八話
三日目
「タティア様?お食事の準備ができましたが」
「・・・・」
昨日数回喋っただけでタティア様はもう喋らなくなってしまった
いやまぁ別に喋る必要もないけど寂しいじゃん?
主に俺が
「今日はグリフォンの肉のステーキですよ。冒険者でもなかなか食べることのできないレアな肉ですから」
まぁ鶏肉だけど
グリフォンを殺した後に少し肉を剥いできたから馬車の中にまだグリフォンの肉が残っている
「はい、これも」
馬車の中には、大量の金貨と大量の食糧が乗っていたんだが冷蔵庫とかないこの世界でどうやって長期保存させるきなんだろうか
俺が魔法で馬車の周りの温度を下げてるからいいものを
「・・・おいしい」
「そうですか、それは良かったです」
タティア様は一口かじってから一気にステーキを食べる
いや鶏肉ですけども
「おかわり入ります?」
「・・・おかわり」
「いっぱい食べてくださいね」
タティア様は口の周りを汚しながらバクバクと食べる
可愛いな
「ほら・・・お顔が汚れていますよ」
綺麗な布でタティア様の口周りを拭きつつ
俺は後片付けをする
「しかし魔王討伐をこんな子供にやらせるなんて・・・国王は何を考えてるんですかね?」
大人でも勝てない魔王に年端もいかない子供を向かわせる
ありきたりとはいえ頭のおかしな行為としか思えない
まぁそれだけ追い詰められているのかもしれないが
「わたしは・・・のろわれてる・・・の」」
「呪い?」
タティア様が初めて会話を喋る
「わたしのからだは・・・ひととはちがう・・・の」
小さくか細く、幼い子供の声
「違うってのは?」
タティア様は真っ黒なローブの袖を肩までめくる
ローブの下には、タティア様のきめ細やかな白い肌が見え、薄い赤い色の鱗が見える
「鱗?」
「うまれたときから・・・わたしはほかの・・・ひととちがう・・・の」
そりゃそうだろう
だって
「タティア様はドラゴンハーフなんですね」
「・・・・・・・?」
あれ?
違うの?
ドラゴンハーフ
龍人族とも呼ばれ
人と龍の間に出来る子供のことを言う
人の身に龍を宿し、深い山の奥で龍人だけの村があるとか
「アルパシブ国王が龍人って話は聞きませんから、タティア様のお母様が龍人か龍なんでしょうね」
「おかあさん・・・?」
「あれ?」
そういえば龍人って人前に出ることがほとんどないんだっけ?
昔はいっぱいいたらしんだが、今は伝説の中で語られる存在だとか
「まぁそれは呪いではないですね。というかタティア様のが呪いなら俺も呪われてるし」
角とか翼とかあるし
「赤い鱗の龍ってことは・・・序列六位のボルケーノですかね・・・あの龍って雄じゃなかったけ?
じゃぁ序列三位のフレイアスか?」
龍はその強さで序列分けされており
序列一位の龍神シナプスっていう龍は羽ばたくだけで山を吹き飛ばすとか、SSS級の魔物だ
「のろいじゃ・・・ないの・・・?」
「違うと思いますけど」
「でも・・・おうきゅうのまほうつかいも・・・わたしをのろわれてる・・・って・・・」
「違いますよ?タティア様がよければその鱗を見えないようにする方法教えましょうか?」
「できる・・・の?」
俺の角と翼は普段見えないように隠してある
別に体の中に隠しているわけでもないし、変身できるわけでもなく
魔法で見えなくしてるだけだ
いや認識できないように
「よく見ててくださいね」
俺は自分の体にかけてある魔法を解く
恐らく姫様の眼には俺の髪の毛が白く染まり、その頭に湾曲した黒い角が生え
純白の四枚二対の翼が生えたかのように見えているだろう
「・・・てんし・・・?」
「いえいえ、ただの魔族ですよ。ではよく見ててくださいね」
スゥ~と俺の角と翼が消え、俺の髪の毛が濃い緑色に変わる
「見えますか?」
タティア様は首を横に振る
「これが認識阻害魔法です。よっぽどの手練れじゃない限り俺の頭を触っても俺の背中の翼を触っても決して気付くことはありません」
おじいちゃんである魔王ネリウスが人の世界で生きていた時に編み出した技らしい
昔は魔族は恐怖の対象だったとか
今は少しましになったらしいけど
「今からこの魔法をタティア様に教えてあげますね」