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この学園には攻略対象者はいません。  作者:
第三章 攻略対象者な彼と攻略対象者やモブな彼女のお話。

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彼女は悪役令嬢、又は、ツンデレ令嬢、でした。4

 





 【果たされた野望】



 あの後、元子もとこちゃんが、


「飽きたぁ」


 と、言ったので古城ホテルを離れたわ。オーナー夫妻も元子ちゃんの性質を理解しているか苦笑一つで見送ったの。で、その後は元子ちゃんのオススメ観光地を転々と回り、これまた元子ちゃんの、


「シュトュルーデルが食べたい!」


 発言でオーストリアに移動し観光し……と、残りの夏休みは退屈知らずで過ごしたわ。


「……っていう訳でスイスとオーストリアのお土産、紗々蘭(ささら)にはオルゴールとスワロフスキー、子鞠こまり今璃いまりには刺繍小物とスワロフスキー小物よ」


 で、夏休み開け直ぐの今日の放課後、友人達にサロンでお土産を渡すことにしたわ。


「ありがとうモカたん、ふふ、素敵」


「だねー」


「っすねー」


 良かったわ。喜ばれて、


「じゃあわたしから……北海道のお土産、手乗りの木彫り熊です」


 ………………まさかなど定番、でも、


「……結構可愛い」


「そうですねー」


「っすねー」


 感謝していただいたわ。


「あー、じゃあ僕からは……ええとコアラとカンガルーのキーホルダーです」


 今までキッチンで作業していた桃園翔馬ももぞのかけうまはオーストラリアに行ったそう。


「あら、ありがとう……まあ、受け取ってあげる。……で、お返し、両国のチョコレートよ」


「あ、ありがとうございます姫様!」


 そんな感動しなくても……、


「ふふふ、翔馬君は可愛いねー。わたしからはご飯のお供セットだよー」


「ありがとうございます、子鞠先輩」


 ちなみに子鞠は桃園姉とも仲良しらしく彼女にはお菓子セットをプレゼントしたそう、すると普段は主人に付き合い旅行には出掛けないはずの今璃がごそごそと袋を取り出す。


「んじゃボクとママからは……化粧品です」


 と、


「ありがとう?」


「ありがとう?」


 ええと?


「どこ土産?」


「んー、ひとしちゃんの大叔母様(んち)土産っすねー、化粧品屋さんなんで……あ、元樹もときには山葵あげたんで元佳もとか様、ぜひご賞味を、美味いっすよー」


 ええと六崎むざきの帰省に付き合ったってこと?


「養父の生家はお盆をやる家ですので」


 常通り紗々蘭の斜め後ろに控えるほのかさんが微笑んで補足するわ。……ああ、そういえば梨絵りえも珍しくお出かけしてたわねぇ。


 ……良し……うん……では……お土産交換は終わったし触れましょうか。


「ずっと触れてなかったけど……この部屋にメイド、がいるわよね?」


 仄さんの隣に、この部屋に入った時から、


「あ、紹介しますね……一月ほど前に私の専属護衛になりましたゆずり、六崎楪影(ゆずりえ)です」


「はじめまして、六崎楪影と申します。主君……紗々蘭の護衛という立場から皆様とはお会いする機会は多いかと思いますが、先程までのように空気として扱って下さいませ」


 紗々蘭の若干どやってる紹介を受け、挨拶した楪さんは流れるような礼をしたわ。……ええと、


「……紗々蘭、遂に野望を」


「ふふふ、ええ、かねてから言っていた、クラシカルメイド服が似合う美少女を雇いました!」


 クラシカルメイド服が似合う美少女を、は紗々蘭が口癖のように言っていた野望、女子不足ですものねぇ、紗々蘭の従者は、


「ふふ、では、楪、皆さんの紹介をしますよ? こちらの縦ロールが素敵な美少女が桐生きりゅうコンツェルンの桐生の当主令嬢の桐生元佳様、で、お隣りの三つ編みがキュートな美少女はお分かりでしょうが武家の令嬢の鴇田ときた子鞠さん、で、今紅茶を入れているのが家の社員の息子の桃園翔馬君です」


 紗々蘭の紹介に合わせ礼をした私達に楪さんはキリリと返礼……うーん、


「見た目に反してお強いのね」


 容姿は儚げな美少女な楪さんだけど立ち居振る舞いから伝わるのは鍛え抜かれた身体と技術、それは、


「……うん、楪さん……スッゴく強いね」


 道場の娘で自身も鍛えている子鞠の目の色が変わるほどのよう、


「……鴇田様も……お強いですね」


 強者は強者がわかるのでしょう、楪さんは子鞠が入って来た瞬間から子鞠への警戒がとけていないわ。主人の友人に対しどうかと思うけど、護衛としては適切、なのでしょうねぇ、けど、


「楪、子鞠さんは安全ですよ? いきなりは無理かも知れませんが早くなれて下さいね」


 これからちょくちょく会うんですものね。



 生真面目そうな表情で努力します。と頷いた楪さんは紗々蘭に促され仄さんと共に席に着いたわ。そしてまだ紗々蘭には劣るものの格段の進歩を遂げた桃園翔馬の紅茶を飲みながら、子鞠と、


「楪さんお幾つ? ご趣味は? 恋人は?」


 等々と当然質問責めにしたわ。


「え、あ、その……中学三年生の十五歳です。趣味は……鍛練と入浴、恋人はいたことがありません」


「そうなの……ん? 紗々蘭? 楪さん学校には?」


「んー、二学期からの転入試験、ちょっと点数が足りなくて……で、中途半端な時期に転入させるより高等部からの方が楽だし護衛の仕事に慣れるのに良いだろうってことで通わせて無い」


 そういえば転入試験は異様に難しいとか……ええとけれど、


「義務教育なのに良いの?」


「通わせる義務、が養母になった仄にあるが……まあ、毎日登下校に一時間以上はなあ? 実家に戻すのも……私の年齢的に女性護衛一人はそろそろ厳しいしな」


 ……まずいけど家の都合を優先、なのね。市立中学は遠いし仕方が無い、のかしら?


「家で色々教えた方がよっぽど役立つだろうし……楪の容姿的に普通の学校に通わせるとトラブルが、なあ?」


 ……あ、ああ、


「……ストーカー、が出来そうねぇ」


 儚げな顔立ちと華奢に見える肢体……かなり男性受けする容姿よね。


「いえ……その……まあ、はい……同僚からも見た目だけならか弱い感じで、押したらものに出来そうだ、と言われています」


「……ああ、わたしも同じ感じの誤解、良く受けます」


 楪さんの言葉に子鞠が頷く、子鞠も一見気弱そうな美少女だものねぇ。


「成人男性十人に襲われてもあっさりと返り討ちな二人なんすのにねー」


 ……見た目で判断すると痛い目に合うのは世の習い、ね。



 その日の晩御飯に、小兄様が今璃から一番美味しい、と教わったというわさび丼をいただきながら思い返す、


 ──詳しく聞けなかったけど楪さんは仄さんの元旦那の姪なんだろうなぁ。と、


 姉様から口を酢っぱくして絶対に六崎姓の前で話題にしてはいけないと言われた──司皇しおうさんの元『七席』で、


 祖父や母や長兄以上に唯一以外を見なかったという、



 ──抹消された男性の。



 【堕ちたり落ちたり気付いたり】



 ──落ち着かないわね。


 九月になってからの紗々蘭は少しおかしい。元々おかしい子だけれど特におかしい。先週はほぼ即帰宅したかと思えば突然呼び出しシュークリームを押し付ける。


 で、週明けの放課後、表面的には普段通りに見えるけどその実そわそわとしているのが丸わかりの態度で二人っきり──もちろん楪さんは控えている──のお茶会中、けれど、


 ──結構待ったけれど切り出さないし……、


「私帰るわ。今日は母が遅いから夕食の支度があるの」


 気にはなるけど言いたくないなら仕方がないもの。なので立ち上がろうとしたら、


「実は……モカたんに報告したいことがあるんだが……」


 と、怖ず怖ずと止められたわ。


「は? 何? 早く言いなさい」


「……ええと、その……」


 促してあげるけど未だ口ごもる。……言いたいなら言えば良いでしょうに、言葉はいつまでも続けられない……、


「……はあー、明日聞くわ、じゃあね」


 めんどくさくなったのでかばんを持って部屋を出るわ。すると、


「ちょっと待って、モカたん!」


 階段をほぼ下りたところで呼び止められたわ。で、


「あの! 私恋に堕ちたの!」


 と、紗々蘭は続けたの。思わず振り返る、と!?


「!!」


 階段を踏み外しっ!?


「モカたん!?」



 ぎりでみっともなく転ぶのは免れたわ。代わりに思いっきり足首を捻ったけど! うう、痛い……立てない……、


「モカたん!? 大丈夫!? ああ、大丈夫じゃないな! とりあえず……ええと、どうしよう楪!?」


「はい、主君落ち着いて……元佳様、少しおみ足を拝見します……ああ、これは立たない方が良いですね」


 目の前には珍しくわかりやすく動揺しきりの紗々蘭と落ち着きはらっている楪さん……んー、多分捻挫だと思うけどっ!?


「元佳様、失礼します……主君とりあえず診療所に行きましょう、ご連絡を」


 お、おおお姫様抱っこっ!? え、このまま診療所にっ!? ちょっと待っ!?



 制止の間もなく連れて行かれましたわ。診療所まで。羞恥に震えながら受けた女医さんの診断は軽度の捻挫。で、危険を省みず付いてきた紗々蘭の命で家までまたしてもお姫様抱っこで運ばれることになったわ。……ううう、


「……紗々蘭……とりあえず帰ったら電話するわ……覚悟なさい」


 先程の爆弾発言の詳細をとことん聞いて、あなたにも羞恥を味わわせてあげるわよっ!



 お姫様抱っこで帰宅したところ姉様とミナモさんがいらして……当然、動揺する大兄様を姉様がなだめたり、私が楪さんを紹介したり、


「楪さんは、おいくつ? こちらには何時頃いらしたの? 慣れました? 桜花市にはそれなりに楽しいところもありますがお出かけになられたりは?」


 楪さんが美少女マニアに質問責めにあったりしたわ。


 で、部活で遅くなった小兄様と入れ代わりな感じで若干お疲れになってお帰りになり、現在、


「ふふ、元佳ちゃん、痒いところは無い?」


 お風呂禁止を受けた私は洗面所で姉様に背中を拭いてもらってる。


「……はい、大丈夫です……あの、もう平気ですので」


 恥ずかしいのよ……さすがに!


「ふふ、ではお着替えが終わったら元治もとはる君を呼ぶんですよ? 無理に歩いたら長引きますからね?」


「……はい」


 ってな訳で私の羞恥の時間は帰宅してからも続いたわ……はあー。



 で、姉様とミナモさんの夕食を食べたり、大兄様に運ばれたりした私は、何時もより早く自室に戻ったわ。そして先程の宣言通り紗々蘭に電話を……、


「……出ないじゃないのっ! あの子!」


 かけたけれど電話は話し中……はあー、もうっ!


「……寝ましょう」


 色々めんどくさくなったので携帯を置き、布団を被ろうとしたところで着信、当然表示された名前は『親友』……、


「……もしもし?」


 一瞬切ろうかと思ったけどやっぱり出たわ。


「あ、ごめんモカたん、直ぐ出られなくて……あの時間平気?」


 聞こえるのは表情よりもわかりやすく感情を伝える囁くような美声。


「寝ようかと思ったけど平気……で、恋に堕ちたってどういうことよ?」


 言葉通りなの?


「ああ、うん……その堕ちちゃったんだ先週お会いした男性に」


 言葉通りなの……で、


「ふーん? 相手は? 堕ちたの?」


 堕ちたでしょうねぇ。


「……多分堕ちて無い……あ、でも定期的にお会いできるようにした!」


 えっ!? ……つまりその彼、あの傾国レベルの美貌を前に正気を保ったの!? す、凄い、けど……時間の問題よね。紗々蘭の捨て猫の目で堕ちないのは心が無い人間ぐらいでしょうし……はあー、


「…………お相手、お気の毒様」


「な、なんで!?」


 あら聞くの?


「あんたみたいに愛情過多で執着心と所有欲が強い女に好かれるとか……お可哀相でしょう」


 この子の本質は女帝なのよねぇ。


「ううう、これまで家族は気を使って言わなかった事実を……」


 それは気を使ったんじゃなく、あんたの家族はあんたに執着を向けられることイコール幸せ、だから言わなかったんでしょうね。まあ、


「私ぐらいはあんたに現実を教え無いと」


 所有したものはとても大切にする子でもあるけれどね。


「……ううう、ありがとう……で、足の具合は?」


 あら? へこんじゃった? そしてふふ、話を逸らしたわね。……まあ、良いわ。


「今のところ平気……一応枕元に処方された痛み止めも置いてるし……多分二三日学校は休むけど」


 しばらく歩かない方が良いらしいから。


「……そのごめ」


「わかってると思うけど悪くも無いのに謝られるの私大嫌いだから」


「う、はい……そのお大事に」


 あらやだ落ち込んでる。……仕方が無い子。


「……明日か明後日、今璃あたりにお見舞いを持たせなさい……私、あんたの葡萄のジュレが食べたいわ。花は色とりどりのが良いわね」


 罪悪感を消す手伝いくらいはしてあげる。


「! ああ! 任せてくれ! ……あ、退屈しのぎの品は?」


「家の積み本を片付けるし……ゲームとテレビもあるからいらない」


「……わかった……多分明日、見舞いを頼む……ではお大事に、お休みなさい」


「ええお休みなさい」


 他愛ない挨拶を交わし、電話を切った私は今度こそ布団を被る。そして願うわ。親友が恋をした男性に、


 祝福が多過ぎて生き辛いあの子をどうか幸せにしてあげて。


 と、


 落ち込みやすい彼女はとても優しい女の子で、きっと幸せになれるから。


 と、


 自らを鑑みても一途に愛されるのはとてもとても……比類がないほどの幸福ですから、


 と。



 翌日、言った通り紗々蘭は今璃をよこしたわ。


「ちわーっす、元佳様お加減はー?」


 朝から過ごしていたリビングに、今日は一日中家にいてくれたミナモさんが通した彼女は、帰宅後直ぐに来たのか制服姿でにこやかに尋ねるわ。


「いらっしゃい今璃、ほぼ平気よ」


 ちょっと歩くのは難儀だけど痛みは無いわ。


「ふふ、それは良かったっす……で、元佳様、こちらお見舞いの品、リクエスト通り、ジュレと花籠です」


 可愛らしくスポンジに挿された可憐な花籠に美味しそうなジュレ……けれど、


「ありがとう……結構いっぱいね」


 二十はあるわね……、


「あ、はい、凍らせて食べるのも美味しいからと」


 なるほど。……ふふ、ほんと美味しそう。


「……あ、じゃあボクは帰るっす。感想はお嬢にメールで……」


「え、遊んでいかないの?」


 私はお持たせをいただきながら今璃と遊ぼうと思ったんだけど……、


「あー、すみません、車を待たしてますんで……じゃあ元佳様お大事に」


 あ、そうね。圓城寺家から家までは結構……、


「そう残念だけど……ええ、わざわざありがとう」


「お邪魔しましたー」


 そして彼女は来た時と同じくにこやかにジュレを持ったミナモさんと出て行く……ちょっと寂しいわね、すると、


「……ただいま元佳……今、黒塗りの車が見えたが……客か?」


 入れ違いに大兄様がご帰宅、


「お帰りなさい大兄様、ええ、今璃が紗々蘭の使いで……ふふ、綺麗でしょう、この花籠!」


「……ああ、なるほど……綺麗だな、で、今日はミナモさんの言うことを聞くいい子だったか?」


 花籠を見、得心が行った大兄様はニヤリと笑いからかうように続ける。まあ! 心外、と、伝えようとしたら、


「当然ですよ……どこぞのボンボンと違い元佳さんはいい子ですよ」


 リビングに戻って来たミナモさんが冷たい声で答えるわ。


「……ただいま戻りましたミナモさん、今日は元佳が世話になりました」


 大兄様も負けず冷たい声で返す、そして、


「ええ、お帰りなさい元治君……優菜ゆうな様は?」


「……着替えたら来るそうです」


「……では、紅茶を……ああ、あなたは飲みます?」


「……いただきます」


 と、会話を……これは二人の基本形。……ええ、ギスギスとしているわ。……まあ、


「ただいま元佳ちゃん、お加減は?」


 姉様の前では即雪解け、なんだけれど。



 ──あら、千客万来?


 呼び鈴が鳴り着替えた大兄様が玄関に、すると、


「お邪魔しまーす。元佳ちゃんお加減はー?」


 と、はす向かいの皆様がお揃いでいらしわ。あら、まあ、


「いらっしゃいませ……どうなさったの?」


「ふふ、朝偶然会った元治君から元佳ちゃんがお怪我をしたと聞いて……で、退屈だろうからお見舞い」


「まあ! ありがとうございます」


「で、元佳ちゃんがこの間美味しい、って言っていたアイスクリーム屋さんのシャーベット詰め合わせだよ」


「まあ! ありがとうございます」


 ……あ、でもそしたら、


「ミナモさん、冷凍庫……」


「……溢れますね」


 ………………うん、


「皆様葡萄はお好きですか?」


 足が早いものから片付けないとね。



 と、言う訳で葡萄のジュレをみんなでいただくことに、したのだけど、


「? これどうしましたの?」


 当然、家の冷蔵庫を熟知している姉様に尋ねられたわ。


圓城寺えんじょうじの次期からのお見舞い、手作りです。この花籠もですね」


「……え、まさかいらしてたの?」


「いえ、秘書を代理に」


「ええ、一戸いちのへのお嬢様が……お久しぶりにお会いしましたが、大きくなられておいでで……よそのお子様の成長は早いものですね」


 私が生まれた頃から会っていなかったらしいミナモさんが感慨深げに呟くわ。……容姿と発言のギャップが凄いわね……、


「で、このジュレですが何時も通り桜花院おうかいん桂瀬かつらせの分と両親の分を取って置いてもこんなにありますので……宜しければ消費にご協力を……味は保証しますよ?」


 どんな高級菓子店よりも上等だと思うわ。材料も腕前も、


「んー、でも栄次えいじは素人の手作りは食べない主義だよな?」


「え、そうなんですの?」


 何時も誕生日にリクエストして下さるのに、


「……主に牽制で言ってるだけ、知っての通り人によっては頼むくらい食べれるから、というか下さい!」


 ……随分必死ですけど、何故に?


「栄ちゃんは先週のスカウト時に餌付けされたからねー」


「うん、そう……だけど、こう君もだよね? むしろ家の家族全員だよね?」


 スカウト? 餌付け? ……あ、


「元佳ちゃん、栄次君は圓城寺のお嬢様直々のスカウトを受け圓城寺グループへの実地研修をすることになったのですって」


光三朗こうざぶろうも将来のメインスポンサー契約を結んだんだと」


 ……ああ!


「つまり栄次君と光三朗君、圓城寺に所有されたの?」


 親友が堕ちた男性が発覚したわ。


「「所有じゃなくて所属だよ」」


 圓城寺的には同義、ですのに……知らないって幸せよね。


「で、その交渉中に出されたシュークリームが絶品で……お土産にもいただいて……」


「……あれは素晴らしかった」


「……ええ絶品でしたわね」


 そして渡されたシュークリームの謎も解けたわ。


「え?」


「作り過ぎちゃった。テヘ。と、言う感じで貰いましたの……十五個」


 大家族のせいかあの子の料理は量が多過ぎることが多々あるの。


「……んー、つまり元佳ちゃんと紗々蘭ちゃんは?」


「無二の親友なのですって……って、え? 静留しずる様もお会いに!?」


 そして普通にあの子をちゃん付けで!?


「ああ、うん、なんか俺、お嬢様の個人裁量で圓城寺に入ることになったから、契約まで当人が見届けるって土曜にいらっしゃったんだよ」


 わー、着々と外堀を埋め始めてるわー、やっぱりお可哀相ー、


「……な、なんてこと……まさかお隣りに……うらやましい!!」


 何故か姉様が叫び机に打っ伏すわ。……ええと? ミナモさん?


「……優菜様とさとり様は圓城寺のご令嬢と……お会いするのを禁じられていますので」


 ……あ、そういえばそんな感じのことを聞いた気が、


「父上にねっ!」


 え、しのぶおじ様に?


「何故に?」


 ……理由がわからないわ。……それは約一名を除いたこの場の全員の疑問、そして、


「……ええと、圓城寺は特殊、ですので」


 その理由を知っているらしいミナモさんが沈黙を選んだので答えは得られなかったの。


 ……本当に何故に?





 


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