補遺編 こうやって彼女を囲い込みました。
これは俺、四倉緑郎の十年三ヶ月と十八日間に渡る愛ある策謀の日々の話。
……まあ、囲い込んだぜイエイ! って話さ。
【七歳~とりあえず告白してみた】
俺、四倉緑郎は初恋を成就させようと努力していた。その初恋相手は一戸一玻さん、十一歳年上の容姿だけはエロい美女だ。そんな俺と彼女の関係は圓城寺家に仕える使用人仲間。もしくは姉の友人と友人の弟。もしくは父親代わりの男性の娘と父親が育てている子供。
…………まあ、イロイロとビミョーな関係である。
てな訳で小学一年生の頃の俺はスパッと恋人同士を目指し、
「一玻さん、だいすきです! 俺と付き合ってください!」
と、高校三年生のお姉さんに告白しました。そして当然、
「うふふありがとう、でもそういうことは学校の女の子……いえ男の子でも……あ、いえその、年の近い方にすべきですよ。私みたいな年の離れた女ではなく」
笑顔で流されましたわ。
……うん、あきらめねぇけどな。
【八歳~いや、モテるよりはイイんだぜ?】
初等部二年の夏休み、俺はどうして一玻さんが『残念な』という形容詞で語られるんかを理解した。
「お帰りー……って平気か!? 一玻さん!?」
その日、明け方から出掛けてた一玻さんは、屋敷全員での夕飯が終わった頃に、馬鹿でかいキャリーケースを引きずり、ミョーにパンパンな紙袋を持った、プライベートの戦闘服だというゴスロリの暑そーなドレス姿で、春から暮らし始めた使用人寮の一戸家に帰宅し、その玄関で…………倒れ込んだ。
「う、うわー!? ね、熱中症? それともどっか痛い? 怪我? 熱? えーと、えーと……」
愛する彼女を迎えようと忠犬よろしく一戸家で待ってた俺はドアの開く音に飛び出して行った先でその光景を目にしパニクった。
「……あー、一玻? 大丈夫ですか? とりあえず水飲みなさい」
すると落ち着いた表情のお父さんがペットボトル片手に娘を抱き起こした。……えーと、なんかなれて、る?
「うー、飲む……いや、はは、ちょっと……燃えつきましたわ」
……あ、平気? ……ハア、よかったー、
「ゴメンねー、緑君、ビックリさせちゃって」
ニコニコ笑顔の一玻さんは燃えつきたというにはツヤツヤのお肌……でも、
「うん、よかった……でも今日はどこ行ってたの? そんなヨレヨレになって……大荷物だし」
クルンクルンといつもなら綺麗に巻いてカッチリ固めている縦ロールは解けてるし、バッチリメイクもほぼ汗で流れてる。フリル過多のドレスもいわんやまあ……、
「デート……じゃないよね?」
実は心配してました。けれどこの状態は……百年の恋も覚め……ないけど俺は、
「あ、あー、うん、デートじゃないわー……ちょっとその……いや、まあ、お祭、に?」
「ん? ふーん?」
なん? 突っ込まれたくないん? ……なんかムカ、
「……ま、いいか、とりあえずこの紙袋運ぶな? 一玻さんの部屋でイイ?」
「え!? いや、お構いな……グギャー!?」
小学生にはちと重い、その異様にパンパンな紙袋は持ち上げた瞬間に限界を迎え……その中身を吐き出した、
「………………あ、小学生は見ちゃアカン品」
父親からの冷たい視線を浴びながら涙目で彼女が隠している品はミョーに薄くミョーに肌色が多い男性達のイラストが描かれた本でした。
ちなみに一玻さんは翌日も出掛け、別の意味で目の毒な女の子達が描かれた本を抱えて帰ってきました。
……これは、一戸家の夏の風物詩である。
……まあ、それはイイ、フィクションならイイ……けど、
「……一玻さん、お願いだから職場の兄さんらで妄想すんのヤメェ……百歩譲ってしてもエエから……冊子におこすなっ!」
彼女の悪癖は周囲の人間での腐妄想っす。……ごく限られているとはいえ同志達で回すコピ本も作ってます。……まあ、R15なんが救い……とはならんですよねー。
……はい。
……見た目は極上の知的美女なのに。
【八歳~よっしゃ! 言質言質!】
ちなみに一玻さんの残念ポイントはその発酵した趣味だけじゃない。
まずは服装。
さっきも言った戦闘服のゴスロリドレス、以外はジャージ、それも学生時代の、それだけ。……まあ、仕事着のダークスーツにフォーマルドレスや訪問着なんかは持ってるが……部屋着はジャージ一択で外出着はゴスロリ一択……うん、残念。
で、次は家事能力が……一言でいうとマイナス。
料理をすればスプラッタ、掃除をすればさらに散らかり、洗濯すれば服と洗濯機に多大なダメージを……まあ、ダメダメです。
「……不器用ではナイんになんでかなー?」
ヘアアレンジやメイクはバッチリ出来んのに、
「んー、昔からねー、なんでなんだろうねー?」
ってことで、
「……床の本は捨てる」
「やめてください! 司皇!」
「……一玻、下着を放置するのはやめなさい」
「ひー! ごめんなさいお父さん!」
立候補した俺と親としてお父さん、と貧乏くじ引く系男子なご当主が彼女の部屋の年末大掃除をすることになった訳っす。
「……ほんといかがわしい本が山積みだな……まあ、俺がモデルのはねえから許してやるが」
「……私にもさすがに相手持ちのは書かないくらいの分別はあります」
「最低限ですけどね」
「すみませんお父さん……」
「んー、やっぱり俺は見ちゃアカン本やらなんかがいっぱい」
まあ、男性向けのそういう本は普通に落ちてることが多い屋敷なんすが。
「……兄さんらのエロ本はオケなのになんで私の薄い本は毛嫌いされるのぉ」
「……いえあれも見つけ次第廃棄していますよ……捨てても捨てても湧きますが」
「まあ、オトシゴロだしな……彼女のいない」
「見た目も給料もイイのになんでモテねえのかねぇ」
出会いが無ーい! となげーてますが……衣食住極上過ぎるから結婚への欲求が少なくなってる疑惑もあるんすよねー。
「……はあ、とにかくゴミ溜めにならんようちゃんと掃除しろ……人はホコリではめったに死なんが……この状態なら圧死はありえる」
「自力じゃ不可能ですー……」
「あ、じゃあ俺がするよー、愛しの一玻さんのタメに、一生!」
抱き着いてそう宣言したところ、一玻さんは引きつった笑顔で、
「あ、ありがとう? よろしく、ね?」
と、感謝し、了承してくれた。……うん、カワイイ、そして……、
「言質ゲーット!!」
つまり一生一緒にいてイイってことっすよねー? ハニー?
「……緑郎……あざてぇ」
「んー、育て方を間違えましたかねぇ」
「え、え、え?」
フフフフ!
「一生一玻さんのメンドーは俺が見るからねっ!」
衣食住ありとあらゆるコトをなっ!
「……一玻……ほんと残念なほど脇が甘ぇ」
「頭は良いのですがねえ」
そう、一玻さんの最大の残念ポイントは……、
「ヒャヒャ一玻さんはホント迂闊でカワイイなー」
賢いのに迂闊なところっす。
ま、身内以外には警戒バリバリなんすが。
【十二歳~胃袋、つかみました】
一玻さんはオトナな飲みモンが飲めないヒト。まあ、下戸でコーヒーで腹を痛める体質ってことっす。
なんで俺は、
「んー、白牡丹の湯の温度は……」
「……七十七度……かな?」
姫さんと共に中国茶を究めることにしました。
姫さんはもてなすのスキーなんすよ。ちなみにこの五年後の現在、『七席』はそれぞれがいろんな飲み物を専門的に究めてます。史は紅茶でノブがハーブティー、タクが煎茶で今璃は……何故かコーヒー、一玻さんレベルの家事音痴なクロエは免除っす。代わりにメイドちゃんになったゆずっちがココア担当になりました。あ、料理担当のショータは全部出来る。料理とかは出来んすよ。アホっすけど。
つーことで俺は一玻さんを中国茶好きにジワジワしていった訳っす。
そんな一玻さん、食はまあまあなんでも食います。でも一番好きなんはエスニック料理……つーより、
「あ、私のはパクチーマシマシで」
パクチーです。
そんで俺は、こつこつと牛豚よりも鶏、マグロよりも白身魚、カニよりエビ、で、乳製品はあんまり、的な彼女の好みを把握していき、
「んー! 緑君の手料理が一番ホッとするー!」
という最大の賛辞をいただけるくらいになった訳っす。
……つーか結婚して! 発言に近いよなー……うん、迂闊カワイー。
……はあー。
【十四歳~肩コリは遺伝病】
一戸は巨乳。これは圓城寺の常識。
ちなみに二条は地黒、三澤はカワイイ、五藤は上品、六崎は華奢、七瀬は無特徴が特徴。で、俺ん家、四倉は……んー、派手な顔?
ま、個人差はありますが、クロエとか楡晶とか母似だし。
……あー、つまりなにが言いたいかって、
「ウグッ、緑君肩モミ上手ー……」
マッサージや整体を学べば好きなヒトを触り放題ってことっす。
「終わったらお母さんもするー?」
で、次女の誕生日を祝いに帰ってる欧州支社長の、娘以上に肩コリをしてそうなお母さんに点数稼ぎで聞きましたところ、
「ワタシを触って良いのは旦那様だけだ」
バサッと拒否られました。
「んー、じゃあボクも触っちゃダメなのー?」
「え、もちろん今璃は良いのよー、ついでに一玻も」
うん、お父さんもお母さんも長女にはアタリが厳しいよなー、愛のムチってわかるけど……まあ、
「……ルリ……うっとうしい」
お父さんのお母さんへの塩対応には敵いませんが。
「……旦那様……つれないところも素敵……」
こーゆー愛のカタチっす。
【十七歳~ロリコンな次兄とむさい職場】
さて、俺は十一歳年上の女性に惚れてます。で、俺の次兄、ご当主の『七席』で運転手の四倉志郎は……十一歳年下、俺の一個上の女性と付き合ってます。
……はい、変態です。ロリコンです。しかも付き合い始めたのが十二歳と二十三歳というありえなさです。
ちょープラトニックなラブなんで一応犯罪ではないんすが……、
「……通報しようかと思ったわ。あの時」
と、会長様がおっしゃるくらい衝撃的なカップルです。
「えぇ、同級生が大きくてぇ、こわもてなぁ、男性にぃエスコートされてるぅ……驚愕の初ダンスパーティーでしたわぁ」
特にシロ兄は2m近い長身、丸刈り、グラサンだから、
「余所行くと、職質されまくるそうっす。特にデート中は必ず」
五藤夫妻による即席ダンス教室が行われた次の放課後。出席組をからかってたところあれな兄カップルの話になったんすよ。恥じるとこなし! と堂々としてるのがザワッて来る二人の。
「……あー、だが、六年間変わらず、なんだろう?」
年の差ラブに寛容な柊耶は気にせんようだけど、
「むしろさらにイチャラブだし……三月に挙式予定だし……はあー」
見せつけられるこっちの身にも……こちとら十年近くフラれ続けてるんに!
「俺っちは今年もパートナー要請断られたんにー!」
四連敗っすよっ!
「アハハ、仲間ですねー。……あ、そういえば緑先輩のハニーさん、柊先輩の許嫁と同じくエア疑惑ありますよー?」
ハイ? 光三朗ちゃん?
「え、あー、確かに……私はハニーさん知ってるから疑わなかったけど」
え、マジかい百合恵ちゃん?
「くっ、現実に毎日フラれてんのにっ! 現実に毎日ギュッとしてるんにっ!」
「……フラれているのにギュッとって……どういう関係なんすか……」
磨見っち……それは語ると長い……、
「んー、猛獣に育ったのに無害アピールしてる男と、猛獣に育ったことに気づいてるのにこれは子供と思い込もうとしてる迂闊な女、な関係っすよー」
訳じゃねえな。そして今璃、もっと姉ちゃんを尊敬してやれよ……。
「つーか無害アピールじゃねえもん、無害だもん、俺っちハニーを犯罪者にする気ねぇもん、後半年はギュッとチュッだけで我慢するもん」
十一歳差は……辛い。
「190近い男がもんもん言わないで下さいな、気色が悪いわー」
そして優菜ちゃんの毒舌……辛い。
「と、いうか桃園さんは面識あるのですね」
「あ、はい木嶋先輩……え、つまり皆さんはご存知では……」
「ええ、緑郎がもったいぶるので……私は消去法でわかってますけれどねぇ」
「もったいぶってんじゃないさー、俺っちのハニーは表に出さないことになってるんさー」
主に圓城寺乗っ取り系な野望持ちから遠ざける為っす。まあ、残念、だから出せないってのも……あるけど、
「え~、でもお兄ちゃんのお供を……あ~、そのガードを外しては駄目ってことか~」
二人は公では常にいっしょな主従です。
「ですね……それ故愛人疑惑が」
見た目お似合いだからなー。
「……キモい疑惑っす」
「会長と副会長が付き合ってるって感じでありえない疑惑ですね」
「あ、楡晶、それちょーわかりやすいわ」
兄妹のような関係で実際血縁、うん、ほぼ同じ、
「……あ、あー、わかりましたわ、どなたなのか」
「ふふ、多分それで正解ですよ、安曇様……と、いうより圓城寺邸に住む独身女性、かつ年上は現在三人、そして去年もいらしたお二人のどちらか、と、なりますと……」
「ヒャヒャ、チーフはゼッテェありえんってわかるもんなー」
バツイチで二人の息子とやべえモトダン持ち……ねーなマジで、
「ご当主と迂闊さんの愛人疑惑以上にキモいっすー……」
「「…………………………」」
今璃は腕をさすってる。楡晶、史は無言で顔色を悪く……あー、スマン変なこと想像させちまって。
「っていうかあんだけ広い屋敷なのに独身女性が三人? って少ないな」
おー、さすが空気読める理系、明石ちゃん。ナイス話題チェンジ!
「あー、はい、ボク達未成年も入れても七人ですし……そもそも女性が少ない職場なんで」
一桁一人、十代三人、二十代三人、で、それ以上四人、な職場っす。
「……むさいわぁ」
「ちなみに一番多いんが護衛の兄さんらよ?」
美形揃いとはいえ実はマッチョなお兄さん達がいっぱいな職場っす。
「……むさいな」
姫さんが十人分くらい頑張ってくれてますが。
【十七歳~サプライズはお好き?】
当然、次兄とその恋人──島森光子さんが一切波乱なく六年間付き合ってるはずがない。でも、その波乱とは年の差故のあれこれ……ではなかった。
もちろんそーゆーのもチラッとあった。テルさんのご両親は交際に反対したし困惑したし……それ以上にご当主がブチ切れたそうっす。
「てめぇは俺が教育者だってわかってねぇのか!」
と、で、
「配下がロリコンとか辞任もんだわ! しかも城生院を受けた受験生を! ……恋愛感情を抱くのは仕方ねえ、だが付き合うのは問題だ! ……いいか、彼女が高校を出るまでに手ぇ繋ぐ以上のことしてみろ、俺が直々に介錯してやる」
ってことを向こうのご家族との話し合いの席で言ったらしい。それに対して折々にテルさんから、愛し合っているんです! や、離れたくないんです! 的な反論があり、ご両親が娘の熱意にうたれたり、ご当主を信頼したりな感じで細々とした取り決め──門限やデートの頻度等──をし、晴れて認められたそうな。
では波乱はどういう内容か、それは『七席』あるある──私と主、どっちが大事なの! だ。
まあ、学力特待生のテルさんはもちろんそんなバカっぽいことは聞かん、でもそういう鬱屈を溜め込んだらしい、で、付き合い続ける自信がないとかって別れ話に発展しかけ……で、シロ兄は姫さんに泣きついた。
……うん、うち困った時の姫頼み、が合言葉なんよ。ダメな大人がいっぱいで困るよなー。……まあ、俺もホントに困った時は姫さんに泣きつくけど、
んで、とりあえず姫さんが宥めてみるってことで二人は会って、で、シロ兄は……恋人の一番の座を失った。
はい、テルさんが姫さんに心酔しちゃった、つーことっす。
なんでテルさんは将来の姫さんの第二秘書になるべく圓城寺でバイトを始め、現在はご当主の第四秘書をやってる訳っす。
そう、つまりなにが言いたいかって言うと……、
「テルさん、教会で結婚講座受けるんよね? ……出来たらそれ、一玻さんに付き添い頼んでもらいたいんすけど……」
第一秘書の一玻と姉妹のように仲良しな先輩後輩になったってことっす。なんでサプライズ──花嫁に対しての──結婚式を挙げる為の協力者にうってつけつーことっす。
「一玻さんは親切な先輩だし騙すのは……」
恋愛以外常識的なテルさんは当然難色、っすが、
「お願い、テルちゃん」
「承りました、ボス!」
最大の協力者な姫さんのお願いでクルッと手の平返しです。で、
「では私は婚姻届提出に必要な諸々をしときましょう」
「俺は結婚休暇や産休を問題なく取れるようにしとく」
二番目の協力者はお父さんで三番目の協力者はご当主……つーか、
「ガンバレー、緑郎君」
「協力するぞー」
一玻さんを除いた屋敷の全員が仕掛人です。
……こーゆー映画あった気がする。
【十八歳~出なかった言葉】
俺が十八歳になって直ぐの土曜日、サプライズ結婚式を決行しました。
友人達からはあれはダメだろって非難ゴウゴウでしたよ……でもな?
彼女はあれこれ言いながらも教会に来、ウエディングドレスを着、ヘアーメイクをバッチリうけ、バージンロードを歩き、誓いの言葉も誓いのキスも指輪の交換もし、婚姻届に署名捺印したんよ?
そして日付が変わるまで一言も『嫌だ』って言わなかったんだ。
完全に同意だよな?
ねえハニー?
【十八歳~楽しい新婚生活】
我が家の朝食は粥だ。俺のハニーは朝がっつり食えないので、高校生男子な俺は足りないんで常備菜や夕べの残りも食べるけど、で、若葉マーク付きの車で圓城寺邸に二人で行き、登校と出勤する訳だ。
「んじゃお仕事頑張ってなー、ハニー?」
「……ひ、人前でチューしないで下さいっ!」
「……キメェからヤメロ」
「ラブラブ」
「ええ、幸せそうでなにより」
けれど三月足らずで、新婚生活は終わった。
一玻さんの妊娠っていう最高の理由で。
「あー、ここに俺の子供がー」
出戻った元一玻さんの、今は二人の部屋で、俺はベッドに横たわる愛妻の腹部にほお擦りする。
「いるんですよね……不思議な感じです」
性別がわかった時点で許嫁なんてもんが出来た娘が、膨らみはじめたここにいる。
「……あー、もー……ありがとう……愛してる」
幸せ過ぎるー、
「……知ってます……ええと……はい、私、も」
「も?」
「愛してます」
妊娠した彼女は少し照れながら愛の言葉をくれるようになった。だから俺も、サプライズ以来ちょびっと不安に思ってたことを聞けるようになった。
「……ねえ? 一玻さん……幸せかい?」
って、それに対しての彼女の返答は、
「……私、緑君といて不幸せって思ったことありません……あなたと結婚して良かった」
なんて嬉し過ぎるもので…………あー……もうっ!
「ホント一玻さんは……カワイイ!」
どんだけ俺を惚れさせるんよ! この人はっ!
なんで俺達夫婦の間には合計四人の子供が出来ました。
【七歳~はじめまして】
僕に『四倉緑郎』だった記憶が戻ったのは四歳の時、それから『一戸一玻』だったヒトを見つけるには、三年の月日がいった。
そうして突き止めた、愛しのハニーの屋敷のドアを、今、叩く、
「……はーい」
ヨレヨレの服装で出て来た、彼女とどこも似ていないのに彼女だってわかるそのヒトに、僕は笑顔で挨拶する。
「はじめまして、お師匠様、家事は一通り出来ますから、僕をあなたの弟子にして下さい」
って、
前世同様、両親のいない僕を、前世同様、迂闊なあなたが受け入れるまで一時間。
結婚するまで十二年。
これで緑郎君視点のお話はおしまいです。
一玻さん視点は四章になります。
次は隠しキャラ二名のお話です。
……今冬中にはお届け出来るかと、
ではまた、お会い出来れば幸いです。




