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なろう世界の狩猟とマダニに関する一考察

作者: よろ研

「なろう世界」では定番な冒険者あるいはハンターの方々。森でシカやイノシシ、あるいは魔獣を仕留めて解体していますが、あの世界ってマダニとかいないんだろうかと疑問に思いました。現実世界ではシカやイノシシを解体しようすると、いやになるくらいマダニが付着しています。多分1頭当たり数千匹。気がつくと何匹かに刺されています。マダニに刺されてもかゆくない(痛点等に当たれば何かしら反応しますが)ので、服を脱いでから気づくことが大多数です。厄介なものです。



ダニとマダニ


「ダニ」は昆虫とは異なり、体の構成は頭胸腹の区分がない一体型です。ダニの種類は非常に多く、全世界で約45000種、日本では1800種程度が知られています。ほとんどはある意味無害で、ミモレットチーズを熟成させるダニがいたり、土壌の有機物を分解したりして自然界の維持に役立っているダニがいたりするのですが、ごく一部、人や動植物に害を及ぼすものがいます。私の中で厄介なのは「マダニ」です。おおざっぱに言うと動物の血液を餌として生きているダニ、ということになります。日本では47種が知られています。

マダニは卵→幼ダニ→若ダニ→成ダニのステージを繰り返します。

マダニは卵から産まれると6本の足を持つ「幼ダニ」となります。草の上などで動物を待ち伏せて、動物が近づくとそちらに移ります。で、吸血して飽血(おなかいっぱい)になると脱皮のため地面に落ちます。脱皮して今度は足が8本の若ダニとなり、また同じように動物から吸血して飽血して地面に落ちて脱皮します。次は足は8本のままですが雌雄の区分のある成ダニになります。で、交尾して吸血して飽血して卵を産んで一生おしまい、となります。



マダニが持つ病原体


マダニは各種の病原体(日本紅斑熱リケッチアやSFTSウイルス等)を保有していることが知られています。

もちろん、すべてのマダニが病原体を持っているわけではなく、ごく一部のマダニが保有しています。運悪く病原体保有マダニに刺されてしまい、これまた運悪く唾液などと一緒に病原体が体内に入りこんだ時に発病します。

また、マダニ体内で保有されている病原体は親から子へ介卵感染する種が多いため、マダニ由来感染症は風土病的な地域性が存在します。したがって、患者さんが多い地域=病原体保有マダニが多い地域となります。

長くなりますので詳細はまた別の機会に。



マダニ唾液による肉アレルギーと発病機序


異世界転生もののどれかで肉アレルギーの令嬢が出てきていたのが記憶にあります(すみません。タイトルを失念してしまいました)が、よくご存じだなぁと驚いて読んでいました。

マダニによる肉アレルギーの発病機序は、マダニ唾液の中にα-Galという哺乳類の肉やカレイ等の魚卵と共通した構造の糖鎖が含まれており、この成分に対してアレルギーを発症すると肉などにもアレルギー反応を起こすというものです。哺乳類の肉はほぼダメで、肉が由来となったゼラチンにも反応しますので、ゼリー類のお菓子や、場合によっては医療用カプセルやシャンプーもアウトになる可能性があります。

また、このアレルギーが問題視されることになった取っ掛かりは、米国のある特定の地域で抗癌剤セツキシマブにアレルギーを持つ患者さんが多く見つかり、その地域がキララマダニ属のマダニが多く存在する地域であったことから判明したものです。

つまり、アレルギー発症によって哺乳類の肉はダメ、魚卵もダメとなりますので、食事のメニューにかなり苦労することになりそうです。鳥類や魚の身は大丈夫そうですので、そちらを食べていただくことになります。



「なろう世界」のマダニたち


現実世界と似たような経緯を辿っている異世界であれば、ダニ類に関しては存在していても不思議はない、というかいるはずです。ダニ類はそもそも有機物分解などの自然界の物質循環に必須ですので、類似の生物が誕生している可能性が高いと思います。

ではマダニはどうでしょう。こちらもいても不思議はないと思いますが、単に物語として意味をなさないから出てきていないだけかもしれません。現実世界のマダニは種によって動物の嗜好性があります(人が大好きなマダニもいれば、爬虫類が大好きなマダニもいます)ので、「なろう世界」ではその嗜好性が強くなって、イノシシしか刺さないマダニ、とか好みが極振りしてしまっている場合もあるかもしれません。

「なろう世界」に人を刺すマダニがいるとすると、マダニ由来感染症がどこかの地域で多発したり、肉アレルギーが発症する人が多く出てくる地域があったり、ということになるでしょうか。その場合、アレルギーの人は鳥や魚を食べて生きていくことになるのでしょう。まあ、「アレルギーを発症しない=マダニに刺されない」というのが何よりの予防ではありますが。


ところで魔物って何でできているんでしょうね。食べられるのだからタンパク質や糖質、脂質でできているのでしょうが、肉アレルギーの人でも食べられる食材でしたら「アレルギー除去食(魔物使用)」という食品が流通しているのかもしれませんね。


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