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この学園には攻略対象者はいません。  作者:
第二章 彼らは孤高の生徒会長とヒロインその1、又は、斜陽の令嬢と主人公その1、でした。

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9、体育祭で生まれるもの

 




 中学三年生になりました桜花院優菜おうかいんゆうなです。今日は九月一日ゲームではとても大事なイベントがあったのだが……、


「やはり、『城生院さん』は貰えなかったな……」


 そう、ゲームでその1ルートでは中三の二学期開始時にお助けキャラ城生院さん入りの端末を渡され、そのβテスターを頼まれるイベントが起きるのだ、だが、


元佳もとかちゃんの楽しそうな日常を聞くだけで、紗々蘭(ささら)姫がそんな事している暇が無いってわかってたもんね~」


 城生院さんの製作者(中の人)圓城寺えんじょうじ紗々蘭ちゃんと元佳ちゃんは今では無二の親友だ、休日を共に過ごす事こそ無いが毎日の様に放課後は学園中央塔でお茶やら楽器の練習やらをしているそうな……その上私達兄妹は今だに会えて無いが姉達と紗々蘭ちゃんは親しいらしい……うらやましくなんてないんだからねっ!! と、ツンデレの台詞を言いたくなる現状だ……ふぅ、


「……それで、弟よ『A,sコンフリクト』の七十二話の主人公の台詞だが……「駄目だ!! お前も一緒に帰るんだ!!」より「一緒に帰ろう……みんなで」の方がキャラ的には合ってると思うのだが……」


 私とさとりは記憶を取り戻して少しして──色々あったので──この世界の漫画道具について調べた、他称カミサマが言ってた通り多少の違いはあったものの概ね前世通りの道具を揃えられた……私達は兄妹揃ってお年玉は貯金派で良かったよ……、


 ちなみに弟はデジタルで書いて印刷して仕上げる……紙面で読むものは紙で仕上げるという弟のこだわりだ……それが前世では結果的にあだとなったのだが……、


「うーん? 今のままの方が熱さとか、切迫感があると思うけど……んー? ちょっとコマ割りとタッチでどうにかしてみるね~?」


 現在私達は原稿の復元を完了し、その微妙な手直しをしている……一話から最終話まで読み返し、もうちょっと伏線をスマートに、ほんのちょっと言い回しをかっこよく、全体的に紙面をスッキリと、と、いう感じで直してる……まあ連載の疾走感は減るかも知れないが読み易さは倍増しているはずだ、


「そういえば覚、もう直ぐ教育実習だな、大丈夫なのか?」


 私が『ヒロインその1』を演じている様に覚も『物ぐさな顧問』をやる為に教育学部で学び、教員免許取得を目指している、


「うん? へーきへーき、適当になんとかするから~」


 覚は軽く答える……実際適当になんとかしてしまうのだこの出来た弟は、前世からとにかく要領が良いからな……うらやましくなんてないんだからね……。




 覚は適当に教員実習をクリアした……生徒からの評判はすこぶる良かったらしい……そして私は憂鬱なイベントに立ち向かおうとしている、


「……ううう、体育祭なんて嫌いです……運動オンチに優しさを下さい……」


 重い足を無理矢理動かしながら高等部校舎の自治会室に向かう……明日に迫った体育祭の最終準備をしに行かねばならんのだ、


「うひゃひゃ、優菜ちゃんは凄まじく運動神経と体力が無いもんな~」


 生徒会執行部員なのに真っ赤に染めた髪に痛そうな大量のピアス、一見狂暴そうな外見ながら軽薄でフェミニストな態度で女子受けはする男四倉緑郎(よつくらろくろう)がからかう様な口調ながらいたわる様に荷物を奪い軽く腕を叩く……そういやこいつもゲームとはキャラ違ってるよな……フェミニストは変わらんが女の子を取っ替え引っ替えしたりはして無い、と、言うか……、


「……そんな風に優しくされたら……好きになっちゃいますよ……」


「アハハ、光栄なお言葉ですが、俺にゃべた惚れしてるハニーがいるからね~? 俺に惚れると火傷するぜぃ!」


 らしい……ハニーねぇ……やっぱり圓城寺に転生者がいるのは確定かな……、


「……微妙に物騒な冗談を言うな、優菜君……婚約者の耳に入ると大変な事になるぞ……」


 顔を強張らせながら春日井柊耶かすがいしゅうやが釘を刺す……妙な事を心配するな……、


「別に平気ですよ、元治もとはる君は心が広くて優しいですから」


 別に愛し合う婚約者同士って訳じゃないし……とは言え、


「ですが、確かに人の耳に入ったら危険な冗談でしたね……元治君の評判を傷つける事になりかねませんから……」


 私が真面目に反省すると同級生達は……、


「アハハ! やー、やっぱり元治ちゃんと俺はわかり会える気がするー……ハァー、年下って辛い……鈍い人って酷い……」


「……優菜君のその自己評価の低さは友人としていかがなものかと思うぞ……」


 緑郎は元治君に謎のシンパシーを感じ、柊耶はさらに私を子供の様に心配する……何故に?




 中等部校舎と高等部校舎を結ぶ連絡通路に行くと二年の男子達と合流した……今日はプログラマーコンビ二年明石(あかいし)君と一年櫻庭(さくらば)君は別口の仕事がある為自治会室には向かわ無いそうだ、


「あっ、こんにちは優菜先輩今日も美人ですね~」


「こんにちは優菜先輩……物憂気な表情もお美しいですね」


「はい、こんにちは光三朗こうざぶろう君、栄次えいじ君、お二人は今日も口がうまいですね~」


 甘い台詞を標準装備の岸元兄弟──長男もそう──に軽く挨拶をする……もう慣れました……、


「こんにちは優菜様、柊耶先輩」


 礼儀正しく挨拶するのは月史つきひと君、緑郎とは同僚だからか基本的に二人は学園では話さない、


「はい、こんにちは月史君」


「ああ、こんにちは」


 私と柊耶が挨拶を返す……そして最後の一人、私の婚約者君は……、


「……緑郎先輩……それは優菜の荷物ですよね? 婚約者として俺が持ちますから渡して下さい」


「いやいや、後ちょっとの距離じゃん? 俺の方が腕力あるし気ぃ使わんで良いよ~?」


 と、緑郎と私の荷物を取り合っていた……何故に……。




 その後もなんやかやあって本番前にどっと疲れた体育祭前日、けれどそんな事はお構いなしに来た今日、体育祭当日……ああもう……、


「……サボりたい……」


「がんばれ~」


「優菜……ファイト」


「優菜様……無理をなさらないで下さい……」


 私の心からの呟きを軽く流す覚、応援をくれる姉上、いたわりの言葉をくれるミナモさん……弟が冷たい……反抗期か……、


 消化の良い朝食を摂り──ミナモさんの母、菜摘なつみさんが体調を気遣い作ってくれた──食堂で愚痴りながらダラダラとしていると戸がガチャリと開いた、


「優菜迎えに来たぞ……ああ皆さんおはようございます」


 何時も通り元治君が迎えに来てくれた、桐生きりゅう家には家の合い鍵を渡してあるから彼は毎朝食堂まで迎えに来てくれる、ちなみに私達も桐生家の合い鍵を持っている、


「……はい、わかりました……行ってきます……見に来ないで良いですからね……」


 力無く応じつつ立ち上がり家族の応援を拒否する……まあ、くるだろうね……近いしね……そもそも一番厄介な父上は学園長の仕事で見ているし……絶対に活躍しないのに応援されるのはどうかと思うよ……、


 私が憂鬱な気持ちでのろのろと歩いていると元治君が腕を取りエスコートしてくれる、


「案ずるな優菜……俺がお前を助けるから……」


「……はい、よろしくお願いします……」


 元治君はやっぱり優しいな……何故か友人達には同意され無いが……。




 昼食を執行部員達と摂る私の気分はかなり良い、


「……良かったな……今日は転ばず、最下位も免れて」


「はい、元治君! 久しぶりに怪我無く完走出来ました! 午後はもう出ませんので、生徒会のお仕事や皆さんの応援を頑張りますね!」


 そう! 今日出た種目は50m走では転ばず最下位を免れ、玉入れではこぼれた玉を集めるアシストを完璧にこなし一位に貢献したのだ! やー、体育祭をこんなにトラブル無く過ごせるなんて前世今世合わせて始めてだよ!


「……応援は俺だけで良いのに……」


 ?


「元治君? 今なんて?」


 浮かれていて聞き取れなかったよ、


「……いや……なんでも無い……卵焼き食べるか? 元佳が作ったんだ」


「はい! もちろん! 元佳ちゃんの手作り~!」


 その上可愛い美少女の手料理を食べれるとは! ん? ……あれ? なんか嫌な予感がする……酷いしっぺ返しが来そうな……うん、気のせいだな……そう、だよね……、


 気のせいじゃなかった事に気付いたのは午後の三つ目の種目、借り物競争の時だった……けれどしっぺ返しが来たのは私じゃなく頼りになる婚約者君にだった……。




 説明すると元治君と双子の仲は光三朗君とは年度末から改善し、今は友人として付き合っている、が、今だ常にトップに君臨し続ける栄次君にたいしては元治君はかなりつんけんとした態度で接する……うん、まだ栄次>元治なんだ……ゲームの設定は行方不明だね……うん、元治君がこじらせ無ければ別に良いけど……、


 そんな二人は今日の体育祭でも競い合ってる、勝敗は二勝二敗の今のところイーブンだ……直接対決は次の種目借り物競争で最後……いや、運に左右される種目ってどうよ?


 そして二人の順番になり揃って見事なスタートをする二人……うらやましくなんてないんだからね……ほぼ同時にお題の入った箱に手を入れる二人……取り出したそれを確認する二人……固まる元治君、視線を三年生の待機場所に向ける栄次君……そして目と目が合う私と栄次君……あれ? 私ですか?


 そのまま近寄ってくる栄次君……あれ? 本当に私? そして私が栄次君に声をかけられそうになった瞬間、凄まじい速さで走って来た()()()が私の手を引っ張り駆け出した……あれ?


「……ちょ、ちょっと……待って……下さい……ちなみにお題はなんだったの……ですか? ……変なのだったら困ります……」


 私は突然走った為、息は整わないし腹筋は痛いしこれ以上は走れないと、元治君を止めお題を確認する……で、お題の紙に書かれていた内容は……、


「……無理ですよ……」


「……ああ、無理だろうな……」


 『お姫様抱っこをしてくれる人』……そう紙には書かれている……いや、本当に、


「……無理です、不可能です、他を当たるべき……」


 いや、それは……、


「……元治君が栄次君を妨害したと思われますね……」


 それは桐生元治(キングと呼ばれる男)にとってはかなりの汚点になるのでは……、


「……いや、妨害のつもりでは無く……」


「ああ、はい、わかってます、私が困ると思って助けてくれたんですよね」


 元治君は付き合いの長い私がなんとなく栄次君を苦手にしている事に気付いてくれている……いや、ゲームでのトラウマが疼いて……特に優菜(その1)での栄次ルートは……うん、思い出すのも辛い……、


「……いや、そうでも」


「桐生、どんなお題で優菜先輩を困らせてるんだ」


 元治君が何か言おうとしたところ、後ろから月史君を連れて栄次君がやって来た……私と月史君との共通点って何? そしてそのまま私が持ったままだったお題の紙を取り上げる、


「……くくっ、そう、これは優菜先輩が照れるね……じゃあ、先に行くから」


 そして確認後直ぐさまゴールに向かう……うん、どうしよう……って!?


「えっ!?」


 私は栄次君に返されたお題の紙を見て声を上げた……そして……、


「元治君……これ……」


 それを元治君に見せる、彼は声さえ上げなかったものの驚愕を顔に載せる……うん、でもここは栄次君に甘えて……、


「……行きましょう、元治君」


「……ああ」




 私達は手を取り合いゴールした……どうやら最下位は免れた様だ……最後の出場者がゴールしたところでお題の確認を始める……これが我が校の借り物競争のルールだ、


「えー、まずは一番手でゴールした岸元栄次さん……お題は……『 ()()()()()()()()()()()()()』……ええと、六崎月史君……ですか……ではどうぞ!」


 どういう理由で連れて来られたかわかってなかったらしい月史君は一瞬キョトンとした後……軽々と栄次君を抱え上げた……うん、彼は圓城寺家の護衛だからね……細く見えるけれど脱いだら凄いんだ…………うん、そうなんだ、お題の紙を彼は取り替えてくれたんだ……裏を探っちゃうのは人として駄目だよね……、


「えー、では四番手でゴールした桐生元治様……お連れになったのは婚約者の桜花院優菜様……途中揉めていた様ですが……そのお題はっ!! オー!! 『学園一の美人』!! なるほど! これは惚気ですか!? いえ!! 事実ですねっ!! もちろんオッケーです!」


 ……ちなみに栄次君が引いたお題はこれでした……助かったけど……凄く恥ずかしい!!




 色々あった体育祭が終わり片付けの監督をする私達生徒会、その途中私は元治君に連れられ栄次君のところに連れて行かれた……うん、ちゃんとお礼しないとね……、


「……………………」


 って!? 元治君? 連れて来といて無言て……ああ、うん、じゃあ私から、


「栄次君、先程は助かりました、ありがとうございます」


 ほら、元治君も、


「……助かった……礼を言う」


 よし! お礼は言えた……では私はこれで……って!? 元治君腕を離しましょうよ!?


「くくっ、別に、良いですよ……俺もあっちのお題の方が、くくっ、盛り上がるし、くくっ、変な目で見られず……済みましたから、くくっ」


 栄次君は笑いながら応じる……うん、確かに盛り上がった……特に一部の女生徒が……うん、本来のお題でも彼女達は盛り上がっただろうけどね……、


「あー、でも、栄次君始めに私の方に来ましたよね? 大丈夫でしたか?」


「ああ、大丈夫です、見つからなかった緑郎先輩と柊耶先輩の居場所を聞きに行ったって事にしたんで……実際いませんでしたし」


「ああ、確か二人は次の種目の準備でいなかったですものね……」


 うん、見事、流石IQ174の天才、


「……お前……結構ノリの良い性格だよな……なんでそんな地味な格好をしてるんだ? ……似合わないぞ……」


 お礼を言った後ずっと黙っていた元治君が突然口を開いた……いや、今それを!? それに地味な格好って……逆に悪目立ちしてるのに……気付いて無い? ……彼、腹芸は苦手なんだよね……、


「……くくっ、あー、そう? 似合わない? くくっ、そうだね……うん、検討するよ……くくっ、桐生はくくっ、わかりやすくて良い奴だな……くくっ」


 栄次君は少し驚いた後笑いながら答える……えー、元治君はわかりやすいんですか……私はたまにわからなくなりますが……まあ、ですが……、


「ふふ、元治君は優しいんです、やっと理解者が見つかりました」


 私の自慢の婚約者を褒めてくれる彼をあまり毛嫌いするのは止める事にする……まあ、出来るだけね……。




 体育祭翌日の振替休日は桐生家で元治君とゴロゴロとアニメや漫画を見て過ごした、そして翌日、登校した私達は……、


「おはようございます優菜先輩、朝から美人に会えるなんて幸運な日ですね……ああ、元治もおはよう」


 朝日を浴びて輝く金髪をきちんと櫛を入れ後ろにながし、大きな黒縁眼鏡をスマートなデザインのメタルフレームにかえ、ぶかぶかだった制服を体に合ったサイズに直した中等部生徒会代表補佐──岸元栄次と遭遇した……とりあえず言いたい……完全体キター!! そして私の感想……やっぱりちょいダサバージョンの方が好みー!!


「ふふ、おはようございます栄次君」


 とりあえず挨拶した……ちなみにゲームでの完全体への変身は中二の初夏でした、


「……おまっ!? どうしたその髪!? 染めたのか!?」


「くくっ、いや……戻したんだよ……お前に体育祭の後貰ったアドバイスを検討してな……くくっ、で地味に装うのを止めたんだ」


「んー? 戻しただけで無く切りましたか?」


「ええ、少し毛先に色素沈着があって……って、あれ? 優菜先輩は俺が染めてる事気付いてました?」


 いや、気付いていたというより知ってたんだが……まあ、知らなくても、


「ふふ、まだ私の方が身長が高いですからね? つむじの当たりを見て気付きました」


 ……ええ、身長は170の大台に乗りましたから、




 その後事情を聞きに来た柊耶に私が自毛である事を説明したり、栄次君がイメチェンの理由を元治君のアドバイスだと言ったり、その日の内に栄次君のファンクラブが設立されたりと色々あったので元治君も流してしまったのだろう……、


「……何時の間にか名前呼びに変更してたんだが……あの野郎……」


 ……まあ、戦いの後に友情が芽生える……うん、王道展開だよね。








 

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