初日
「疲れた...。」
1日干してふかふかになった布団を敷き、モゾモゾとベッドへと潜り込む。
布団は前まで使っていたものより重たいが、薄くはないので風邪を引くことはなさそうだ。
カタカタ鳴っていた窓は、留め具をどうやって締めたらいいかわからなかったので、フォークで無理やり押したり回したりしたら、幾分かはマシになった。
結局あのあと、夕食を作ろうと試みたものの、火加減の調整はおろか、レシピすらわからず、とにかく見たことのある野菜を刻み、湯を沸かし、肉と塩を入れた、味の薄い野菜を茹でたものが出来上がった。
夕食ができたと声をかければ、我先にと台所へ駆け込んできた義姉たちは、鍋の中の貧相なスープに言葉を失い、遅れて来た継母は、配膳をしていない私にため息をついた。
「誰がこんなところで食事を摂るのですか。食堂へ運びなさい。」
継母の言うとおり配膳をして、私も席につこうと椅子に手をかけると、継母が咳払いをした。
「同じ時に同じ場所で貴方と同じ食事を摂るのですか?貴方は後で食べなさい。」
「え、でも私もお腹が空いて...。」
「いいえ、今、貴方の椅子はありません。下がりなさい。」
「...はい、お義母様。」
すでに着席している義姉たちに鼻で笑われながら、私は退出した。
食堂の扉を閉めると、義姉たちの料理への酷評が始まった。
「何このクズ野菜たちのスープ!」
「味がなーんにもしないわ。ただの野菜の茹で汁じゃない。」
「うえ、なんか苦い味がするわ...。」
「あの子のことだし焦がしたんじゃない?」
「そういえばあなた、鍋を焦がしたって言っていたわよね。」
「いいえ!お母様!言っていないわそんなこと!」
「アハハ!何言ってるの!私はちゃーんと見てたわよ!」
「はあ。鍋を焦がすのはやめてちょうだい。」
「でももう私は料理をしないから。」
「そうね!あの鍋は苦いし捨てておきましょ。」
少しでも「料理をありがとう」などと言ってくれることを期待していた私が馬鹿だったのかもしれない。
しばらくして、バーンと食堂の扉が開き、三人が出てきた。
先を歩く二人の義姉は何も言わず通り過ぎ、継母は私の顔をチラリと見ると、「ご苦労だったわ。」と言った。
食堂へ戻ると、皿の中には微妙に残された野菜の破片が残され、テーブルの上にはパンの食べかすが散乱し、自分のために用意したお皿には何も残っていなかった。
「私の、食事...。」
ないものは仕方がない。
私は諦めて昼と同じパンを、一人で寂しく台所で食べた。
「次からは先に自分の食事を摂るべきね。」
小さく笑ったが、一緒に笑ってくれる人など誰もおらず、遠くの方でフクロウの鳴き声だけが聞こえるだけだった。
翌朝は城の鐘の音でいつもよりも少し早い時間に起こされた。
窓を開けてみると、昇りかけの朝日が城の隙間から見える。
着替えて、髪を整え、顔を洗うために下へ降りると、支度を終えた継母が腕を組み、待ち構えていた。
「朝食を。」
一言そう告げると、彼女は自室へと戻った。
私はここでようやく、自分がこの家の全ての家事を行わなければならないことを理解した。
それからは毎日があっという間だった。
朝起きて、朝食を作り、洗濯をして、昼食を作り、義姉たちの文句を笑って受け流し、掃除をして、夕食を作り、寝る。
毎日がこの繰り返し。
たまに義姉たちのお世辞にも上手とは言えない歌や楽器の練習を聴きながら、家の掃除をする。
自分にはもう教養を学ぶ必要がないと、持っていた本や楽器は売られてしまった。
かつて父の前で披露した歌を口ずさみながら、昼食に使ったお皿を拭いた。