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夢の星空

作者: いち

 私たちはイベントごとが大好きだ。

 けれども、私と彼はまだ大学生でお金もない。

 だから、なるべくお金を使わないように、それを楽しむ。


 4月は、2人で朝作ったお弁当と、2リットルペットボトルのお茶を水筒に入れて、お花見に行く。

 お弁当といっても、おにぎりと、焼いたウインナー、卵焼き、冷凍食品のから揚げ、そして、野菜もと、少しミニトマトと入れただけの簡単な弁当だ。

 でも、それを作るはとても楽しいし、コンビニで食べるぱりぱりの海苔のおにぎりよりも、しんなりとした手作りのおにぎりの方がおいしく感じる。

 5月は、遊園地は混んでいるからと、美術館をはしごし、ゴールデンウィークを満喫しつつ、次の日から講義と実験のことを二人で考えて、五月病にかかる。

 6月は雨の中を散歩し、「たまには雨の中を散歩するもの楽しいね」と自分達で気分を上げながら、梅雨を満喫する。


 そして、7月は100均で買ってきた七夕セットに願いを書いて、お菓子屋で七夕をモチーフにしたケーキを二人で食べながら、その時を満喫するのだ。

 同居している、大学近くの小さなマンションのベランダに、私と彼の洗濯物と一緒に笹の葉を飾り、窓を開けて、空を見た。

 都会の空に星なんてほとんど見えないのは知っているが、つい、ほんの少し期待して見ては、二人でがっかりする。

 むしろ、天の川なんて今まで生きていた中で見たことなんてない。

 何とか流星群も眠気に勝てなくて、頑張って起きても、あまり記憶にない。

 そう考えると、本当に天の川は存在するのか疑問に思えてくる。

 私は、ベランダに顔をだし、少しでも星を見ようしながら、彼に聞いた。



「ねーねー。天の川って、本当に見えるのかな?」

「見えるらしいよ。えっと、日本だと、屋久島とか…。月がない夜で、街灯がない真っ暗なとこなら見えるっぽい…」

「わーお!物知りだね~」

「いや、スマホで調べた」

「なんだ。今どきの子だな~」



 彼の言葉を聞き、私は彼の方を見ると、彼は入学祝に買ってもらったという、スマホを見ていた。

 私は、星を見るのを諦め、彼に近寄り、一緒にそのスマホを覗き込んだが、反射シールで何も見えず、頬を膨らませた。

 そんなこと、彼は気にせず、さらに調べたことを話しつづけた。



「あと、オーストラリアとかでも見えるらしいよ。かっこいいな~。広い荒野を車で走らせてみるんだ」

「それはかっこいいね!いいね!オーストラリア!コアラと写真撮りたい!!」

「コアラって、それしか知らないのかよ」

「うん。だって、うちの大学私立で理系だから、地理なんてやらないよ」

「いや、そういうレベルじゃないけど…」



 私の発言に彼は苦笑いしながら、私の方をやっと見てくれた。

 そして、膨らませていた頬を片手で押された。

 「ぶっ」と空気が抜ける音がし、それを聞いた彼は笑うと、私も笑い、でも彼の言った日本じゃ考えられないほど、広い広い大地で二人きり天の川を眺めるなんて素敵だなと思い、彼に言った。



「でも、いいね。オーストラリアで七夕。なんかかっこいい。日本人なのに、面白くない?」

「そうだな。よっし、行くか?」

「行くかって言っても、お金がないよ」

「貯金して行こうよ」

「だって何百万でしょ?そんなこと言ってたら、もう新婚旅行になっちゃうよ」

「いいんじゃないか、それで」

「!!!」



 彼に言葉に私は顔を真っ赤に染めた。

 そして、「えええええええ!?本気なの???」と聞いたら、「うん」と笑ったのだ。

 だんだん体が熱くなって、心臓がバクバクする。

 卑怯だ、最近付き合うのが長すぎて、私から「好きって言って」って言わなければ、「大好き。愛してる」だなんて、言われてことがないのに、さらりとこんなこと言うなんて卑怯だ。

 でも、嬉しくて、私はすとんと彼の肩に頭を置いた。

 すると、彼は私の頭を撫で、「だって、お前といると楽しんだもん。きっとどこに行っても楽しいだろ」と言った。


 次の日から、私達のテレビの前に学生割引で言った、遊園地のお菓子の缶が置かれていた。

 もちろん、蓋には500円玉が入るサイズの穴が開いて。




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