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この学園には攻略対象者はいません。  作者:
第二章 彼らは孤高の生徒会長とヒロインその1、又は、斜陽の令嬢と主人公その1、でした。

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外伝 後編 彼女は憂いのカウンセラー、でした。


 私は望まれずに生まれて来た、


 私は疎まれて生きて来た、


 私は壊れかけていた、


 私は救われた、



 九回目の誕生日の夜、天使のような王子様に。



 彼は私に言った──死なせたくない、と、そして暖かい家で温かい食事を食べさせてくれ、同じベッドで寝かせてくれた、


 そしてその翌日、私は望まれていたことを知った、年の離れた兄と私を疎んじていると思っていた『兄』に、


 兄と『兄』は、私の次の誕生日には迎えに来ると約束し、私を王子様とその家族に預けた、


 九歳の私はそこで美を愛でる喜びを知り、体を動かす喜びを知り、愛される喜びを知り、愛する喜びを知った、



 そして何より恋する喜びと痛みを知った。



 十回目の誕生日、兄と『兄』は約束通り私を迎えに来てくれた、


 私は兄と兄がさらってきた女性と暮らすことになった。






 余談だが王子様とその家族は私に美味しいものを食べさせるのが趣味らしく、私はお世話になった一年でかなり体重が増えた、


 そして帰宅後も兄と『兄』と義姉が同じ趣味を始めたことでさらに増え、


 中学生になる頃には私は丸々と太っていた、



 …………泣きたい。






 『兄』は熱烈な恋をしている、その相手は牧野香奈子まきのかなこさんという五歳年上の女性、


 彼女は『異常に近いほど美しく、呪いじみた引力で人を引き付け狂わせる歌声』を持つ以外とても普通の女性だ、


 対して『兄』は容姿も能力も完璧に近い人間、なので私は彼女に尋ねた、


 ──隣に立つのを躊躇ったりしないのですか? と、


 香奈子さんは答えた、


 本当は逃げ出したくなるけれど、そんな『兄』に選ばれた存在が縮こまっていては『兄』の恥になるから、と、


 私はそんな彼女を尊敬し、そして羨んだ、



 ──だって私は選ばれていないから。






 私が高校二年生の時、陰鬱な梅雨の晴れ間の雲一つ無い輝くような朝、



 『兄』は太陽を失った。



 『兄』の高校卒業と同時に香奈子さんは『兄』の妻になり、


 とてもとても美しい女の子を出産した、


 そしてその翌年に襲われた、


 首謀者は『兄』の両親と妹だった、


 協力者は私と兄の従姉妹で『兄』の『七席』だった、


 『兄』の『七席』は半分以下になった、


 香奈子さんは最後まで誇り高く、愛と歌に生きた。






 葬儀後、屋敷中が悲しみに沈み、惰性で生きていた、


 最初に立ち直ったのは『七席』最年少の女の子だった、


 彼女は周囲の大人達を、取り分け『兄』を叱咤した、


 香奈子さんが愛したものを守り、彼女が遺したものを受け継ぐ義務が私達にはある、と、


 何よりも物心つく前に母を失った彼女の最愛の娘を幸せにする為に、全身全霊をかたむけねばならない、と、


 その日『圓城寺』は団結した、


 『圓城寺紗々蘭(えんじょうじささら)の幸せ』という命題を叶える為に。






 王子様は昔、圓城寺の屋敷を『鳥籠』だと言った、


 桜花の土地を『箱庭』だと言った、


 私はその安全で安心出来る『檻』からもうすぐ出て行く、


 『七席』家の娘として圓城寺に益をもたらす存在になる為、


 惰性では生きれない場所に行く。



 私は旅立つ前に彼に思いを伝えることを決意した、


 彼が救った少女のことを、会わなくなっても忘れないで欲しいから。



 そして私は卒業式の後、三年間共に過ごした図書室で思いを伝えた、


 ──大好きだと、恋人になりたいと、


 告白は断られた、けれど口づけられた、そして言われた、


 ──諦めるな、いい子でいろ、新雪のままでいろ(純潔を守り通せ)、と、



 ……ええと、フラれた、の?






 大学生活はひたすら勉学に打ち込んだ、


 そして精神科医になった。


 同時に美容にも励み、礼儀作法と教養も磨いた、


 その成果は出て、私は自分でも驚くほどの淑女になった。


 長らく失敗し続けたダイエットが成功したのが大きいだろう、


 障害(王子様)と離れたことが最大の勝因だ。


 そして私は一年の実習を終え『箱庭』に戻って来た、


 スクールカウンセラーとして。



 王子様は宣言通り教師になっていた、


 成人した彼はめまいを覚えるほど魅力的だった、


 ……正直、余り魅力的にならないで欲しい、


 私は縮まったと思っていた距離が思うよりも縮まっていなかったことに落ち込んだ、






 王子様は副担任を務めるクラスの少女に心を砕いているようだ、


 確かに彼女はとても稀有な立場にあり新任教師の彼が心配するのもわかる、


 なのにこの心はドロドロとした嫉妬に焼かれている、


 理由は単純、彼女が稀有なほどに可憐だからだ、


 そんな嫉妬に狂い、それを知られまいとそっけなく応じた私に、


 私の帰還を喜び、綺麗になったと褒め、そしてそれ故に嫉妬を覚える、と、



 彼はそう、伝えてくれた。






 王子様と私の距離は学生時代と変わらない、


 彼は余人に知られぬように私の下を訪れ、


 何を話すも何をするでも無く、


 ただ触れ合えそうな距離で、


 ただ同じ時間を過ごす、



 もう一度思いを伝えようか、とも思うが、


 その様子が微かに張り詰めていることに気付きただ寄り添うだけを選んだ、



 きっと私は諦めていたのだろう、


 縮まらない距離、与えられない言葉、望まれない私、


 だから彼から予約すると言われ桜色の指輪をはめられても、


 理解が出来なかった、


 けれど二度目の口づけをうけ、彼が部屋から出て行った後、


 一気に理解し絶叫した。





 私は望まれなかった、


 私は疎まれていた、


 私は壊れかけていた、


 けれど私は選ばれた、


 惰性で死のうとした私を救ってくれた王子様に。






 彼はこれからも教え続けてくれるだろう、


 美しいものを共に愛で、


 美味しいものを共に食べ、


 触れ合いながら、


 愛し愛される喜びを、


 恋することの素晴らしさを。


 


 







 















 ──憂いのカウンセラールート消滅しました。











 ──他のルートに進みますか?


   YES NO

      ▲












第二章完結です。




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