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この学園には攻略対象者はいません。  作者:
第三章 攻略対象者な彼と攻略対象者やモブな彼女のお話。

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53/121

彼らは物静かな会計と悪役執行部員、又は、ボクっ娘執行部員と熱血漢な当て馬、でした。~月史編~

前半、かなりシリアスです。



 


 【赤の記憶】



 慣れ親しんだ車の中、窓の外からは怒号と悲鳴が聞こえる。


「だいじょうぶ、だいじょうぶだから」


 小さな女の子が覆いかぶさるようにベビーシートの中の大好きな従姉妹を抱きしめ、自らに言い聞かせるように声をかけ続ける。


 俺と一つ年長の少年は彼女達を挟み込むように立ち窓の外を警戒しながら見ていた。


 窓の外には赤い暴力があった。



 地獄のような光景は静止し、断続的に聞こえていた声も消え、そして別種の声が聞こえて来た。


 ドアが開いたのはそれから少し経ってから、身構える俺の眼前に広がったのは──赤に汚れた母達護衛と守られていたはずの女性。そんな彼女達を治療しようとしている人々と、


 別の護衛達に敵と共に、誰よりも赤に染まった『あの男』が拘束されている光景だった。


「……なん、で……」


 俺は状況が理解できなかった。そんな混乱する俺の視界を遮るように男性が立ち、


「見ちゃ駄目だ! ……見なくて良い、もう大丈夫だから、大丈夫だから……無事でいてくれて良かった……ああ本当に…………良くやったな君達、頑張ってお姫様達を守ったな」


 そう声をかけてくれた。


 泣きそうな顔をくしゃりと歪めて笑うその人は──どこか安心するような色合いの赤い髪をしていた。



 【赤の夢】



 ──頻繁に見る夢がある。


 あの事件の夢。窓の外には赤の光景、だけどドアを開くのはあの人では無く、


 ──動かなくなる少年、赤に染まる女の子、奪われる『主』。


 ただの悪夢であることはわかっている。けれど毎回思ってしまう。


 ──本当はこちらが『現実』で、俺は幸せな夢を見ているだけじゃ無いのか? と、


 何時もそう思った瞬間に目が覚め、


 安堵するのだ。見慣れた自室の光景に、肌に馴染むシーツの感触に、そして、


 腕の中の少女の体温と匂いに。


 安堵の余り強く抱きしめ過ぎ、起こしてしまった彼女に叱られるのも含めて思う。


 ──この世界が本当は夢であっても何の問題も無い。と、


 反省の色の無い俺に更なる説教を発しようとしている唇に自らのそれを一瞬重ね、俺は言う。


「おはよう、いっちゃん」


 と、呆れと諦めを滲ませた声で彼女も言う、


「おはよう、ひとしちゃん」


 と。



 【ご主人様と偽悪者】



 俺が高等部に上がった頃、ご主人様が恋をした。


 当人はまだ堕ちて無い! と、言い張っているがその行動は完全に恋する乙女だ。それもやや偏執的な方の。


「……だから紗々蘭(ささら)、隠れて見るのは、もう仕方なく認めてあげるからっ! だからもう執拗に情報収集するの止めて! 海外支社まで使って…………本当もう会っちゃいなよ……」


 今璃いまりが悲鳴のような声で主を諌める。だが、


「? 圓城寺えんじょうじの婿だよ? 万全を期し、万難を排し、確証を持って会うべきだよな?」


 主は首を傾げ、必要だろう? と、悪びれ無い、


「正論!? ……いや! 君のそれは普通にストーカーだから!」


「? 付き纏ってはいないが?」


「……むしろそっちの方がまだマシだよ……っていうか本当会おう?」


 これは何度目の要請だろうか?


「……やだ」


 そしてこれは何度目の拒否だったか。



 今日は梅雨冷えの土曜日。この時期は常以上に仕事に励む大黒柱が出張中の圓城寺親子の家で、一人にすると食事をサボる悪癖のある主と彼女が作ったキーマカレーを食べた俺と今璃が食後のデザートのこれも主が作って冷凍庫に保存してあったアイスボックスクッキーが焼き上がるのを待っていると、彼女の端末に海外支社からのメールが入り、彼女の偏執的な行動が発覚した。


 そして、最近は良くある姉によるお説教が行われ、そして前述の会話に推移した。そして、会え、会わない、の言い争いに発展しかけている。


 ……このままでは平行線だな、俺も加わろう。


「………………紗々蘭、あいつは……モテる」


 全員万遍なく素気なく容赦なくそでにしているが、


「………………し、知ってる」


「……ならば良い」


 リスクを理解してその上で会わないという選択をしたならば、


「…………………………あ、秋に、二学期になったら」


 約二ヶ月後か、


「……調査は?」


 正直これ以上は、ばれた場合悪印象だと思うが?


「……止める」


「そうか」


 ならしばらくは見守るか。そう判断し、隣を見ると、今璃が苦虫を噛んでいるような表情で焼きたてのクッキーを噛み砕いていた。俺には何が不快なのかはわからないが機嫌を直して欲しいと頭を撫でると──ペシンと、叩き落とされた。


 ……何故だ?



「結婚? しない」


 栄次えいじはきっぱりと言った。


「将来は家族のお荷物に」


 百合恵ゆりえ様が嘲るように続ける。


「金は稼げる」


 栄次は冷えた笑みで答える。


「ふ、小舅と同居してくれる優しいお嫁さんが岸元家に来たら良いわね」


 百合恵様が君は一人で生きれないよね? と、続ける。


「……金は稼げる」


 栄次は生活費は大量に入れる、と、続ける。


「……何故に、こんな殺伐とした会話になるのだ」


 元治もとはるが疲れたようにぼやく。


「ねー、ジューンブライドについて話してたのに」


 光三朗こうざぶろうがオーバーに肩を竦める。


 ……俺は思考する。何故に、を。


 ここは高等部一階、現在午前の授業を終え昼食を摂ろうと食堂に向かっている俺達高一生徒会。もうすぐ六月も終わるな、という会話からジューンブライドの話になり、結婚についての会話に変わり、そして、


「……理想の結婚相手の話に推移したから」


 元治は何時も通りの婚約者馬鹿を発揮、光三朗は可愛らしくて自分を持っている女性、百合恵様はピアノに理解のある男、と、続け、栄次に順番が回り、そして百合恵様との言い合いに発展した。……多分雨続きで機嫌が悪くなりやすいのだろう、皆。


「……はー、だって俺、自分の遺伝子を残すことに意義を覚え無いし」


 兄弟いるから、と、栄次は続ける。


「……結婚はそういう意味だけでするものじゃないでしょ……」


 百合恵様は頭を押さえる。


「んー、例えば?」


「……一緒にいたい、とか」


「思ったこと無いな」


「…………寂しく無いか」


 今まで黙って聞いていた明石あかいしが思わず、といった感じで問い掛ける。


「くくっ、家族とお前らがいるし」


「……一番じゃ無くてもか?」


「良いよ、結構幸せだから。そもそも執着されると吐き気がするし」


 …………されているのだが強烈に、


「…………ふ」


「ん? どうした六崎むざき


「ん、秋のことを考えて」


 陥落までにどれくらいかかるのかはわからないが、雁字搦めに愛され、それでも幸せそうに笑うだろうお前を想像した。


「………………お前は何時も通りマイペース過ぎて理解し難いな」


 栄次の失礼な発言に他の皆も頷く。


 …………何故だ?



 【家族】



 七月の終わり、妹が出来た。


 もともと従姉妹で年に何度かは会っていたし仲は良かった。なのでさして抵抗など感じず受け入れた。だが、『鳥籠』育ちの俺と、少し家庭は変わっているが公立の小中学校に通っていたゆずりとは常識と価値観にかなりの差異があった。



「……ええと、なんで今璃先輩が史君の部屋で寝てるんですか?」


 朝の鍛練をしようと着替え、自室から出た俺は同じことを考えたらしいジャージ姿の楪と会い、まだ今璃が寝てるから静かに、と、伝えたところ、引き攣った顔で聞かれた。


「……ん、なんで?」


 問題が?


「ええと、中学生と高校生が一緒に寝てるのは普通に問題です」


 ………………あ、確かに、だけど、


「……十年近く一緒だから」


 たまに今璃が紗々蘭と寝る時以外ずっと、


「……そろそろやめようとか、やめなよ、とかの話は出ないんですか?」


 今璃は嫌がらないし、俺は当然。……やめなよ、か……ええと、


「あ、お父さんにそれらしいことを言われた気が……」


 俺が父と呼ぶ唯一人、今璃の父の淳司あつしお父さんから今璃の中等部進学時に、そろそろ一人で眠れるようになりましたか? と、問われたのが今考えるとそういう意味だったのかも知れない。


「……ああ、淳司様からは、ちゃんと…………ええと、あの、今璃先輩もお年頃ですし、……育ったら……大丈夫ですか?」


 俺がお父さんには止められていたことを知った楪は圓城寺ここがそこまで常識から逸脱していなかったことに安堵の笑みを浮かべ、そして真剣な表情になり尋ねた──襲いませんか? と、


「……………………あ、大丈夫では無い」


 現在の今璃の体型は一気に伸びた身長に肉付きがついていかず余り女性的なものでは無いから大丈夫だが…………一玻()さんや瑠璃江()さんの胸部を思い出すと…………きっと近日中に大丈夫では無くなる。


「……早急に話し合いを持たれることを提案します」


「……うん、ありがとう楪」


 俺達のことを真剣に慮る妹に俺は心からの感謝を伝えた。



「で、一緒に寝るのをどうすべき?」


 今璃と話し合ってもきっと彼女は俺を気遣い現状維持ということになるので近しい家族と話し合うことにし、多分近日中に今璃を襲うと思う、と、伝えた。そんな俺の言葉への家族の反応は、


「……やめれば?」


 と、緑郎ろくろう


「……やめなよ」


 と、兄さん。


「……やめてよ」


 と、一玻かずはさん。


「……やめなさい」


 と、母さん。


「……私はどう反応すれば良いのでしょうか……」


 と、お父さん。


「……殴れば?」


 と、ご当主。


 ……当然全員が続けても良いと言わ無い。……わかってはいるのだが……、


「……いっちゃんが隣にいないと寝付きが悪いのですが……」


 これまでもずっとそうだった。彼女が隣にいないと寝付け無いし眠れても直ぐに悪夢に起こされる。…………去年の夏に一週間続いた時は体調を崩した。だから皆強制はしないのだろう。


「…………ふう、とりあえず現状維持で。……何か、あったと判断したら、どうあっても引き離す。……対策は考えておきます」


 これまで黙っていた主が俺を見据え決定を下す。共に『七席』である俺達に命令を下せる唯一人の言葉に他の家族も引き下がり猶予期間が与えられることになった。


「……はい、ありがとうございます。ご主人様」


 正直彼女に叱られる未来しか見えないけど。



 【お姫様を辞めた彼女と騎士にはなれない俺】



 二つ名についての会話をした休憩時間を終え、再び体育祭準備を始めた俺達生徒会と風紀委員達。聞こえる音は紙とペンとキーボードの音だけの自治会室に電子音が鳴り響いたのは四時半、その出所は俺の大切な少女だった。


「う、うわっ、もうこんな時間!? ……あー、やー、すみません先輩方! ボクちょっと本業で……ええと、先上がっても良いですか?」


 ……ああ今日は紗々蘭の美容の(を磨き上げる)日か。


「……あら、そうなの? ふふ、良いわよ、お姫様のご用なのでしょ? ああ、でも一人で平気? もう暮れて来たけれど」


 可愛らしい女子にはとても親切な会長は当然二つ返事で頷いた。そして心配までする。


「ありがとうございます。ふふ、お気遣いどうも、でも大丈夫です、家まで直通なんで…………では失礼します!」


 今璃はリュックサックに荷物を詰めつつ心配無用と笑い、敬礼し、大袈裟に頭を下げて退出する。


「はい、お疲れ様…………今璃さんも大変ねぇ、従者のお仕事と執行部員のお仕事の両立なんて 」


 ニッコリと笑い見送った会長は頬に手を当て感心したようにその上学業も、と呟く。


「……会長、それ俺っちや史と楡晶にれあには言ったことねーっすよね?」


「え? 男の子は体力が違うじゃないの」


 緑郎の指摘に当然でしょ? と、応じる会長、……確かに、


「……はい、そうっすね……」


 緑郎も納得する。


「ふふ、ああ、けれど確かにもう遅いし……皆区切りが良いところで帰って良いわよ?」


 会長は帰りたければ帰って良い、と、言ってくれる。少し前にトラブルがあったものの有能な人材が多いのでかなり余裕があるからだ。


「……あー、はい、ありがとうございます……もうちょい俺っちはやります」


「……はい、俺も」


 夕食まで暇な俺と緑郎は残ることにした。厨房で修行も兼ねた仕事をしている楡晶は無言で手元の仕事を片付けている。


「んー、じゃあ俺達は帰りますかね……ノルマの追加が無いならば」


 一番初めに辞去を申し出たのは栄次。こいつは仕事が早く付き合いは悪い。……ご主人様と家族以外には、そんな例外の一人の光三朗も要領良く終えていた。


「…………本当にあなた達は有能ねぇ……ええ、はい、追加は今のところ無いわ……ふふ、帰って良いわよ」


 ビジネスライクは嫌いでは無い会長は笑顔で頷く。……ああそうだ、


「あ、はい、ありがとうございます、じゃあお先に……」


「……その前に出来れば心に置いといてほしいことが」


 先程の栄次の心配が無用であったと伝えておこう。


「……ん? 何かしら?」


 場を代表し、会長が促す。……皆さん注目してくれているな。ちょうど良い。


「……『予備姫』と今璃を呼ばないでほしいです」


 出来れば自治会室ここは彼女の安らげる場所であってほしいので。


「……ん、ええぇ、構いませんけれどぉ……お嫌いなのぉ、そのあだ名?」


 ……ええ、大嫌いだそうです。その上、


「……主人の『もし』を思わせる呼び名ですので」


「あー、今璃は姫さんに『もし』があることを期待している連中に昔っから擦り寄られてるんで…………あいつは姫さんに『もし』があったら壊れかねねぇ奴なのに」


 今璃は紗々蘭に『もし』があったら殉死しかね無いほど彼女を愛している。そして紗々蘭は『もし』が起きやすい存在、今璃はその名で呼ばれる度に心を軋ませている。だから、


「……鬱屈が貯まっているので……出来れば刺激しないであげて下さい」


 そして俺は栄次を見据える。──今璃と紗々蘭の関係は昨日今日知り合ったお前が気を回すことでは無い。と、伝える為に、


「……ああわかった……」


 神妙に頷く栄次。……注意と説教は呆れ顔の光三朗に任せれば大丈夫だな。



「……で、今璃ちゃんに謝った方が良いか?」


 あの後片割れから絞られたらしい栄次からの電話があったのは夕食後直ぐ、俺が自室での自習を始めた頃だった。


「……いや、あれは今璃の言葉が過ぎたせいもある。……たまには今璃も敵わない相手に打たれるべきだ」


 大人達すら言い負かす今璃にとっては栄次は貴重な存在になるだろう。


「そう? 了解…………んー、史って同僚に対しては厳しいよな」


「……そうか?」


 取り立てて気をつけている訳では無いが、


「…………ああ、紗々蘭さんが甘いからバランスか」


 確かに紗々蘭は懐に入れた存在にはとことん甘いから…………、


「…………そうか」


 なるほど、無意識だった。


「くくっ、自覚が無いところが史だな」


「そうか」


 楽しそうな声音だが馬鹿にはされていない。


「くくっ……あー、そういえば今璃ちゃんの紗々蘭さんの用って?」


 ……ああ、紗々蘭のことなら何でも知りたい、と。


「……今日は紗々蘭を磨き上げる(で遊ぶ)日なんだ」


「……ん、何その不穏な副音声付きの日。磨き上げる?」


 俺が言外に込めたものを感じ取ったのか栄次が更に問う。


「……毎週水曜日は紗々蘭を屋敷の女性陣で揉みくちゃにするんだ」


 面倒なのでそのままを教えた。


「取り繕うのを諦めた!? ……ええと、なるほど? ちなみに今璃ちゃんの担当は?」


「……爪、だな、整え、磨き、保湿するらしい」


 本当は色や飾りも付けたいそうだが、料理とヴァイオリンの為に紗々蘭の爪は真っさらのままだ。


「くくっ、紗々蘭さんは大変だろうけど俺は嬉し…………あ、もしかして面会を木曜日に設定するのが多いのは…………あー、紗々蘭さん本当可愛い……大好き」


 ……栄次は予想以上に早く紗々蘭に陥落し現在は常の冷徹ぶりが嘘のように紗々蘭に対しては甘く熱い。……だが、


「………………お前、紗々蘭の前では押さえてるよな」


 当人に対しては二割も見せていない、……何故?


「ん? ああ、怖がらせたくは無いから」


 また言外のことを読み取って答える栄次、……怖がる?


「……喜ぶぞ?」


 それはもう。


「……喜ばれたら諸々ヤバいから良い」


 ……ああ、なるほど、理性と本能の一騎討ちに突入するから…………同属。



「そういえば月史つきひと君と柊耶しゅうや、どちらが強いの?」


 翌日、放課後は長方四人が家の用事があると言うので今日は昼休みに準備を行うことにした自治会室、ノルマを終え、体育祭での勝敗予想を言い合いながらの昼食中に優菜ゆうな様がポロリと聞かれた。彼女以外の面々も興味津々だ。…………どちらが、か、


「……状況と条件によるな」


 柊耶先輩の答えに俺も頷く。そもそも、


「……護衛は戦う能力は重要ではありませんので……」


 どちらかというと判断力が重要。


「? 強く無くて良いの?」


「ああ、守れれば倒せ無くとも良いからな」


 警備会社の息子の柊耶先輩も頷く。とは言え、


「んー、でも史は倒すのが仕事だろ?」


 茶化すように緑郎が言う通り俺は近くで守ることが仕事では無い。だが、


「……倒すのと無力化するのは微妙に違う」


 俺の仕事は『倒す』では無く『無力化』だ。


「……無力化?」


「ええと、六崎は三つの担当があって……近距離で守る、中距離で近づいて来た敵を制圧、遠距離であらかじめ危険を無力化、の三チームで史ちゃんの担当は遠距離なんです」


 何時も通り今璃が補足してくれる。そう、俺は遠距離担当、なので紗々蘭の側には居ない。そんな護衛システムは、


「………………遠距離は普通の護衛には無いシステムだな」


「家は過激なので」


 武門である圓城寺独特のものだ。


「んー、で? どっちが強い?」


 さとり先生がキラキラとした笑顔で再度問う。……そう言われても……、


「……武装と場所と勝利条件によるが…………」


 又しても同意し頷く。………………多分、


「……柊耶先輩が棒を持っていたら負ける?」


 どうしても疑問形になる。


「……徒手ではさすがに分が悪い?」


 柊耶先輩も疑問形で言う。……後は……、


「……ああ、けれど催涙スプレー(目潰し)とか防犯ブザー(耳潰し)があれば……」


 基本武装だしいけるか?


「いや、待て!? 何その卑怯感漂う武装!?」


 ん? 卑怯感? 何を言っている明石、


「……無力化には一番便利だ」


 複数に使えるし。


「……一騎討ちの真剣勝負を想定していたのですけれど……」


 優菜様が苦笑する。


「……すみません。俺達(六崎)は集団で護衛と狩りをしますので……」


 犬、ですから家は、……騎士なんて向いていないのだ。





 

その後の会話。妹持ちとそれ以外の温度差。



「んー、一騎討ちならユズっちのが強いか?」


「……負け無い、と、言う意味では強いですね」


「……ああ、あの子か……確かに……隙が無いな」


「……ユズっちって誰?」


「妹です」


「……妹!? 初耳なんだけど!?」


「そうですね、七月に出来たばかりなので」


「出来た!?」


「はい、母の養女になったので」


「……ええと、何で?」


「女性護衛が足り無かったので」


「……ええと、何で妹に?」


「……姓を変える必要があったので」


「……美少女?」


「かなりの」


「「「「「何それ!? うらやましい!!」」」」」


「……はい、幸せです」


「え、あれラブの香り~?」


「……ライクですね」


「ラブは光君だからね」


「………………は?」


「えへへ、ちょっと前に言ってた『ヒロイン』さんなんだ~」


「…………どこで会ったの?」


「んっと、朝練中に学内で、で、次は街から家への帰り道、で、三度目は又しても朝練中に学内で……ふふ、本当に運命の相手とは三度会えるもんだったよー」


「……妹は認めて無いが」


「ふふふ、これからも頑張る!」


「………………もしかして二度目は九月の初め頃の栄次君が圓城寺に入ったって言った日?」


「え、あ、はい、……何で?」


「あー、あの日か……それ家からの帰りだな」


「ん? ハルちゃん家?」


「ああ、元佳がちょっとした怪我をしたの覚えているか? その時運んでくれたのが楪さんだったんだ」


「……ええと、本当に美少女?」


「「「「かなりの」」」」


「「「「「……やっぱりうらやましい」」」」」



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