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神がつくりし世界で  作者: 小日向 史煌
第1章 運命の歯車
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初めての投稿作品です。中編小説になるのではないかと思っております。感想など頂けると励みになります。また、携帯で投稿しているため、誤字脱字があるかもしれません。ご指摘頂いたらなるべく早く訂正したいとは思いますが、気長にお待ち頂けると幸いです。

  『我が友よ。我は見守ることしかできぬ。だが、必ず約束は守り続けると誓おう。』

  その言葉を聞くと、男は嬉しそうに微笑み、この世を去った。その男の訃報は瞬く間に国中に広がり、皆が嘆き、男の冥福を祈ったという。




  5000年程前、神によりこの世界はつくられた。海や陸、風などをつくり、長い年月を経て陸地は繋がり大陸となった。次に、神は植物から始まり多くの生命体を生み出していった。これがこの世界に生きる生き物の先祖である。

  神は何もできない生き物達に生きる術を教え、我が子のように大切にした。その中でも、人類の祖先となるものは他の生き物よりも進化したといわれている。


  多くの歴史書を読むと、知能の発達が著しい人類に、神が魔力の器を与えてくださったのは1300年程前であるとされている。

  魔力を使えるようになった人類は、他の生き物よりも進化し、700年前、ついに国をつくった。初代国王リシウス(後に賢王と呼ばれる)は人々から愛される優しい王であり、不思議な力を持つ男であった。彼のお陰でより発展していった国はエレントル王国となる。



 ****


「…ん…さん、姉さんってば!」

「え…あっ、なに?」

「なにじゃないよ。もうそろそろ帰らなきゃ間に合わなくなるよ。そんな格好で行く気じゃないだろ?」

「そんな格好って…げっ。」

 

  土仕事をしていた私の格好は、汚れても目立たないようにと着ていた薄茶色のドレスの意味を果たさないほど、土まみれだった。


「すぐ帰って着替える。」

「はぁ…姉さんは女って自覚があるのかな。僕、心配なんだけど。」


  この姉の女子力について悩んでいるお節介な美少年は、私の弟のザック。2人の子供を産んだとは思えない可憐な容姿をしている母にそっくりの整った顔立ちは、美少年というよりは美少女と言ったほうが納得できると私は思う。そんなこと言ったら面倒なことになるので言わないけれど。父に似たところは明るい茶色の髪と青空のように澄んだ青い瞳くらいだろう。

  一方、私はリリアン。ほとんどが平凡な父親似の女である。本当に姉弟かと必ず聞かれるほどの普通の顔、唯一瞳は弟と同じ青空のような青だから、瞳だけで姉弟だと言い張っている。私が自慢できるところと言えば、母から貰った藤色の長い髪だけ。その髪も動くのに邪魔だから1本に結ってしまっている。


「まぁいいや、そんなこと考えてる時間はない。姉さん、先に僕フェアさんの小屋行ってるからね。」

「わかった。」

「寄り道しないようにね。」

「あなたは私を何だと思っているの?」

「野山を駆け回り、興味を持ち始めると周りが見えなくなる、子どのような、すごく世話のかかる姉。」

「…姉さん悲しくなってきた。」

「ほら、もう時間経っちゃったよ。早くおいでよ、じゃ!」

「くっ…あの言われよう。昔はもっと素直で可愛かったのにー。って、あー時間なくなるー!」


  ここはエレントル王国の西にあるアース村。100人もいない小さい村で、農業をして生活している貧しい村である。

 それでも、村人同士仲が良く、助け合って生きているこの村を嫌だと思ったことはない。周りは自然に囲まれて空気も良いし、1日歩くくらいの距離に町があるから生活用品に困ることはない。自分たちの家族が生きていけるくらいの稼ぎだが、大好きな家族と一緒だから幸せだ。


「ただいまー」

「おかえり、リリー」

「おかえりなさい、リリー。あなた時間は大丈夫なの?ザックが迎えに行ったはずだけど。」

「服が酷いから着替えに来たの。」

「ほんとだね。畑仕事に力を入れてくれるのは嬉しいけど、もう少しお母さんのように女性らしくしたほうがいいんじゃないかな?」

「まぁ、ロンったらー!」

「…あーうん。時間に間に合わないと困るから2人で勝手にやっていて。」


(この両親の仲の良さ、なんとかならないかな。見てるだけで胸焼けするわ。)


  私は急いで部屋に向かい着替えると、まだ華を飛ばして見つめ合っている両親の横を通り過ぎフェアさんの小屋まで急いだ。


  フェアさんとは、この村で唯一勉強を教えられる村人だ。王都や大きな町に行けば学校はあるが、アース村のように小さい村にはない。たまたまフェアさんは教えられる学力があるので、村の子供に教えてくれている。

  昔は貴族くらいしか学校に行けなかったそうだが、ここ100年位で一般市民も通えるようになったそうだ。それでも、貧しい者は子供も大事な働き手である。この村も例外ではない。そのためフェアさんは夕方から小屋を開けてくれているので、昼は仕事を手伝い、夕方から勉強できているのだ。


「こんばんはー!」

「リリアン、こんばんは。間に合ったみたいね。」


  クスクスと柔らかな笑顔でフェアさんに笑われた。ザックを睨めば、すっと目を逸らされた。あいつめ。

  ここは村の子供と言っても私達をいれて5人しかいない。年齢も最年長で16歳の私、最年少で14歳のザックである。もう少し下の年齢の子は、まだ力仕事ができないので昼間に小屋に通っているのだ。そのため勉強の内容も同じで、歳下のザックは頭が良いのでついてきている。本当になんでもできる弟だな。悲しくなってきた。


「今日はこの前の復習から始めるわね。じゃあ、ザック。この前の習ったところをまとめて説明してくれる?」

「はい。魔力の器の大きさは産まれたときに決まり、通常の人は日常生活に必要なほどの魔力で魔石により力を使うことができます。

 その器が一定よりも大きい人は魔術師として魔法が使えます。魔法には火、水、土、風があり、稀に闇、光の魔法が使える人もいます。」

「ありがとう。完璧ね!そう、今ザックが話してくれたのが白魔法よ。」

「俺たちの村には魔石もないし、あんまり身近に感じねーな。」

「まぁ、そう言わないでバン。でも、今日勉強するのは黒魔法よ。」

「黒魔法?闇の種類と違うの?」

「えぇ。黒魔法はね、器が大きくなくても使えるの。でも、これは絶対に使ってはだめよ。」

「なんで?皆使える魔法ってことだろ?」

「黒魔法は人の負の感情から生まれるの。負の感情を強く抱くと器から魔毒というものが発生する。それを取り込むと身体や力が強くなるけれど、代わりに心が壊れ理性がなくなってしまうわ。」

「なにそれ、怖い。」

「そうね。とても怖いことだわ。でも、怒ったりすることは必ずあることよ。それをどう乗り越えるか。それがとても大切になってくるの。今回はそういう風になってしまうことがあるって、しっかり理解して欲しかったから話したの。」


  その日の帰りは何となくザックと会話もなく家へ帰った。

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