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ブループリントヒトゲノム  作者: 冬蜂
第二章 ■■■■編
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第十六話 ■・■■事件

「……痛ってぇ」


さっきまではアドレナリンがドバドバ出てたので気にしなかったが、顔面の殴られた部分が少しずつジンジンと痛み始めて来た。



"チーン"



軽く鳴らした様なベルの音がエレベーターに響く。


"ガタンッ"


続いて鳴るのは、横開きに大きく開くエレベーターの扉。


扉の向こう側は眩い光で包まれており、どんな様子かはまるで分からない。


「す、すまないが……待って……貰えると、助かる」


「……まだ何か御用で?」


しかしそれを止めるのは、此度女子高生にボロ負けして土下座して泣いて詫びた■■教授。


「我を……今すぐ助けるのだ……。このままだと、後悔……することになる…」


「私、人を撃っちゃう悪人なんで無理です。今度は国王に助けてくだしゃーい(泣)(泣)って土下座して下さい」


「ふざけてる場合ではないのだぞ……!」


怒ったり泣いたり鬼気迫ったり忙しそうなので、私は無視を決め込もうとした。


「……我が気絶すると、ゲノムの効果が消えてしまうのだ。折角、死に物狂いで封印したあやつが……復活してしまう……」




"はぐれ日本軍"




前の空間で宙にプカプカ浮いていたあの爺さんだ。


「あやつが復活すると……■■が起きる可能性がある。国王の本当の目的は……」


「なんですか……それ?」


私は■■と言う聞き馴染みのないワードにハテナマークが踊る。


「……知らぬのか。そうか……漫画と同じ様に……消してしまったのか……。神が」


教授は今度は勝手に肩を落として落胆してしまう。リラより情緒不安定じゃんこいつ……。


「それじゃあ……あんま長居したくないんで行きますね」




"ただの女子高生。アーミー・ブループリント"VS”ネオ東京規律第九条重大規定違反。■■教授”



勝者 "ただの女子高生。アーミー・ブループリント"。


よって、報酬として"空間操作"×200 "封印"×100 "色彩"×300 "詠唱"×1ゲノムを入手。








「此処は……」



エレベーターの到着先は――、百貨店屋上の遊園地。


レトロを基調としたメリーゴーランドや機関車、そして何より巨大な観覧車などが設置されており、初めて見たのに懐かしさで溢れかえっていた。


だが残念ながら……今は観光気分ではいられない。


「ふふ、まさかこっちから標的が来るとは思ってなかったワン♪」「待つガウ。なにかの罠の可能性があるガウ」


"プロフェットの双頭犬。プロフェットの双頭犬"


「はぁ……一週間も隠れておいて、今更ノコノコ出てくるとか……どんだけ注目浴びたいのよ……」


"結婚式場同時多発テロ。紅い未亡人"


「……」


"キマイラ大量増殖事件。死霊兵団"(死亡)



一匹は頭が二つある黒い犬の軍服獣人。全長にして約2m。語尾が"ワン"と"ガウ"。


一人はかなりキツめのメイクをしている軍服美人。初対面なのにいきなり見当違いの敵意を向けられている。紅くはない。


そして最後にガリガリにやせ細った軍人男性。彼が死霊兵団である。ちなみに兵団って言う異名だけど一人しかない見栄っ張り。


「あのさ……アンタが日和って一週間も隠れたせいで、死霊兵団が百を超える幽霊を呼び寄せて大変だったんだけど……どうしてくれんの?」


「え……私、関係あります? それに一週間って……」



"空間操作"解説

このゲノムで作りだした空間は現実世界との時の流れが異なっている。基本的にはランダム。"空間操作"ゲノムの所持数が多いほど、コントロールしやすい。



直後、脳みそにこの情報が開示される。成程……設計図(ゲノム)と呼ばれるだけある。



「まあまあみんな落ち着くワンよー!」「そんな騒いだら綺麗に喉笛掻っ切れないガウ」



「"筋肉増強"×100」「"自己再生"×100」



途端に双頭犬はムキムキのマッチョと化し、私と未亡人にボディビルでよく見るポーズを連発する。


わざわざ不意打ちの機会を削ってまで妙なポーズを取るのは余裕の表れか。


「は……? 畜生ごときがなんでこの私の相手になると思ってんの? 相手にする訳無いし。犬はアバズレとヤってろ」


前から思ったけど、私ってマジでマスター以外良い人と出会った記憶無いな……。


今の様子ってライルだけじゃなくてリラも見てると思うけど、これだと人間と言う種が勘違いされてしまう。


しかし未亡人は本当に相手をするつもりはないらしく、なんとその場で煙草を一服吹かし始める。



とりあえず私は毎度お馴染みである、"二人がどのくらいの強さなのか様子見する"ターンに突入。



それとなるべく、今持っているゲノム"空間操作"と"封印"についてどれだけ扱えるか確認もしたい。


「でも死霊兵団とは遊んであげてたんですよね未亡人さん。え……死者とイチャイチャチョメチョメする趣味がおありで……?」


なのであえて私も無防備(ノーガード)の態勢を取り、二人を煽ってみせる。


「……」


彼女は蔑んだ表情のまま無言で煙草を真上に放り投げる。




煙草は煙を巻きながら華麗に宙を舞って――、ボトリと落ちる。






その刹那、筋肉を躍動しながら動き出したのは双頭犬。


彼が選択した行為は極めて単純であった。


それは"一番この中で弱いであろう私に巨大な爪を撫でるだけ"と言う行為。


しかし"筋肉増強"の効果で大半はミンチと化す。



"メルヘン"+"空間操作"×10



双頭犬は明らかに私を格下だと舐めている。それならそれで都合が良い。色々試したい事も多い。


「ブリキ兵。ワンちゃん(双頭犬)と赤ちゃん(未亡人)を潰して下さい」


いつもの如く、ブリキ兵を私の周囲に十体召喚。


だが此処からいつもと味付け(戦法)を変えて行こうと思う。


私は空間操作で空間の比率を良い感じに拡大。


するとブリキ兵はなんと全員、双頭犬と同じ2m程の大きさに膨れ上がる。無理やり比率を上げているので、まるでパンパンに空気が入った風船の様に身体が張りまくっているのだが。


「ワンちゃんだなんて可愛いこと言うワンねー!」「でも潰してミンチにしちゃうガウ」


「赤ちゃんって……玩具遊びしてるアンタの方がよっぽど赤ちゃんじゃない?」


二人の内、双頭犬はわざわざ挑発に乗る様に私では無く巨大化したブリキ兵の頭部を十連続で叩き始める。案の定、パンパンのブリキ兵はいとも簡単にぶっ壊れてしまう。


(どーだ、俺はこんだけ凄いんだワンwお前等の様なゴミがいくら頭を使っても意味なんて無いんだワンww本当の強者は頭を使わないんだワンwwwお前等の戦略にあえて踊らされた上で勝てるんだワーンwwwwww)と言ったところか。割と分かりやすい性格で助かる。


一方の未亡人は意外と冷静で私に怒りを向けるのではなく……不意打ちで双頭犬(ガウの方)の右眼ピンポイントにハイキックを躊躇なく入れ込む。


「"詠唱"+"毒"×100+"穿孔"×50+"ゲル化"×50="水玉病"」


彼女の靴の先端部分には仕込み針が引っ付いており、それがダイレクトに双頭犬へぶち込まれていく。


「言っとくけど、私はゲノムを用いてオリジナルの奇病を引き起こさせられるから」


この説明の意味は何だ。


「その上でこの私に喧嘩を売れるなら売ってみろって話ね。美しい花には棘があるって言うでしょ」


先程までに余裕ぶっていた双頭犬は早速、刺された右眼が水玉の様にぷつぷつと赤い斑点で満ち溢れる。


続いて目玉から大量のドロドロの血液が流れ落ちていく。


「油断しすぎたワンねー! 今日は昼食抜きだワン!」「ご、ごめんガウー」


しかし未亡人の言動は私にとってはかなりマズい。何故なら双頭犬の余裕が無くなると本気を出されてしまうかr"分裂"+"放出"







気持ち悪い斑点がびっしりこびり付いた目玉が私のお腹へえぐる様に命中する。


私は大きく血を口から吐きながら大きく仰け反って仰向けで倒れる。


「あ、あれ……血が……血、が……」



私のお腹から、もじん、わりと血が流れ、ているの、が分かる。


思考がまとまらない。


温、かくてべ、っとりし、ていて、それ、からじんじん、する。


違う。今考えるべきなのは双頭犬と未亡人の攻略法だ。思考を常に巡らせないと。


今、日は学校が終、わったら放、課後みん、なと遊びに、行くんだ。


私が頑張らないと。リラが、ライルが、みんなが幸せになれない。考え続けろ。思考を休めるな。


一、緒にカラオ、ケした、り、ゲ、ーセン行っ、たり、今、日は好きな、だけ遊べ、る


いいやかんがえなくて、ライ、ルが、たすけにき、てくれ、る、はずだから。







「もう油断はしないワンよー」「やっちゃうぞガウっ」


「つーかさ、いつまでその変なキャラ続けてんの? 見苦しいんだけど」






私を置いて未亡人と双頭犬は戦闘のボルテージを本格的に上げていく。


「あの倒れてる女の頭を踏み潰すくらいの余裕は欲しいワンね」「無理ガウよ。余計な事したら死ぬガウ」


「犬派じゃなくて猫派だからテンション上がんないし。マジうぜぇ」


双頭犬は自己再生の効果で水玉病を克服。ただし刺された目玉は手遅れだったのか、再生する事は無かった。




「"増殖"」「"放出"」



……しかし、彼等が増える様子も放たれる様子も無かった。


それどころか双頭犬の視界には、テレビの砂嵐の様なザラついたノイズが入りまくる様になってしまう。


さらに克服したはずの水玉病が今度は全身に至るまで感染。ドロドロの血が毛穴と言う毛穴から流れ落ちていく。


「あー……この症状は"混乱"×40+"幻影"×20+"洗脳"×20+"遅効"="主人公症候群"じゃん。これって常に自分が優位的な状況だと勘違いしちゃうんだってさ。本当は病気なんて治ってないのに治ったって思いこんだり」


「……いつ、そんな病気に……」


「針を刺した時に詠唱したゲノムが別に全てじゃないから。わざわざ全部のゲノムを律儀に唱える訳ないじゃん。あとワンって鳴かないと駄目でしょ。犬以下ってこと確定しt




アーミーを撃ち、現在は地面に転がっている目玉から"増殖"した細胞が"放出"。


そしてあたかも"追尾"しているかの様に未亡人の顔面を綺麗に捉える。


「クゥーン……犬以下って言うのは、自己紹介だワン?」「謙虚ガウねー」


「……」


即座に未亡人の喉笛は鋭い爪で掻っ切られる。


「やっぱり踏みつぶすより掻っ切る方がみっともない感じが出て良いワン!」「早くあの女も殺しとくガウ。このままだと僕等も死んじゃうガウ」










一方その頃、観覧車の頂点に位置するゴンドラから二人の男性が死にゆくアーミーを眺めていた。


「マジか……エア■スミスが……ぶっ倒れてら……。なあ、ゴ■イヌ」


「ウホウホ……ウホウホッ!」



"汚職家ギロチン殺人事件。処刑人A"


"■・■■事件。交渉人"



交渉人はゴリラ顔の軍服中年。ゴリラでは無い。


「違うんだよなあ……。ゴ■イヌはそんな事言わない」


「ウホ……ウ……あの、いいんすか。標的が双頭犬に取られちゃいますけど……?」


「別に? アイツのスタ■ドってエア■スミスだろ? んじゃあ、元ネタ考えると死ぬ運命にあるんだよ」


「それってネタバレじゃ……?」



しかし処刑人はゴリラの言う事に耳を傾けず、とある方向を見つめる。




「……zzz」




"ネオ東京大虐殺。はぐれ日本軍"



屋上遊園地の隅の床で老人は呑気に眠っている。


だがその周りには彼を包む様に巨大な影が蠢き始める。




「……クソが。てっきり一週間も見てないから寿命で死んだと思って油断しまくってたわ。あのジジイ生きてんのかよ」


彼は一気に血の気が引いた様な表情を見せる。


「そんなに強いんすか、あの爺さんって」


「賢人ならもっと自分で考えろよゴリラ」


処刑人はゴリラの頭を片手で鷲掴みにした後、プロ野球の投手もビックリする程綺麗なフォームでジジイに向けて全力投球。


ゴリラ砲は綺麗な直線を描き、凄まじい速度で爺さんの元まで飛んでいく。


そしてこのまま二人が正面衝突するかと思われたその瞬間――、ゲノムが発動する。





"1932年5月15日"




交渉人はどこからともなく複数の銃弾を喰らって死ぬ。






「な? ヤバいだろアイツ。この発言聞いてると思うからさ、そろそろビビってないで動いてくれよ。





――、終末論(アポカリプス)。」





第十六話 五・一五事件

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