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021.初等科入学式

 王立学園は身分に関係なく10歳から基本的な読み・書き・計算を学ぶことができる国が運営する学園で、平民には教科書や制服も支給され、通学に困らないように馬車も手配されるそうだ。

 貴族は優秀な人材を確保するため、多くの寄付金を納めるのがステータスなのだと。

 子供の教育にお金を使えるということは、豊かな国だと思う。

 この国は、もしかしたらこの世界は、平和ないいところなのかもしれない。


「大きい」

 学園の入り口には大きすぎる門と、たくさんの建物、広大な敷地にリリアーナは圧倒された。


「ははっ、迷子にならないようにね。リリアーナ」

 ウィンチェスタ家の馬車で、後見者であるウィンチェスタ侯爵と共に初登校したリリアーナはキョロキョロと周りを見渡した。

 これから講堂で入学式が行われるはずだが、どの建物なのかまったくわからない。


「エドワードは今日から授業だね。ノアールは入学式の準備のために先に行ったよ」

 兄エドワードは中等科騎士コース3年になった。

 ノア先生は博士科1年。

 スーパーエリート確定だなんて、凄すぎる。


 講堂の入口にある掲示板でクラスを確認し、クラスごとに座るらしい。

 1クラス40人、6クラス。

 学力で分けたり、身分で分けたりはしないそうだ。

 この辺りの制度は前世とあまり変わらないのでほっとした。


「リリアーナはF組、殿下はA組だね」

 普段は会うこともないだろうねと教えてくれるウィンチェスタ侯爵にリリアーナは「よかった」と微笑んだ。


「さぁ、リリアーナ。入ろうか」

「はい。おとうさま」


 事前に言われていた通り、制服の子は平民の子だけだった。

 貴族の女の子は、それはそれは豪華なドレスに身を包み、リボンや飾りがモリモリですごい。

 講堂の椅子が狭そうだ。

 すごいな貴族って。


 講堂の廊下をウィンチェスタ侯爵と歩くと、なぜか周りが避けていく。


 ……あれ?

 リリアーナはウィンチェスタ侯爵を見上げた。


「前を見て歩かないと危ないよ、リリアーナ」

 注意されてしまったが、また前を見ると人が避けていく。


『挨拶もダメ、お辞儀をして先に通ってもらう』

 急にエドワードとノアールから教わった学園のルールを思い出した。


 お辞儀をして先に通ってもらう!

 お辞儀をされて先に通されている!


「お、お、お、おとうさ……ま……」

 もしかして、ウィンチェスタ侯爵家って結構、いやかなり上の方ですか……!?

 声に出せなかったリリアーナの疑問を察したウィンチェスタ侯爵は緑の眼を細めて微笑む。


「あれ? 言っていなかったかな? ウィンチェスタ侯爵家は公爵家の1つ下、侯爵だと1番上だよ」


 ひぇぇぇぇ。

 ちゃんと教えてください、そんな重要なことは!

 だからクラスの掲示板も見やすかったのか。みんな急に消えたし。

 恐るべし、身分!


「……そういえば、どうしてノア先生は制服なの?」

「ははっ。気づいてしまったかい? それはね……」


 アイドルを見かけた女子高生のような黄色い声に驚いたリリアーナは振り返った。


「あ、ノア先生」

「余計なことは言わないでください、父上」

 慌てて飛んできたノアールが盛大な溜息をつく。

 そんなに聞かれたくない理由なのだろうか。

 逆に聞きたくなってしまうではないか。


「ふふっ、相変わらずだねぇ」

「リリーの前で変なことを言わないでください」


 あー、あー。なるほど。

 目立たないように平民の格好を。

 制服であれば他の学年や知らない人からは平民だからと相手にされない。

 でも、その綺麗な緑髪と賢そうな眼鏡では、平民とは思われません!


 ふふふふっ。

 目立つのにそんな変なところだけ気を付けるなんて。


「おやおや、お姫様はご機嫌だね」

 ウィンチェスタ侯爵が優しく微笑むと、こちらもマダムからの熱い声が聞こえた。


 あらら。おとうさまも人気者。


「リリー、またあとで会いましょう」

 ノアールはすぐに戻っていく。

 憧れのまなざしの女の子、ぽーっとしている子、壁に張り付く子、お辞儀をする子。みんな忙しそうだ。


「リリアーナ、あの入口、見えるかい? 彼が第5王子だよ」

 ウィンチェスタ侯爵が小声でリリアーナに囁く。


「……派手」

 あれなら見たらすぐわかる。うん。大丈夫。

 あの人に声をかけられたら、答えないといけない。

 あとの同級生はすべて無視でも構わない。

 ちゃんと教わったから大丈夫です!


「ふふっ、彼を見て『派手』で終わらせるのはリリアーナくらいだね。みんな彼とお近づきになりたくてソワソワしているよ」

 声をかけられるまで下の者から話しかけてはいけない。

 なるほど。素晴らしいルールだ。


 入学式は淡々とありがたいお話が続き、高等科騎士コースのかっこいい剣舞の披露、高等科魔術コースの凄い魔術の披露が行われた。


「ノア先生は出てこないの?」

「博士科は裏方だからね」

「なぁんだ」

 魔術を使うノア先生が見られるかと思ったのに残念。


「あれ? あのお兄さん」

「在校生代表は第1王子殿下だよ。知っているのかい?」

「本屋で会ったの」

 ノアールと街へ行ったときにぶつかりそうになった茶髪のお兄さんだ。

 まさか第1王子だったとは。

 気軽に本屋にいるとか、やめてほしい。

 ノアールがあの時少し焦っていた理由がやっと分かった。


「いいかい、リリアーナ。無理だけはしないように」

「はぁい」

 ウィンチェスタ侯爵が頭を優しく撫で、頬に手を当ててくれる。


「いってきます。おとうさま」

 元気に挨拶すると、ウィンチェスタ侯爵は優しく微笑んだ。


 『F組』というプラカードを持った担任の先生についていく。

 今、近くを一緒に歩いている子達がF組なのだろう。

 キラキラのリボンが眩しい女の子と美しい縦巻きロールは友達同士、平民同士もすでに友達っぽい。

 男の子も数人が話しながら歩いて行く。

 わざわざ、黒髪のリリアーナに話しかける子はいない。

 うん、予想通りぼっちだ。

 リリアーナは教室の後ろの方に一人で座った。


 とりあえず担任の自己紹介と連絡事項。

 うん、普通だ。前世と変わらない。


「私はハントリー侯爵の長女ハリエット。火魔術が得意ですのよ」

「俺ん家、男爵。エリオス・ホーク。土魔術の中級だ!」

「あ、あの、平民……です。南地区に住んでいます。ルイーズです。火魔術です」

「あら火なの? 私には敵わないと思いますけど」

「そうですわ! ハリエット様に敵うわけないですわ!」

 平民が挨拶すれば貴族が食らいつく。

 取り巻きは面倒だ。


 あぁ、前世って平和だったな。

 身分差はここまで激しくなかったよね。

 リリアーナは溜息をついた。


「リリアーナ・フォードです。闇です」

「闇って?」

「だから髪が黒いの?」

「呪われる?」

 予想通りひそひそ話される内容は予想どおり。

 『闇』属性は珍しく、どんなことができるのかあまり知られていない。

 きっとこのまま誰も近づいてこないのだろう。 


「では今日は終わります。明日また会いましょう」

 担任の先生が告げると同時にリリアーナは急いで席を立った。


「何かあったらすぐ言ってね」

 担任の先生は優しい先生でよかった。

 国王陛下の配慮により、1番ベテランの先生が担任に。

 そしてやんちゃ王子から1番遠くのクラスにしたと教えてくれた。


 国王陛下、権力行使が凄いですね。

 ありがたいですけど。


「寮はね、教室から少し遠いのよ」

 担任の先生は中等科・高等科の1階廊下を通ると雨でも平気だが、できるだけ中庭を通った方が良いと教えてくれた。


「寮長は少し変わっていますが、良い方なので。本当に優しくて良い人なので」

 何度も『良い人』を強調するのはなぜ?

 

 案内された白い建物。

 その前に立つ1人の人物。


「えっ?」

「あなたがリリアーナさん? リリーちゃんね!」

 リリアーナは想像と違う寮長の姿に目を見開いた。

ここからは未改稿のため読みづらい部分があるとは思いますが、ラストまで公開してほしいとご要望をいただいたため公開します。

よろしくお願いします。

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