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この学園には攻略対象者はいません。  作者:
第三章 攻略対象者な彼と攻略対象者やモブな彼女のお話。

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彼らは人懐っこい庶務とヒロインその3、又は、捨てられメイドと爽やかな当て馬、でした。~光三朗君と楪ちゃん前編~

光三朗君と楪ちゃん視点が交互にあります、

読みにくいかも知れませんがご容赦下さい。


一万字近いです。

 





 【自治会での十一月】



 色々あった秋がもうすぐ終わる頃、代替わりをした生徒会メンバーと自治会室でまったりと過ごしながらも僕は思う、


 ──リア充ってウザい、と、


「そもそもクリスマスは家族で過ごすものだよね……」


 まあ、単なる独り者のひがみですよ、


「あら? でしたら岸元きしもとさん家は一家でミサに?」


「んー、多分そうですね、『外』に所属する会派の教会がありますから」


 優菜ゆうな先輩が僕の独り言を聞いて質問し、えいちゃんが答える、ちなみに『外』とは山に囲まれトンネルだけが外界と繋がる、微妙に陸の孤島な学園等がある『内』の桜花市民が言うトンネルの外の桜花市のことだ。まあ『外』の方が広いんだけどね、


「その後は多分家でディナーかな? ……うん、母さん鯉を探してるし」


 チェコではクリスマスには鯉です。


「へー、鯉かー、美味しいの? ちなみに私も家族四人で過ごすよ」


 それで年始は田舎に帰る、とはひゃくちゃん、田舎は南の方だそうです。


「へー、家は各自自由だしなー、俺っちは多分屋敷での宴会だなぁ」


「俺も多分そこに参加ですね」


「んー、ボクもそこかなー、それとも父とデートか……」


 圓城寺えんじょうじはカトリックだった香奈子かなこさんの関係で主人親子はクリスマスは粛々と過ごし、逆に年越しにはっちゃける……らしい、


「ほう、うらやましい限りだ……我が家は忌ま忌ましいことにイヴは軽薄なパーティーを主催せねばならん……はー、桜花院おうかいんで過ごすクリスマス当日が今年もメインだな」


 ハルが心底嫌そうにぼやく、桐生きりゅうは新興企業なのでそういうので色々とアピールしないといけない、とか、


「ふふ、頑張って元治もとはる君、フライドチキンとフライドポテトをたっぷりと用意して待ってるから」


「……え、優菜先輩は出席しないんですか?」


「ええ、栄治えいじ君、私は出たい集まりしか出ないもの」


「はは、ゆーちゃん桜花の桐生家全員に溺愛されてるからね~、まあブランド価値を高める結果になってるしな~」


 めったに出ないから出た時のインパクトが凄いらしい、


「……なんて言うか……つまり生徒会には恋人とラヴラヴクリスマスを過ごす奴はいないんだな……」


 ヒデちゃんが複雑そうにつぶやく、そんな彼も独り者、クリスマスはオンの世界で過ごすそうです……うん、ドンマイ、


「……むしろ、本当にクリスマスを恋人と過ごす人種に、この学園に入ってから会わないんですけど」


 ハルじゃないけど名家の面々は大体家関係の集まりに出るんだよね、けれど、


「アハハ、ヘイ君……それは君がSクラスとは関わらないからだよ……奴らの一部の奔放ぶりは……凄いよ?」


 ……なんて言うかねー、自治会室で過ごす時間が癒しになるくらいねー、……うん、授業では会わないのが救いだな……、


「……その人達にさー、なんか妙にモテてるんだよー、もうめんどくさい」


「……ええと、モテるのは嬉しくないんですか?」


「好きな子以外にモテても意味ないもん」


 と、言うより好きな子だけにモテたい、


「自慢か?」


「愚痴だよ…………目撃されました」


 ヒデちゃんの言葉にノータイムでつっこむ……うん、クラスメイトに迫られてるところを見られました、大好きなゆずりに、めっちゃ蔑んだ目で、


「うう、最近やっと警戒が解けてきたのにー!」


「「「頑張れ」」」


 生徒会のみんなが優しく励ましてくれた。うん、頑張るよ!


 十年かかろうが最後に頷かせてみせれば良いんだからね!



 【目撃してしまった十一月】



 目撃してしまった。恋に堕ちる一歩手前の男性が女性に抱き着かれるところを、


 けれど私にそれを責める権利は無い、


「ふーん、で? 今更後悔? それは違うでしょ?」


「うう、そう言うんじゃ無いし……ただ、その時めっちゃ睨んじゃって……で、そんな権利無いのにって自己嫌悪」


「はは、それは逆に彼は喜ぶんじゃ? だって好きな子に嫉妬された訳でしょ?」


「……嫉妬、じゃない、多分……そう星螺せいらの言った通り後悔、権利が無いのが悔しかったんだ」


 そう、彼は私のものだって、そう言えないのが悔しかった。嫉妬はして無い、はず、だって、


「彼、私と目が合った瞬間素早く振りほどいてこっちに来たし」


 うん、愛情を一切疑わせない態度でした。


「むしろ女の子に同情するぐらいに……まあしないけど……私にもデリカシーぐらいあるし」


「……うん、でも当事者外の私は同情するわ……そしてご多幸を祈る」


 正直その態度の方にドン引きして距離を置いてます。



 【クリスマスプレゼントは渡せました》



 クラスメイトとのあれを目撃されてからというもの楪との距離は再び広がった、


「即、弁解と謝罪をしたのになー」


「うーん、まあ意識されてるってことだろう」


 ファンシーなショップで可愛らしい小物類を真剣な表情で吟味しながら栄ちゃんが応じる、多少おざなり感が否めないのは溺愛してる婚約者(仮)への誕生日プレゼントとクリスマスプレゼントがまだ決まって無いからだろうね、ちなみに楪は夏生まれ、出会った時には既に十五歳でした。


「うーん、やっぱり紗々蘭(ささら)さんにはこういう店の商品は似合わないな……」


「うん、楪にも似合わないね」


 僕達は顔を見合わせ頷くとキャラクターグッズを中心とした店舗から出た、


「……はあ、母さんが出会って数ヶ月でアクセサリーは重いって言うからこういう店を中心に回ってるけど……そもそもの発想が違うのか?」


「うーん、そうだね、女の子だからアクセサリーやファンシーグッズっていうのが違うんだね、きっと」


 何てったってお姫様な紗々蘭お姉ちゃんだ、普通の小学生的なプレゼントは似合わない、そしてそんなお姉ちゃんを凛々しく守る楪だ、普通の中学生的なプレゼントは似合わない、


「……とは言え、服はさらに重いしね……」


「うん、バッグとかは値段を常識の範囲に押さえると似合わなくなるしね」


 そして今日も決まらないのだ、……もう十二月になったというのに、


「と、いう訳でハル、女の子へのプレゼントについて教えて」


 栄ちゃんのことはぼやかしてハルに教えを請う、何てったってハルは、


「 『良い女に貢ぐのは男の最大の娯楽だ』という名言を常々吐いてるハルなら良いアイデアがあるよね!」


「名言ってなんだ、単なる事実だろうが」


「……いや、普通の高校生男子は言えない台詞だろう」


「そして女子としてはどういう反応をすべきか謎な台詞ね」


「……多分笑って流すのが正解でしょう……優菜様のように」


 ちなみにここは高等部一年世界史教室、現在自習中、先生は副業というか本業の発掘の為海外へ行ってる……城生院にはこういうフリーダムな先生が一定数いる……単位は入るし良いけど、


「というかその台詞は俺のオリジナルでは無い……ある女性が以前言っていた言葉だ」


「……それは……格好良い方ね……」


「言う人間によっては失笑ものだね」


「……まあ凄まじく似合っていた、な」


「いや、だからプレゼントの相談に乗ってよ!」


 ハルはめんどくさそうに舌打ちする、やっぱりわざと話しをずらしてたようだ、


「……っていうかな、そう言うのは相手の好みと自分の懐具合で選ぶものだろう、一般論は気にするな」


「んー、でも女子としては常識の範囲内に収めてほしいけどね……光三朗君の『ヒロイン』さんを良く知らないから言い切れないけど」


「いえ、多分義妹は百合恵ゆりえ様と同じ価値観です」


 そうなんだよねー、楪は高級品や贅沢品は苦手なんだよね……、


「ちなみに懐具合は結構暖かめですけどねー」


 圓城寺に結構な研究協力をしていますので、軽くモルモットな僕です。


「……っていうか桃園ももぞのに聞けよ、金銭感覚の近い女子だぞ」


 うん、そりゃそーだ、


「じゃあ百ちゃんの意見は? 是非に教えて下さい」


 百ちゃんは苦笑しながら答えてくれた。恋愛嫌いな百ちゃんだけど、この片思いは温かく見守ってくれてる。


「まず『ヒロイン』さんが光三朗君にどの程度好意があるかで変わるわね、例えば交際間近なら一万円ぐらいの物でも受け取るだろうけど、友人レベルなら五千円以下の軽い品、知人レベルなら消え物オンリー、そして好意が無ければそもそも受け取らないわね」


「……あっ、友人レベルには行ってると思う、お土産のストラップとか受け取ってくれてるし」


 まあ、消え物の方が喜ばれるけど、


「なら五千円以下の軽い品で良いわね……後は好みの問題……んー、服飾系はよっぽど好みを熟知して無いと危険よ」


「だな、俺も基本避けてる……特に服とかはサイズの問題があるからな……」


「ええ、恋人でも自分のサイズを知られてるとか嫌だわ」


「……さすがにそれぐらいはわかるけど……」


 僕達はそこまで女心を解さぬ阿呆では無いです。


「……ちなみに百ちゃん、百ちゃんの言う軽い品ってどんな物かな?」


「んー、部屋に置く小物とか……食器とか……家電とか……常に持ち歩く物とかは重いかな?」


 栄ちゃんが素朴な疑問って感じで実は必死に百ちゃんに尋ねる。まあ栄ちゃんの方がタイムリミットが近いから焦ってるんだよね。


「へー、家電も軽いの?」


「がっつりとした物じゃなくてちっちゃめの加湿器とかなら嬉しいかなっと」


 それからちょっと良いドライヤーとかなら百ちゃんは嬉しいらしい、なるほど、


「そういえばフロアランプは結構ウケたな」


「……それは部屋のサイズやテイストを知ってるから贈れると思うが」


 ちなみに僕達兄弟は贈る相手の部屋には入ったことは無い、


「ふむ、確かに……それにまあ、俺は優菜の好みを熟知しているからな……正直贈る物に悩んだことは無い」


 そして喜ばれなかったことも無いそうだ、


「……ハルは出来る男だよね」


「はは、それに加えて俺の場合は金に糸目をつけなくても良い関係性だからな」


 実際つけていないそうな、


「……いえ、優菜先輩ぐらいじゃないといくら婚約者からでも余りの高級品は抵抗あると思うわよ」


「まあ、世が世ならお姫様だからな」


 そんなことを話している内に授業の終了時間が来た、うん、ハルより百ちゃんの意見が参考になったな、まあハルの意見も肝に銘じるけど、確かに基本は好みと懐具合だよね、


 で、選んだプレゼントは笑顔で受け取ってもらえました。



 【貰ったプレゼントからわかる彼の中の私】



 田舎にいた頃、昔えらくモテていたらしい肉屋の奥さんがおっしゃった。


「男はなんだかんだ言って自分の贈りたい物を贈るのよ」


 そしてそれによって男性の中の自分象がわかるそうです。つまりこれなら喜ぶだろうと思って自分の贈りたい物の中から選んでくるってことです。


「……ねぇ、貰った時は普通に嬉しかったけど、その台詞を思い出してちょっと落ち込んだ私ってめんどくさいよね」


「うん、めんどくさい、っていうか何貰ったの?」


「…………湯たんぽ」


「…………は?」


「だから、可愛い犬のぬいぐるみのカバーがついた湯たんぽ」


 これはどういう理由から選ばれたんだろう……、


「んー、ゆず前に桜花市は結構寒いって言ってたわよね、じゃあ普通に喜んどきなさいよ、可愛いカバーつきなら」


「うん、本当にかなり嬉しいし、超助かる……ええとちなみにカバーがついてなかったら……」


「あんたに女子力が無いってことがばれてるってことになったわ」


 結局、色々思うところはありましたが春が来るまで毎晩お世話になりました。



 【帰省中の彼女に送るメール】



 お正月も松の内が過ぎました。本当に圓城寺邸は年越しにはっちゃけた!!


「ノリが良いよねー」


「ノリが良いよなー」


「んー、家は年齢層が若めですし」


「ふふ、私は好きよ」


「ああ、僕も好きだ」


「まあ、家もノリが良い方だからね」


 今日は日曜日、圓城寺本邸のこたつで僕達家族と紗々蘭お姉ちゃんはくつろぎ中です。最近結構いりびたってる。家にはこたつどころか和室も無いからねー。


「そう言えば楪さんは帰省中なんだよね、何で今?」


 栄ちゃんが不思議そうに尋ねます。もう学生、社会人は休みが終わっています。


「んー、大晦日前に帰ったら、って言ったんですけど、なんだかお母様が年末年始は忙しいらしくて」


「あら、楪ちゃんのお母様って何をなさっている方なの?」


「書家さんですよー、結構有名で母様と同じく海外で評価が高い方です」


「へー、じゃあ年末年始は……」


「書き初めイベントとかに泊まりで出席だそうです」


 楪いわく家はど田舎、らしいからねー、ちょっと離れると泊まりなんだそうだ。


「後、親友は隣人なので余り休みは関係無いそうです」


 そして楪は親友以外の同級生等には余り会いたく無いそうだ。美少女故に妬まれたり逆に憧れられたりとなかなか友人が出来なかったらしい、


「で、光君? 何ずっと携帯を見つめているんだい?」


「んー、楪にメールしとこうかと思って……さらに美少女になった楪に虫が大量発生してそうだから……俺の方が良いよって」


 楪は当人比で一、二倍垢抜けたそうです。……お姉ちゃんは配下を愛でるのが大好きだからなぁ……、後、圓城寺の綺麗所と母さんも、


「まあ、光君より素敵な男性が楪ちゃんの実家辺りに居る確率は皆無でしょうね」


「ふふん、でしょ? ……だけどどういうメールなら良い牽制になるのか……うーん、悩む」


 押し付けがましさは無く、かつ、メールの内容を見た男共に絶望を与える内容……、


「栄ちゃんヘルプ!」


 よしっ、悪巧みが趣味で特技の片割れに丸投げしよう。


「はい、はい、んー、楪さんにか……ああ、そういえばさっき光君新しいラケット試してたよね?」


「うん、圓城寺が技術提供をしたスポーツメーカーからデータくれって」


 圓城寺と契約してからはテニスに使う物はほぼそういう品になった。


「結構気に行ってたよね、じゃあそれが嬉しくって思わずって感じで……うん、光君とラケットのツーショット自どりで」


 ええと、それはどんな効果が?


「なるほど、光君が高校生No.1テニスプレイヤーであることとイケメンであることが同時にアピール出来て、しかも無邪気に楪ちゃんを慕っていることも知らしめることが出来る……さすが栄治さんですね」


 ほう、そんな一石三鳥の一枚に!


「よしっ、じゃあ撮ろう! ……あっ、やっぱりテニスコートが良いかな?」


「いや、むしろ家のリビングで、家の経済力アピールに」


 家は母さんの趣味で共用スペースは高級なアンティーク家具です。しかも冬邸のリビングには、


「アハハ、じゃあ暖炉とグランドピアノが見切れる感じだね!」


 家の両親は教育方針として子供達には大金を使わせ無いけど、家と食生活はケチりません。まあ子供達の部屋は広いけど家具は普通、ですけどね。



 【ラヴメールパニック】



 ──ああ、帰りたい。


 こんにちは、六崎むざき楪です。お正月ってことで帰省中です。本当は家族と親友一家以外とは会わない予定でした……が、……目撃されました、最寄駅で、……まあ、田舎ですからね……、そして何故かファミレスでの同窓会チックな会に引っ張り出されました。……大丈夫か? 半数を超える受験生……私は大丈夫ですが、


「なー、崎坂さきさか、現代日本で中学生が奉公とか、大変だろう? ……帰って来ないか?」


 別に大変では無い、主君にお仕えする毎日は充実しているし、衣食住一級品だ、っていうか奉公なんて言葉よく知っていたね、馬鹿だと思ってた。そしてその肩を抱く手をどけろ、


 的な内心を笑顔で隠し、明るく答える。


「ふふ、大丈夫ですよ先輩、全然大変じゃないですよ? お嬢様も旦那様もお優しいし、同僚の皆さんも親切だから」


 そして、やんわりと手をどける、……正直捻り上げたい……素人相手だからしないが、


「ふーん、あんな大企業のお嬢様なら傲慢、わがまま、ヒス娘ってイメージだけど」


 は? 家の完璧主君にそんなくだらないイメージを? ……泣かすぞ、


「まさか、むしろ大企業の御令嬢は、皆さん厳しい教育を乗り越えてるもの、そういう品の無い方はいないわ」


 まあ、フィクションに毒された馬鹿の相手はしないけど、


「そうなんですねっ! 素敵だわ……それで楪さん、いつ頃までこっちにいるの?」


 ……あー、こういうタイプはめんどくさいなー……妙なイメージつけてくるし、


「ふふ、明日の昼には……余り長い間お嬢様のお側を離れたくは無いもの」


 まあ、その原因は身内以外には素を出さない私の態度にあるんだけどね……笑顔が最大の盾だと『七席』教育で叩き込まれたからね……、


「へー、じゃあせめて今日は夜まで中高生らしい生活をしようぜ」


 いや、久しぶりの家族団欒を邪魔すんなよっ!


 私は笑顔バリアーを作り直しやんわりかつきっぱりと断ろうと息を吸い、そして普通に吐いた、スマートフォンが震えメールの着信を知らせたからである、私は護衛の立場として連絡には何時も緊張するのだ、だが発信者の名前を見て脱力した。


「……岸元きしもと(下)って誰?」


 隣の先輩が画面を覗き込み尋ねる……なあ、プライバシーってわかるか? ……わからんだろうな、


「……ゆずの求婚者」


 私がどう答えようかと考えてると黙々と料理を平らげてた星螺が簡潔に答えた……いや! 事実だけど! それは!


「求婚! って中学生に!?」


「何、働いてる時にお金持ちのおじさんにでも好かれたの?」


「もしや、城生院に通う名家の跡取りに!? さすが楪さん!!」


 こういう風に騒がれるだろうがっ!


「まあ結婚を前提にお付き合いを、だから中学生にでも良いんじゃ? それから相手は城生院の生徒だけど特待生らしいよ……それよりゆず、メール開かないで良いの? 急ぎの用だったら大変じゃない?」


 ざわめく周囲に情報エサを与え星螺は私にメールを確認するよう促す……いや、この状況で……間違いなく隣には見られるんですが……ああ見せろと……まあ変なことは書かれていないと思うけど……プライバシー……う、はい、わかりました。


「……ああ、普通の雑談写メールですね」


 へー、新しいラケットが良い感じだったと、……良かったね、……それから気をつけて帰れと、了承です。


「えっ! 返信しないの!?」


 ん? 別に返信を求める内容では無かったが、


「っていうか今の写真の人!? 求婚者って!?」


 ええ、そうですが?


「……マジかよ……」


 ん? 先輩どうしたんです。いきなり落ち込んで、


「ゆず写真付きだったの? 見たい、見せて」


 いや、プライバシー……う、わかりました、


 私はしぶしぶ星螺にスマートフォンを渡した……まあ、プライベート用だから良いけど、


「へー、これが……確か一つ上だっけ? それでなんでラケットと?」


「ええと、岸元さんはテニス特待生ですので」


「えっ! テニスの岸元!? って、全中三連覇、インターハイ覇者、モデルの岸元一宏(かずひろ)の弟の!?」


 ああ、うん、良く知ってるね。


「だって!? 超有名だよ!? 普通にインターハイの時とかスポーツニュースで紹介されてたし!!」


「あっ! 岸元一宏って確か両親も凄い有名な……」


「……魔性の演奏家エルンスト夫妻」


 ……ええと、凄いな岸元家、でも話題に出なかった次男が一番のくせ者なんだよ、全国模試満点とかとっちゃうね……、


「っていうか写真見せて!! うわっ!! 兄とは違うけど超イケメンじゃん!! 何! なんで付き合って無いの!?」


「ゆずの受験が終わるまで待っててくれてるんだって」


 ん? 星螺? それは、私の中の……う、わかりました、そういうことにしときます。


「それよりゆず、もう帰らないと……やなちゃんから暮れる前に帰るよう言われてるでしょ?」


 そして、私は星螺と帰宅した。みんな帰郷祝いだからいいと言ったが給料を貰ってるからと五千円を置いておいた、彼らに借りを作りたく無かった。



「で、星螺、何あの態度」


 家への帰り道、私は星螺に尋ねる。正直助かったけど星螺にしてはプライバシーを無視しすぎている。


「ん、助かったでしょ? これでゆずにおおっぴらに帰って来いって言う人間はいなくなったわね……それよりゆず、私そこまで凄い人とは聞いて無かったけど?」


「へ……ああ、そうだねゴメン……皆さん普通だし……なんか凄い人だと思えなくって、皆さんも思われたく無いみたいだし」


 それに圓城寺で働いてると麻痺してくるんだよなぁ、……普通に大企業の令嬢やらやんごとない血筋の姫やら世界的演奏家やら芸能人やらがいるし来るから、


「っていうか……あれはああいう目的の為に送られて来たものだと思う」


「へ、ああいう目的?」


 星螺は複雑そうな表情だ。何だろう、そのコーラかと思って飲んだらコーヒーだった。みたいな表情は、


「……ゆず、あれは顔と将来性と実家の財力を厭味無くアピールするメールだったわ、天然じゃないわね」


 へ、あれだけのメールで? 私はメールを見直す……ああ、


「……なるほど……あー(中)の人の香りがする」


「(中)? そういえば先輩が言ってた岸元(下)って……」


「ほら、お兄さんやご両親は有名人だから……父と母、上中下と、登録したんだ」


 着信時に表示されるからね、


「それで……ええと、その(中)って……」


「彼の双子の兄、IQ174の天才で全国模試満点な岸元家の次男……一言で言うと闇堕ちしなかった悪の参謀?」


 ちなみにこれは今璃いまり先輩の評価、主君も当人も納得してました。


「…………恐るべし岸元家」


 星螺はさらに複雑な表情で私を見る、軽く同情されてる気がする、いや、心配するな、


「身内にはとことん糖度が高いから……だから安心して?」


 まあ、敵には容赦無いけど。






 


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