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061.美女

 エドワードの卒業まであと2ヵ月。


 エドワードに何か贈り物をしたいが、リリアーナはこの世界のお金を持っていない。

 正直、単位もよくわかっていないし、硬貨の種類も全部知っているかあやしい。


 この世界にアルバイトはあるのだろうか。

 平民の子は学園の後、働いていると言っていた。


 ウィンチェスタ侯爵に、お店で働くとか、お菓子を作って売るなどお金を稼ぐ方法はないかと相談したら、侯爵令嬢はそんな事はしないと溜息をつかれた。


 騎士コースの卒業生には、家族や婚約者から家紋を刺繍した剣帯を贈るのが一般的だそうだ。


 今日は別邸に材料を持ってきてもらう事になっていたのだが。


 リリアーナは現在、目の前の美女を前に固まっている。

 ウィンチェスタ侯爵はイケおじだ。

 その横に立つ美女。

 2人合わせると眩しすぎて困る。


「はじめまして。ノアールの母です」

 優しい声で、優しい笑顔で微笑む美女。


「……お姉様ではなくて?」

 驚きすぎて挨拶もせずに、心の声がそのまま出てしまった。


 まぁ、かわいい。と笑いながらハグされたリリアーナは、いい匂いと美しすぎる顔と柔らかい胸に魂が抜けるかと思った。


「そうね、上手よ」

 ウィンチェスタ侯爵夫人は、初めて刺繍をするリリアーナに道具の使い方から丁寧に教えてくれた。

 どのくらいの強さで引っ張るなど、感覚のようなものもわかりやすく教えてくれる。

 ノアールの教え上手は夫人譲りなのかもしれない。


 刺繍をしながら、ノアールの子供の頃の話や最近の家での様子を教えてくれた。

 時々、ウィンチェスタ侯爵が話を止めていたので、聞いてはいけない事まで話そうとしていたのかもしれない。


 リリアーナは今までにもらったドレスのお礼はもちろん、黄色のドレスのふんわりとした袖が可愛かったとか、緑のドレスの肩のリボンの素材が素敵だったなど、出来るだけ具体的に感謝を伝えた。


「ありがとうございました」

 基本的な事を教えてもらったので、あとは自分が頑張るだけだ。

 リリアーナがお礼を言うと、ウィンチェスタ侯爵夫人は天使のような笑顔で微笑んだ。


「ではリリアーナ、完成を楽しみにしているよ」

 ウィンチェスタ侯爵が当たり前のように夫人に手を差し出した。


「わからなかったら、遠慮なく聞いてね」

 スムーズで完璧なエスコート。

 まるで貴族の見本のような2人だ。


 ウィンチェスタ侯爵がイケおじだからノアールの色気がダダ漏れになると思っていたが、この美男美女から生まれたなら仕方がない。

 世の中は不公平だ。


 馬車に乗る2人に手を振り見送ると、リリアーナは続きを頑張ることにした。


「真面目でいい子ね」

 馬車の中、ウィンチェスタ侯爵夫人はリリアーナを思い出して微笑んだ。

 道具の名前や刺繍の仕方を教えると、ノートに不思議な記号でメモをしていた。

 決して書くのが遅いわけでもなく、1度教えたことは聞かずにノートを見て進めているので、きっと書き漏れもないのだろう。


「不思議な子だわ」

 夫人の言葉にウィンチェスタ侯爵も同意する。


「取られたくないわ」

 あの子がしていた腕輪、茶色の石だったわ。と溜息をつく。

 相手が誰かもわかっているのだろう。


「あの子に幸せになって欲しいのだよ」

 ウィンチェスタ侯爵が微笑むと、そうね。と夫人も微笑んだ。

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