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この学園には攻略対象者はいません。  作者:
第一章 彼らは冷酷副会長と黒幕令嬢、又は、鳥籃の幸福の姫君と凶悪過ぎた当て馬、でした。

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番外編 バレンタインの、その前に……、紗々蘭サイド

バレンタインデーなので……うっかり書きました。

紗々蘭さん一人称です。

 





 二月三日の夜、恵方巻を食べ、豆をまき、節分を賑やかに終えた私は、来たる乙女の戦いの日(バレンタインデー)に向け、材料やらなんやらを揃える為、必要と思われるものを書き出し初めた、


「ええと、バレンタインデーまでに用意するもの」


1、学園の女子児童達にブラウニーの袋にピンクのガーベラとホワイトレースフラワーをリボンで付けて(300個)

2、使用人のみんなにチョコマフィン(100個)チョコチップクッキー(300個)

3、親友と友人達にホワイトチョコレートアイス(500cc)

4、父と岸元きしもと家で食べるザッハトルテ(24cm型1ホール)

5、父と岸元の皆さんに贈るチョコクランチ(24個)トリュフ(36個)

6、栄次さんに


「……栄次えいじさんに……」


 私はペンを止めた──本命へのプレゼントって何だろう? と、……うん、王道を行くならハート型チョコレートだろう、けれど……、


「……溶かして固めるだけが一番難しいんだよな……」


 テンパリングは難易度が高い、温度計とにらめっこで温度を上げ温度を下げ……素人が手を出すと火傷する技術だ、


「特に私は面倒臭がりだからなー」


 ……いや、もちろん本命の為の行為だ色々と惜しむつもりは無い、だが……、


「……栄次さん、チョコ単体はそれ程好んで食べないんだよね……」


 そこまで喜ばれ無いものに、労力を傾けるか、と言えば、NOである、第一……、


「……栄次さんモテるからな……チョコいっぱいもらうだろうし……」


 私の婚約者(仮)はモテる、手作りは受け取らないだろうけれど市販品はもらうだろう、そしてそのご兄弟もモテる、そう考えるとみんなで食べるザッハトルテと小分けで渡すチョコクランチ、冷蔵庫に置かせてもらうトリュフでチョコ成分は十分……過剰かも知れない、そうなると……、


「……本命だし、消えもの以外を送ってもいいよね?」


 ずっと、手元に置いてもらえる物を渡そう……独占欲マーキングみたいでちょっとあれだが……。




「で? 何あげたら喜んでもらえるかなぁ?」


 二月四日の夜、丸一日悩んでも決まらなかった私は屋敷の数少ない女性陣を大浴場に誘い、相談する事にした、


紗々蘭(ささら)ちゃんも恋に悩むお年頃なんだなー」


 そう言って私の頭をナデナデするのは庭師の水幸みさちさん、小柄でメリハリボディーの美人妻です、


「水幸さんは旦那様に何をあげるの?」


 水幸さんの旦那様は城生院学園大学でロシア文学を教える准教授さんです、結婚して十二年いまだラブラブの仲良し夫婦です。


「私は旦那の好きなボンボンと浮気防止にネクタイだね」


 とびきり可愛いらしいのをしめて送り出すそうです、でも、


「ネクタイは参考になりませんね……」


「フフ、高校生へのプレゼントじゃ、ないよな」


 そう面白がりながらもスクラブを使ってのボディーケアに余念が無いのは真琴まことさん、学園内の診療所に勤務するモデルの様な美人女医さんです、


「真琴さんは竹生たけおさんに何をあげるの?」


 料理長の竹生さんの愛する妻でもあります。


「私はチョコはあげないで、プレゼントはわ・た・し、をするよ」


 今日のこれもその準備、だ、そうです、が、


「さらに参考になりませんよ……」


「紗々蘭さんがしたら大騒動よね~」


 そう笑いながら兄嫁に呆れた視線を送るのは梅子うめこちゃん、学園に勤務するカウンセラーさん、豊満なボディーで男子生徒の憧れの人(マドンナ)です、


「梅子ちゃんは本命に何をあげるの?」


 職場恋愛未満なのを私は知っています、


「他の同僚と同じチョコにカードを添えるぐらいかな~」


 色々大変そうなので負担をかけたくないそうです、……ですが、


「……もっと、ガンガン行っても良いと思うけど……」


「紗々蘭さん、人にはそれぞれのペースというものがありますから」


 そう私を窘めるのは紀香のりかさん、衣装部トップの知的美人です、


「……そうですね、ごめんなさい梅子ちゃん…………それで紀香さんは?」


 保守管理総括者(そう)さんの奥さんでもあります、


「私はチョコレートは市販品をそれにマフラーを編んでますね」


 まだまだ寒いですから、だそうです、……でも、


「……立春も過ぎてますし……」


「マフラーは登下校ぐらいしか付けませんもんね」


 そう私の心を代弁してくれたのは新人護衛のゆずりちゃん、儚げな容姿に鍛え上げた体のギャップ美少女です、


「じゃあ楪ちゃんは何にするの?」


 熱烈なアプローチをうけている彼にどんなプレゼント(思い)をあげるのかな?


「……ええと、その……お世話になっておりますし……手作りのチョコをあげたいのですが……」


 技術に不安があるそうな、ならば!


「私に任せて! お菓子作りは一番の趣味だから! レシピも道具も提供するし、作り方も手取り足取りで教えるから!」


「紗々蘭それ現実逃避だよね?」


 鋭いツッコミを入れてきたのは私の秘書で姉の様な存在の今璃いまりお姉ちゃんです、最近胸部に進化の兆しがあります、


「だって~、お姉ちゃ~ん、栄次さんの欲しい物って何? 兄様やこう君に聞いても、わかんないって言われたし~……」


 ……ええ、リサーチはしたんですよ、ご兄弟に! でも、


「……まあ、あの、溺愛っぷりなら、何でも喜ぶだろうけど……」


 と、いうようなことをお二人にも言われました、


「もらったから喜ぶ、じゃなくて、もらった物にも喜んでもらいたいんだよ~」


 私は湯船の縁に打っ伏す……ちょっとのぼせてきたかも知れない、


「……そろそろ上がろう、紗々蘭、顔が赤い」


 護衛で乳母のほのかの命でお風呂女子会はお開きになりました、……結局、既婚者達の惚気を聞いただけか……。




 なので翌日屋敷内の若い男性陣に話を聞こうとした私ですが、


「紗々蘭、彼女いない率70%を超えるお兄さん方にそれを聞くのは酷というものだよ……」


 と、今璃お姉ちゃんに真剣に止められ、自重した……お見合いパーティーでも開くべきか?


「紗々蘭、現実逃避は止めようね?」


 ……ハイ、お姉ちゃん……、


「ふう……で、今日ボクとひとしちゃんで栄次先輩を観察して来たんだけど……聞きたい?」


「! もちろんですよ! 大好き! お姉ちゃん! あ、もちろん史兄ひとにぃも大好きだよ、ありがとう」


 私は今璃お姉ちゃんに抱き着きながら感謝を伝えた、隣にいた史兄──ずっといた──にも感謝した、


 とりあえず制服を着替えるという二人を見送り、私は自宅のリビングでお茶の準備をしておく、紅茶のポットにお湯を入れた頃部屋着に着替えた二人がやって来た、


 お姉ちゃんは紅茶を一口飲むと切り出した、


「うん、とりあえず観察結果を言うね? 紗々蘭の口ぶりだと常に持ち歩ける物をあげたいんでしょ? じゃあ、まず定番の財布、これは二つ折りの結構使い込んだ物を使っているから贈ったら変えるんじゃないかな? 次に腕時計、これはそもそも学園では使ってない、とは言え休日に出かける時は付けてるし、贈れば毎日付けるだろうね、……で? ここまで聞いてどうする?」


 ? どうするって……、


「どっちも今からじゃ、栄次さん専用(オーダーメード)は作れないよね……財布なら付き合いのある革専門店からいくつか見繕って……時計なら国内時計メーカーからカタログが来てたから……」


 ……確か納戸に……と、取りに行こうとした私を二人は揃って止める、


「紗々蘭……それはいくらぐらいの物を想定している?」


 史兄が真剣な表情で尋ねる、ん? ええと、


「財布は十万円ぐらいかな? 時計なら……んー、十五万円ぐらい?」


 どっちもブランド品じゃないし、そんなものかな?


「うん、アウト、……あのね? 紗々蘭? それは君が稼いだお金だし使うのは問題無い……でもね……ボクは思うんだ……年下の彼女に高級品をもらって素直に喜ぶ男はクズか金銭感覚の無いボンボンだけだ! ってね」


 栄次先輩はどっちでも無いだろ?


「……………………」


「……多分栄次は普通に喜んで見せるだろうが……まあ軽くへこむだろう」


 嫁の方が稼ぎが良い、は、離婚理由にもなるぐらいだし、


「……………うん、わかった、止めてくれてありがとう…………でもっ! 二人がかりで言わないで! ……落ち込むから~」


 私はムギュッとクッションを抱きしめる……あまり自覚は無かったが私の金銭感覚は世間とずれてる様だ、


 ヘニャリと落ち込み反省する私を、二人は頭を撫でながら見守ってくれた……ううっ、愛されてるな私……、


「……うん、よし! 大失敗する前に気付けて良かった! でも、どうするの? 私、栄次さんに小学生が買える様な財布や時計をもたせる気は無いよ?」


 うん、ありえない、


「まあそうだね、栄次先輩は安物似合わないしね……で、財布を見てて史ちゃんが気付いたんだけど……」


「栄次は財布に学生証を入れてるんだ」


 ? まあ、結構いるよね? 男子の半数はそうだし、


「で、その財布を鞄に入れているんだ」


 ? それもまあおかしくは……、


「……それ、かなり面倒じゃ……」


 うちの学園、特に高等部は学生証を使う機会が多い、キャッシュカードと同じサイズのそれが、身分証と財布と鍵の機能を兼ね備えているからだ、そして高等部は授業ごとに教室を移動するシステムをとっている、で、学生証で出欠の確認をしているから……、


「……教室を移動するごとに鞄から財布を取りだしてって……」


「まあ栄次は常に鞄を持ち歩いているし、それほど気にはして無い様だが……」


「……でも、鞄から財布を取り出すより、ポケットから学生証を取り出す方が楽だよね? ……財布に入れてるってことはなくすのが嫌なのかな? ……なら……」


「ふふ、紗々蘭?」


 名前を呼ばれて、気がつく、二人は優しい表情で私を見ている、だから私は……、


「大好き! お姉ちゃん! 史兄! ありがとう! おかげでプレゼントが決まったよ!」


 と、お姉ちゃんに抱き着き愛を伝える……紀香さんに相談しよう、と考えながら。






 そして、バレンタインデー当日、大量の感謝チョコ製造の合間に紀香さんと話し合いながら作った学生証ケース──クリップと伸び縮みするチェーンを付けて落とし難くした物──を綺麗にラッピングしてコートのポケットに入れ、ザッハトルテと色々なチョコ菓子を父と旧冬邸に持って行った私は、二人っきりになった時にそれを渡し、チョコレートよりも甘いお返しをもらったのですが……、それは……、






 …………私の口からは言えません!!


 




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