シュークリームパニック
三人称、短いです。
目の前のシュークリームの山をどう攻略するか、圓城寺家の面々は深く悩んでいた、
「……で? どうするんですかこのシュークリームの山、七十個近くありますよ?」
圓城寺邸、その全ての保守管理を総括する男──二条霜三十七歳既婚子持ち──が家令さん──六崎月臣六十二歳独身三人の義孫持ち──に尋ねます。
「ふふふ、紗々蘭お嬢様は随分と例の少年に御執心の様で……」
さて、どうしましょうか? と、孫の様な少女の春の予感を微笑ましく思いながらも、目の前のシュークリームの余りの量に家令さんもため息をつきます。
「……いや、俺もつい何時もの感覚でこれぐらいならハケルかと思っちまったんですが、……ご当主が出張中で当主付きの連中が出払ってるのを忘れてましたよ」
すんません、と謝るのは、圓城寺家の料理長──三澤竹生三十六歳既婚子持ち──です、普段の圓城寺家には二人の主人と四十八人の使用人が暮らしている為七十個ぐらい一瞬で消えます、むしろ足りず醜い争いが起こります、ですが主人の一人と九人の従者が明日まで帰りません、五分の一が出ているのです、一人あたりのノルマは一、七五個です、いや、イケるでしょう、と思ったあなた、紗々蘭さん手作りのシュークリームは野球ボール大、しかもパンパンにクリームが詰まっているボリューミーな一品なのです、
「……正直、厨房の連中は味見のしすぎでほぼ戦力外で、実は私もちょっと見るのも辛いと言いますか……」
この大量のシュークリームは紗々蘭さんと厨房の面々の試行錯誤の証です、分量の割合、シューとクリームの相性など、様々なパターンを作り、ようやく出来た至高の品を紗々蘭さんは学園に持ち込み、出す直前に仕上げたのです。
「……ここは一つ若い者達に頑張っていただきますか……」
圓城寺邸最年長の家令さんの発言に三十路の二人も頷きます、この場合の若い者は三十歳以下の面々を指します、圓城寺家はほとんどが四十以下、三十代は年配な職場です。
さて、頑張る様求められた若者達が余りの量に悲鳴を上げ、責任を感じた紗々蘭さんが近隣に住む友人に配りまくり、なんとかほぼ一人一個のノルマに落ち着いたシュークリームを、秋の和定食な夕食の後、デザートとして食べながら、その場の全員が、
……美味しいけど、しばらくカスタード系のおやつはいらないなぁ、と思ったのでした。




