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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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【短編版】異世界に聖女として召喚されたら、第一王子には暗殺者を送りこまれ、第二王子には兵器扱いされたりと散々なので、逃亡して放浪魔女になります。~王国が滅んだのは私のせいじゃありませんよね?~

作者: 有郷 葉


 私の名はアリエスというらしい。

 最近になってようやくこの世界の言葉を覚え、皆が私をそう呼ぶのを聞き取ることができた。現在ゼロ歳児の私が、なぜこんなにはっきりした意識で物事を考えることができるのか。それはきっと私が別の世界からの転生者だからだろう。


 前世の私は地球の日本という国で、二十代半ばの若さで病死した。そして、気付けばこの中世西洋風の世界で赤子になっていたというわけだ。


 それにしても、どうも周囲の様子がおかしい。

 寝かされているのは巨大な神殿の一室みたいで、周りには世話をしてくれる侍女達が大勢いた。彼女達は私をアリエス様と呼び、とても丁重に扱ってくれる。


 ……もしかして、私はどこかの国の王女なのかな? その割にはやっぱりちょっと様子がおかしい気がする。母と父の姿も一度も見ていないし。


 そう思っていたある日、それらしき二人が私の前に現れた。

 母親らしき人物が私の寝かされている籠を覗きこんで微笑みを湛える。


「アリエス様、この先のことは心配ございません。あなたにはこの王国の聖女様として素晴らしい未来が待っているのですから」


 彼女はそう言うと隣にいる、私の父親らしき男性に視線を移した。


「ちなみに、私達のことも心配ございません。あなたをこの世界にお迎えするという務めを果たした私達にも素晴らしい未来が待っているのですから」


 それから、両親は揃って「「ではアリエス様、ご達者で」」と私に向かって一礼し、二人で手をつないで去っていった。


 …………、……えー。私への愛情が微塵も感じられなかった……。


 あまりにも薄情な両親にショックを受けたものの、これではっきりとした。私の魂は呼ばれるべくしてこの世界に呼ばれたということ、つまり召喚されたということだ。

 しかし、聖女とはいったい何なんだろう。

 この疑問には、次にやって来た人物が答えてくれた。


 両親の訪問から数日経って、現れたのは見るからに高貴な装いをした男性だった。周囲の人達は王子様と呼んでいるので、この王国の王子なんだろう。その彼でさえ私に対しては他同様に一歩引いたような態度を取った。


「必要以上に泣いたりせず普通の赤子とは全く違うと聞いていましたが、本当にそのようですね。魔力も一般とは異なる感じがしますし、アリエス様、あなたは間違いなく聖女様です。どうかそのお力で末永く私達をお守りください」


 と頭を下げて王子は部屋から出ていった。


 どうやら彼が私の召喚を指示したみたいだった。うーん、恭しい態度ではあったけど、何か邪な気配がしたような……?

 とりあえず、どうやら聖女とは王国の皆を守護する存在らしいね。この私に果たしてそんな力が備わっているのだろうか。さっき王子は魔力がどうとか言ってたっけ。


 私は自分の内側を探ってみた。すると、何だかもやもやした力の塊のようなものを発見。

 なるほど、これが私の魔力か。一般とは異なるとも言っていたけど、他の人達も持っていたりするのかな?

 と周りの侍女達の内側に意識を集中させてみると、似たもやもやを見つけることができた。この世界の人間は全員が魔力を備えているようだ。


 前世にはなかった力の塊が気になっていじり続けていたら、もやもやは少しだけ大きくなった。どうも魔力とはこうやって鍛えるものらしい。


 私は籠に寝かされて世話もしてもらっていてものすごく暇であり、他にやるべきことも思いつかないので魔力を鍛えることにした。次第にこの体内エネルギーの使い方も分かりはじめる。外側に引き出して体を覆うとその箇所を強化できるようだ。魔力を目に集めれば視力が上がり、耳に集めれば聴力が上がる。さらに魔力をもっと外側に放てば、他の魔力を感知することも可能だった。

 これによって私は籠の中にいながら、神殿全体の様子を探ることができるようになった。


 新たな知識やこの世界の情報を得られるようになったものの、やはり自分で自由に動けないのは窮屈で仕方ない。

 ……何とかならないものだろうか。そうだ、魔力は力の塊なんだから頑張れば何とかなるのでは? 籠自体を魔力で覆うイメージで……。

 こちらを振り向いた侍女達が一斉に驚きの表情に変わった。


「聖女様の籠が宙に浮かんでいます!」

「あれはご自分の魔力で持ち上げておられるのです!」


 その通り。では少し散歩にいってきます。

 部屋の出入口に向かってスイーと籠を動かすと、侍女達は慌てた様子で追いかけてきた。


「お待ちになってください! ここからお出になられては私達が叱られてしまいます!」


 そうは言っても、ずっとこの部屋にいるのも退屈なんです。

 籠ごとくるりと振り返って、そんな意思を魔力に込めて送った。


「大層退屈なさっているのがありありと伝わってきます……。仕方ありませんね、ですが神殿からはお出にならないでください」


 分かりました、散歩に飽きたら戻ってきますので。

 よし、神殿内限定だけど浮遊できる自由を手に入れた。


 神殿の中を飛んで移動する赤子を、すれ違う神官達が驚きの眼差しで見てくる。

 魔力は持っていても私のように体を浮かせたりできる人はそうそういないみたいだった。あの王子が言っていた通り、私の魔力は他とは違うらしい。

 強度が違う感じなのかな? それで、私にこの力を使って何から皆を守れと?

 その疑問に関しては飛び回りながら情報収集していて答を得ることができた。


 この世界には魔獣という恐ろしい怪物がおり、各地で人間を襲っているそうだ。魔獣から民を守るのは国の責務に他ならず、そのためには相当な戦力が必要になる。特に頼りになるのは単独で強い魔力を備えた一騎当千の猛者。


 私のことか!

 ……以前、あの王子から受けた嫌な予感はそういうことだったのか、彼は私を兵器としか見ていなかった。へり下って私のことを聖女様とか持ち上げておいて、王国のために末永く戦わせる魂胆だったんだ……。


 神殿の廊下を浮遊していた私はふと進行を止めた。窓の外に視線を移す。

 どうしよう、このまま逃げちゃおうかな。でも私、まだ赤子だし……。


 結局、もう少し体が成長するまでここにいるしかないという結論に至った。


 そんなある日、私の所にまた新たな来客が。今回も若い男性で、先日の王子と同様に高貴な衣装を纏っている。周囲の話によれば、どうやら彼はこの王国の第一王子らしい。私を召喚したあっちの方は第二王子だったみたいだ。

 第一王子は私に挨拶をした後に、側近達と部屋の片隅へ。何かこそこそ話を始めた。

 再び嫌な予感がした私は魔力を耳に集中させて彼らの会話を盗聴。


「……まさかあいつが聖女様の召喚に成功するとは。このままでは王位継承権第一位の座も危ういかもしれない。……こうなったら、聖女様には消えていただくしかないだろう」


 おっと、私の殺害予告が。

 冗談じゃない! 第一も第二もこの王国の王子はろくでもない!

 文句の一つでも言ってやろうと(言えないけど)思っている間に第一王子は帰っていった。


 殺害を予告されたこの日から、私は気の休まらない日々を過ごすことになる。敵はどうやって計画を実行に移すつもりか分からないけど、警戒は怠るべきじゃない。私は神殿内をやたらと浮遊して徘徊するようになった。

 この神殿は本当に何かの神に仕える人達のみが集まっている場所らしく、戦闘に長けた人はいないようだ。もし第一王子が実力者を送りこんできたなら、簡単に私のいる部屋まで侵入を許してしまうんじゃないだろうか。

 そんな私の心配は早々に現実のものとなる。


 ある日の深夜、妙な胸騒ぎで私は目を覚ました。魔力感知で神殿内の様子を探ると、案の定すでに何人かの神官達が倒れている模様。

 室内にいる侍女達に注意を促すべく、急いで私は魔力の微弱波を放った。うつらうつらとしていた二人の侍女が飛び起きる。


「居眠りしてすみません、聖女様!」

「いったいどうなさったのですか!」


 慌ててこちらに振り返った二人だったが、すぐに力が抜けたように揃って床に崩れた。他の神官達と同じく一瞬で意識を奪われたらしい。


 くっ、すでに刺客は部屋の中に! 手際の良さからしてかなりの手練れ! 第一王子め、赤子相手にプロの暗殺者を送りこんできたか!


 その手練れの暗殺者が陰から音もたてずに姿を現した。覆面で顔を隠した男性が持っていた吹き矢をしまい、短剣を鞘から抜く。

 やっぱり私に対しては意識じゃなくて命を奪う予定だ!

 黙って殺されてたまるか! 魔力防壁展開!


 私は籠の周囲に魔力の密度を高めてバリアを張った。

 これを見た暗殺者は一瞬戸惑うも、即座に気を取り直して短剣を構えて突進を開始。短剣はバリアを貫通したが、刃の真ん中辺りで止まった。

 刃の切っ先が私のすぐ眼前に。


 ……あ、危なかった! 強度がギリギリだったー!

 全然余裕ないしこうなったらやられる前にやれだ! 魔力弾発射!

 目の前に魔力の塊を球状に生成する。暗殺者がまた戸惑った様子を見せたので、この隙に彼めがけて放った。


 ドゴッ!


 魔力弾は暗殺者の胸部を直撃。彼の体を部屋の端まで吹っ飛ばした。

 しばらく警戒して見つめていたが、暗殺者が起き上がってくる気配はない。どうやら今の一撃で気絶してくれたらしい。


 ……はぁ、ずいぶんと油断してくれたおかげで助かったよ。まさかゼロ歳児が防御して反撃までしてくるとは思わなかったかな。……私もできるとは思わなかったけど、何とかなった。


 一息ついた後に倒れている侍女達と暗殺者を眺めながら思案に耽る。

 これは計画変更だな……、もう一日だってここにはいられない。

 よし、今すぐ逃げよう。

 侍女の皆、今日まで私を育ててくれてありがとう、お達者で。


 魔力を操作して部屋の窓を開けると、浮き上がらせた籠で一気に外の世界へと飛び出した。

 満月が照らす夜空をゆっくりと飛行する。眼下には明かりを放つ町並が、そして、少し離れた高台には石造りの大きな城が見えた。


 あそこの城にあのろくでもない王子兄弟が住んでいるのかな。私にもっと魔力があったなら、ここから魔力弾で砲撃してやるものを。

 いや、恨みに囚われている場合じゃない。この先どうするか考えないと。便利な魔力があっても私はまだ赤子だから誰かに育ててもらう必要があるんだよね。かといって、この王国内で暮らしていたらいずれまた捕まってしまうだろうし。


 町の上を低空飛行しながら頭を悩ませていると、不意に強い魔力を感知した。引き寄せられるように私はそちらへと向かう。

 辿り着いたのは露店の酒場だった。魔力はそこでお酒を飲んでいる一人の若い女性から発せられている。彼女はなかなか酒癖が悪いらしく、周りのおじさん達に絡んでいた。おかげで、魔力を耳に集中させて聞き耳をたてると、その素性を知ることができた。


 女性は旅の魔女で、この町で出会った男性と恋に落ちたのだとか。しかし、お付き合いを始めてわずか一週間でふられてしまったそうだ。「君の酒癖の悪さにはもう耐えられない……」と言われて。


 ……うーん、相当難ありだけど、この際贅沢は言ってられないか。

 散々おじさん達に愚痴った挙句、泣きながらお酒を飲む魔女の前に私は降下。彼女は目を丸くして籠の中の私を見つめる。


「空から、赤ちゃんが降ってきたわ……。これは、もう恋愛なんてやめて一足飛びで子育てをしろ、という天からのお告げ……?」


 ……なんかいい具合に解釈してくれた。まあちょうどいいかも。


 そうです、あなたは恋愛に向いていません。諦めて私を育ててください。

 と思念を魔力に込めて魔女に送った。すると、彼女は目をゴシゴシとこすってコップのお酒を一気にあおる。そのままテーブルにつっぷして寝てしまった。

 ちょっとちょっと!



 ――朝になって目を覚ました魔女は、テーブル上の籠の中にいる私を覗きこんできた。


「……夢じゃなかった、本当に赤ちゃんがいるわ」


 お酒が抜けたなら現実を受け入れてください。私はあなたに頼るしかないんですよ、早く私を連れてこの王国から脱出してください!

 嘆願の魔力を送ると彼女は考える仕草を見せる。


「何なの、この子の魔力……、絶対に普通じゃない。この国から一刻も早く逃げ出したい、という意思をビシビシ私に送ってきているし」


 ……明らかに面倒事を抱えた赤子だし、駄目か?

 私は固唾を飲んで魔女が出す答を待った。


 しばし悩んだ後に彼女は晴れやかな表情でポンと手を打ち鳴らす。


「これは大変な幸運なんじゃないかしら? 私はお腹を痛めずしてすごい後継者を得た!」


 この上なく楽観的に捉えてくれた!

 魔女は酒場の支払いを済ませると私の入った籠を持ち上げる。それから、にんまりした笑顔をこちらに向けてきた。


「私を選んだあたり、あなたはお目が高いわよ。私ほど高速でこの国から脱出できる者もいないでしょうからね」


 彼女がそう言った直後、周囲を風が舞いはじめて私達の体を空中に浮かせていた。気付けば二人でもう町の遥か上空に。


「私が得意なのは風霊魔法。もう五分後には隣国にいるわ」


 その言葉通り、高速で飛行した私達はほんの数分で隣国の空にいた。

 一段落したところで魔女は自らをテルミラと名乗る。私の方は彼女の掌に文字を書いて名前を伝えた。


「アリエスか、まあ詳しい事情は成長して喋れるようになったら聞くわ。とりあえず、どこかに家を買って定住でもするしかないわね。あ、私、子育てとか初めてだから自分でできることは自分でやってよ」


 ……やろうと思えば魔力で色々できるけど。安全な場所が確保されるだけでもよしとするべきか……。

 先の未来に少し不安を覚える私に対し、魔女は再び笑顔を向けてきていた。


「これからよろしくね、アリエス」


 こうして、私とテルミラお母さんの新しい生活が始まった。


 気候が穏やかな国の小さな町に一軒家を購入し、私達親子は二人暮らしを開始。

 基本的に私は手のかからない娘だったと思う。まだ立って歩けない年齢でも周囲に食料などの生活物資があれば、お母さんが数日間いなくても魔力を駆使して問題なく過ごすことができた。


 お母さんは数日間家を空けた後は、必ず大金を稼いで帰ってきた。やはり彼女は相当腕の立つ魔女らしく、魔獣討伐の依頼を受ければ短時間で荒稼ぎできるそうだ。

 そうして作ったお金で私達は一、二か月豪遊し、資金が尽きると再びお母さんが飛び立つ、という生活だった。


 そんな暮らしの中で、私はまともに喋れるようになると、約束通りお母さんに詳しい事情を話した。異世界から聖女として召喚されたこと、さらに、権力争いで暗殺されそうになって逃げ出したことなど。

 話を聞いたお母さんの反応は実にあっさりしたもの。


「ふーん、別の世界から転生召喚された者の魔力は特別って噂だけど、本当だったのね。いやー、私は労せずして召喚者の娘をゲットできてやっぱり幸運だったわ」


 こういう感じのざっくりした性格の人ではあるものの、前世の私と近い年齢ということもあって私達はとても気があった。親子というより友達同士のような関係になっていた。


 もちろん表だっては私達は血のつながった親子であり、私もごく普通の子供を装って町の学校に通いはじめる。実は異世界からの転生者で中身は大人なんです、なんて明かされた方も困るだろうし。

 そして、家に帰るとお母さんが世界各地で買ってきてくれた新聞を読むのが日課だった。これから自分が生きていく世界がどのようなものなのか、とにかく興味があったので。


 とりわけ常に気にかけていたのが、私を召喚した王国のこと。

 新聞によれば、我が祖国は年を追うごとに魔獣の侵攻に脅かされることが多くなっていった。私が七歳の時に新たな国王に代変わりした(私に暗殺者を送ってきたあの第一王子が結局継承した)けど、危機的状況は変わらず。


 私が十一歳になった頃、ついに祖国は滅亡した。

 数年前から魔獣のせいで国内は荒れ果て、国民達は次々に周辺国へと逃れている状況だった。耐え切れなくなった王国軍もとうとう逃げ出した、ということみたいだ。

 私を兵器として利用しようとしたり暗殺しようとしたかつての王子達は、もう王族でもなくなった。けれど、私の心はそれほどすっきりもしていない。


「ただ王子という奴らに対してのトラウマが残っただけだ……」


 新聞をテーブルに置いてそう呟いた後に、ふと疑問が頭を過った。


「私が聖女として王国内にいたら滅亡は避けられたのかな? いや、私一人いたところで何も変わらなかったよね」

「それは分からないわよ。いずれにしろ今のアリエスじゃ国は救えなかったでしょうけど」


 私の向かい側でお酒を飲んでいたテルミラお母さんが呟きに返事をしてきた。彼女はこちらを指差しながら言葉を続ける。


「あなた、ここ数年、全然魔力を鍛えてないでしょ?」

「あれは結構疲れるし、ちゃんと属性魔法も習得したんだからただ遊んでいたわけじゃないよ」

「特別な魔力があるのにもったいない。最強の魔女になれる素質だってあるのに」

「そんなのになるつもりはないから。魔獣と遭遇しても私一人逃げられる力があればいい」

「……これはもう、今日決行しなきゃならないようね」


 お酒をグイッと飲み干したお母さんは椅子から立ち上がる。私に対してもう一度指を突きつけてきた。


「アリエス、今からあなたを我が家から追放するわ! 私の稼いだお金で豪遊できるのもここまでよ! 旅に出なさい!」

「この酔っぱらい、急に何を……。私まだ十一歳なんだけど」

「中身は通算三十代半ばでしょうが」


 お母さんは有無を言わさず私の旅支度を始めた。こちらが困惑している間に、お酒が入っているとは思えないスピードで準備を完了。

 気付けば私は旅姿で家の玄関に立っていた。


「じゃあ、達者でね、アリエス。もし旅先でどこかの王子と結婚でもすることがあったなら、私を宮廷魔女として呼んでちょうだい」

「……それはない。王子と名の付くものにだけは絶対に近付かないから」


 心の準備もできないまま、王子恐怖症を抱えて私は旅立つことになった。

 最後にテルミラお母さんが微笑みを湛える。


「いつかあなたも、自分からもっと強くなりたいと願う日がきっと来るわよ」


 またいい加減なことを……。


 しかし、お母さんの予言はあながち的外れでもなかったのかもしれない。

 放浪魔女となった私は、何の因果かしばしば旅先で毛嫌いする王子という人種と出会い、彼らを助けるために強さを求めることになるのだから。



お読みいただき、有難うございました。

この続きも少し書いています。

4話目「4 お節介な魔女」からが続きになります。

よろしければ↓にお越しください。

https://ncode.syosetu.com/n5308ku/

この下に直リンクも設置しています。


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