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141.無双

 夜会から2日後、いつものようにリリアーナはジークハルトに抱きかかえられながら帝宮の廊下を移動した。

 護衛に前後を守られ、横には補佐官クリス。

 会談先の情報を事前に話しながら廊下を進む。


 仲睦まじくイチャイチャしながら歩く2人には各国の王女達は近づけず、話しかけたくても話しかけれない状態だ。


 王女達はわずかなチャンスを狙い、お色気アピールがすごい。

 リリアーナは睨む王女達と目が合わないように、できるだけジークハルトだけを見るようにした。

 それがまたずっと見つめていると王女達の反感をかうのだが。


「よくお似合いです」

 白い肌に薄いピンクの真珠が映えておりますとサウス大陸イエ国王は大絶賛だった。


「今年は珍しく良いものが出来たので気に入って頂けて嬉しいです」

 やっぱりこんなに大きいものは貴重らしい。

 小さい物は貴族には人気がなく、平民には手が届かず、なかなか販売も難しいので良い宣伝になるとイエ国王は喜んだ。


「真珠に穴を開ける事はできないですか?」

 前世のイメージは冠婚葬祭の真珠のネックレス。

 数珠繋ぎのネックレスだ。

 もらった真珠は大きいものが1つペンダントトップになっている。

 これでは小さい物は貴族に人気がないだろう。


「は? 穴ですか?」

 せっかく綺麗な物に傷を?とイエ国王は首を傾げる。


 クリスに紙と羽ペンを借りて、リリアーナは数珠繋ぎの真珠のネックレスの絵を描いた。


「これなら例えばデビュタントの子だったら小さい真珠の方がいいし、長さを変えて2連で着けるとか、小さい物から大きい物にサイズを変えてもオシャレだし」

 リリアーナは2連の絵や、トップが大きく後ろが小さくなるネックレスの絵を描く。


「あとはドレスの飾りにも使えるし、真珠のティアラも素敵ですよね」

 斬新すぎるリリアーナの案に、イエ国王、ジークハルト、クリスが絶句する。

 イエ国王はもう少し詳しく! と目を輝かせた。



 ウエスト大陸ヤマモ国の会談では、三角のおむすびの話で盛り上がる。


「どうしてご存知なのですか?」

 米を知っている国も少ないのに、伝統の三角で握る方法をご存知とは博識でいらっしゃると褒められた。


「あの、具とか海苔はどうしていますか?」

 昨日海苔を探したが街にはなかった。


「我が国は内陸なので海苔はオサ国から仕入れております」

 ヤマモ国王の言葉をクリスがメモする。


「オサ国か」

 印象がないなとジークハルトが呟く。


「具はウメボシという……」

「カリカリ系ですか? 大きくて柔らかい系ですか?」

 被せるように質問するリリアーナにヤマモ国王は驚いた。


「小さくてカリカリです。本当によくご存じですね」

 ヤマモ国は内陸にあり小国で目立たない。

 周辺国としか普段付き合いはなく、大陸を超えての取引は全くない。


「うまいのか?」

 ジークハルトがリリアーナに尋ねる。


「酸っぱくて好き嫌いが分かれるかな。私は柔らかい方が好き」

「でしたら、カヤマ国のウメボシの方がよろしいかと」

 クリスがカヤマ国をメモし、ジークハルトはカヤマ国も印象がないと言う。

 ウエスト大陸は小さい国が多いそうだ。


「戻りましたらオサ国の海苔とカヤマ国の梅干と我が国のお米を献上させて頂きます」

 ヤマモ国王の言葉にリリアーナは満面の笑みで微笑んだ。



 サウス大陸カオ国とは、もちろんショコラの話だ。


「ほうほう、溶けたショコラを」

 どう実現するかはわからないがリリアーナがチョコレートファウンテンの話をした所、とても興味を持ってくれた。


「フルーツをつけながら食べるとは」

 斬新で流行るだろうとカオ国王は喜んだ。



「……選ばれなかった国から不満が出そうだ」

 ジークハルトの溜息に、リリアーナは首を傾げた。


 翌日、イースト大陸ウセキ国王は、ジークハルトとリリアーナが応接室に入った瞬間、立ち上がり何度もお礼を言った。


 ウセキ国はリリアーナの出身であるエスト国と同じイースト大陸だ。

 エスト国の王立学園の地理で国の名前くらいは習った事がある。

 場所は曖昧だが。


「皇太子妃が刺繍をされるとは。ハンカチやクッションですか?」

 ウセキ国王が何気なくリリアーナに尋ねた。


「1度しかした事がないのですが。作ったのは剣帯です」

 リリアーナの予想外の回答にウセキ国王もジークハルトもクリスも固まる。


「剣帯……?」

 皇太子殿下にではないだろう。

 公爵家の御子息はそこにいる補佐官なので剣帯は不要。


 誰に?

 これは地雷か?

 ウセキ国王は焦って別の話題にしようと試みる。


「我が国の青は創世の女神がお造りになった海の青を模しておりまして、他国にはない濃い色なのです」

 兄エドワードの青い眼の色と同じで綺麗だと思った濃い青は海の青だったのか。

 湖は白いのに海は青。

 不思議な世界だ。


「綺麗な色なので刺繍だけでなくミサンガでも良いかなと思っています」

 学園カバンの紐が引っ張りにくいのでそこに着けても良さそう。とリリアーナは一人で妄想を膨らませる。


「ミサンガとは?」

 ドラゴニアス帝国で流行している物でしょうか?とウセキ国王がクリスへ尋ねると、クリスは首を横に振った。


「えっと、編んだ紐? 組紐?」

 何といえば伝わるのかわからない。


「こういう物でしょうか?」

 ウセキ国王はカラフルな腰紐をテーブルの上に引っ張り上げた。


「そう! それの細いものを腕輪にしてたくさん着けたり、カバンに付けたり」

 リリアーナの言葉にクリスが眼鏡を押さえた。


 また無双だ。

 真珠も刺繍糸も、どちらかといえば目立たない物。

 それを斬新なアイデアで流行アイテムへと押し上げてしまう。

 どうしてこういう発想になるのか不思議だ。


「いろいろな柄があると腕輪も着けるのがきっと楽しいでしょうね」

 リリアーナの笑顔にウセキ国王も嬉しそうに微笑んだ。



 ウエスト大陸クロヤ国は猫族。

 なぜ選ばれたのかわからないという顔だった。


「興味を持って頂いてありがとうございます。食べ方の説明を、あ、まず、あの硬い物は食べ物で、」

 しどろもどろに説明をするクロヤ国王。


「あぁ、削って食べた。大丈夫だ」

 ジークハルトの言葉にクロヤ国王は目を見開いた。


「え? なぜ削ると? えっ?」

 同じ大陸でも他国にもあまり広まっていない鰹節。

 好むのは自分達、猫族くらいだ。


「削るのに専用の削り器がいるでしょう? 削った後の、できれば粉末になった物はありますか?」

 削りたての方が美味しいのはわかっているが、時間がない時はやっぱり粉末のダシで済ませたい。


「ふ、粉末? いえ、あの硬い状態だけです」

「そうですか。粉末だったら秘密の美味しくなる粉みたいな感じで使いやすいと思ったんですけど」

 リリアーナが肩をすくめる。


「秘密の美味しくなる粉……?」

 クロヤ国王の目が輝いた。


 ジークハルトは溜息をつき、クリスはこめかみを押さえる。


 皇帝陛下または皇太子との会談は無事に終了し、1週間ほど滞在した各国はそれぞれ順番に帰国して行った。


 皇帝陛下と皇太子に選ばれなかった献上品は、レオンハルト・ラインハルトが選んだ後に大臣達に下賜される。


 レオンハルト・ラインハルトは好きな食べ物があったと大喜びだった。

 大臣達も人気の品を夫人への贈り物にできたと喜ぶ。


「あの子は謎すぎる」

 贈り物リストを見ながら、宰相はリリアーナの選んだ物に首を傾げた。

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