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ブループリントヒトゲノム  作者: 冬蜂
第二章 ■■■■編
13/19

第十三話【前編】 ウェルカムトゥー■■■■

ピピピ、ピピピ、ピピピ――。


スマートフォンのアラームが私を起こす為にけたたましく鳴り響く。


(うるさいなあ…)と思いながらも、私はベッドに埋もれた封印されし右腕でスマホを掴みそのままアラームを止めてみせる。偉い。


「相変わらず、無機質で萎えますね此処は……」


現在、上空1万メートル。時刻は寝ぼけて覚えてないけど多分昼寄りの朝。あの出来事から一週間が経過。此処は毎度お馴染みあのジェット機くんの内部。


されど今回初公開となるのが、このアーミー・ブループリントルーム。


一人暮らししていたので特別テンションが上がる訳無い……と思いきや、マイルームがあるだけで当初は何故かウキウキ気分だった。


まあそれは最初だけ。


「ぬいぐるみとか……飾りたいんですけど……。この部屋に合いそうなぬいぐるみって存在するんですかね……?」


そう、ため息一つつきながらボサボサの髪、ボロボロのねずみ色スウェットの状態で私はヨロヨロと自室を抜け出す。




「今日は遅いね。夜更かしは身体に毒だよ?」


ライルはそう言って大部屋スペースのソファーに寝っ転がりながら呑気にテレビを見ていた。


「休日のお父さんじゃないんだから」


「さて……今日は酒浴びてパチで金溶かして煙草50本吸うかな」


「よく夜更かし注意出来たなクソ親父」


とまあ、いつもの小ボケも難なく捌いては、近くにあるキッチンに置かれたライル特製モーニングセットを一通り見ていく。


今日のモーニングセット!カリカリトースト!いちごジャム!スクランブルエッグ!なげえベーコン!おまけの野菜!コーヒー!


こういうのでいいんだよこういうので。


しかも全てが絶妙に温かい。一人暮らしの時は冷めた弁当やおにぎりばかり食べていたのでこれが本当に嬉しい。


ライルは"第六感"持ちなので、私が起床したタイミングに合わせて朝食を作ってくれている。


「私の"第六感"を君の起床に使うのはなんか嫌なんだけど」


「まあまあ。さてと、つまみ食いでもしながらテーブルに運んじゃいましょうかね」


私はトーストと愉快な仲間達withフォーク&スプーンが乗ったお盆を持ちながらテーブルに向かって座る。


口いっぱいになげえベーコンを丸ごと咥えながら。


「ただでさえつまみ食いはマナー悪いのに……なげえベーコンは悪すぎるよ。大分口からはみ出してるし」


「ふっ……あふひん(悪人)でふから」


するとライルは私の動きに反比例してソファから立ち上がり、こちらに向けて話し始める。


「学校は行かなくてもいいのかい?」


私は現実とライルから目を背けてベーコンを一心不乱に噛み続ける。


「ふっ……あ


「悪人でも学校行く人は行くと思うよ」


ヤバい。悪人言い訳も封じられた。


「まあ……今、私行方不明扱いなんで別にいいんじゃないんですかね。そもそも、もう親戚に見捨てられてたと思うんで学費も払ってくれないと思いますし……」


「私が払う、と言いたいところだけど……怪しすぎるか」


そもそもこの人ちゃんとしたお金持ってるの


「身体を鉱石化しては高く売れる金属で錬金術してるから大丈夫だよ。身体の一部が減っちゃうけど、自己再生でどうにでもなるし」


「経済イカれちゃう」


と言うか、学校よりも気になる事がある。


「私って助手になったんですよね?」


「うん」


「お給料はいつ届くんですか?」


ライルは現実と私から目を背けて、ニュース番組が写っているテレビを一心不乱に見続ける。


「もしかして……ブラック企業なんですか?」


「違うね。依頼が来たら給与が支払われる歩合制だね。でも、衣食住は基本的に保証され


「私の前の依頼っていつ来たんですか?」


「……ぅん年前かな」


「"年"の威力が強すぎて"ぅん"で誤魔化しきれてないですよ…!?」


とはいえ、衣食住保証されてるなら別にいっか。せいぜい不満あるのぬいぐるみが無いことくらいだ。


「それじゃあ納得して貰ったところで……これから私達三人が行うべき事について考えてきたから聞いて貰っていいかい? 朝食中だけど」


◇ライル、アーミー、リラのやることリスト

ライル:真犯人捜し&ヒトゲノム探索

アーミー:真犯人捜し

リラ:記憶を取り戻す


「この中でも私が最優先したいと思っているのはやはりリラだね」


「そうですね、彼女の精神状態が一番大事ではありますもんね」


リラは現在、別室で就寝中。以前よりは精神状態は安定してはいるものの、依然として記憶が戻っていない状態だ。


また彼女が暴走する危険性もあるし、もう哀しい思いは本当にしてほしくない。


「その為にはリラが落ち着いて過ごせる拠点が必要だと思う。このジェット機も悪くは無いんだけど……」


本当なら病院に連れてちゃんと検査を受け、自然豊かな場所でゆっくり落ち着いて貰いたい。


「でもそんな拠点ありますかね……」


大部屋のテレビで流れているニュースの内容は連日、"リラ・シーカー容疑者が千年大国やゲノムユートピアを崩壊した大罪人!" "現在も逃亡中であり、見つけ次第通報!"と言うものばかり。


リラの顔写真も大々的に流れているので、このジェット機から彼女を降ろせないと言うのが現状だったはず。


「……ギリギリまで言う事すら悩む策だけど、これしかない」




"独裁国家への亡命"




「却下します」


「言うと思った」


「折角、三人で逃避行するにしても……もっともっと……冒険感と言うか……!何と言うか……せめて旅してる感?楽しい感?が欲しいんですけど。その方がリラにとっても良いと思います」


「独裁国家は冒険してない?ある意味」


「王道を往けって言う話なんですよ」


だが、まあまあ…wみたいな感じで私のことを嗜めるライル。


「大丈夫。その独裁国家とはコネがある。それに一か月なんとか凌げればいい」


「……伊達に百年も世界放浪してる訳じゃないって事ですか」


だけど、一か月の言葉の意味はまだ解けない。


「"認識阻害"と言うゲノムを私は所持している。これを使えば、リラの認識を阻害することが出来る。要はバレずに地上で暮らせるってことだね」


「でも世界中の生物が対象だから認識阻害を広めるのに一か月掛かる、と」


「流石に一瞬では無理だね。だからその間だけ、独裁国家で暮らす」


現在、この世界において正式に独裁国家を宣言しているのは200か国中46か国。


「それで……どこのやべー国に亡命を?」


「……それはね」










・ネオ東京

島国。独裁国家。鎖国国家。危険度SSS(入国したら生きて帰れると思うな

八十年前、とある螺旋塔守護者が建てた王国。その守護者は魔物であったが、旧文明を密かに好んでいた変わり者。ただし神様の命と言う事で螺旋塔を設立、文明を崩壊に導いた。それでも旧文明の想いを忘れられず、未練たらたら過ぎてネオ東京を建国した。


旧文明を現文明で歪められる事を極度に嫌っており、異文化交流を一切行っていない事から鎖国国家とも呼ばれている。


ちなみに我々一般人から見た旧文明の知識は歴史の授業でほんのちょっと語られるくらい。




「徹底的な情報統制でリラについての情報はこの国なら入っていない。なのでダイジョブダイジョブ」




あちゃあ……忘れてた、この人って頭のネジ外れてるんだった。


「それじゃあ……そろそろ着くかな。ネオ東京に」




そんな訳で外の景色からは既にネオ東京が見えていた。


パッと見の印象は国と言うより大きな島。


そして古ぼけたビル達がその島を巣食う様に生えている。


だがそんなのはとても些細な事だ。


「……これって






「あ、言い忘れたけど前来た時80年前だからさ……コネ持ってる人が私のこと忘れてるかも」


「マ…マ…マスターぁああああああ助けてええええ!!!」


しかし来たのリラであった。私が叫んでしまったので起きてしまった様だ。服装はピンクのウサギ柄のパジャマ。本来は私が着てた奴。


「……」


リラは無言で私を睨む。


「ご、ごめんなさい」


思ったより寝起きめっちゃ悪かった。ほんとごめん。


「まあ冗談だよ。何かあったら私がどうにかするから」


と言う心強さもあったので、特に私は彼の言う事に否定自体はしていない。


それに……あの"光景"を見て、面白そうだと思ったから。




鎖国国家なのに滑走路は一丁前に用意しているらしく、ジェット機は無事着陸。


「それより私とリラ、スウェット&パジャマのままだし朝食終わってないんですよ。超高速化で支度するんで時間稼いでください」


「うんいいよ」





◇    ◇    ◇    ◇




そんな訳でなんとライル一人でお先にネオ東京へ降り立っていく。


「……相変わらず、モダンと言うか大正ロマンと言うか……」




そしてその瞬間―—、ライルを彩る配色は白と黒のみとなる。


その光景を例えるならば、モノクロテレビの様に。


その光景を例えるならば、白黒映画の様に。


ネオ東京は全ての色が二色だけで完結していた。


「ライル・ジッド様ですね! お待ちしておりました!」


さらにそんなモノクロに溶け込むのが、ライルを待ち構えていた軍服且つ坊主の男性達。


おおよそ100人以上が彼を取り囲み、敬礼をしていた。


歓迎の意味を込めて。


「ひひひ……やっぱりな、ワシは来ると思っとったわ。ライル氏」


そして車椅子に乗った老爺がライルの前に登場。


老爺は大きく髭を蓄えており、焦点がまるで合っていない。服装は赤い下地に金色の龍の刺繍が入ったお着物。


何より彼の両足は膝から先を失っていた。


「出来れば借りなんか造りたくなかったんだけど」


「そう言わんでくれ。ショックで泣きそうだ。まぁ……まずは一つ」



"ネオ東京の國王の御前に立つてゐることを光榮に思つてくれたまへ"




老爺はケラケラと笑いながらも、瞳をグリグリとライルの方に合わせる。




「……あれ、ボケてるのかなお爺ちゃん。君は私が壊したクソゲノム研究所の"元幹部"だよ」


ライルは対抗する様に因縁めいた瞳で老爺を睨んでいく――。





第十三話 ウェルカムトゥーネオ東京


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