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かりんと竜  作者: ぐらんこ。
始まりの章
9/9

竜が巣立ったよ

「竜が巣立ったよ!」


 唖然……呆然……。


 なんだそりゃ?


「ちょ……」


 想いを言葉に変換しかけて思いなおす。

 とにかく深呼吸だ。


 巣立つ……巣立つ……。

 竜の巣ってどこだ? 住んでいたところならさっちゃんの家?

 ってことは……、そこから居なくなった?


 僕に一度もその姿を見せることなしに? いやまあ僕の方から避けてたんだけど。

 僕に断わりも入れず? いやまあ竜にはメアドも携帯番号も教えてないんだけど。


 とにかく深呼吸だ。落ち着け。


「巣立ったって?」


 そう、情報収集。それが全てにおいての基本。


「大きくなったからね。

 もう一人で生きていけるんだって」


「それはさっちゃんがそう言ったの?」


 かりんはふるふると首を横に振る。


 なんにも言わないけれど……。

 簡単に二択だ。

 さっちゃんでなければかりんであるはずもなく。

 竜が自らの意思でそれを伝え巣立って行った? まさか?


「仲間のところに帰るんだって」


 そうか、竜には仲間がいるのか。でもそれって……。

 計画だけして伸び伸びになっていたさっちゃんとの旅の目的地じゃないのか?

 日帰りで行って帰ってこれるくらいの距離じゃないのだろうか?


 淡い期待は儚く散った。


「遠いところだって。

 人間はたどり着けない。そこは竜のユートピアなのだから」


 おそらくは竜の言葉をそのまま引用したのだろう。

 かりんの口からこぼれ出るとは到底思えない台詞。


 そうか……。

 行っちゃったのか。


 いろいろ思うところはあるけれど。

 かりんが竜を拾って来てからいろいろあったけど。


「今日の晩御飯。

 カレーとハッシュドビーフどっちがいい?」


「えっとね。

 ハッシュドビーフの気分かな?」


「わかった。

 じゃあカレーにしよう」


「なんで?」


 かりんは首をかしげる。


 これくらいの抵抗はしてもいいだろう。

 ささやかなる僕の反抗。


 どうせかりんはカレーもハッシュドビーフも大好きなんだから。

 僕の作る料理はなんだって美味しいって食べてくれるけどこの二つは特別なんだから。

 玉ねぎを刻んでじっくり炒めて、ニンニクもみじん切り。

 これでカレーの風味は格段に変わる。


 下ごしらえを終えてルーを入れようとしてふとルーを買い置きしていないことに気付く。

 そりゃそうだ。今日はハッシュドビーフを作るつもりでいたんだから。


「かりん、悪いけど買い物頼めるかな?」


「なに?」


「カレーのルー」


「甘口でいい?」


「甘口と中辛ひとつずつ」


「うん、行ってくるね」


 僕はかりんに千円札を渡して玄関まで見送る。

 靴を履いて、戸を開けて。

 外に出たかりんの背中に声を掛ける。


「あ、そうそう」


「ん?」


「あのね、かりん。

 買い物の途中でさ。もし変な段ボールが転がってたら……」


 僕がかりんに無視しろといったのか。注意深く観察するように望んだのか。

 それは、もうどうだっていいことだ。


 大事なのは今日のカレーがいつもどおり美味しくできあがるかってこと。



~ fin ~

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