第二十話 翔馬『楽しい学園生活と憂鬱な夏休み』
姫様に認識され、超強力な後ろ盾(候補)なんてものを手にし、調子に乗って運動会で活躍して姫様にアピール! なんてことをたくらんでいた僕ですが……。
「キャー! 白姫様ー! 紅姫様ー!」
……白姫と姫様の大活躍で霞みました。身体能力まだ男女比無いもんね。
ちなみに紅姫様とは『紅薔薇姫』の略。姫様のあだ名の一つだそうです。うん似合う!
その翌々日。双姫会という姫様方のファンクラブに、
「これ、私の残念な求愛者」
と、姫様にご紹介いただき、
「……そうです。僕は……姫様が大好きで大好きで仕方がなく……お側に居られるだけでは満足出来ず……その瞳に映りたいと、ただひたすらに姫様の愛を乞う哀れな道化です」
と、ご挨拶いたしました。
正直戦々恐々としてたんだけど、この挨拶と、僕が白姫と和やかに友情を深める様子を合わせ見て、『道化王子』なんてあだ名をいただけるくらい暖かく受け入れて下さいました。
「それで二年生の時の紅姫様の名言が……」
彼女達は姫様の素敵エピソードを教えてくれる優しいお姉さん方です。
ちなみに中央塔では中高生の、食堂では初等部の、とファンクラブ内でも住み分けているそう。
『双姫会』はメッチャ統制がとれている組合です。
そして迎える夏休み!
……に、会う約束ゼロ。
……仕方がない、仕方がないけど、
「……夏休みがこんなに憂鬱なのは初めてです」
「あんたっていちいち大袈裟よね」
白いセーラーも眩しい姫様はつれないお返事……はあ、
「せめてメール、メールしても良いですか?」
忘れられたくないんだよっ!
「……送りたければ送れば?」
「ありがとうございます!」
てな訳で夏休みの目標!
『姫様に毎日メール、そしてあわよくば返信を!』ですっ!
七月中は友人達と色々なところに行き、少しでも姫様の琴線に引っ掛かりそうなものをとにかく激写、ウンウン悩みながら文面を考え毎晩八時に送信、を日課にしていた。
……返信0で、終わりました。
なのでさらに気合いを入れて臨む八月! 大自然名建築いっぱいのオーストラリア! で、とにかく激写! いっぱい送信!
……返信……キター!!
『風邪引かないのよ?』
な、なんて心優しい内容!
「ス、スクショ、ロック、転送、保存、と」
そして無事帰国のメールを送ったところ、
『そう、私は逆にこれから出国、現地合流で、祖父母と三人でスイスの城に泊まるわ』
との返信が……あ、時間的に国際線ターミナルですれ違ってた。っぽい。
……なんてこった!
「く、悔しい!」
「……保護者の方とご一緒だったんじゃ?」
………………、
「あ、危ないところだった?」
後々聞いたところ、
「ああ、姉様のメイドのミナモさんに送ってもらったわ」
……安全、だった?
「ああ、モカたん周囲の過激派ランキング二位の」
「ふえ!?」
……ほぼ乳母に近いお姉さんで……とても、とてもとても姫様を大切に思っている方だそうです。
……あ、危ないところだった。
『俺の大切な人に何絡んでるの?』
美しいクイーンズイングリッシュで年上の友人が地方レベルではイケメンな男に話し掛けている。
……説明します。ここは僕らの田舎からほど近い、スポーツ施設のテニスコートの観戦席、で、お盆で帰省中の僕と姉ちゃんは共通の友人の応援に来てた訳ですが……、
「百合恵、本当に帰って来てたんだな」
と、姉ちゃんに中学時代バッサリとフラれたはずの男に話し掛けられたのです。
「ようやく俺の価値に気付いたんだな」
なんて意味不明な台詞で。
んでもっかい姉ちゃんがバッサリしたのに、めげることなく強すぎるメンタルで話し掛け続ける男に気付いた、片割れの応援とサポートの為会場にいた友人が駆け付けてくれ、そして現状にいたる訳。
「え、は? 英語? 何言って……」
えー、ずいぶんゆっくりで発音綺麗だったのに聞き取れなかったのかー、
「ああごめんね? 百合恵ちゃんが日本語でさんざん拒絶してるのに気付いてないみたいだから、日本語通じないんだと思って」
真夏の太陽に焼かれてるとは思えない爽やかさで友人──岸元栄次君が続けます。そして、
「っ! 何だよてめぇ! 馬鹿にしてんのか!?」
実はバスケ部でそこそこ長身な男の恫喝も、
「うん、もちろんしてるよ?」
涼しい笑みで受け流す。……っていうかすごいこと言ってるよね? 栄次君……そろそろ殴られるよ? それ狙い?
「な!? つーかてめぇは百合恵のなんなんだ!?」
あ、一応スポーツマンの自覚があったのか堪えた! そんな男に、
「んー、放課後の半分は一緒に過ごし、週末には二週間に一度は必ず出掛ける関係?」
事実だけど曲解されるだろうことを言ってさらに挑発する金髪の超美男子、そして異様にキラキラしい笑顔で、
「で、君は? 俺の一番大切な女の子の……何?」
と、続ければ……あ、逃げる? ……まあ、逃げるよね。栄次君城生院の制服着てるし、うん、正しいはんだ、
「……この尻軽女」
ん? ………………は?
「……え、今なんて言ったお前……破滅させるよ? ……高校の……さん?」
忌ま忌ましい捨て台詞を吐いた男をすかさず捕獲し物陰に連行する友人と僕。
「な、なんで俺の名前……」
「ん? 知ってるよ? 君のお父さんが経営してる会社の名前も、その大口取引先に女傑と呼ばれる社長さんがいることも、ね?」
「んー、それからー、僕。あんたの伯母様とメル友? なんだけどー?」
今後一切姉ちゃんに関わらんとの言質をゲットしました。
「っていうか君、なんであの人の名前とか知ってたの?」
夕方、試合をストレート勝ちした弟を連れた友人と、待ち合わせたホットケーキが美味しい喫茶店で姉ちゃんが感謝とおごりを伝えた後に問い掛けました。……うん、僕も疑問だった。
「んー、百ちゃんが絡まれてるのに気付いて即調査。名前さえわかればもう芋づる式? ネットって便利だよねー」
……わー。
「……あんたと『友人』で良かったわ」
ですね! そんな決して敵にはしたく無い彼は、
「……俺も、百ちゃんと友人で良かった!」
ホットケーキを嚥下ししみじみと呟いています。
……お菓子さえ与えとけば安心?
その後、応援と近所の菓子店巡りを一緒にする約束を、兄の方と結び、弟の方に今日の勝利の祝福と、これからの試合の応援を伝えていたところ……、
「んー、メール……ああ、もう終わったんだー」
さっきメールで、ここらの財界に姉ちゃんが圓城寺の所有だって知らせるように頼んだんだよねー。うん、さすが白姫! 仕事が早い!
「ん? どうしたのニコニコして」
「うん、あのね光三朗君、さっき、待ってる間に圓城寺、」
「! 聞きたくない!」
……??
「え、どうしたの栄次君」
いきなり耳塞いで、
「……あー、栄ちゃん圓城寺関係NGなんだよねー」
……?
「NG……ってなんで?」
っていうか圓城寺の庭で生活してるのに、
「……いや、なんて言うか……中学の入学式での理事長の挨拶を見た瞬間、あ、この人ヤバい。って本能的に思って……以来好奇心で死なないよう情報からシャットダウンしてるんだよ……関わらなければ見逃してもらえるだろうし」
…………だから今回は婚約してないのか、フリーなのに、
「……それに……これ被害妄想じゃなく……栄ちゃんとついでに俺、学園ですれ違う理事長に……ガチで睨まれるんだー……なんでか」
…………わー、それは、
「怖いわね……」
世界でもトップクラスの大企業のトップに、とか、
「……お先真っ暗?」
「「…………退学になってないからきっと平気……だと思う」」
おとなしくしてるので見逃してほしい、とのことです。
けれどそんな二人は一月足らずで圓城寺所属になりました。
……ああ、やっぱり白姫は彼を選ぶんだねー。
うん、
……ファイト、栄次君。
実は本編一話、テンパってた栄次君。
出会う前はテンション無理矢理上げていた。
んでしょう! きっと。




