彼らは実直な風紀委員長と和風眼鏡っ子、でした。2
【告げられた思いと事実】
満月の晩、わたしと柊耶ちゃんは恋人同士になりました。
圓城寺邸から帰った日、紗々蘭ちゃんの保証通り柊耶ちゃんとわたしの関係は幼い頃に比べると距離はあるものの毎日のように会話を交わせるくらいに回復しました。
そんな幸せな毎日を家で宿題や展覧会用の作品制作などをしながら過ごしていると恩人である紗々蘭ちゃんから電話をもらいました、その内容は、
「父が出張中で……学園の友人達とはなかなか会えませんし…………淋しいです……お泊りに来てくれませんか?」
とのこと、もちろんわたしは、
「! うん! わかった! ふふ、じゃあ両親の許可を貰って来るからちょっと保留するね?」
と、二つ返事で頷き、すぐさま両親の許可を取り、二時間後にはスーツケースを積んだ車中の人となった訳です。
そして訪れた圓城寺邸で、わたしはプールでプカプカと浮いたり、馬にパカラパカラと乗ったり、所蔵する美術品を鑑賞したり、香を聞いたり、宿題を片付けたり、一つ下の今璃ちゃんも交えて女子会をしたり、と、作品制作を休み美しい物や人々を栄養としたのです。
そうして一週間紗々蘭ちゃんと朝から晩までラヴラヴと過ごしたわたしは、展覧会用の作品の着想を得て、ワクワクウズウズとしながら帰宅し、そこで立ち会い人を頼まれました。
はい、立ち会い人です、父と柊耶ちゃんとの真剣勝負、のです。
……なんでわたしなのでしょうか? 師範代のお兄さん達や春日井のおじ様といった武を修める方々ではなく、趣味の一つとしてでしか剣術も抜刀術も学んでいないわたし……二人にとても真剣に頼まれたので思わず頷きましたが……本当に良いのかはなはだ疑問です。
そしてわたしの疑問を置いてきぼりにしたまま始まった二人の木刀を使っての立ち合い、道場にはわたしを入れ三人、冷気さえ感じるほどの緊迫した空間、打ち合ったのは一合、勝利したのは柊耶ちゃんでした。
わたしは驚きました、柊耶ちゃんは確かに強い、実直に、ひたすらに修練を積み、その実力は道場内でも五指に入るほどです、けれど、五指です、彼に並ぶ者は何人も居ます、そして全盛期は過ぎたものの不敗であった父、勝利するのは父であろうとわたしは確信していました。
けれど柊耶ちゃんは勝利し、そして父に苦笑されながら認めるように肩を叩かれ父に最敬礼をしました。
わたしは何がこの結果を齎したのかと考えていました、柊耶ちゃんに二言三言声をかけた父が道場を出て行き、二人っきりになった道場で柊耶ちゃんに、
「子鞠、話したいことがある、近いうちに二人で出掛けられ無いか?」
と、声をかけられるまでずっと、そしてわたしは二日後の満月の晩に、砂浜に写生に行くのに付き合ってもらう約束をしました。
そして迎えた満月の日、お昼寝をし万全の体調でわたしと柊耶ちゃんは砂浜に向かいます。
日没間近についたそこは遊泳禁止であることもあってほとんど人がおらず、わたし達はゴザを引き写生道具や飲み物などを広げゆったりと過ごすことができました。
そこでわたしは沈む太陽と輝く月、人の営みを感じる夜景などを夢中でスケッチし続けました、月が天頂を下り日付が変わる頃までずっと。漸く忘我状態がとけたわたしがスケッチブックと鉛筆を置き伸びをすると温かな紅茶が入ったステンレスのマグが差し出されました、
「お疲れ、子鞠、納得のいくものが描けたか?」
優しく微笑む柊耶ちゃんから幸せな気持ちでマグを受け取り口を付けます……美味しい……気付いていなかったけれど口内も喉も渇ききっていました、それだけの時間ずっと柊耶ちゃんを放置していた訳で……、
「……うん、ありがとう、ごめんね柊耶ちゃん、話したいことがあったんだよね? わたしったら夢中になりすぎて……」
わたしはずっと見守ってくれていたことに感謝し謝ります、彼を縛りつけていたことに申し訳なさと歓喜を感じながら、
「……ああ、気にするな……話しは、まあ、少し後でも良い……疲れたし腹も減っただろう、女郎花と尾花が近くで待機している、一緒に24時間営業の店で休憩しよう」
柊耶ちゃんは優しくわたしの頭を撫でながら、屋内での休憩を提案します。ちなみに女郎花さんと尾花さんは春日井が経営する警備会社の社員さんで家業を手伝う柊耶ちゃんのチームの方々です。心配性な柊耶ちゃんはわたしが外出する際には彼女達を付けてくれますので親しく知っています……正直一般人なわたしに護衛がいるのか? とは、思いますが、まあ、ともかく、
「うん、そうする」
わたしは柊耶ちゃんの提案を受け入れます……生理的な欲求を感じましたので。
護衛の二人と共にファミレスで軽食を摂り、しばし休憩をとったわたし達は再び海岸に戻りました。わたしが夜明けも描きたいとねだったからです、そして夜が明けるまでの開いた時間に柊耶ちゃんの話を聞くことになりました、けれど、
「あの、柊耶ちゃん? 大丈夫?」
柊耶ちゃんは腕を組み眉間にしわを寄せ考え込んでいます、
「……ああ、大丈夫だ……俺は言葉を使うのが上手くないから……どう伝えるのが良いか悩んでな」
確かに、柊耶ちゃんは無口だし、余り表情が動かないのでよく誤解されます、けれど、
「んー、平気だよ? わたし柊耶ちゃんの言葉を誤解すること多分無いし」
わたしは柊耶ちゃんと周囲の方達の仲立ちができるぐらい彼の感情が理解できます、いえ、できました、……最近は少しわからない時もありますが……、
「……そうだな、子鞠は俺の通訳になれるぐらいだもんな」
……柊耶ちゃんが納得してくれて良かったです。
わたしと柊耶ちゃんはゴザの上に正座をし向かい合っています。月明かりに照らされた柊耶ちゃんは彫りが深い顔に芸術的な陰影が出来てとてもかっこよく……わたしはドキドキして思わず、
「……ええと、それで話したいことって?」
つい急かすようなことを口にしてしまいます。そんな挙動不審なわたしを真剣に見つめ柊耶ちゃんは口を開きます、
「……ああ、話したいこと、と言うか、伝えたいことだな」
そっとわたしの頬に大きくてごつごつとした温かな手を当て柊耶ちゃんは続けます、
「子鞠、愛している、お前が好きだ、お前と交際したい、お前を俺の恋人にしたい」
と、
「…………え、あ、愛、好き、交際、恋人、え、あの、柊耶ちゃんとわたし、が?」
片思い中のわたしの都合の良い聞き間違いでは……、
「ああ、親同士が決めた許嫁と言うだけでは無く、互いに思い合う恋人同士になりたい」
無かったようです、
「え、あの、その、………………ん? 許嫁?」
告白に驚いて混乱し沸騰寸前の脳内が不思議な言葉を聞き一気に冷却されました、……許嫁って……、
「ん? 俺と子鞠は婚約中だぞ?」
柊耶ちゃんは不思議そうに当たり前のこと、単なる事実として言います、……え、いや、
「何時から?」
「ん? 子鞠の二歳の誕生日から」
「……柊耶ちゃんは知ってたの?」
「ん? 当然だろう? 家の親が提案し師匠が了解、俺が立候補して子鞠が選んだんだから」
「え、わたしが選んだ?」
「ん? ………………もしかして、覚えていない……か、まだ子鞠は赤ちゃんだったしな…………え、もしかして、知らされてもいなかっ」
「初耳です」
「「…………………………」」
わたし達は沈黙しました、柊耶ちゃんは当然わたしが両親から知らされていると思っていたようです。わたし達は思わず顔を見合わせます、
「…………あー、とりあえず、許嫁の話は置いといて……恋人になってくれるか?」
苦笑しつつ柊耶ちゃんはわたしにもう一度告白をしてくれます、もちろんわたしの返事は、
「え、は、い、…………よ、よろしくお願いします……」
是、です。
【返された思い、新しい関係】
子鞠に告白した。
満月の海岸で、と、いうのは少しロマンチック過ぎ恥ずかしく思ったが……そのおかげか頷いてもらった、だが……、
「……本当に、許嫁の話を知らなかったのだな」
「うん、知らなかった……ていうか何だったの……わたしの不安とか、悩みって……」
子鞠は頬を膨らませながら頭を抱える、その姿はとても可愛らしいが……、
「不安? 悩み? ……聞いてもいいか?」
「う、その、しゅ、柊耶ちゃんにちょっと前まで避けられてたから……き、嫌われたんじゃって……」
……圓城寺の姫が言っていた『子鞠が心を痛めている』とはそのことか……いや、それは嫌って避けていたのでは無く……、
「……その、子鞠も俺も年頃だしな……師匠から少し距離をとるよう言われ……」
いや、原因というか悪いのは俺だ……二年前の春の日の朝、その頃はまだ子鞠達一家が暮らす母屋で寝泊まりが許されていた俺が目覚めると隣に子鞠が寝ていて──起こしに来てそのまま寝てしまったらしい──思わず抱きしめその額に口づけてしまい、運悪く──いや、そこで暴走を止められたのは幸運だったか──師匠に見られた訳だ、そして接触を制限された、と、そういう訳だ。ちなみに家の親も子鞠の母も知っている、
「……いくら、許嫁とはいえ、恋人同士でも無い男女がべったりとしているのはまずいと俺も感じていたしな」
主に俺の理性が、……いや、さすがに口づけ以上の行為をすることは無いだろうが、つまり口づけ程度はしかねない状態で、そしてそんなことをし子鞠に嫌われたり嫌悪されたら……病む、死ねる、
「だから、子鞠に告白しようと思い師匠に許可を得ようとしたら……」
子鞠と恋仲になりたくば俺を倒して見せよ、と、そう言われ、
「先頃勝利するまでは伝えられずにいたんだ……不安にさせ済まない」
「……う、そもそも何故わたしへの告白に許可がいるのかがわからないけど」
…………ん? 確かに言われて見れば……、
「……いや、後々色々言われるよりは、と、そう思ったのだが……そうだな、子鞠の意思を一番に考えるべきだった」
本当に済まない、と、俺は深く頭を下げる、
「……あー、うん、わかった、それはもういいことにする、それより許嫁って、えっと、柊耶ちゃんが立候補してわたしが選んだ?」
子鞠は俺の謝罪を受け入れ、もう気にして無いと示す為か話を変える。俺はその気遣いに甘え婚約が決まった時のことを思い返しながら話し始める、
「ああ、子鞠の二歳の誕生日会にな、家族全員で祝いに行き、そこで父が師匠に一人娘の婿に家の孫はどうだ? と、提案してな、酒が入っていた師匠が頷き家同士で婚約が結ばれたんだ」
俺には子鞠と一つか二つしか違わ無い甥が四人いる、三歳上の俺よりも近く、尚且つその頃の俺は武術を習うことに積極的では無く、道場の後継ぎとしては相応しく無いと父は甥達を推薦した、
「だが、俺は一目見て子鞠に惹かれ、欲しいと思い……俺が子鞠の婿になりたいとねだった」
大人達は面白がり、そして、
「じゃあ、当人に選ばせようと俺達五人をならべ、子鞠が誰の元にいくかで決めることにしたんだ」
ちなみにその時の距離は一緒で無く俺は最も遠くにおかれた……わがままな末っ子だったからな……、
「そして、子鞠は俺を選び俺が許嫁と鴇田の道場の後継ぎになったんだ」
だが子鞠は最奥の俺の元に来てニッコリと笑い、抱き上げるようねだった、それに俺が応え抱き上げると、とても幸せそうに声を上げてくれた、その様子を見た女性陣が、
「あら、相思相愛ねぇ」
と、言ったことで俺は許嫁の座を射止めた訳だ。
その後の俺はがむしゃらに道場を継ぐ為の修業を積み、後継ぎとして必要な実力を身につけた。血反吐を吐く思いで修練を積んで漸く人並みになるほどの自分の才能の欠如を恨みながら、まあ十を越えたぐらいから体格が良くなりかなり楽にはなったが、
「……柊耶ちゃんは本当にわたしで良いの? これまで後悔したことは無かった?」
これまでの苦労を思い返していると、俺の説明をのみ込んだ子鞠が瞳を揺らし、か細い声で俺に問う、後悔? まさか、
「子鞠で良いんじゃ無い、子鞠が良い、子鞠で無ければ駄目なんだ」
甥達からも『なんでそこまで?』と、飽きれられたが、子鞠に笑顔で名を呼ばれるだけでどんな苦労も痛みも無くなった。そんな他の誰からも得られない至福をくれるお前と付き合えるなんて……ああ、本当に、
「俺は幸運だ、心の底から乞い慕うお前の許嫁の座を手に入れたばかりか恋人にもなれたのだから」
沸き上がる歓喜を俺は漏らした、すると子鞠は顔を真っ赤に染め、俺を見上げ伝えてくれた、
「……わたしも……柊耶ちゃんの恋人になれて幸せです……」
と。
──ああ、本当に何て至福。世界一俺は幸運な男だ。そしてこの幸福感と満たされる喜びを知らない甥達……なんて憐れな……まあ奪った立場の俺が言うのもなんだが……。
まあ、奴らの価値観では一桁でありとあらゆる自由を無くした俺の方が『可哀相』、らしいが。
【秘密では無い婚約者】
柊耶ちゃんと恋人になってから一年と少し、中等部二年A組──成績アップしました!──美術特待生の鴇田子鞠です。
彼岸が過ぎ、ほとんどの生徒が合い着に衣更えを済ませた城生院学園、ここは香しい紅茶と花の香りが漂う中央塔二階の創立御三家専用サロンです。本日ここに概ね庶民なわたしが訪れているのは城生院学園初等部に君臨する双姫──圓城寺紗々蘭ちゃんと桐生元佳ちゃんが開いたアフタヌーンティーに展覧会の作品制作の息抜きに、と招待してもらったからです。
そこでわたしはここ最近少し困っていることを相談することにしました、それは……、
「今日もまた、告白されちゃいました……」
です。ここ一ヶ月ほどで六回目、ちなみに今日して下さった方は二度目の告白、……前回時に恋人がいるとすっぱり断ったはずだったのですが……、
「あー、秋ですからねー」
「えっ? 今璃先輩? 告白されるのに秋が関係するのですか? クリスマス前ならわかるのですが」
わたしのぼやきにまず反応してくれたのはわたしの一こ下、猫のような瞳と髪が特徴的な美少女、一戸今璃ちゃん、そんな彼女の反応に疑問を呈したのはわたしの一こ上、下がり気味な眉と長く濃く真っ直ぐな睫毛が印象的な美少女、六崎楪ちゃん、彼女達は職場の年下の先輩と年上の後輩な関係、そして双姫と呼ばれる真冬の夜空のような冴え渡る美貌の紗々蘭ちゃんと春の女神のような華やかな容色の元佳ちゃん、わたし以外の円卓を囲む四人の美しさは実に眩しい限りです、
「ああ、体育祭と学園祭の中高等部の二大イベントが迫っていますから、学園の恋の季節は秋なのですよ」
うっとりと鑑賞していると、右隣りに座っている紗々蘭ちゃんが二つ隣の席に座る桜花市に来て日が浅い侍女に優しく教えます、
「特に学園祭最終日の夜のダンスパーティーは基本的にカップル限定ですから」
「ああ、中等部二年から参加が認められるんだったわね」
「……ダンスパーティー、ですか……名門校っぽいですね」
「ふふ、外部の人間も学園生のパートナーになったら出れるよ? 楪もきっと誘われるね?」
紗々蘭ちゃん達の補足に楪ちゃんが飽きれと好奇心を滲ませ、そんな彼女を隣席の今璃ちゃんがからかう、楪ちゃんは学園美男子十傑の一人、岸元光三朗先輩に熱烈に口説かれているそう……個人的な希望としてはくっついてほしいです。絶対お似合いで美しいカップルですから、そして彼女の主もそう思っているのか、
「出るならもちろんドレスを用意しますよ? ふふ、詳しく説明すると参加資格は学園の中等部二年以上の中高生と彼らの恋人等の十三歳以上の外部の方、……ああ、けれど裏ルールで高等部三年時に限り十三歳以下の方をパートナーに出来るそうです」
と、言う、……その裏ルールってもしかして……、
「十数年前に出来たんだ、ご当主様の執念でね」
紗々蘭ちゃんのお父君である現理事長が五歳年上の恋人と踊りたい一心で捩曲げたルールは年の離れた恋人達にとても喜ばれているそうです。
ひとしきりダンスパーティーの暗黙の了解──男性が女性にコサージュを贈り、女性が男性にそこから一輪を取ってフラワーホールに挿す、とか、パートナー以外とのダンスは一人一曲、五人まで、とか、主催者の役目を担う生徒会の役員達とドレスの色が被らないようにする為に彼女達のドレスの色は周知される──を理事の娘である紗々蘭ちゃんと元佳ちゃんに教えてもらったところで、ハッと思い出し告白されてしまうことへの対応策を相談しました、
「……で、恋人がいると断った男が性懲りもなくまた告白して来たと、……何そいつ、馬鹿なの?」
現状と今日あったことを伝えると左隣りに座る元佳ちゃんが理解不能と吐き捨てます。……ええ、わたしもびっくりしました、彼が言うには、
「えっと、学園内にいないのなら学園内だけで付き合うのは良くあることだって」
学園内だけでの恋人を持つ人達は驚くことにそれなりにいるらしく……とても嘆かわしいです。当然わたしは浮気はしませんし、そもそも……、
「子鞠先輩の彼は学園生なのにねー」
「うん、そう伝えたんだ、で、誰だと尋ねられて…………わたし正直に名前を出したんだよ? ……けれど何故か信じてもらえず……」
余りにしつこく言い連ねられ困っていたところを同級生の生徒会代表──磨見君に助けられたのです、
「……どうしたら良いのかな……」
頭を抱えるわたしに楪ちゃんが、
「……えっと、その、子鞠ちゃんと許嫁さんはなんで付き合っていることを隠してるの?」
と、不思議なことを問い掛けます、……え?
「隠してないよ?」
隠す必要も無いし、
「あー、隠しては無いですよねー、学園内ではほとんど接触が無いけど毎週末、柊耶先輩が子鞠先輩を家の車で送り迎えしてますから寮生には周知の事実ですし」
用が無ければわたしは週末を家で過ごします。後継ぎとしての修業がある柊耶ちゃんも家に泊まり込みです、ですので春日井の車で一緒に送り迎えをしてもらっています、
「ああ、それに確か小学生の頃から春日井の奥方やお嬢さん、お嫁さん達に連れられてお茶席や展覧会への出席をしていて結構有名なんでしょ? 朋子お姉様に子鞠のことを伝えたら『あら、あの春日井の女雛と友人になったの』って、褒められたし」
女雛とは純国産な容姿のわたしの愛称です。わたしは幼い時分からお茶やお花、日舞といった習い事を実は師範だったりする春日井のおば様やお姉様方に習っており彼女達のお供でそういった集まりに出席することが多々あります。そこで良くお会いする生徒会長様や風紀委員長様等の方々には学園内で擦れ違う時などに親しくお声をかけていただけています、
「え、じゃあつまり……」
「隠してはいないけれど、学園内では一緒にいないから、知らない人は知らないし、知っている人達は当然の事実だからわざわざ話題に上げない、なので知らない人は知らないまま、なのですよねぇ」
「だって、校舎も行動範囲も違うし……毎週末にはほぼ一緒に過ごしてるからわざわざ会うことも無いんだよねぇ……」
わたしにも柊耶ちゃんにも仕事や課題や付き合いがありますから余り時間は取れませんし……そんな現状を語るわたしの発言を聞いた楪ちゃんは不思議そうに言います、
「……はあ、でしたら解決策は単純に一緒に昼食を摂る、でよろしいんじゃ?」
と、
「「「「それだ!」」」」
わたしを含めた他の出席者が彼女に称賛の声を上げたのは当然のことです。




