実家の手伝いで夏祭りに行けないとクラス一のイケメンが言って女の子たちがみんな怒り出したので俺が手伝いを代わってあげたらみんなから感謝されたのになぜか美少女後輩が怒り出した。
夏祭りってみんなテンションがあがるらしい。俺はそうでもない。暑いし、俺はクラスの隅的存在だし。
クラス一のイケメンなんか楽しそうだ。女子集団が夏祭りに誘っている。しかし…。
「いやー。申し訳ない。行けないと思う」
「ええーっ。うちら可愛くしていくよ。浴衣だよ」
一人の女子がそう言う。
「ごめん。俺はみんなと行きたいんだよ。でも実家の手伝いをしなくちゃいけなくてさ」
そう言えばそうだった。俺は思い出した。
イケメンの実家、たこ焼き屋だった。そりゃ夏祭り忙しいよな。
あれ、待てよ。
俺は思いついた。
実は俺、たこ焼きが大好きなのだ。
たこ焼きをたくさん焼いて食べてみたいとも思っていた。
てことは…。
俺がイケメンの代わりにイケメンの実家を手伝えばいいんじゃないですかね?
俺は早速、イケメンのところに話しに行った。
「俺、たこ焼き焼いてみたいってずっと思ってたんだ。だから俺が代わりに君のの実家を手伝うよ」
「ほ、ほんとか? もちろんバイト代は出すからそうしてくれるならすごく助かる」
「よし、じゃあ俺が手伝うということで決まりで。これで夏祭りに行けることになったな」
「おう」
イケメンは嬉しそうに笑った。笑顔だとよりイケメンじゃないですかあ。
「ええーっ。すごい奇跡! マジでありがとう」
「感謝だね!」
俺は女子みんなから感謝された。
いやー。感謝されるのは嬉しいね。
☆ ◯ ☆
そんな様子を、教室の外から見ている女の子がいて…。
「先輩は、全然人の気持ちがわからないんですね…」
としょんぼりしていた。
☆ ◯ ☆
夏祭り当日。俺は、イケメンの実家を訪ねていた。
「今日はよろしくお願いします」
「あらあら、よろしくね」
「屋台の準備はできたぞ。これを一緒に引っ張ってくれるかい?」
イケメンの両親はイケメンの男女だった。すごい。遺伝の勉強ができる。
それはそうとして、俺はイケメンのお父さんと屋台を引っ張った。いやー、充実してるなあ。
そして屋台を夏祭りの会場まで持ってくると、次に、たこ焼きの生地を作ったり、試しにいくつか焼いて、その時に焼き方を教わったり…。
順調に夏祭り開始までの時間を過ごすことができた。
「いらっしゃいませー」
イケメンの母親が呼び込みする。
イケメンのお父さんが言う。
「よしっ。俺たちはどんどん焼いていくぞ」
「はい!」
俺は習った通りにたこ焼きを焼いていった。やがて、どんどんお客さんが来て、焼くのが追いつかなくなりそうで、大忙しになる。
しかも暑い。いやー、たこ焼き屋って大変だ。
俺は実感した。
地元の祭りってだけあって、俺の知ってる人たちもお客さんとしてやってきた。
もちろん、イケメンと女子のグループも。
そんな中…。二人の女の子がやってきた。あ、俺の部活の後輩だ。
「先輩、たこ焼きください」
「あ、うん」
もう一人の女の子が俺のことを睨んでいる。たぶん後輩の友達だと思うんだけど…。
そんな俺がたこ焼き焼いてるのがよくないのかな…?
そんな俺は気づいた。
後輩の態度もそっけないぞ。
「ありがとうございます」
たこ焼きを渡すと小さくそれだけ言って、去って行ってしまった。
夏祭りは何事もなく終わった。
たこ焼き屋から花火も見た。
だけど…。俺は後輩のことが気になっていた。
また次に会っても、そっけないままな気がした。
だから俺は自分から会いにいく。
つまりは、いつも後輩が練習している体育館の隅に行くことにした。
☆ ◯ ☆
俺と後輩は卓球部だ。
部員は男子俺一人女子後輩一人。あと優秀な卓球マシンくんがいる。
体育館に着くと、後輩がぶつぶつ言いながら卓球マシンと卓球していた。
「え、卓球マシンくんと話してる…」
後輩は、俺のつぶやきを聞くと振り返った。
「卓球マシンちゃんだもん」
あ、女子だったんですねー。初耳です。
「そうか。マシンちゃんと…何の話をしていたんだ?」…
「人の気持ちがわからない優しくない人の愚痴っす」
謎のタイミングで体育会系。
「その愚痴は俺は聞いてもいいの?」
「ダメです。先輩は優しい側ではあるので」
「ではある…」
「そうですよ。卓球でもそうです。先輩、ちょっと打ちましょう」
「おお。いいよ」
後輩はラリーが始まってすぐに、カットしてボールに回転をかけてきた。あれ、後輩カットマンだったっけ?
「私は今、下向きの回転をかけてます」
「だな」
「でも先輩から見たら、上向なんですよ」
「そうだな」
打ち返そうと思っても、中々球が持ち上がらない。
小柄な後輩の打球とは思えない重さだ。
「それと、同じなんです。先輩は」
「えっ」
「先輩がたこ焼き屋さんの手伝いを代わって喜ぶ人もいますよ。でも悲しい人もいるってことですよ」
「その悲しい人って…」
「それはもちろん私ですよ。だって私さ、先輩と夏祭りいきたかったんだもん」
「そ、そうだったのか」
「うん。でも先輩はそんなに私と行きたくないから、たこ焼き屋さんのお手伝いをすることにしたんですか?」
「ち、違うよ」
「じゃあ、どうしてたこ焼きになっちゃったんですか? 先輩のたこ焼きバカ!」
たこ焼きバカ…。
「俺はね、ぶっちゃけ誘って断られるのが怖かったんだよ。あと誘われないのも怖かった」
「もしかして…だからたこ焼きって予定を入れちゃったんですか?」
「うん」
「先輩…弱すぎません?」
「はい」
「今なら先輩に卓球でも勝てそう」
「いやさすがにそれはないだろ」
「いやほんと勝てそう。はい。やりますよ試合」
「マジかよ」
「では、マシンちゃんも私の味方で」
「おい」
結局マシンちゃんは中立になってくれたので、俺たちは普通のシングルスをして、そして俺は勝つことができた。
「負けた…ぐぬぬ」
「でも、すごい打球の重さだったぞ。じゃあ勝ったんで、俺がお願い聞いてもらおうかな」
「そういう勝負しにした覚えありませんけど⁈」
「今週末、夏祭りに、俺と行ってほしい」
「えっ。夏祭り?」
「海辺の街であるんだよ。花火大会が国内最大級」
「先輩は、大きな花火があるのが大事なんですか?」
「うん」
「なら、期待してますね先輩」
そしてその週末。海辺の空全部を埋める花火の下で、俺は後輩に告白した。
そんな俺に後輩は…
「弱い先輩でしたけど、付き合ってあげます。だって、私が先輩好きなんですから」
と言ってくれた。
「まあ卓球でもじきに勝つでしょうね」
「え、なんで?」
「ふふーん」
後輩は俺の腕にくっついてきた。
え、こんな柔らかいの?
普段ぶかぶかめの卓球ウエア着てるから知らなかった。
「私、打球だけじゃなくて、胸も重いですよ」
「そ、そうか…」
「今日うち親いないんですけど、先輩がうちに泊まるなら、重さ確かめられるかも」
「…お、おう」
☆ ◯ ☆
翌朝。俺は後輩と一緒に学校の体育館に行って試合をしたが…力が全然入らなくて、後輩に初めて負けた。
ボロ負けだった。
「先輩、もっと色々な部分を鍛えた方がいいかもしれませんね。私は全然、やり足りないんですけど」
「…」
後輩は体力がすごいとわかりました。




