青年ルドの終焉
『フレイヤ手記』「創造の意義と転換の序章」
ここは剣と魔法の世界。
12の国があり、時として争い、時として安らかに、国同士が均衡を保っていた。
そんななか、小さな小さな田舎村で農作業に勤しむ一人の青年がいた。
「は~、疲れた~」
青年ルド=アーケムはクワを置き、ため息混じりに一息をつく。
「はぁ……」
今度は混じりにではなく本格的にため息をつく。
最近、税金の額が多くなってきており、耕せど働けど暮らしは一向に良くはならない。
「戦争か……」
ルドは空高く飛ぶ鳶を眺めながらそうつぶやく。
ルドの住むスィグエン王国が隣国であるアメロン王国に近々戦争をすると言う
国境付近で見つかった金脈の所有権での交渉が決裂したそうだ。
結局どっちの国がが金脈の所有権を得たところで、庶民の生活が変わることはない。
戦によって田畑は荒らされ、兵に駆り出された男達は死に、その妻子が涙を流す。
買っても負けても結果は変わらない
土地は荒れたまま、死んだやつは戻らない。
勝って、手に入れた金脈の儲けが平民に回ってくることはない、一部の特権階級の小遣いに成り果てるだけだ。
税金も戦争で消耗した国力に付け入られて、他国に責められないようにするという名目で上がったまま。
負ければ、賠償金がどうこうで税金がもっと上がる。
勝ってもも負けても貴族は贅沢三昧、平民は貧乏暇なし。
しかも、貴族や騎士は金をしこたま掛けて、いい鎧で身を守り、殺すのを控えられ、捉えられても手厚く保護され、すぐに大したことのない保釈金で家に帰ることができる。
しかし徴兵された平民はなけなしの金で国から貧相な防具や武器を買わされ、貴族の盾として、捨て駒として遠慮なく殺され、捉えられたら魔導実験のモルモットにされるという噂まである。
「クソッ……!! 」
ルドは強くクワを握り締める。
だがルドに出来ることはそのぐらいだ。
所詮できることは何もない
何時の世の中、弱者は強者の、享楽のためにひもじい思いをし、安全のため血を流し、利益のために損をする。
それがこの世の理なのだ。
「はぁ……」
ルドはため息をつき、そんなこと言っても仕方がないと、自分と家族の胃袋には、ほとんど入らない作物を作るためクワをふり下ろそうとした瞬間
ルドの意識が光となる
「……!! 」
ルドは驚きのあまり声も出ない。
そしてルドの目にこの世のものとは思えなくらい美しく神々しい男が現れた。
「ルド、だよね? 」
その男は見た目に反して、フランクな口調でルドに語りかける。
「あ……はい」
ルドは突然起きた怪現象に心ここにあらずといった様子でそう答える。
「そうか……ならよかった、はいこれあげる」
男はそいって光をルドの眼前に突き出す。
「あの……どちら様で? 」
ルドは間の抜けた声を出す
「ああ……俺はディードって言うんだ、まあこの世界の創造主だと思ってくれればいいと思うよ」
ディードは軽いノリで答える
創造主……
ルドはその創造主と名乗る存在に、言葉ではできない激しい感情に駆られ
「どうして、こんな残酷な世界を……! 」
ルドはディードを睨みつけた
しかし、ルドは気づいてしまう
ディードという本能でわかる超存在にとんでもない事を言ってしまった事を
「あ……あ……」
ルドの顔から血がサーと引く感覚がはっきりとした。
「そうか、すまんな……まあこっちにも色々あってな、こうなってしまったんだ、すまん!! 」
ディードは両手を合わせ謝る。
「お詫びというか、まあ……人々より良い生活を営んでもらうために君は神の代行者として『精霊』となり、人々を導いてほしんだ」
ディードは再び光をルドの眼前に突き出す。
「俺が……」
ルドは光をじっと見つめる。
「ああ、君がこうすれば世の中良くなると思ったことを実行する手助けになるはずだ」
ディードはルドの目を見つめる、そしてルドの身体に光を入れる。
突然に光りは消え、世界が元に戻った。
今のは幻覚……だったのか?
あまりに非現実過ぎる出来事、そして何も変わった様子の無い身体
「まあ、いいや」
ルドは変な夢でも見たんだろうと思い、クワを振るう
しかし、その行動がさっきの出来事が現実であることが証明させる。
「クワが軽い……? 」
クワだけじゃない全てが軽い
どんどん畑を耕してしまう
「これが『精霊』の力……! 」
本来なら3日かかる仕事を1時間で終わらせたルドは感慨深そうにそうつぶやいた。