"夜雷"
工業的な騒音と共に、暗かった僕の部屋に一つ、儚い色の光が瞬く
スタンガンの灯りだ
僕はそれを、昂揚に包まれながら、椅子に掛けた弟の太腿に押し当てる
厳かな時間
弟は、恐慌でも起こしたように小刻みに空気を吸い込みながら苦痛に耐える
額には、汗が珠となって浮かぶ
固く閉じた眼の、その瞼に、ぐっしょりと濡れた長い前髪が張り付いていく
つまらないと思った僕が通電の圧力を上げると、弟は「あっ……」と吐息を吐いたきり、躰をびくびくと痙攣させ始める
今日はここまでが良いだろう
僕は電源を落とすと、スタンガンを床に捨てて弟を抱きしめた
腕の中の弟が、濡れた瞳で僕を視上げる
口付けると、弟は窒息したように───まるで、この世で僕の唇にしか吸える空気がないかのように、僕を求めた
感覚の意識が、総て唇に奪われていく
他の器官の感覚たちが遠退いていく
実際に触れ合っている身躰器官はそう多くない筈なのに、全身が弟と交わって居る様にすら思えた
唇を離す
唾液か、汗か、判然としない躰液が糸を引く
「兄さん」
「今日は………」
「僕にさせて下さい」
弟がスタンガンを、酷く興奮した様子で握り締める
僕が「いいよ」と言うが早いか、弟が僕の舌を掴んだ
「えっ………?」
僕が当惑を視せても弟は、ただ、にこにこと僕を視ている
スタンガンが引き出され指で固定された、僕の舌に近付いてくる
「嘘……」
「嘘っ……!!」
「いやっ……」
「………違うよね?」
両眼が熱い
僕は、泣いているのか?
とろん、とした眼で、弟が舌舐めずりをして居る
スタンガンが僕の舌に触れる
爆発の様な音が聞こえた




