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172.経歴

 3歳。

 フォード別邸で生活。

 初めて魔力滞留になり生死を彷徨う。

 侍女長をはじめ、ほとんどの使用人が解雇。


 5歳。

 初めて火属性の魔術を使って倒れる。

 偶然居合わせた兄エドワード・フォードと家庭教師ノアール・ウィンチェスタが目撃。

 ノアールと婚約。

 フォード別邸から初めて外出。


 7歳。

 エスト国、王都教会で神託を受ける。

 魔道具で魔力を抑え、水属性・上級で登録。

 フォード別邸の応接室から光魔術と闇魔術の痕跡あり。

 フォード侯爵は失踪、リリアーナは足首に蔓の痕、背中にアザなど全治1週間の怪我。

 フォード本邸地下から母と子の白骨が発見され、リリアーナがフォード侯爵の子ではない事が判明。

 ウィンチェスタ侯爵が後見人に。


 8歳。

 エスト国王、教皇、魔術師団長の立ち会いの元、神託のやり直しを実施。

 全属性適正あり(闇以外はすべて上級)と判明。

 魔道具で闇属性のみに制限し、魔力を使わない生活を送る。


 9歳。

 創造魔術を初めて使用。


 10歳。

 王立学園入学、寮生活。

 エスト国王より魔力を吸い取る魔石を譲渡。

 エスト国第1王子より求婚、返事は保留。


 11歳。

 不可解な夢で(つる)の痕が足首に。


 13歳。

 エスト国にノアールとの婚約届を提出。

 光魔術で兄エドワードの折れた剣を新品に修復。

 光魔術で死んだトリを一瞬生き返らせた疑惑あり、気絶だったのか確認取れず20m先でトリは絶命。


 15歳。

 縫うほどの傷を一瞬で治癒する傷薬を作成、すぐに使用禁止。

 建国祭でエスト国から追放、ノアールと婚約破棄。

 ドラゴニアス帝国ウェリントン公爵の養子となり、第1皇子ジークハルトと婚約。


 16歳。

 Bランク冒険者タンクがサラマンダーに喰われた手を再生。

 ジークハルトと婚約発表の夜会でマルディ公爵令嬢が魔術攻撃、ヴィンセントが防ぐ。

 皇后の扇を修復。

 シンディ伯爵令嬢による毒殺未遂。

 夢で女神の迷宮を作成。


 Dランク冒険者ユージに「一緒に帰ろう」と言われる。

 ロサンゼルス、ビョウイン、昏睡状態。


「壮絶ですね」

 クリスは手帳に今までメモした内容を箇条書きにしながら溜息をついた。

 ウィンチェスタ侯爵、ジークハルト、ジェフリーから聞いたリリアーナに関する事柄だ。


 白いゴハン、トーフ、ミソシル、サケ、ダシマキタマゴ、パリパリのノリ。

 巫女、袴。白いセカイ。白い少女。川・海・草原、動物・種族を出す。

 創世記。創造の女神。

 エルフ女性失踪、禁書、エルフの本(ウィンチェスタ侯爵2冊返却済)


 これらのキーワードは時系列とは別で記載した。


 冒険者ギルドでユージを調べたが、イースト大陸オセアン国で登録されていた人族のDランク冒険者が該当者だろう。

 地道に依頼を受けている記録が残っていた。

 地味なGランクの依頼を未だに受けているので真面目でお人好しな性格なのかもしれない。


 女神の迷宮から帝都までは馬車で10日。


 今は迷宮の隣街にいるようだ。

 馬車は使わず徒歩で移動なのだろうか。

 依頼記録からはD・Eの依頼を受けながら少しずつ移動しているように見えた。

 パーティ登録はしていない。


 冒険者登録されたのはリリアーナが10歳の頃。

 ユージとの接点が見つからない。


 クリスは羽ペンを置き溜息をついた。


 エルフ長ダンベルドから借りた創世記には、クリスが今まで読んだ創世記よりも詳細が書かれていた。


『光の特級魔術を使える創世の女神シズが珠から青い川を作り、水が流れた先に海が出来た。

 珠から青色が消えると次は草原が広がり木々が生え花が咲く。

 多くの種族が珠から自分の住処に向かって出て行った』


 リリアーナがジークハルトに話した内容と一致している。


『セカイを作った創世の女神は世界樹に抱かれて眠る。永遠に。セカイの終わりまで』


 創世記の終わりはこのように締め括られていた。


 今、本は宰相の手元にある。

 旧字で書かれていたためこの解釈で合っているのか早く確認したい。


「このユージ? に会うのが先だ。その次が白いセカイ、それから3歳に続く」

 ジークハルトは上から覗き込みクリスに教えた。


「3歳よりも前なのですか? ですが5歳まで外出した事もなく……」

 クリスは自分が書いた5歳の部分を指差した。


「お前には伝えていなかったが、リナは別の世界から来た。ユージと女も」

 黙っていて悪かったなとジークハルトが目を伏せる。


「……別の世界……? 創世の女神と同じ? 足の(つる)は別の世界からこの世界へ囚われた……?」

 クリスが独り言を始めると、ジークハルトは苦笑した。


 多くの者は別の世界なんて! と否定するだろう。

 信じられないと言うだろう。

 でもクリスは否定しない。

 昔からずっと、どんな変な話でも冷静に聞いてくれる。


「別の世界で空から落ちて死んだ。白いセカイを見て、気づいた時はリリアーナだった」

「だから黒竜メラスで飛んだ時にあんなに怯えて……」

 あの時、事情があってな。とジークハルトは言った。


「申し訳ありませんでした」

 知らないとはいえ、時間がなく護衛もいないからと残酷なことを強いてしまった。

 クリスが謝罪すると、黙っていた自分が悪いとジークハルトはクリスを擁護する。


「死んだはずが生きていると言われたのですね、ユージに」

 元の世界に一緒に帰ろう。

 元の世界で意識不明の昏睡状態。

 ロサンゼルスのビョウインはおそらく地名。

 これならば話が繋がる。


「……元の世界なら白いゴハン、トーフ、ミソシルも食べられる。行きたいと言っていた場所にも行ける。ユージもいる。おそらくこの世界よりも便利な世界。毒を飲むこともないのだろう」

 ジークハルトの悲痛な声にクリスは顔を上げた。


「それでも元の世界に帰したくないと、離したくないとずっと抱きかかえていたが」

 食事も食べずに眠ってしまった。

 ジークハルトが奥歯をギリッと鳴らしながら辛い表情を見せると、クリスも目を伏せた。


「クリス、迷宮を見に行ってくれないか?」

 ギルバートがクリスに見せた方がいいと言ったのだと説明すると、クリスは嫌がりもせずわかりましたと言った。

 パーティ登録すれば好きな場所に行けるので、戦う必要はないと言うと安心する。

 戦いが必要でもきっと行ってくれたのだろう。


 公務のない火曜の朝から水曜の午前であれば行くのは可能だろうか。

 クリスは手帳を見ながら考えた。


「お前には迷惑ばかり……」

 頼ってばかりですまないとジークハルトが言うと、クリスは本望ですと微笑んだ。

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