彼女は悪役令嬢、又は、ツンデレ令嬢、でした。3
【道化王子】
お眼鏡には適ったらしいわ。
「姫様、どうでしょう?」
なので彼はサロンへの入室許可を得て、昨日から紗々蘭と従者達に鍛えられている。
「……三十点」
そして今日は紅茶の入れかたを紗々蘭に習うという。で、まずはってことで自己流で入れさせたんだけど……、
「香りが薄い、コクが足りない」
まあ、ダメよね。
紗々蘭いわく、
「紅茶好きのモカたんの夫となるならば完璧に入れて見せよ!」
だそうよ……ええ、紗々蘭は素で接することを決めたらしいわ。で、昨日、そんな紗々蘭を見た桃園翔馬は、
「うわ、圓城寺さんってこんな面白い人間なの!?」
と、驚きながらも好意的に受け止めていたわ。……ホント紗々蘭の美貌には無関心よねこいつ、
「んー、私のことは名前で……は、まずいので……あー『白姫』と、呼ぶように」
紗々蘭を名前呼びは色々と危険なのよ……、
「で、君のことは……どう呼んで欲しい?」
「姫様にはダーリンと! で、白姫には……あ、最新のあだ名が名前からでショウ、なんだけど」
「ああ、ではショウ、君、圓城寺に入社させるから」
「え? 何で?」
「モカたんも圓城寺に入社するから」
「了解! 頑張るよ!」
ダーリン、に私が固まっていたところとんとん拍子で紗々蘭は未来の部下をゲット……何て言うか、
「……ねぇ、随分仲良くなったのね?」
息ピッタリよね?
「え、いや、いや、もちろんモカたんが一番だからな!?」
「姫様が百大好きなら白姫は一好きぐらいだからね!?」
………………、
「ホント仲良しねぇ」
その後、二人は焦りながらどれだけ私が好きかと並べ立てたわ。
……可愛いじゃないの。
って感じで昨日は終わり、今日から本格的な修業がスタート、今日は暇な紗々蘭が講師をすることになったわ。
「んー、そういえばショウはいつまでに帰らなきゃならないとかあるのか?」
お湯の温度や注ぎかたを教えながら紗々蘭が確認する。
「……え、ああ……うーん、習い事とかしてないし門限も無いよ? それから今日はぎりぎりまでいる予定、姉ちゃんを待つから」
一度単位で指定された温度と角度に四苦八苦しつつ桃園翔馬が答える。姉ちゃんって?
「お姉さん?」
「はい! 姫様、僕には高等部に芸術特待生として通っている一年生の姉がいるんです! で、生徒会を手伝っている姉が遅い時は一緒に帰宅を、今日は明々後日の運動会の準備だそうです」
……そんなに熱心に語らなくても、
「ふーん、私の長兄も一年生で生徒会に所属しているのよ。親しいかもね」
「でしたら良いですね!」
……だから熱心に……ま、いいわ、
「ちなみにお姉さんって美人?」
こいつの姉ならそうでしょうねぇ。
「んー、美人系じゃなく可愛い系ですね」
「ショウの姉様は砂糖菓子系美少女だぞ、写真で見た」
「……なら、大兄様よりも姉様と親しいでしょうね」
あの美少女マニアが手近な美少女を逃す訳ないもの。
「ええと姫様のご兄弟は……」
「兄が二人、高一と中一、で、姉様は長兄の婚約者、高等部の生徒会副会長よ」
「…………あの、姫様には婚約者いませんよね? いても諦めませんが」
は? 馬鹿なの? ……いいえ、この表情は不安、ね。……はあー、めんどくさい男。
「……いるなら側を許さないわ」
「! 頑張ります!」
いちいち目を輝かすな!
「じゃあもう一回、入れ直しな?」
……あ、シュンと、
「……頑張ります、白姫」
……そんなに厳しいの?
ちなみにその砂糖菓子系のお姉さんは運動会で拝見したわ。大兄様と親しげにお話してたの。そのことを姉様に運動会について話しながら言ったら。
「う、浮気じゃないぞ、桃園だ! 弟が初等部に転校したとかで挨拶しただけだからな!」
と、焦りながら姉様に、というより一緒にいたミナモさんに弁解していたわ。そして姉様はそれよりも、と、お姉さんの服装を聞いていたわ。
……早く両思いにならないかしら。
「それで二年生の時の紅姫様の名言が……」
ゴールデンウイーク後の今日は私と紗々蘭の公認ファンクラブ『双姫会』の会合。桃園翔馬は始まって三十分で彼女達の心を掴んだわ。
「僕は姫様が大好きで大好きで仕方がなく、ただひたすらに姫様の愛を乞う哀れな道化です」
発言で。
なんか紗々蘭には一切興味を示さない一途さと私のわかりにくい優しさを理解しているところが素敵らしいわー。凄いわねー。
「……で、これはどんな羞恥プレイなの?」
「あ、姫様の可愛らしいお声でプレイとか……マジごちそうさまです!」
「黙れ変態」
ちなみに桃園翔馬は普段被虐趣味の皮を被っているわ。けれど求めているのは私が羞恥で震えるところ……ええ、ホントど変態。
「あはは、元佳ちゃんをこんなに動揺させるなんて……ショウ君やるねー」
そんな私と桃園翔馬の睨み合いをニコニコと見ているのはファンクラブの名誉顧問の子鞠……彼女は会報紙やら会員証にイラストを描いているのよ。
「……子鞠、あなたの友情はいずこに?」
「うふふ、だって可愛い元佳ちゃんが見れるんだもん。ショウ君の株は上がるよー」
ファンクラブの面々も笑顔で頷く。……ねぇ、
「あなた達は私に何やら求めているの?」
「癒し?」
「ときめきですわ」
「元佳様が元佳様らしくあることですね」
……………………、
「ふふ、モカたんはモテモテですね」
「おだまり、紗々蘭」
ちなみに仕返しにと聞いた紗々蘭に求めるものは、
「癒し?」
「ときめきですわ」
「元佳様を愛でるお姿と従者達に厳しくも優しく接するお姿ですね」
「まあ、ありがとうございます」
……………………、
「恥ずかしがりなさいよ!」
「ふふ、父と『家族』に常日頃から誉めそやされている私には基本糖度ですもの」
「私もそうだけど慣れないわよ!?」
「ふふ、モカたんは恥ずかしがり屋さんですものね」
「あんたの面の皮が厚いだけでしょ!」
ちなみにこんな言い争いも微笑ましく見つめるのが『双姫会』、なのよ。
……はあー。
【努力と友情と……】
彼は学ぶことに貪欲。
そして、紗々蘭とその従者達は最高の教師だったわ。
六月に入り出歩くのも億劫な最近は、紗々蘭と今璃の経済経営マナー講座、タクの掃除洗濯DIY講座、ノブのガーデニング農作業ハーブ講座に、仄さん達六崎による護身術護衛術講座、緑郎さんのありとあらゆる乗り物講座(ほぼ全て座学)を学んでいる。ショウタとクロエは講師を外れたわ。やる気が無いから、なので料理は紗々蘭と、そして好みの味付けを教えた方が良いだろうってことで私も教えることに何故かなったんだけど……、
「でも私、自分の手料理はそれほど好みじゃないのよね……」
サロンのキッチンで軽食──数種類のサンドイッチ──を作りながらぼやく、好みでいうと姉様ミナモさん母様菜摘さんの順番──紗々蘭のは今までお菓子しか食べたことが無いのでわからない──で自分のはかなり好みから外れている。
「んー、そうなのか? ではどういう味付けが好みなんだ?」
私が作った照りタマサンドを飲み込んで紗々蘭が尋ねる。……んー、
「……素材の味を生かした薄味? なんて言うか健康的な?」
私は紗々蘭が作ったレタスとトマトのサンドイッチを飲み込んで答える。んー、好みよりは濃いめかしら?
「……あー、私もそう言う方が好きだな……普段作るのは父好みで濃いめだが」
「私も……どうしても作るとなると兄達好みで濃いめになっちゃうのよ」
長兄は元々ジャンクなものが好きで次兄は部活で塩分を欲しているのよね。
「……素材を生かした……あ、それ姉ちゃんが得意な感じだ」
同席者──私達と紗々蘭『七席』──が一切れずつを取った以外、残りの全てを食べながら桃園翔馬が言う。……へえー、
「あら、あの可愛らしい方が? ちょっと意外ね」
こいつの大食漢っぷりも意外だけど。
「だな、見た目的にはオムライスとかが得意な……もしくは料理は苦手なの、ってイメージだが」
よね? けれど実際は、
「だよねー、でも百合ちゃんは幕内系なおかずのお弁当を毎日ご両親の分も作ってるんだよー」
とのこと、
「……家庭的」
「……ギャップ萌え」
「かなり所帯じみた姉ちゃんです」
日々のおやつもほぼ手作りだそう……素敵ね。
てな訳でお料理はお姉さんに教わってもらうことになったわ。
……かなりお姉さんとお会いしたくなったのは内緒よ?
彼の交遊関係はかなり広い。
大学部の図書館に、サロンでの講座が無い時には入り浸っているそうで、そこに集う多種多様な方達と友情を築いているらしいわ。
けれど私が驚いたのは、
「え、あなた栄次君と光三朗君とも友達なの?」
はす向かいの双子のお兄さん達とも仲が良いってこと。
これは語学も教えるか? と、紗々蘭が聞いたところ、
「んー、いいよ、十何ヶ国語しゃべれる友達に習ってるから」
と、答え、あらそれは凄いと、色々聞いたところ発覚したの。
「自転車通学仲間で姉ちゃんの同級生ってことで仲良くなったんだ」
……ああ、なるほど、
「そういえばお二人は何故か自転車通学なのよね……通学時間増すのに」
徒歩で四季門を使えば十数分なのにわざわざ二十分以上──圓城寺邸をぐるりと回るから──かけて自転車通学……謎だわ。
「んー、なんか趣味を兼ねた体力作りだって……って!? っていうかなんで姫様二人を知ってるの!?」
「ご近所、はす向かいの家のお兄さん方だから……長兄の友人でもあるし……まあ、互いの家で遊ぶ仲?」
「マジで!? ……えー、日本一男前、R指定な色気、爽やかなスポーツマン……ちょっと、いや、かなり嫌ー!」
……ああ、まあ、魅力的な方々であることは確かだけど……、
「……私は兄が増えた程度としか思ってないわ」
あちらも擬似妹としか思ってないでしょうし、
「でも嫌ー! 姫様の側にいい男がいっぱいは嫌ー! っていうか拓君達もホントは嫌ー!」
……実は嫉妬深いの? うわー、
「めんどくさい」
「じゃあ姫様は僕が美少女に囲まれてても良いの!?」
「良いわ。あなたが私以外に目を向けないのは知っているもの」
妬心など抱ける訳がないでしょう? ……え、ちょっと何!? なんで顔を隠……あ、耳が髪と同じ色に……え、
「どこに恥じらうところが?」
「姫様が僕の愛情を一欠けらも疑ってないところですよっ!」
………………?
「疑って欲しいの? ……めんどくさい」
「そうじゃなくてっ! ……あー、もう良いです、そうですよ僕は姫様以外に興味無いですよっ!」
「だから知ってるわ」
何が言いたいの?
「……モカたん、スルースキル凄い」
「優菜先輩に似たんですね……」
だから、
「あなた達は私にどうしろと?」
「……あー、今のままでいて欲しい?」
「です……」
「ですね……」
…………まあ、良いわ。
──あ、そういえば、と、
「栄次君って年上と年下、どちらがお好き?」
その週末、私は春先からの素朴な疑問を解消することにしたわ。
「え? どうしたの藪から棒に?」
「んー、ちょっと気になりまして」
親友の好みの外見ど真ん中なあなたの好みが、
「……ええと、それは元佳ちゃんと優菜先輩どっちが好み、とか?」
との発言は兄達も同席しているから。桜花院家に家の兄弟と岸元兄弟で遊びに来てるの。
「では無く恋愛対象はどういう子なのか、ですわね」
あの子にもチャンスがあるのか否か。
「……あー、恋愛かー、する予定無いしなー……」
……そもそもスタートラインが存在しない?
「……んー、きつめの美女が好みとか言ってなかったかお前?」
あらそれは好材料。
「見て楽しいのはそうだけど……だからと言って四六時中見ていたい訳じゃないし……あー、つまり年上年下で言うと……どうなんだろう?」
……スタートラインが、
「あー、まあ、お前だしな……っていうか元佳、何で急にそんなことを?」
「ああ、急に、では無いのですけれど……まあ、ちょっとした好奇心ですわね」
春に聞きたかったのを思い出して、
「ふーん? まあ、わからんでも無いな、色恋の気配の無い栄次のそう言う話題に興味があるのは」
……良かった、それほど疑問に思われなくて……じゃあええと、
「他の皆さんは?」
本当にちょっとした好奇心を満たしましょうか。
「俺は元気な年下ー」
「俺はしっかり者の年下かな?」
あら、お二人は年下派なの。……ああ、甘やかすのお好きそうですものね。
「……僕も年下、かな?」
え、小兄様も? ……ちょっといが、あ、いえ、無垢な子が好きそうだしわかるかも。
「……年上の方が良いのに」
「あはは、よね~」
とは年上幼なじみにずっと片思い中の二人……んー、
「……やっぱり殿方は若い女の子がお好き?」
「ふふ、自分好みに染め上げる。は、わからなくは無いですわねぇ」
と、にこやかに頷いて見せたのは修学旅行土産のザッハトルテを切り分けていた姉様。
「……優菜はわからんで良いと思う」
とは多分染め上げられているのにご自覚が無い大兄様。
……鈍いのよね。
【パートナーに片思いは遺伝】
夏休みはいつも退屈。
片手で足るほどの友人しか持たない身としては一緒に遊ぶ等の暇つぶしが出来ないのよ。しかも数少ない友人の家にはお邪魔出来ない。理由は、
「あんな男ばっかりの家に行くなんて絶対ダメ!」
成人男性の使用人やら内弟子やらがうじゃうじゃといるからだそう。
かと言って家族と遊ぶもダメ、仕事中毒な両親はもとより生徒会や社の掌握に勤しむ大兄様や部活に邁進中の小兄様も私に構ってばかりではいられない。
なので家で趣味や勉強をしたりするしかやることがない、時たま大学部の図書館に本やDVDを借りに行く以外出掛けない、するとどうなるかといえば、
「……ここ一週間家族以外は会話していないわ」
見事な引きこもりになってしまう。……家事が忙しいからって習い事を辞めるんじゃなかったわ。
「あー……すまない元佳」
「ごめんね」
……しまったわ、両親を落ち込ませたい訳じゃなかったのに、
「いえ、父様と母様がお忙しいのは仕方ありませんもの。ただ私の社交性の低さに色々思って」
……ええ、本当は学園でもっと友人を作ったり、社交場に顔を出したりするのが成り上がりの家の娘としての役目なのに、
「愛想笑いが出来なくてごめんなさい」
私には媚びるという能力が枯渇しているのよ。
「そう言うのは僕の担当ですから」
小兄様はお得意なのよねぇ。
「いや、そもそもこれ以上でかくする必要も無いし元樹もやらんで良いが」
「いきなり潰したら社員が困るけど……まあ、徐々になら潰しても良いしな」
は!? ちょっと当主&次期当主!?
「……どうして桐生はこう家に興味が無い人間ばかり当主にするんだ」
ですよねぇ父様。
「んー、私は創介と結婚する為に権力を求めただけだしな」
「優菜の欲しい物をなんでも買う為に手っ取り早いのが当主の座だったから」
……ああ、うん、知ってた。けど改めて聞くと……、
「……どうして桐生は恋愛でしかやる気にならない?」
お花畑な血筋っぽいわ。……私は違うけど、
「違うぞ、創介、桐生の性癖では無く桐生当主の性癖だ」
「一人以外はどうでもいいという性質が決断力に直結しているんだと思うよ」
悪びれずに言うことじゃ……、
「……ちょっとお父さん仕事辞めたくなった」
お疲れ様、父様。
「え!? じゃあ私も辞める。辞めてハネムーンを楽しむ!」
頑張って下さいよ、母様。
「責任感持てんなは!?」
「方言きた!」
「はしゃぐな!」
叱り付ける父様、幸せそうな母様……母様の趣味は父様に叱られることだったりする。
「エヘヘまあ、悪ふざけはさておき……元佳、祖父様のとこ行く?」
「ん、国内? 国外の?」
「国外の……今涼しそうなとこ、スイスだって」
スイス……かぁ。うーん、
「なんか親父が母さんの機嫌損ねたっぽくて……行けば感謝されるぞ」
「……また?」
年に一、二度はあるのよね。
「また……親父もいい加減母さんへの付き纏い辞めたら良いのに」
「……お前が言うな」
父様は何時も通り深ーいため息をつく。……お疲れ様です。
さて、私の母方の祖父母はほぼ海外にいる、登山家の元子ちゃんが若かりし頃に国内の名山は踏破したからなのですって、とはいえ現在スイスに滞在しているのは登山の為じゃなく、
「うふふ、良く来たわねぇ、元佳、友人夫妻が城をホテルにしたとかで招待されたんだけど……本当に退屈だったのよぉ」
付き合いだそう。……元子ちゃんは退屈と束縛が大っ嫌いなのにねぇ。
「雄三と遊ぶのはつまんないしぃ、元佳が来てくれて本当に嬉しいわぁ」
軽やかに滞在先のホテルを案内する元子ちゃんは母や私達兄弟に遺伝した童話の登場人物じみた容姿の持ち主、クルクル変わる表情と相まってどこか浮き世離れした女性。そしてその配偶者である祖父は、
「酷いな元子さんは……俺は元子さんと遊べると思ったからこんなところまでお供したのに」
常態は偉そうなのに元子ちゃんにだけはデレデレな嫁馬鹿。
「うふふ、じゃああなたはどっか楽しいところに行ってたらぁ? ……私の友人達を威嚇してばかりいないでぇ」
そして嫉妬深い男……元子ちゃんじゃないけどめんどくさいわよねぇ。
「ごめんなさい元子さん! おとなしくしてるので捨てないで下さい!」
すぐに謝るのに反省はしないところが特に……ね。
──ああ、来るんじゃなかったわ。
「モトカはダイアモンドが良く似合うね」
「モトカは花の方が似合うよ」
「モトカ、良かったらボートに乗らないかい? 湖上からの眺めは格別だよ?」
「モトカ、近くに我が家の別荘があるんだ、遊びに来ないか?」
スイス二日目で既に帰りたくなっている私は、現在ホテルの庭でのガーデンパーティーに出席中、参加者は私達一家と同じくオーナーが招待した友人達、つまり城持ちの仲間達、つまり欧州の名家がずらり、で、私の普段は親友の影に隠れ目立たない美貌故に、
「モトカ」
「モトカ」
とモテている……私の容姿は国外でも魅力的なのね。
当然、同年代もしくはちょっと上の女性陣の視線は痛いくらい強い、実にめんどくさいわ。
──はあー、とりあえず、
「私、取り囲まれるの嫌い」
散れ、で、
「あなた達の話退屈、何か特技でも披露して?」
芸くらい見せなさいな。
で、
「へー、普通」
「あら、微妙」
「……どこが笑うところ?」
「……だから?」
何時も通り批評したわ。だって、
「それ本当に特技なの?」
素人にしては……いえ、それでも普通ね。
「……ではモトカも特技を披露して見せて」
……は?
「いやよ、芸人じゃないもの私は」
何時も通りこの先は構われなくなったわ。
「元佳、お疲れ様ぁ」
「くくく、バッサリといったな」
夜、宛がわれたスイートのリビングでお茶を飲みながら昼のことを話すわ。祖父母が私の社交的には結構問題のある態度を咎めないのは当人達が私以上にバッサリと嫌いな人間に接していたから……人の好き嫌いの激しいのは遺伝……というよりも家風、嫁や入り婿の祖母や父もそう、で、昼のあれこれだけど、
「一応手加減はしたわよ?」
気は使ったのよ。
「あれでか?」
「あれでよ」
「……手加減無しならぁ?」
「私、面食いだから」
以上。
「……ああ、それはアウトだな」
「んー、結構美形がいたとぉ……ああ、元佳はお兄ちゃん達や桜花院様、圓城寺家を見慣れてるからぁ」
「目が肥えてるのよ」
大抵の人間がジャガ芋に見えるくらいに、
「……結婚、難しいなぁ」
「……いえ……多分するわ」
中身はともかくあれの容色はとても優れているし……私の、だもの、
「……え、えー! まあ、まあ! どこのご子息?」
「一般家庭」
の範疇らしいわ。……実は家より歴史やらは上だけど、
「……それ葵や創介には?」
「随分先のことよ? 交際もまだだし」
結婚なんて十何年後ですもの。
「え? 元佳が口説いてるのぉ?」
「口説かせてるの」
直ぐ頷いたら安っぽいでしょう?
「……そんなところは元子さんに似なくて良かったのに」
祖父は遠い目をしている。婚約まで十年以上の時間をかけた自分に重ねてしまったんでしょうねぇ。
「お黙りなさいなぁ、雄三……ふふ、ではまず私達を味方に?」
「ええ、現状でも多分平気でしょうけど味方は多い方が良いもの」
多分両親は認めてくれる。そして姉様も……多分……平気……であって欲しい。
「……元子ちゃんは姉様と仲良しだよね? ……援護して」
「んー、いいよぉ、でも元佳が認めるくらいの美少年なら優菜ちゃんも認めない?」
んー、まあ、私の美形好きは姉様の影響も大きいし、
「多分、ね、でも念には念を……姉様が頷かないイコール大兄様とミナモさんも頷かないだから」
「逆もまた……だけどねぇ」
……ええそうね。
………………良し、桃園翔馬には姉様対策を徹底させましょう。
結婚は家族に祝福されてしたいもの。




