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神の力と人の心

 ルドは畑仕事が素早く終わったので、アウルラという森に行き自らの力を試してみることにした。


「ここなら、誰もいないな……、よし! 」


 ルドは静かな、鳥のさえずりが静かに聞こえる森の中、自らの感覚を頼りに、神ディードからもらった力を試す。


「は! 」


 ルドの目の前が光る、そしての光は揺らめきながら人の形へと変わっていく。


 そして、真っ白な体と赤い水晶の様な顔を持つ人の形をした物になった。


「ほうほう、なるほど……」


 ルドはこの力、『我楽の軍衆(ガヤ・ファイラク)』様々な機能を持つ忠実な人形を無限に生成できる力と理解する。


「次は……は! 」


 ルドは指先を『我楽の軍衆(ガヤ・ファイラク)』で作った人形の前に突き出す。


 指先が一瞬だけ光った後、人形の上半身が消えていた。


「この力も理解した……」


 ルドはもう一つの力、『神罰の光(バラー・ダウゥ)』触れたものを完全に消し去る光を放つ力と理解する。


 ルドの本質は人から『精霊』に変わった。


 精霊とは神の力を宿した人の事であり、人とは存在と法則の次元が異なりつつもあり、人の理でも生きる存在。


 そしてルドには『我楽の軍衆(ガヤ・ファイラク)』と『神罰の光(バラー・ダウゥ)』二つの『神話人演ミソ・ロギア』と呼ばれる特殊能力も含めた精霊としての力をまるで呼吸するように理解でき使いこなすことができる、そんな自分に不思議と違和感を覚えなかった。


「ふふ……素晴らしい……! この力があればこの世界をもっとより良き方向へ導くことができる……! 」


 この腐った世界をより良き方向へ導くことが出来るという事実にルドは興奮を抑えきれなくなる。


「まあ、しかしある程度の準備は必要だな」


 ルドは自分ひとりでなんでも出来ると思うほど、うぬぼれ屋ではなかった。


「しかし、どうすれば? 」


 学の無いルドには一体何をするべきかという、具体的な計画が思い浮かばない。


 グゥ~


 ルドの胃袋が空腹を訴える音が響く。


「とりあえず、飯食うか」


 ルドは森をでた。


......................................................


「やっほ~、久しぶり! 」


 ルドが家に帰ると聴き慣れたしかし懐かしい声が聞こえた。


「あ……お前は」


 ルドは声の主である小柄な少女を見る。


 その少女の名はルルリ・ケト・マッズー、ルドの幼馴染だ。


 彼女はそのたぐいまれなる魔法の才により、ケトの名と名誉貴族の地位を得ていた。


 正直、ルドはルルリにいい感情は抱いていない、才能や地位への嫉妬と権力の犬に成り下がった嫌悪感からだ。


 しかし、今のルドにとってそんな事はどうでもいい。


 ちょうどいいのがいた……。


 ルドは世界をより良き方向へ導くのに、役に立ちそうだ、ということしか考えられなかった。


「よお……久しぶり」


 なるべく普通にルドはそう返す。


「うん! 」


 ルルリは嬉しそうに返す。


 ケトの名を名乗り始めた頃から、ルドはルルリに対し少し冷たかった、表面上はいつもどうりだが、心の深淵にある氷と炎のような物があることを、ルルリは僅かに感じ取っていた。


 だが今日はそれが無かった。


「えへへ」


 ルルリは自然と顔が緩む。


「……? 」


 ルドは少し不思議そうにしたあと


「なあルルリ、飯を食い終わったら、少し話があるんだ、いいか? 」


 ルルリにそう言った。


「え……う……うん! 」


 ルルリは久しぶりにルドからの誘いに顔を赤らめながらうなずく。


「めずらしいね~! あんたが女の子を自分から誘うなんて! 」


 ルドの母親が少ししゃがれた声で、そう言う


「母さん! そういうのはちょっと……」

 

 ルドは手を振りながら、困ったようにそう言うと


「はは! ごめんごめん! 」


 ルドの母親はそう言って


「ごめんなさいね~、こんな物しかなくって」


 パンと質素なスープを出す。


「いえいえ、急に押しかけたのは私ですし……それに私にはこっちの食事の方があってますから」


 ルルリは名誉貴族になり、無駄に豪華な食事ばかり食べさせられてばかりいた。


 名誉貴族とは本来、貴族の血筋の無いものに与えられる貴族の称号、そして名誉貴族が平民の生活をするという事は、平民より貴族が劣っていると思っていると受け取られることがあるので、貴族風の生活を強いられるものだ。


 ほとんどの名誉貴族は喜んで貴族の生活を送るが、ルルリの肌には合うものではなかった。


「…………」


 嫌味かよ……。


 ルドはそう思いつつ、パンを食べる。


 しばらく立ち、二人は食事を終える。


「ルルリ、アウルラの森に行こう」


ルドが早々にそう言うと


「うん! わかった! 」


 ルルリは立ち上がる。


「アウルラの森か~、懐かしいね~、昔二人でよく遊んだよね~」


 ルルリは思い出話しに花を咲かせる


「うん、うん」


 ルドは正直、興味の無い話題であったが、とりあえず頷く。


「そういえばさ……小さい頃に私大きな蛇に捕まりそうになっていた所を助けてもらったりしったけな~、他にも色々助けてもらったよね~」


 嬉しそうに楽しそうにルルリは話す


「そうか……」


 ルドの方が森に関する知識があり、ルルリにも頼られていたが、そんなのは小さい頃の話しルドにはどうでもいい事でしか無かった。


「そろそろ、いいか……」


 ルドは人気の付かないところで立ち止まり


「今から大事な話をするぞ……! 」


 ルドはルルリの瞳を見つめる。


「…………」


 ルルリはそのあまりに今まで見たことの無い真剣なルドの声音にゴクリ……とつばを飲む。


「まず一つ……………俺は神に力を貰ったんだ」


 ルドがそう言う。


「…………? 」


 ルルリはすぐに理解できなかった。

 

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