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ブループリントヒトゲノム  作者: 冬蜂
第二章 ■■■■編
18/19

第十七話 ■

時は少しだけ遡る。


お洒落モダンな雰囲気に満ちている喫茶店にて、ライルとリラ、国王、そして幸江お婆ちゃんの四人は小さな白黒テレビ一つで百貨店での戦いを一週間ずっと鑑賞していた。


ライルは喫茶店の椅子をテレビの前に移動させて座りながら。


国王はその隣に車椅子をくっつけながら。


リラは現在、幼児退行期で幸江お婆ちゃんと色んな玩具で遊びながら暇潰しをしていた。


将棋やメンコ、ベーゴマ、そしてブリキの兵隊さんで遊びながら。


「……おや、ライル氏。助けにいかんでもええんか」


どこぞの監視カメラから撮影している為、テレビの画質はとてもガビガビであった。


それでもアーミーが現在、死に瀕している状況なのははっきりと分かる。


「国王を信頼できないから私は此処を離れられない。彼女もそれを承知しているはず」


残念ながら予想は外れ。アーミーは意識がもうろうとする中、ライルに助けを求めている。

しかし彼が離れて、リラを置き去りにする事は出来ないのも事実。リラを戦地に移動させるのもゲノム暴走の危険があるので難しいと来た。


「冷たいのう。ワシにもアーミー氏にも。構って貰わんとグレてまうぞ」




だがそれに動じず、ライルは真剣なまなざしでアーミーの画面を見守る。




「おや……どこへ行くってんだい?」


すると今までテレビに反応を示さず幸江と遊んでいたリラが、テレビの方を向きながら歩き始める。



続けて彼女はテレビの中で倒れるアーミーへゆっくり手を触れてみせる。



そして呟く。



「だいじょうぶですからね……わたしがついてますから……」



ライルは思わず椅子から立ち上がる程に驚く。



「……」


だがそれも一瞬。リラは無表情期にサイクルを回し、死んだ魚の様な眼に戻ってしまう。


「……そうか、こう言う時は……応援するのがいいんだね」


リラも今、自分と戦っている。一度は失った己を取り戻すべく、戦っている。


そして、アーミーもまた戦っているのだ。


自分の人生を失いながらも、幸せを求める為に。





◇    ◇    ◇    ◇





「やっぱり踏みつぶすより掻っ切る方がみっともない感じが出て良いワン!」「早くあの女も殺しとくガウ。このままだと僕等も死んじゃうガウ」





"「だいじょうぶですからね……わたしがついてますから……」"



声が聞こえた気がした。あの世から私を呼び戻す声が。


街頭モニターの時はあんなに嫌だったのに……今では凄く勇気を貰える。


どうにかして目を開けて見れば、血まみれの双頭犬が大きく口を開けながらこちらへ突進してくるではないか。


20m…


腹からはまだ出血が止まらない。下手すれば大量出血で死んでしまう。下手しなくても死ぬ局面に居る。


10m…


「いただきますだ……」


「ワン!」「ガウ!」


0m。


"封印"×100


私は痛みを封印した。


"色彩"×300+"空間操作"


私は全力で雄たけびを上げながら、双頭犬(ガウの方)の顎に右の拳を振り上げる。


筋肉増強で効かないのは知っている。それどころか私の拳の方が砕けているのも分かる。


「……眼が」


私はガウの視界にすっぽり入る様に、色彩×300がびっしり蠢く極彩色の空間(大きさはバレーボール程)を造る。


その空間の中は眼に異常が出るどころか失明するレベルで、チカチカと強烈なビビットカラーで満ちていく。


ワンの方の視界はあえて白黒のままにしているので、その色彩の暴力はさらに加速する。


だがそのままでは終わらせない。




"メルヘン"+"空間操作"




双頭犬の前にはパンパンに張り詰めた戦車が居た。


素材はブリキのままでありながら、それは実寸大。


双頭犬の上にはパンパンに張り詰めた戦闘機が居た。


これまたブリキのままだが、実寸大。


双頭犬の後ろにはパンパンに張り詰めたブリキ兵十体が居た。


これ等は全て巨大化しており、戦闘機や戦車を含めて全員が銃口を双頭犬に向けられていた。




標的確認―—、砲撃開始。




奇しくもそれは、かの兵器に似た技。


それは大量の銃撃を持って、相手を無力化する技。


奇しくもそれは、かの完全体と似た技。


その名は――、終末論(アポカリプス)







集中砲火が終わった時、双頭犬は黒こげになって動かないで居た。


「自己再生でどうにか再生できるレベルで調節してますので大丈夫だと思います。つまり……峰打ち。いや、峰撃ちってところですかね」




"ただの女子高生。アーミー・ブループリント"VS"プロフェットの双頭犬。プロフェットの双頭犬"VS"結婚式場同時多発テロ。紅い未亡人"


勝者 "ただの女子高生。アーミー・ブループリント"。


よって、報酬として"自己再生"×100"筋肉増強"×100"分裂"×30"放出"×50"増殖"×10"追尾"×20ゲノムを入手。







◇    ◇    ◇    ◇




喫茶店のテレビの画面にはアーミーが無事勝利した姿が写っていた。


「さて……残りは"処刑人A""交渉人""はぐれ日本軍""■■"の四人。ほうほう、ちょうど半数以下になった訳でな」


「"■■"。未だに姿を見せていないのが気になるね」


「どしたんよ、急に喋りかけおって。今までずっとワシが話しかけても無視しとった癖に」


この一週間、ライルと国王は更年期の夫婦並に一切会話していない。


「ちゃんとこの百貨店にはおるから安心せえ」


「……とぼけちゃって。最後の十人目"■■"はどうせ国王って言うオチなんでしょ?」


「ほう……。なんで、そう思うんよ」


だが無駄な駆け引きは不要とばかりにライルは再び無言を通す。


「まあ、その通りよ。十人目はワシ。別にこの喫茶店も百貨店のコーナー内じゃからの。アーミーが来ればそのまま相手しとったわ」


「……」


聞きたい事はそんなしょうもないとんちでは無かったらしくライルは無視を通す。


「ああ……ワシ、殺人鬼違うから怒っとるんか。設定とかそんな気にするタイプやったかライル氏」


すると彼は即座に拳銃を着物の内側から取り出し、幸江お婆ちゃんの脳天をあっさり撃つ。


「ほい、殺人罪。これでお話してくれるか?無視されるとキッツいんよ」


「……」


だがライルは一切反応しない。リラも無表情期ゆえ、この惨状にもピクリとも動かない。


「……ワシの本当の目的について知りたいか」


「良かった。ようやくボケが治ったね、お爺ちゃん」



すると突如、テレビの音声から謎の声が入り始める。



「な? ヤバいだろアイツ。この発言聞いてると思うからさ、そろそろビビってないで動いてくれよ。



――、終末論(アポカリプス)。」



テレビにはアーミーでは無く、ゴリラの死体とまた別のジジイが眠っている姿が映されていた。




「ワシの目的はライル氏をこの手で殺す事よ」



今回のゲームマニュアル

・殺人鬼の強さは基本的にマスター程度。一般人視点から見れば脅威だがライル視点から見ればすぐに鎮圧できる。


・ただしババ抜きで言うジョーカーが数人おり、そいつらは現時点でのアーミーには勝てないレベルで強い。


・ジョーカーの内の一人はライルよりも強い。



「お爺ちゃんを含めて全員が相手しても私より強いとは思えないけど」


「ええのええの。ほんと、面白いやっちゃのぅ」


国王はまだライルが自らの切り札に気付いていない事に大きく嘲笑う。


「まあ、全部一気にタネを明かしてもええけど……ちょっとずつ小出しにして自分で閃いて貰った方が絶望感増すじゃろ」


・ヒント

"認識阻害"ゲノム。


ライルが所持しており、元々このネオ東京に来た理由もリラの認識を阻害させて地上で生活できる様にする為。


そして実は、国王も同じゲノムを所持している。


このゲノムの阻害対象は生物だけでは無く、言葉や単語にも適応される。


国王はこのゲノムを持って、自分の好きな意思のままに言論統制を行っていた。


「例えば、ワン■ース。ドラゴン■ール。ジョ■ョ。旧文明を知っておるライル氏も認識阻害によって、これ等の言葉や単語を理解出来ないと言う寸法よ。ほら、■と言ったノイズが入ってる様に感じられるはずじゃ」


しかも"理解出来ない"と言うフェーズにも立つ事も出来ない。(とりあえず、何か言ってたけど聞こえなかったからいっか…)みたいに強制的に聞き流してしまう。


「ほんと、このゲノムがあって良かったわ。そうじゃなかったらライル氏は最初からこのゲームに乗らないでワシを真っ先に殺してたからのぅ……。それも顔をぷくーぅっと真っ赤にさせながら」


「……その規制された単語こそが、私を倒せるモノの正体と言う訳か」


ライルは今までの戦闘で起こった事を高速で振り返り始める。




「考えてるところ悪いが……ワシって魔物なんよ」


「……」


「ワシってなんの魔物だと思う?」


「合コンの年齢クイズみたいなノリで今聞く?」


すると分かりやすく爺さんは口を尖らせて拗ねる。


「百年来の付き合いっちゅうのにワシの種族も知らんのかいな」


「拗ねても可愛くないよ」








「……ワシは亡霊(ゴースト)。ほれ、亡霊は足が無いもんじゃろ」


「私が斬った足だからそれは関係なくない?」


だが国王はライルの会話を突っぱねる様に、幽体離脱を開始。


国王は霊体としてふわふわと宙に漂い始める。


「時間切れじゃ。答えをそのまま教えちゃるわ」






・■■■

神様は設計図(ゲノム)を用意するに当たり、旧文明においてあまりに不都合な文化や思考、物体の設計図を捨ててしまった。主に進化の妨げになると言う理由から。


一つ目は漫画やアニメ、小説と言った創作物。神様は聖書以外の一切の創作を認めなかった。理由は聖書以外の書物に惑わされて、神における崇拝に悪影響が及ぶ可能性がある為。


そして二つ目こそが■■■。■■■■に■■される■■もあり、■■とも■■■■。

■■■とは、■■■の■■■・■■■■■で■■される■■な■■■■■を■■し、■■・■■■・■■■■■の■■を■■に■いる■■の■■。


「……?」


ライルは強烈な違和感を感じるがそれが何かが分からない。


だが絶対にそれは阻止しなければならない。それはあってはならない。それは起こしてはならない。


本能的にそんな焦燥感へ駆られる。


「ライル氏……ワシが君のファンである理由は、大量殺戮兵器だからなんよ」



"だからワシは■も愛しとる。"






第十七話 核

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