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神がつくりし世界で  作者: 小日向 史煌
第5章 それぞれの想い
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おまけ〜ザックの手紙〜

ザック視点です

 


 親愛なるザックへ


 この手紙を読んでいるということは、リリーと会えたということだね。本当によかった。手紙を書いたのは他でもない。ザックがなぜ普通の器量しかない両親から産まれたのに、そのような力があったかを説明するためだ。

 農業を生業として生きていた父さんだが、生活が苦しくなって王都へ出稼ぎに出ていた時にアイリーンと出会ったんだ。父さんの一目惚れさ。アイリーンの両親はすでに亡くなっていてね、祖父は生きていたようだけど疎遠だったアイリーンに、お金が溜まったら村へ帰るがついてきてほしいと頼んだんだ。そして父さん達は結婚した。


 村での生活は貧しかったけれど、幸せだった。リリーやザックという可愛い子供にも恵まれて、幸せだった。そしてリリーが12歳になった頃、アイリーンが言ったんだ。祖父がロミオ・ランバートという魔術師だと。父さん達の両親も器量は小さかったが、祖父の血が入っている以上遺伝するかもしれないと。

 そこで、リリーの器量を測った。と言っても学校へ行ってなかったから、町にある店で調べてもらったんだが、リリーは普通だったんだ。ザックも12歳の頃調べて貰った。何も言わずに調べたから気付いていなかったかもしれないが、その時も普通だったんだ。

 だが、ザックの魔力は爆発した。あの後、騎士に器量を調べなかったのか聞かれたから店の話をしたら、その店は違法営業だったらしく騎士に摘発されてしまった。本当に申し訳ないことをしたよ。ちゃんと学校に行かせてやれていたらと何度も後悔した。


 でも、ザックと一緒に過ごせる時間が長くなったと思うとよかったのかと思う時もあるんだ。こんな父親でごめんな、ザック。アイリーンのことでザックが苦しんでいる、そんな時に側にいられなくてごめんよ。でも、自分を責めることはやめてくれ。アイリーンはザックを守れてよかったと笑っていたんだ。父さんも同じ気持ちだ。子供達は父さん達にとって宝物であり、希望なんだ。

 だから、下をむくな。愛されてることを誇りに思え。そして、大切な人を守れる男になれ。それが父さんの言えるアドバイスだ。

 大きく成長したザックと会えるのを楽しみにしている。愛しているよ、ザック。


 いつでも側に…父より






「よかったわね、ザック。リリアン達に認めて貰えて。」



 精霊省で姉さん達に戦に出ることを認めてもらい、魔法省に申請に行こうとすると、セレーナさんも一緒に行くとついてきた。なんでも魔法省で受付をしているエリンさんに挨拶しに行くとか。



「そうだね。まぁ、何がなんでも行くつもりだったけどね。」

「まぁ!ザックにしては珍しく強気ですのね。」



 そう言って隣でコロコロと笑うセレーナさんを盗み見る。

 貴重な光魔術を使えることにより、多くの人に媚びられ、人の表も裏も知ってしまった彼女は、人を信用出来なくなってしまったらしい。詳しい事は誤魔化されたままだが、ある事件により光魔術の力を受け入れ難くなってしまったようで、たまに自虐的になるセレーナさんをエリンさんに見てあげていてほしいと頼まれたのが彼女への興味のきっかけだったのかもしれない。

 金色に輝く長い髪をなびかせ、大きな緑色の瞳は常に微笑み、柔らかく可憐な貴族令嬢であるセレーナさん。しかし実際は、頑固者でお転婆、僕達姉弟の信頼関係に憧れる寂しがりや。そんな魔術を教えてもらう過程で知っていく様々な表情が気になって仕方がなかった。


 そして今回の戦の件である。ティアだけでなく、姉さんやセレーナさんが行くのに、僕だけ王都にいろなんて認める訳にはいかない。なんのために僕が魔術を懸命に習得したのかわからないじゃないか。


 だから姉さんから告げられた次の日、僕は第2王子のカール様のもとへ向かった。カール様は僕と同い年だから、学校にいるとわかっていて乗り込んだのだ。そして結界術が得意な僕を売り込むのに、父の手紙にあった曽祖父の話まで持ち出し売り込んだ。カール様は兄であるウィリアム様に聞いてくれると言った。巷の噂では派閥争いがあるだとか聞くが、カール様がウィリアム様のことを大好きだということは魔法学校の中では常識である。それを利用する僕も酷いやつだけど、そんな事構うものか。

 次の日、カール様から呼び出しを受け会いに行くと、伝言を預かったと言われた。それは「君の姉達を納得させられたら、認めよう」との事だった。そして今日、その説得作戦を決行したのである。



「今回だけは姉さん達に譲るわけにはいかなかったから。」



 そう、父さんの言う大切な人を守れる男になるには譲れない。必ず守り抜く、そう誓ったのだ。僕を見上げる彼女を見る。



「父との誓いは守らないとダメだから。」

「頼もしいですわね。」



 そう言って笑い合いながら、僕はお守りである手紙の入ったポケットを触る。

 お父さんお母さん、愛してくれて、守ってくれてありがとう。僕、2人のような立派な人になるよ。



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