないけれど自分のピアノに自負がある姉ちゃんは、僕に合わせてくれると言ってくれた。姫様と同じ学校……、
「……小学生の姫様見たい、親しくしたい……けど」
……うん、マジで……でも、
「死神と同じ校舎での三年間……死ぬっ!」
城生院学園には妹に近寄る人間を徹底排除の死神が……あっ、でも、
「……小学生ならそこまで歪んでないかな?」
「小学生だから感情のままに行動、もあるんじゃない?」
ほのかな希望を即座に叩き潰す姉ちゃん……もしかして、
「……実は行きたくない?」
「…………お金持ちの顔の良い御曹司がゴロゴロ……そりゃ二の足を踏むわよ」
窓の外を眺めながら姉ちゃんが乾いた笑い声を上げる。
……あー、ヒロイン体質か……それにまだ言ってないけどあの学園、厄介な美形が……、
「「…………………………」」
僕達は無言で顔を見合わせ、
おじさんに今回は見送って欲しいと伝えました。
……今世の方針は『命を大事に』だからね!
あの後おじさんや両親と話し合って姉ちゃんの高校入学とともに転入、ってことにしてもらいました。
その際姉ちゃんは、中学をこっちにある中高一貫の分校にしようかなぁ? と、言ってたけど、
「駄目ですっ! あんなところに可愛い百合ちゃんをっ!」
と、おじさんから猛反対されたのと、
「片道二時間近く……練習とご飯の時間が減っちゃうわねぇ」
と、母ちゃんが冷静に指摘したので近くの公立に進むことにしました。
僕も通学時間がかかるのはゴメンだし、公立に決定、っと、
その余る時間で、
「姫様に釣り合う僕にならないと」
大抵のことはこれまでの蓄積があるけど、
「今回は経済的事情で色々諦めなくても良いもんね!」
とりあえず漢検と英検とTOEICと……、
「あ、気象予報士資格って年齢制限ないんだ」
その他諸々潰しのききそうな資格を取って、
「三年間、とにかく学ぶぞー!」
知識と資格は荷物にならないっていうしね!




