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この学園には攻略対象者はいません。  作者:
第三章 攻略対象者な彼と攻略対象者やモブな彼女のお話。

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彼女はヒロインその2、又は、臆病なピアニスト、でした。6

 





 【秋~Gold und silbe】



「生地はパイっぽいサクサクなの、で、クリームはダブルで生とカスタードが七対三」


「生地はフンワリとしたソフトタイプ、クリームはカスタードオンリーで充填式、粉砂糖はマスト」


 夏休み明けの城生院学園。そんな今日は一時限目を使って講堂で学園長先生が挨拶した──短い──り、教頭先生が挨拶した──長くなりそうなところで学園長先生がぶった切った──り、インターハイの栄誉を称えた──恐ろしいことにほぼベスト4──り、した後は普通に授業。で、今は二時限目の授業中……のはずだったけど先生が遅れてて何と無くな雑談中。そこでどういうきっかけか理想のシュークリームを甘味同盟で語り合っているんだけど……、


「サクサク生地よりフンワリ生地の方がクリームとの一体感があるだろ?」


 と、会員ナンバー2の眼鏡の彼が言い。


「生クリームのフワフワ感とカスタードクリームのトローリ感とサクサク生地のハーモニーに勝るものは無いわ」


 と、会員ナンバー1の私が力説する。……まあ何と言うかいつも通り、


「アハハ、同盟組んでるのに二人って甘味のこだわりがことごとく違ってるよねー」


 って、感じなの。


「まあ、こしあんがつぶあんか、正しい善哉、チョココロネの食べ方……決定的なのは俺がカスタード党でひゃくちゃんが生クリーム党っていうところだけど」


 ……結構違ってるわね。……でも、


「それでも甘味はすべからく素晴らしい! ってことで団結しているんだけど、ね。……ああ、梅子うめこ先生の理想もお聞きしたいわ」


 会員ナンバー4──3は弟──の美女に思いをはせつつもう一勝負ってしようとしたところで先生が来てディスカッションは時間切れになったわ。で、次の同盟会議でそれぞれ理想に近いシュークリームを持ち寄って語り合おうかと思ってたんだけど……、


「……宗旨変えしそうかも」


 三日後、弟が圓城寺えんじょうじの姫から貰ったソフトタイプカスタードオンリーのシュークリームを食べ、どんなものでも一段落ちだわ。と、思い、次回の議題はモンブランになったの。……それにしても、


「絶世の美少女でお菓子作りがプロ級……今璃いまりちゃん達が心酔する訳ね……」


 私もお菓子作りは好きだけど……、


「姉ちゃんはとにかく量、だからね」


 とりあえず弟には口は災いのもと、を、教え込んだわ。



「ええと、百ちゃんのお父さんってまだ本社勤務、だよね?」


 体育祭を二日後に控えた自治会室。明日の前日確認を除き全ての準備を終え、ようやく心からまったりとお茶を楽しんでると、栄次えいじ君にどこか探るように尋ねられたわ。


「? ええ、出張は多いけど転勤にはなって無いわよ?」


 今朝も途中まで家族三人で自転車漕いでたし、


「いや、桃園ももぞのさん、に会わないし、聞かないから……」


 そういえば本社でバイト初めたんだったわね。


「え、桃園の父ってうちの社員なのか? でも今年来た人の中に桃園さんいなかったような……」


 本社歴は父より長い明石あかいし君が困惑したように言い同じくバイトの桜庭さくらば君もコクコクと頷くわ。そういえば彼らには父が本社勤務って言ってなかったわねぇ。……んー、言っても良いのかしら? 私はちらりと今璃ちゃんを見るわ。


「あー、このメンバーなら良いんじゃないっすか?」


 聡明な彼女は私の視線の意味を理解しゴーサインをくれたの。……じゃあ、


「説明しますからここだけの話でお願いしますね?」


 そうウインクしながらお願いすると当然皆さん頷いてくれる。ふふ、気が置けないメンバーって素敵だわ。


「まず三人の疑問に答えるとうちの父、旧姓で働いてるのよ。で、その理由がちょっと特殊な部署と交友関係ってことなんだけど……」


 んー、どこまで言って良いのかしら?


「ふふ、じゃあここからはボクが説明を……簡単に言うと百合ゆりちゃんのパパさんは特命室の人なんすよ」


 機密のラインに悩んでると、今璃ちゃんが引き取ってくれたわ。うん、彼女に任せれば安心ね。すると、無駄に回転の早い脳を持つ栄次君が、


「……特命室……あっ、つまりカミジョウヨシヒコさん!」


神定善彦かみさだぜんげん!」


 と、ボケるから思わずツッコんでしまった……ちなみにこれは父と……、


「え!? あの淳司あつし様の親友の!?」


 淳司おじ様のテンプレートなやり取り。……一日一回はしているらしいわ……、


「淳司、様?」


 磨見まみ君が首を傾げるわ。


「ん、ボクの父っす。本社の秘書室長っすね」


「あー、総帥の兄だから様付け……」


「いや、総帥は普通にさん付け」


「へ?」


 磨見君が持っている圓城寺知識から導き出した答えは即座に明石君に否定されたわ。何と言うか……、


「淳司様はとにかく淳司様って感じだからねぇ。……様付けで呼ばないのはチャレンジャーな栄次先輩とヨシヒコさんぐらいだよ」


 って感じなのよねぇ……実際お会いすれば即理解出来るのだけど、そして栄次君、社でははっちゃけてるのね。


「まあ、その疑問の答えは多分明後日わかりますよー……で、まあヨシヒコおじ様は特命室っていう総帥直属の部署の室長さんで、まあ影のボスな父の幼なじみで、総帥の宝物達の命の恩人っていうヤバい立場なんで旧姓でずっと来ているって訳っす」


 ちなみに旧姓で働き初めたきっかけは淳司おじ様がウッカリ旧姓で名刺や社員証を作っちゃったから。未だに父と桃園が(イコール)にならないらしいわ。


「……命の恩人?」


 さとり先生がどこか痛そうに尋ねるわ。優菜ゆうな先輩も表情が硬い……ああ、そうね、お二人は圓城寺家と交友があったそうだから……、


「あー、はい、あの約十年前の『事故』っす……たまたま近くに居たヨシヒコおじ様が事故に気付かなかったら……ボクらがここに居るかも怪しいっす」


 そんな大事故のには死者は出なかったそう、……けれど、


「……そっか~」


 奥様はその時の傷がもとで半年後に……、


「ヒャヒャ、湿っぽいっすよー、センセ。まあ、そんな訳で俺っちの髪は善彦様リスペクトカラーっす!」


 若干暗くなった雰囲気を変えようと四倉よつくら先輩が軽口を叩き自らの髪をつまみドヤるわ。今日はサイドを編み込んだハーフアップにしているそのトレードマークの赤髪は父の髪色にきわめて近いの。


「善彦様は俺の目標、ヒーローです」


 そしていつも通り空気をあえて? 読まず六崎むざき君が続ける……彼は父みたいな男になりたいと常々言っているそう。で、結論。


「まあ、そんな訳でうちの父は圓城寺にコネ入社したの」


 さらばブラックな職場! って感じでね。


「いやいやコネじゃないっすよー、父のスカウトっす。ヨシヒコおじ様の『機械仕掛けの神』能力を買っての」


 父はおじ様から大団円職人と呼ばれているの。……まあ、


「……うちの父の因果率の歪みは特殊だものねぇ」


 疑問符が乱舞する自治会室だけど圓城寺に勤める六人は深ーく頷いたわ。まあ今璃ちゃんの言葉じゃないけど明後日、皆さんもわかるでしょうねぇ。


 体育祭でも父はいろんなフラグを立てるはずだから。



 予想通り父が女子高生を魅了し母がヤキモチを焼き。って事件もあった体育祭を終え学園内は次のビックイベント学園祭に向けて……、


「あの! 栄次様! 後夜祭のワルツ、是非ともわたくしをパートナーに!」


「「「そしてわたくし共に一曲の情けを!」」」


 恋の季節な告白ラッシュ。ちなみに前述の申し込みは告白では無くファンクラブからの要請、だけど……、


「嫌だよ。好きじゃない子とピッタリ抱き合うなんて吐き気がする」


 人格破綻眼鏡は冷たい笑みでお断り。酷っ! って思って叱り飛ばそうとしたけど……何なの? なんでファン達みんな腰砕けなの?


「……相変わらずエージファンは被虐趣味揃いだなぁ」


 授業間に行われているどうやらテンプレートらしきヒトコマに、愛しの婚約者がいない為気が抜けている桐生きりゅう君がノホホンと感想を漏らす。ちなみに彼はファンクラブからの要請に、


「俺は嫉妬深いから婚約者を一人、ジャッカルの群れの中に置いとけ無いんだ。すまない」


 と、綺麗に断り株を上げていたわ。


「……ねぇ、それよりヒロインにパートナーを断られた俺をなぐさめてー」


 とはファンクラブからの要請に、


「好きな子に誤解されたら立ち直れ無いから」


 と、断った光三朗こうざぶろう君。誠実さアピールも実らずフラれたことをなぐさめろ。と、甘えたことを言うわ。


「「「めんどくさっ」」」


 当然私と桐生君と明石君はバッサリと切り捨てるわ。……っていうか、


「フラれたの何回目?」


 ちょくちょくフラれたー! って、言ってるわよねぇ。


「んー、今回で……四十四回!」


 ……ぞろ目ね。……ホントもう、


「諦めたら?」


「本気の恋を簡単に諦められる訳無いじゃん!」


 ……じゃあ、


「引いて見れば?」


 傍から見てると正直押せ押せしすぎが敗因じゃないかと思うんだけど、


「……自然とフェードアウトされちゃうと思います」


 ……それはまた、


「つーかツキトー、脈あるのかぁ」


 そもそも、と、桐生君が黙々と予習中の六崎君に妹の反応は? と、尋ねるわ。……確かに迷惑してるようなら友人として止めないと……主に彼の安全の為に、ね。


「……脈、はあると、思う……ご主人様いわく妹はツンデレ? らしいから」


 ……ツンデレ、って、


「そこが可愛いんだー」


 とはメロメロな笑顔の光三朗君、


「女子のツンデレは可愛いよな」


 と、頷く桐生君、


「……私わかんない」


 とは私。弟からツンデレの素晴らしさを二時間に渡り力説されても理解出来なかったのよねぇ。


「俺もわからないね。……全身で好きだ、って表現してくれた方が可愛いと思う」


 戻って来た栄次君もそうみたい、だけど……、


「……全身で好き好きアピールしてくれてたファンを手酷くフッといて言う?」


「……彼女達は俺にそういうのを求めているんだよ」


 ため息をつきながら彼は自分には嗜虐趣味は無い! と、言い切る。……どうやらさっきのはファンサービスだったらしいわ。……それはそれは何と言うか、


「お疲れ様」


 ちなみに私のファンクラブは演奏会を応援してくれる以外は接触が無いので安心です。



「なんか大変そうねぇ」


「ですね」


 十月半ばの放課後。私はほぼ幽霊だけど所属している室内楽部の部室でクラシックギター奏者のナナと顔を見合わせるわ。今日は学園祭最終日の舞台発表会の演奏曲についての話し合いがあるの。


「今年のテーマは舞曲。でしたよねー」


 ちなみに毎年テーマを決めてそれにそった選曲や演劇をするんですって。


「私はワルツを考えてるんだけど……」


「私はやっぱりピアソラかなー」


 的なことを話していると、部長さんがやって来たわ。


「ごめんね。待たせちゃって、じゃあここに名前と希望曲、三曲ぐらい書いてもらえる? ちょっと全員で話しあったら収拾つかなくなりそうだから」


 どうやら学内オケ内でさえ演奏曲についての議論が白熱しているらしいの。了解した私とナナは貰った紙に希望を書き。賑やかな部室を後にしたわ。



「へー、ユリ先輩はレハールになったんだねー」


「ナナは言ってた通りピアソラかー」


 その二日後のお昼、午前中に同じ授業をとっているオケメンの部員に手渡された曲目リストを見ながら会話する。今日はいつもの女子芸術特待生達とのランチなの。


「そういえばちーちゃんは舞台発表会で何踊るの?」


 ちょうどカフェテラスで鮭のフェットチーネとミモザサラダを買って来たちーちゃんに尋ねるわ。


「んー、アイリッシュダンスをアレンジした感じを考えてるけど……ねぇ、よかったら二人伴奏してくれる?」


 アイリッシュ音楽かぁ、うん。


「楽しそうねぇ、こちらこそよろしく」


「私もオッケー」


 私とナナは二つ返事で了承するわ。一曲だけじゃつまらないって思ってたもの。


「何々、何の話?」


 するとそこにかきたまうどんと炊き込みご飯セットを持ったクミ先輩がやって来たわ。


「舞台発表会の話。ユリとナナに伴奏をお願いしたの」


「えー、舞台発表会は今から準備なんですか?」


 とは、作品を見に行ってて遅れた子鞠こまりちゃん。彼女は春から準備しているらしいわ。


「んー、演劇部はもうちょっと前からやってるみたいだけど内楽部はね」


 何てたって、


「定演会が毎月あるから」


 なのよねぇ。学園の持つどこのコンサートホール? って感じの講堂での毎月の演奏会に、私達特待生は二ヶ月に一回は出るのがノルマなの。ちなみに新人な私は六月を除いた全部に出演、ナナも大体そんな感じ。だから、


「毎月新しい曲に挑戦しているのよ」


 これまでほとんど人前で演奏しなかった私にとって、とても張り合いのある日常だわ。



 ……うわー、


「女子力にあふれたお弁当よねぇ……」


 メンバーが揃ったところで始まったランチ、そこで私達同席者は子鞠ちゃんのお弁当を見て思わず感嘆のため息を漏らすわ。


 そんな彼女のお弁当はキノコのピラフに秋刀魚の香草パン粉焼き、茄子のグラタンにカボチャのポタージュ、特製ドレッシングのサラダにデザートはサツマイモのオレンジジュース煮、何と言うか、


「旬、かつオシャレで栄養バランスバッチリねぇ」


 美少女な子鞠ちゃんにはとても似合ってる。けれど、


「うふふ、柊耶しゅうやちゃんはとっても料理上手なんですよ」


 作ったのは学内トップクラスにがたいが良い春日井かすがい柊耶先輩……、


「……あの硬派な風紀委員様がエプロン着けて細々お料理」


 エプロン……着けてるのよね、きっと。


「……あの無表情でパプリカを星型に」


 サラダには色とりどりの型抜きパプリカが飾られているわ。


「……つまりそれと同じものを現在食べて……」


 いるでしょうねぇ……うん、


「……深く考えるのは止しましょう」


 ニコニコとお弁当を食べている子鞠ちゃんを見ながら私達は頷きあったわ。



 その日の放課後、友人の舞踏の伴奏もすることになったのであんまり自治会を手伝え無い。と、申し訳無いなぁ、と、思いながら安曇あずみ会長に伝えると、


「あら、そうなの、寂しいけど百合恵ゆりえちゃんの演奏をいっぱい聞けるのは良いわね」


 と、二つ返事で了承してくれたわ。……ホント、


「……この学園に来て良かったです」


 しみじみ思うわ。主に人間関係で、


「あら、百合恵さんがいい子だからですよ。この学園は困った子には居心地が悪い学校ですから」


 とは、色々と頼りになる優菜先輩。まあ確かに体育祭前のあれとか……でも、


「本当にそう思ってるんですよ私。……地元では友人が出来なかったんで」


 家族とその友人や同僚さん達が居たから何とか平気だったけど、


「ああ、百合恵ちゃんは才能溢れる美少女だからやっかみが酷かったのね」


「そうですね。きっと好きな人がみんな夢中だから妬んだんでしょうね」


「う、まあ、そういったことも無きにしも非ず、です」


 本当は主にがそれ、


「まあ、私達は婚約者とラブラブだから」


「ふふ、そうですね。浮気は疑いませんね」


 お二人は婚約者からの溺愛を受けてるものねぇ。


 ……………………ん?


「……今気付いたのですが……私の友人達、全員が彼から溺愛されてますね」


 生徒会関係の四人しかり、芸術特待生仲間しかり、クラスメートしかり……つまり、


「……私、幸せな彼氏持ち以外と友情を築け無い?」


 私の結論を聞いた先輩方はニッコリと微笑んだまま顔を背けたわ。


 ……別に良いけど。




 

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