番外編☆〜男装の麗人アレックス〜
いつかとか言いつつの翌日書く自分て一体・・・。
このお話はだいたい二年目くらいのはなしかな?
大国ファイファー、離宮にて。
今日も我が主アレクサンドリアは、醜い顔に見えるよう化粧をし、離宮にお住まいになられる側室たちに愛を振り撒いていた。といっても女官達に見られたら大変なので、お茶会でのみなのだが。
「おっはよー、愛する天使達! 招待してくれて、サンキュー! みんな今日もべっぴんさんだねー!」
お茶会は温室で開かれていた。お茶会に参加していたのはセリーナ嬢、ティファニー嬢、エリナー嬢。お付きの侍女は彼女達の順番に合わせると、アンナ、クレア、ジョアン。遅れて来たアレクサンドリアは空いていた席に座る。王女であるはずが、何処か男しい。
側室は全部で二十人ほど存在しているが、今ここに参加しているのはたったの三人。しかも、皇帝アリスタンドロスの有力な正妃候補である。そして、彼女達は他の側室も同様、常に皇帝陛下の正妃の座を狙っていた。ただ一人を除いては。
女好きで酒好き。まるでちょいワル男のような性格を持つ我が主。もし彼女が男だったならば、大陸中で女たらしとして有名な王子と名を馳せていただろう。なんせ、この容姿だ。男女問わず見惚れることが多い。本人は全く自覚していないのだが。
途端にその場にいたほとんどが凍りついた。しかし、一人だけは頬を赤く染めている。ティファニー嬢だ。
実は側室の全員がアレクサンドリアに好意を寄せていた。ただし、アレクサンドリアにではない。アレックスにだ。老若男女虜にする我が主。庭師の服だが、男装の麗人となったその姿が彼女達の間では密かに人気だった。
以前、側室達がこっそり騎士の衣服を調達した。それを女官達に隠れてアレクサンドリアに着せてみたところ、衣服を違和感無く着こなしていた。背が高めなのもあったのか、男らしさを醸し出していた。結果、側室達は侍女共々卒倒。それ以来アレクサンドリアは華やかな男装をすることが増えた。
そんな中で、女としての容姿にも惹かれているティファニー嬢はかなり重症だった。これには侍女のクレアも呆れていた。
コホンッとセリーナ嬢が気を取り直す。ティファニー嬢はまだアレクサンドリアを見つめたままだ。エリナー嬢はそんな彼女を哀れむように見ていた。
「アレックス様、今日のお仕事は大丈夫ですの?」
セリーナ嬢が口を開いた。お仕事とは庭師の仕事のことだ。
「えぇ?あーアレね。だいじょーぶ、だいじょーぶ。まだ時間じゃないし。つーか、天使達との時間の方が大事だし。にしても、珍しく三人揃ってなんか用?」
「えぇ、その……」
「じ、実はですね……えと」
もじもじとしだす側室達と侍女達。クリステルは溜め息を吐いた。またか、と呟いて。
クリスは一歩前出た。
「もしかして、また男装ですか?」
側室及び侍女達は反応した。やはりか、と呆れ顔になる。それに苛立ったのか、噛み付くように言い返してきた。
「"また"とはなんですか!」
「そうよ! 陛下だって素敵だけど、アレックス様だって恰好いいんだから!!」
「というか、アレックス様の方が素敵だわ!!」
最後の台詞にアレクサンドリア除く女性陣はドン引きした。勿論言ったのはティファニー嬢だ。
クリステルは再び溜め息を吐くと、アレクサンドリアに尋ねた。
「どうなさいますか、アレックス。皆さん目を血走らせておりますが」
彼女達の目は恐ろしいくらいギラついていた。
アレクサンドリアはだるそうに項を掻いた。
「天使達のお願いならいーよ、別に。で、男装だっけ? どーせ服は用意してんだろ」
『勿論ですわ!!』
側室及び侍女達は声を揃えた。これぞまさに異口同音だなと心の中でアレックスは感嘆した。
「で、今回は一体どんな服?」
「これですわ!」
側室達の合図に合わせ、侍女達が用意したのはーー
「王子様の服です!!」
「オイ、コレどっから調達した!?」
流石のアレクサンドリアもツッコみざるをえなかった。まさかの王子専用の服。なんだか軍服のような感じだった。だが、一番驚いたのはその服がまるでアレクサンドリアに合うように作られていたことだった。
「こ、これを着ろと?」
『はい!』
彼女達は迫る。アレクサンドリアは困ったように背後にいたクリステルを見たが、諦めろと言わんばかりの表情だった。諦めたように溜め息を吐くと、顔を上げた。
「可愛い天使達の頼みだ、仕方あるまい」
キャーッと喜ぶ女達。愛らしいなと思いながら温かい目で彼女達を見つめる。クリステルはただ横目に己の主を見ていた。
着つけが終わりーー
侍女達が用意したちょっとした更衣室。周りがカーテンで囲まれてある個室の更衣室だ。
そこから王女アレクサンドリア、否、王子アレックスが優雅な物腰で出てきた。長く美しいプラチナブロンドとヒヤシンスブルーの瞳を持つ超美形の王子。変わったことといえば、化粧を落とし、髪を下ろして胸を包帯のようなもので抑えつけ、それから衣装に着替えただけだ。
なのに先程の王女とは別人のように思えてしまう。クリステルを除く女性陣は皆彼に見惚れていた。
「こんなもんか?」
アレックスは少し照れたように笑った。その瞬間、女達は固まった。王子は気にせず、似合うかなと長い前髪を髪を撫でつけながら彼女達に尋ねた。
次の瞬間、プチンと何かが切れた女達が一斉に彼に襲い掛かった。
「アレックス様ぁぁああぁっ!!」
「愛しておりますわぁぁ!!!」
「結婚して下さいましぃぃぃー!!!」
「ちょっと! アレックス様に触らないで!!ア レックス様は私のものよ!!」
「違うわ! 私のものよ!!」
「ちょっと貴女達! 侍女の分際でアレックス様に近づくのはやめなさい!!」
「そうですわよ!! というか、貴女もよ!!」
「ちょ、ちょっと待て! し、死ぬ!! 死んじゃう!! ってか、クリス助けろ!!」
「王子ガンバレ☆」
「テメェッ!!ってうわっちょっ待ってって、ホント待……ギャァァァァアアアァァァッ!!」
温室中にアレックスの悲鳴が響く。女達の目は完全に獣と化し、ギラギラと輝かせていた。
「ていうか、皆さん……陛下のこと、完全にお忘れになってますわね……」
主の助けを求める声を綺麗に流し、クリステルは本日三度目の溜め息を吐いた。
*おまけ*
(ドミニク→ドム、クリステル→クリス)
※ドミニクはクリスの事をクリッシーと呼んでいます。
ドム「やぁ、クリッシー」
クリス「ドム! 会いたかったわ」
ドム「今日はどんなことをして過ごしたんだい?」
クリス「っ! ダーリン、聞いてくれる!?」
クリス、離宮(主にアレクサンドリア)への愚痴を語る。
クリス「酷いでしょう!?」
ドム「ハハハッ、そんなことがあったんだね」
クリス「笑い事なんかじゃないわよ!」
ドム「でも君、楽しそうに喋ってたよ」
クリス「えっ、そ、そう?」
ドム「……ああ、あの女を殺してやりたいくらいにね(ボソッ)」
クリス「ドム?」
ドム「いや、なんでもないよ」
クリス「そ、そう……。あ、私もう行かなくちゃ! またね、ドム!」
ドム「ああ、またね、スウィートハート」
クリスは恋人にキスをすると、足早にその場を去って行った。
ドム「ふふふ……アレクサンドリア、いつまでも僕のクリッシーを独り占め出来ると思うなよ……」
↑コレ大丈夫か?
どうでもいい話。
スウィートハートの意味は確か…かわい子ちゃんです。
ダーリンは最愛の人、ハニーは愛しい人だったような。
ダーリンは女性から男性に言っても通じますし、親から子に言っても通じます。ハニーも同様です。