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舞踏会の招待状

義姉の名前が友人のマリアに似ていた気がして混ざりそうだったので、義姉の名前をアリエッタに変更しました。

姉がルイーゼで目が大きい方、妹がアリエッタで眠たそうな目をしている方です。

義姉の特徴は1話目にあります。

ある日の朝、いつものように郵便物を回収していると、同じ手紙が3枚届いていることに気がついた。

「私と、ルイーゼと、アリエッタ...何かしら。」

差出人は王家で、詳細は封筒を見ただけではわからない。

まだ朝食の準備が終わっていなかったため、義姉たちを起こした後に朝食の準備をしていた。

彼女たちは部屋の整理が得意とは言えず、よく大事な手紙を無くすので、彼女たちの郵便物は全て継母へ渡していた。

最後のスープを置き、手を洗いに台所へ戻ろうとすると、継母の「まあ!」という声と、珍しく大きな足音が聞こえた。

まだ寝ている義姉たちの部屋をノックし、全く起きてきそうにないアリエッタの部屋へは痺れを切らして「いつまで寝てるの!」と部屋へ入って行った。

ひと足先に起きてきたルイーゼは、大きい目を半分ほど開けて、大きくあくびをした。

「お母様どうしたのかしら。シンデレラ、何か知ってる?」

「いいえ、でも王家から何かお手紙が届いていたわ。」

そう言うと、彼女の目が大きく開いた。

「王家から!きっと噂の舞踏会よ!ついにうちにもきたのね!」

「舞踏会?」

舞踏会、ずいぶん前に友人のマリアから聞いたような気がする。

「それがどうかしたの?」

「どうしたもこうしたもないわよ。最近の王家主催の舞踏会といえば、招待客は未婚で妙齢の貴族女性、おそらくブライト王太子殿下のお見合いだと言われているわ。」

「王太子殿下ならもう婚約者がいるのでは?」

「それがどんなに高貴な女性を紹介しても全く首を縦に振らないらしいわよ。誰かを探しているって噂ね。」

マリアから聞いた舞踏会の話はもう1年ほど前になる。

まだ招待状が送られてくるということは、殿下はその時からずっとその女性を探し続けているということなのだろうか。

「でも王太子殿下はお一人でしょう、何か他に目的でもあるの?」

「これはあらゆる貴族との交流会と言えるのよ。所謂婚活パーティーよ。」

「お母様!」

継母がまだ眠たそうなアリエッタを引っ張りながら食堂へとやってくると、彼女を放し椅子に腰掛けた。

「でも招待客は未婚の女性でしょ?女性と結婚しろって言うの?」

ルイーゼが不思議そうに問いかけた。

アリエッタも椅子に座ると、彼女はそのまま突っ伏してまた眠ってしまった。

継母はルイーゼとアリエッタを交互に見て大きくため息をつくと、いいですか、と言った。

「普通、招待された娘には、通常男性がパートナーにつきます。ご両親と行く方もいますが、もし未婚のご兄弟がいた場合、そのご子息や婚約者とパートナーになることが多いわ。もし貴方達がそのパートナーとお知り合いになれれば、誰かしら将来の旦那様なってもらえるかもしれないでしょう。」

「え!王太子殿下の奥様にはなれないの!」

アリエッタも寝ぼけながら話は聞いていたようだが、いまいち理解が追いついていないらしい。

継母は頭を抱えながら再度ため息をついた。

「まあ、そうね、踊っていただける機会があれば、もしかしたらなれるかもしれないわね。」

継母はあまり彼女たちがダンスの相手に選ばれるとは思っていないようだが、寝ぼけ眼だったアリエッタも今の言葉で完全に目が覚めたらしい。

「まあ!なれるかもしれないってことかしら!お妃様になれたらきっと素敵なドレスが着放題ね!」

「...そうよ、お妃様になれたらこんな貧相な食事とはおさらばの豪華な生活が待っているかもしれないのね!」

ルイーゼが私の用意した食事をちらりと見ながら言った。

継母は二人が王太子殿下の妃になったら、の妄想話を聞きながらくすくすと笑っている。

「そうね、そのためにはレッスンを頑張ってちょうだい。」

「ええ!お母様!」

「いつも以上にに頑張るわ、お母様!さっそく、どのドレスで行くか二人で考えない?アリエッタ。」

「ええ!そうね、ルイーゼ!早く支度をしてドレスを見に行きましょう、早くしないと仕立の予約が埋まってしまうわ!」

「二人とも食事はお淑やかになさい。」

二人がドタバタと食事をし始め、それを嗜める継母。

温かな家族も団欒の光景だが、私はその輪には入れず、ポツンと入り口前に立っていた。

継母も食事を始めると、ちらりとこちらを見た。

が、その視線はとても冷ややかだった。

「シンデレラ、いつまでそこに立っているの。早く仕事に取り掛かりなさい。」

彼女は私にも招待状が届いていることを知っているはずだが、ドレスを仕立てる話に参加させてもらえる考えはないらしい。

義姉たち二人も新しいドレスのデザインのアイデア出しに夢中で、私のことなど眼中にない。

「かしこ、まりました...。」

三人の会話で賑やかな食堂を背に、私は手紙を握りしめて、自室への階段を駆け上がった。

思わずベッドに突っ伏しそうになって、思い直してそのまま腰掛けた。

「いいえ、落ち着いてエラ。いつものことじゃない。そうよ。」

私は大きく深呼吸をしながら、窓から見えるお城を見つめた。

「あのお城に行けるのね...。」

朝日に照らされて、遠くに見える城は光り輝いているように見えた。

「婚約者が見つかるかはわからないけれど、私も舞踏会を楽しめるようにしましょう。」

そう言うと、口角を上げて、軽く微笑んだ。

「まずは中身を読んでみようかしら。」

くしゃくしゃに握りしめられた手紙を膝の上で少し広げ、封を開けた。

中からは簡素な手紙と、招待状が1枚ずつ入っていた。

「舞踏会開催のお知らせ。日付は半年後、時間は日没から日付を超えるまで。パートナーはいてもいなくても可。未婚の女性は必ず出席すること、これは命令である。ですって。行けなかったらどうなるのかしら!」

招待状にはちゃんとエラ・サリドーリの名前が記されていた。

「エラって呼ばれたの久しぶり。」

私は懐かしそうに自分の名前の文字を撫でた。

家族からはもうシンデレラと呼ばれることしかなく、友人のマリアから手紙は届くものの、自由に使えるお金が日に日に減っていたため、文通の頻度は減っていた。

最後に手紙を送ったのも3ヶ月前で、マリアへの返事の手紙を、切手代が高くまだ出せないでいる。

最近も街へ行けておらず、私が行ったのも銀行へ父の口座について聞きに行ったのが最後だ。

エラ、と大好きな父と母に呼ばれていたことが遠い昔のように感じる。

すると、チュウという鳴き声が聞こえて、尻尾にリボンをつけたネズミが何匹か出てきた。

この時間に私が部屋にいるのが珍しかったからだろうか。

「あら、ごめんなさいね。エラ、感傷に浸っていてもしょうがないわ。これからは時間がないわよ!」

私は頬をぱんぱんと叩くと、唯一持っていた母のドレスを引っ張り出した。

「正直今時のものとは言えないけれど、切手を買うお金もないのだもの。ドレスを買うお金もないわ。このドレスを少し変えて、素敵なドレスにしましょう!」

ひとまずドレスをトルソーに着せると、変えるべき部分を少しずつ書き出していく。

「袖の形をもう少し変えたい方がいいわ。あとは装飾が少ないから足して、色味も少し明るくしたいし...。」

所々変えたいところはあるが、具体的にどう変えたらいいかあまり思いつかない。

義姉たちの服を洗っているので多少は流行りを知っているが、それだけでは不十分だ。

「久しぶりに街へ行ってみようかしら。」

ショーケースに並んでいるドレスを見たら参考になるかもしれない。

たくさんは買えないが、多少なら装飾を買うお金もある。

「街へ行くついでにマリアへ直接手紙を出しに行きましょう。」

あまりに貧乏くさい発想に思わず苦笑いをするが、装飾品を買えばまたしばらく手紙を返せなくなってしまうので致し方ない。

「よし、頑張らなくっちゃ!」

私は腰に巻いたエプロンを締め直すと、階段を駆け降りていった。

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