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神がつくりし世界で  作者: 小日向 史煌
第2章 王都へ
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 あの後、私とティアは魔術師の方達や警備員、エリンに酷く怒られた。そりゃあもう思い出したくないほどに。怒られ慣れてる私も、さすがに反省した。でも、後悔はしていない。

 ひとつ気になることは、ザックの部屋の下で叫んでいた時、急に植物が出てきたことである。魔術師にどうやってやったのかと聞かれたが、私は魔術師の誰かが助けてくれたのだと思ったと答えた。実際は誰も手助けなどしてないし、植物を急激に成長させる魔術などないのだと教えられた。私達でもなく、魔術師でもないということが発覚し、小さな騒ぎとなった。寮にいる人達は研究好きが多い為か、私達を放置して討論会が始まってしまったので、こっそり抜け出しセレーナの元に行く、セレーナは解決したことをとても喜んでくれた。


「セレーナがここまで連れてきてくれたお陰だよ!ありがとう。」

「いえ、私は何もしていません。お二人の頑張りです。ただ、窓から飛び降りた時は心臓が止まるかと思いましたわ!」

「「申し訳ありませんでした。」」


 セレーナはふふふ、と笑いながら自分にも伝授して欲しいなんて言ってきたが、さすがに貴族の方に教えるのは気がひけるので誤魔化しておいた。


 ザックは、しっかり魔力を制御出来るように学校で学ぶと意欲を見せていた。その姿を見れただけで一安心だ。ザックには、お父さんから現実を受け止める覚悟が出来たなら渡してほしいと預かった手紙を手渡す。それを見つめるザックの瞳は揺れていた。何を思って、いつ開くかはザックに任せよう。私達は明日会う約束をし、そのまま寮を出て近くの宿へと向かった。





 次の日の午後、学校近くのカフェには私とティア、ザック、セレーナの4人が集まった。


「私達、ザックが魔術師としての勉強が終わるまで王都にいようと思うの。」

「お父さんはどうするの?」

「大丈夫、隣のおじさんが面倒を見てくれてるし、もうだいぶ元気になったのよ!お父さんもザックの側にいてくれって言っていたし、私も今のままお父さんの目の前になんて行けないわ。」


 ザックは私の目を見つめ、しばらく考えてから承諾した。私の意見を結局聞いてくれるあの頃に戻った気がして少し嬉しくなった。

 セレーナが安全な店を紹介してくれるというので、私はその言葉に甘えて働き場所を紹介してもらうことにした。ティアは、剣の訓練を怠りたくないので自警団に入りたいとうことでセレーナが保証人を探してくれるそうだ。後は家を借りてザックも魔法省から許可が出たら3人で暮らせたらいい。



 3か月前、突然生まれ育った村がなくなり、母を奪われ、家族がバラバラになった。今まで抱いたことのない憎しみや絶望を味わったけれど、側にいてくれる人がいる大きさを知った。新たな出会いもたくさんあって、新たな生活が始まろうとしている。カフェの窓から太陽が降り注ぐ、それは私達を見守るかのような今までと変わらない暖かい光だった。




 ****


 それから半年、私は紹介してもらったカフェで店員として働いていた。夫婦が経営している小さなカフェで、お菓子をつくる夫のダンさんは、物静かで職人気質が強い。妻のミラさんは優しい雰囲気を持ち、お母さんを思い出させる人で、接客を1人でこなしていたそうだ。しかし、あの寡黙なダンさんが作ったとは思えない可愛らしい飾りに彩られたお菓子が噂となり、女性や貴族、女性へのプレゼントに購入する男性と客の数が増えた為1人では回せなくなり人を探していたらしい。因みにセレーナのお母様がこの店の常連さんということで紹介してもらった。


 ティアは無事、自警団に入団した。保証人にはニックさんがなってくれたらしい。なんでも、自警団にも顔が効くとか…ニックさんも何者なのだろうか。男性ばかりの中にティアのような美人が入って大丈夫かと心配したのだが…1番心配していたのは心配性のザックだけど。下心見え見えで近づいた者達を1度に地面とお友達にしたらしく、それからそんな輩は現れなくなったと笑顔で言っていた。心配など必要なかったみたい。


 ザックは村では年齢よりも上の勉強をしていたし、セレーナが魔力制御の仕方を教えてくれていたそうで、たったの半年で実年齢の学年まで飛び級してしまった。セレーナはとても素質があるし、努力家だからとザックを褒めていた。また、少しずつ昔のザックのように表情が出てきたせいか『ザック君を見守る会』が密かに発足されたとかされていないとか。


 セレーナとは月に2〜3回のペースでお茶会をしている。カフェでするのがほとんどだが、1度セレーナの自宅という王都の別邸に招待された。別邸なんて言われたが、大きな庭には色とりどりの花が植えられ、入り口だけで村の家の広さを超えていた。家具なども派手ではないが細部が細やかで上品な物ばかりで触れないように神経を使ってしまった。ザックも同じ気持ちなのか、後ろでビクビクしている。ティアはといえば、なんでもなさそうにアルフォード家の執事の後をついて歩く。度胸があるのか何なのか。

 セレーナのお母様は、2人の子供を産んだとは思えない可憐でのんびりとした空気を纏う人であった。


「ごきげんよう。アルフォード家にようこそお越しくださいました。セレーナからいつもお話を聞いております。皆様に会えて嬉しいわ〜。」


 柔らかく微笑む姿はセレーナとそっくりで、隣で恥ずかしそうにするセレーナと合わせて見ると、なんとも微笑ましい光景である。ティアが一歩出て、騎士のような丁寧な礼をとる。


「こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。セレーナさんには大変お世話になっております。」

「まぁ!なんて素敵なのかしら!本物の騎士よりも凛々しく美しいわぁ。」

「お母様ったら!でも、見た目だけでなく実力も折り紙付きですわ!」


 素敵ねぇ、と笑い合う2人は正しく親子であるなと私達は思うのであった。それからのお茶会にはお母様も同席することになったのだが(…ティアを見ていたいそうだ)最初は緊張しっぱなしの私達を色々な話題で楽しませてくれ、あっという間に打ち解けてしまった。私も王都へ来て初めて魔石を使った時の驚いたことや村との違いなど、貴族の方にとっては面白みもないような内容ばかり話してしまったが、嫌な顔もせず楽しそうに聞いてくださったのでとても楽しい時間だった。

 帰り際、セレーナが席を外した時にお母様が私達に向かって微笑みながら言った言葉は今でも思い出す。


「本当に皆様には感謝しきれませんわ。あんなに楽しそうなセレーナを見たのはいつ振りかしら。」

「え?」

「あの子、昔色々あって家族や数人の友人くらいしか信用出来なくなってしまったの。いつも仮面のような作られた笑顔ばかりで心配していたのよ。でも、今日はいつも以上に楽しそうで…皆様のこと信頼しているのね。いつも聞くお話も、仲がとても良くてお互いをよくわかっていて素晴らしいのよって自分の事のように皆様のこと自慢するのよ。」

「そうなんですか。」

「あの子とはこれからも仲良くしてほしいわ。」

「「「もちろんです!」」」


 私達が真剣な顔で頷くと、ありがとうと優しく笑う。そんな表情のお母様を見ると、ちょっとお母さんに会いたくなってしまった。



 王都での生活は順調そのもの。それでも、この生活もずっと続くとは限らない…のかもしれない。



これでザック編は終了です。終了といっても、まだまだザック達は出てくるのですが。


ここで詳しく書かなかったのですが、飛び級ってどこからどんだけ飛んだの!?という感じかと(思わなかったとか言わないでくださいね!涙)思うので、少し説明を…


王立魔法学校は13歳から17歳までの5年通います。それまではそれぞれ普通の学校に通っていて、そこには貴族が通うところや市民が通うところなど種類がありますが、どの学校でも12歳になると魔力の器を測ります。(それまでは身体の成長と共に魔力量が多い子は器も大きくなっている段階)


ザックは学校のない小さな村から連れてきた点や魔力が暴走した点から15歳ですが1年生に編入し、半年経って16歳の年となったため4年まで飛び級したということです。15歳の頃にリリアンと同じ17歳レベルの勉強をしていたくらいなので頭がいいのはわかりますが、魔力の才能もかなりあるということですね。

ちなみに、セレーナは17歳なので5年生です。この世界では18歳から成人とみなされるので、リリアンはあれでも成人ということですね。

ティアは20歳ということで、自警団の仲間はあのままでは嫁ぎ遅れになるのではと密かに心配しているようです。

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