蒼空の告白
「見失ったあ?」
翌日、追跡の結果を報告すると蒼空は少し驚いてから何やら考え始めた。美里は手洗いのため席を外している。
「昨日は家がどこにあるかって話をした後だったから、警戒してたのかもな。今日は俺も行くよ」
「え? 今日も?」
篤志はあの後、仲間を、ましてや好きな人をスト―キングすることに罪悪感を覚えて後悔していた。蒼空もただの興味本位で言っただけで、そこまで深追いはしないだろう、そう思っていた。
「何でそんなに美里の家にこだわるのさ」
すると蒼空は珍しく口籠り、渋い顔をしながら人目を気にするように周りを見回した。改まった空気に篤志は何事かと構える。
蒼空は近くに人がいないことを確かめると、唐突に切り出した。
「俺、美里のことが好きなんだ」
「えっ!?」
篤志は思わず大きな声を上げていた。蒼空が渋い顔をして警戒するようにもう一度辺りを見回す。
確かに2人の立ち姿や会話をしている雰囲気はお似合いだと思っていたが、本当に蒼空にその気があるとは思っていなかった。それぐらいに2人の接し方は自然だった。蒼空が本気で狙うとなったら、篤志にもはや勝ち目はない気がする。
一方で蒼空も焦っているのか、不安に襲われている篤志の様子に気づきもせず話を進める。
「だからっていうのもあるけど、もちろんそれだけじゃないぜ?」
「どういうこと?」
「正直、美里は得体が知れない」
「はあ?」
蒼空らしからぬ物言いに篤志は呆れた声を出した。得体が知れない、などと仮にも好きな人につける形容詞だろうか。しかし、蒼空はいたって真面目に自分の主張を述べる。
「美里の話ってあんまり聞いたことないだろ? もう3か月以上一緒にいるのに、学校すら昨日まで知らなかったんだ」
「それは俺たちが聞かなかったからじゃないのか?」
「それにしても話さなすぎだろ。隠してるとしか思えない」
「そうかなあ?」
篤志は全く乗り気ではなかった。蒼空の話も本人は真剣なようだが、どうにも真剣にとりあえるような内容ではない。
篤志が自分の説に納得していないと分かると、蒼空は見切りをつけて「別に俺だけでもいいよ」と言ってギターを構えた。
「わかった。俺も行くよ」
蒼空に付き合ってストーカー紛いのことはしたくないが、それでも蒼空と美里を2人きりにはしたくなかった。蒼空はギターから顔を上げると、満足そうに微笑んで「ありがとな」と言った。
「何何? 何の話?」
篤志も蒼空も肩が上がるほど驚いて振り返った。予想以上の反応に声をかけた本人まで驚いている。
「ご、ごめん。そんなに驚くとは思わなかったから……」
「今の話、聞いてた?」
すごい剣幕で尋ねる蒼空に圧倒され、口は達者な美里が首を振る動作だけで答える。その答えに安堵すると「学校の話」とだけ答えて蒼空は弦を弾いた。美里もそれ以上は詮索できず、不満そうな顔をしたまま楽譜を手に取った。




