030.羽ばたけ振袖、芽吹けよ大樹-07
「使えない男だ」
飛散した血が染みた袖は、もとはまっしろだったのだろう。
白衣を着た人物。声は男だが、顔は黒いマスクに覆われ、マスクの目の部分はガラスのようで瞳が透けて見え、口の部分には筒のような物がついており、彼の呼吸に合わせて、こしゅーと音を漏らしている。
手にしたつるぎは、柄の部分が何かの生物の頭蓋骨をかたどったまがまがしいものだ。
「アーティファクトの呪いの発動は?」
「感じられない。空気のように骨をも刺し通す性能も健在だ。部長の理論は正しかったようだ」
男へ問いかけたのは、もうひとつの白衣。
女の声。同じくマスクをし、槍のような物を手にしている。
こちらは持ち手が絡みあった木のつるでできており、やいばも木を削りだしたものか、木目が浮かんでいた。
髑髏のつるぎからはサンゲ、樹木の槍からはミノリの気配。
「愚かな男だわ。このような小世界に取引をする価値があるはずがない」
「ぞっとする男だった。男に背中を撫でられたのは初めてだ」
頭蓋を飾るつるぎが、死んだ大臣を無意味に二度突いた。
「不愉快だ」
突き立てられた剣がまた持ち上がり、大臣だったものが水っぽい音を立てた。
セリスはカードを投げていた。女神の描かれた符が遺体に刺さると、彼を包みこむように虹の膜を生み、死者をないがしろにするつるぎを弾いた。
「いのちまで取ることはないでしょうに!」
短刀をから振り、虹に光る結晶をやいばとして撃ち出す。
男のほうの肩に虹のやいばが刺さり血をにじませたが、彼は構わずこちらを向いて剣を構えた。
「女神の眷属か。重要度をEからCに訂正。捕らえるぞ」
男が言い終える前に、匕首の一撃が突きこまれた。
彼は剣の腹でガードしたつもりだったらしいが外れ、セリスの腕に柔らかい脇腹の感触を伝えた。
――人を刺した……!
怒りに任せて飛び出したものの、確かな加害の感触が、乙女の胸を鷲掴みにし、迷いを生んだ。
「捕獲には持ってこいのアーティファクトよ。応えなさい、ミノリの矛よ」
宣誓ではなく命令。
槍の柄がヘビのごとく伸びたかと思うと、着物の娘の周囲をぐるりと囲った。
セリスは第一の宣誓と共に指輪にくちづけ結界を展開し、捕縛せんと狭まっていたアーティファクトのつるを弾いた。
すぐに意識を男のほうへと戻し、短刀を握り直す。
ニ対一は未経験だったが、ほんの一瞬で二人が武術に関しては素人だということが見抜けた。
神工物を扱うようだが、トラベラーギルドの先輩たちよりも、ずっと弱い。
武器を取り上げ、釈明をさせなければ。
「応えよ、呪われしむくろのつるぎよ」
男が命じると、髑髏の装飾が赤黒い霧を吐き出し、やいばが赤く光った。
セリスは虹の短刀で血色のやいばを受け止める。
またも確かな手ごたえ――今度はやいばの折れる。
「こちらのアーティファクトのほうが上のようだな」
マスクの中から笑いと共に、空気の漏れる音が聞こえた。
「うしろで震えているのは始末するわ!」
女の声に振り返ると、亜人たちがへたりこんで雨に濡れた獣のようになっている光景があった。
「ち、ちくしょう。復讐のチャンスだと思ってたのに、なんてざまだよ」
「い、いやだ。またあそこに戻りたくない!」
しなる槍がふたりをまとめて取り囲む。
今度はつるには無数の棘が生えていた。
……も、それは円を縮めることなく床に落ちた。
「くっ、小娘め!」
女は槍を取り落とし、腿に刺さった鉄の針のそばで両手を震わせている。
「おい、痛みを消せ。女神の眷属以外は捕獲せず始末しろ」
男が指示するが早いか、女は再び樹木の槍を手にして「応えろ」と叫んだ。
背後でシリンダの悲鳴が聞こえた。しかし、セリスに振り返る余裕はない。
男のつるぎもいっそう激しく血の霧を吐きだし、セリスに死を想起させた。
――みんなを守らないと。
「汝の願いは吾の願い。吾は誓わん、女神ミノリの名のもとに!」
とっさに指輪に触れ、早回しで第二宣誓を叫べば、視界が虹色のプリズムに包まれ、男女両名のくぐもった悲鳴が聞こえ遠ざかる。
彼らは広がる結界に押しやられ部屋の端まで吹き飛んだようだ。
「シリンダさん!」
振り返ると、技師の毛皮の衣装の右腕の部分が破れ、血がにじんでいた。
「傷は浅いよ。急に壁から棘みたいなのが現れて……」
大樹の壁からは槍の矛とそっくりな木製のやいばが突き出していた。
セリスは胸をなでおろし、獣たちを見返る。
彼らも無事らしいが、相変わらず震えていた。
――次の一手を考えなくては。
敵は自分が展開した結界の外側にいる。
攻撃するには一度、守りを解かなければならない。
連中が諦めるのを待つにしても、どのくらいかかるか。
……みしり、何かがひび割れる音がした。
がん、がんがんがん!
セリスの広げた膜に向かって、男が無闇やたらとつるぎを突き立てている。
それは一撃一撃、着実にひびを広げ、今にも中へと入りこんできそうだ。
創造の眷属は息を呑んだ。
これまで、守護の指輪の結界が破られたことは、一度もない。
味方への心配のあまり第二宣誓を用いたが、マギカ王国自慢の魔法使いの一撃も、第一宣誓のみで軽くしのぎ切れていた。
髑髏の切っ先が結界の中へと潜りこむのが見え、ありもしない痛みが腹をえぐった気がした。
――どうしたらいいの!?
乱暴にカナテコでこじ開けるかのように、やいばが上下に振れている。
「このつるぎに勝るか。優秀な眷属のようだな。実験もやりがいがありそうだ」
まだ負けたわけではないのに、「実験」がこころの柔らかい部分を脅かす。
ウサギが「逃げろ」と叫んでいるが、この空のどこへと逃れられるだろうか。
恐怖が這い寄り、スリジェ家の総領娘を、ただの十七の娘にせんと着物を脱がせ始めた。
「応えよ」
髑髏の両目が妖しく光ったかと思うと、亀裂が一瞬にして虹のドームを覆い尽くした。
こなごなに砕け落ちる結界。
死との境界線が、破られた。
男が切っ先をこちらへ向け、女は槍ではなく何か――恐らくは銃のたぐい――を構えているのを目の端で捉えた。
セリスの「誰か助けて」という言葉は、あえぎと震えに掻き消されていく。
されど、声届かぬとも応え駆けつける者あり。
「そこまでよ!」
頭上から声。見上げれば、木の洞高きその天井に、真円の穴が開いていた。
外からの光はまぶしいほどに輝き溢れ、真昼の太陽も恥じ入るがごとし。
光の中には威風堂々。両足を広げ、腰に手を当てたか細きシルエット。
風にたなびくは、長く伸びたリボンとまとめ髪。
そして、逆光が無ければ中身が丸見えであろう短きスカート。
破廉恥に怖じないその者の正体は――。
「フロルさん!」
セリスはすでに膝をついていた。まったくの無防備になっている。
日記にも記したあの気持ちが胸を、全身を、神経のひとつひとつを痺れさせ、支配していたのだ。
しかし、すでに白衣の男女も倒れて呻き声をあげており、それぞれに破壊神のカードが刺さっていた。
「フ、フフフロル? どなたかしらね?」
影が小首をかしげる。
「わたくしは、怪盗ブラッド・ブロッサム。女神様に代わってお仕置きですわ!」
影はなんぞポーズをとった。
もう一度、彼女の名を呼んだが返事は貰えなかった。
セリスは頬を染める。
返答がなかったことでなく、当人の名を口に出すことが胸を打ち震わせ、場違いな気持ちを湧き上がらせたのだ。
「平衡感覚を破壊させていただきましたわ。白壁でゲートを覆ったのは、あなたがたかしら?」
フロ……ブラッド・ブロッサムの問いかけ。
白衣の女が黒いマスクの頭をもたげ、「おえっ」とえづいた。
「あんなものを作れるのは女神だけだろうが。ふざけた女め!」
女が銃を向け引き金を引くと、赤い閃光が駆けぬけ、標的から大きく離れた壁に小さな穴を作った。
女は側頭部をかばうように覆い、またえづくと、今一度フロルを狙おうとしたが、銃口を大げさに揺らし、舌打ちをした。
破壊の第一宣誓が響く。
ひゅっと、風を切る音とともに、女の手から光線銃が消えた。
「あら、おもしろいものを頂いてしまいましたわね」
怪盗娘は右手に鞭、左手に銃。
彼女は光線銃をまだ立ち上がれない白衣の女に向け、「ばん!」と言った。
「動じませんわね。ひとつだけ忠告しておきますわ。カードで破壊できるのは、平衡感覚だけではございませんのよ。あなたがたの再生能力を壊すこともできましてよ」
フロルの宣告を受け、うずくまっていた男が「くそっ!」と声をあげる。
「撤退だ! 女神の樹の後胤は諦めるぞ!」
白衣の腕が虚空に向かって伸びると、宙に青く光る小さな渦が生まれた。
渦はどんどんと大きくなり、人ひとりが通りぬけられる大きさになった。
フロルはそれを見止めると、跳躍した。
彼女のレイピアが蛇のように怪しくうねったかと思うと、滅びの炎が軌跡を描き出す。
――まるで鳥みたいですわ。燃える翼を持った鳥。
破壊の眷属の宙を舞う姿。セリスは、かの背にまぼろしの翼を見る。
こんなときだというのに、何もかもを投げ打って、彼女にどこか遠くへと連れていってもらいたいなどと考えた。
「お逃げにはなられないかと存じますわ」
フロルのセリフに、セリスははっとして視線を敵へと戻す。
べちゃりと泥を跳ねるような音をさせて、マスクの男女が床に転がった。
怪盗のまっかなローファーが、水たまりに遊ぶように歩く。
「た、立てない。なぜだ!?」「わ、私の足がそこに!」
なんと惨憺たる光景。
白衣両名、すでに緋に染まり、大樹の床に血の花を咲かせていた。
両断されたふたりは、叩きつけられた虫のようにのたうち回っている。
「あなたがたの目的と、バックにいる存在についてお答え願ませんかしら?」
「き、貴様、どこまで知っている?」
「何も存じておりませんから、こうしてお訊ね申し上げておりますのよ?」
フロルはつるぎを鞭に戻すと端を握り引いて、ばちんと音を響かせた。
「フロルさん、あまり残酷なことはなさらないで」
見上げ、視線が絡む。
「あなたの御手が血に染まるのは、見たくありませんの」
しかし、目はそらされ、しばしの沈黙。
「……仕方のないことなの。これはわたくしの使命」
仮面の顔がくちびるを噛み、震えた。
「女神の愛する世界に害をなす悪の組織は、滅ぼさねばなりません!」
ががーん! セリスは頭をレンガで激しく殴られた気がした。
すべてが繋がった。ああ、わたくしのなんたる無知なこと!
親友が怪盗に扮して月下を飛び回っていたのは、世界の破壊を防ぐためだったのだ。
こんな恐ろしき事実は世に知らすわけにはいかないだろう。
彼女はきっと誰にも言えず、こころ削りながら悪事のまねごとを隠れ蓑に戦っていたのだ。
よよよと、セリスは崩れ落ち、床に手をついた。
「くっ、我らの活動が知られていたとは。我々が技術を融合し、各世界で戦争を誘っているのは、すべてがおのれの手中と勘違いしている女神に抗するためだ! 本当の悪は女神!」
誰かが「えっ、ホントに!?」と言った。
はて、フロルが言ったような気がしたが、聞き違いだろう。
「と、とにかく! そのアーティファクトを置いて、この世界を立ち去りなさい!」
フロルが床を鞭打つと、白衣の連中の切断された腰がぶくぶくと膨れ上がり、人の肉体を形成し始めた。
彼らは産まれたままの下半身で立ち上がり、
「その名は憶えたぞ、ブラッド・ブロッサム!」と指をさしたが、
唐突に「お許しください!」と恐怖に震えた声を出し、その頭を爆散させた。
そして、倒れた首無しの肉体はマスクの残骸と血塗れの白衣を残して、どろりと溶けてしまった。
「今のは、なんなの!?」
フロルは溶けたふたりに釘づけとなった。
「フロルさん! うしろですわ!」
セリスは見ていた。ゲートから白銀に輝く何者かが現れたのを。
間一髪。ほんのひとまたたき前までフロルが立っていた位置に、何者かがこぶしを突き立てている。
新たな敵は、全身が銀色のゆで卵のように滑らかで、同じく卵のような頭部が小さな瞳を青く点滅させていた。
「研究部員ノ、情報漏洩ヲ、確認。削除完了。情報取得者ノ、削除ニ移リマス」
銀の人はひび割れたような声で、なんぞ呟いている。
「このかた、なんなんですの? ちょっと、ふもふさんたち! お教えいただけませんこと?」
フロルがウサギ男へと訊ねる。
「そいつは組織の始末屋ロボットだ。あっちこっちの世界の技術を詰めこんだバケモンだよ! あんたでも勝てねえ! もうおしまいだ!」
ウサギは耳を丸めてうずくまるが、フロルはのんびりと機械人形を眺めている。
「ふうん? ロボットって確か、生き物じゃないんでしたっけ?」
「当たり前だろ! さっさと逃げろ! チクショウ、腰が抜けちまった!」
“ロボット”といえば、金属などを使った機械仕掛けを指す言葉だ。
高度になると、みずからの意思で会話をしたりもすると聞く。
「スキャン開始。女神ノ子二名、複合生物二名、人間一名。筆頭一名ノミ危険度A。亜音速戦闘ニヨル殺害、オヨビ、感情データ収集ノダブルタスクヲ実行。収集感情ハ、悲シミ。悲シミヲ高メル戦闘パターンヲ検索。クラスA、C間ヲ結ブ強イ好意ヲ検出……」
銀の人の蒼き一対の光が、セリスと視線を結んだ。
「クラスCノ殺害ヲ、優先」
そう言ったロボットの頭は、床に転がっていた。
彼がぶつぶつ言っているあいだに、フロルがつるぎに滅びの炎をまとわせて軽くひと撫でしてしまっていたからだ。頭以外、なんも残ってない。
「そんなにおしゃべりがお上手なら、お歌も歌えそうですわね」
銀色のボールが、お嬢さまの靴裏で弄ばれる。
「各デバイス応答ナシ。テモアシモデナイ。これが、悲しみ……?」
ロボットは最後だけやたらと流暢になると、両目の光をとざした。
「さすがにロボットは再生しないわよね?」
フロルは頭を拾い上げると、「それっ!」と勢いよくぶん投げて、入ってきた穴の向こうへと捨てた。
「フロルさん!」
セリスは、無意識のうちに立ち上がっていた。
ためらうことなく憧れのきみのもとへと駆け、しなやかな肢体を抱きしめていた。
薄い怪盗の衣装は、彼女の本当を余すところなく教えてくれるように思えた。
腕の中の友人は、いっしゅん逃げようとしたようだった。
だが、セリスの背は優しくさすられ、困ったような声が「もう、泣かないの」。
時を忘れるようなひとときだった。
二度と離してなるものかと思った。
このまま溶け合い、共に空へ消えてしまいたいなどと思った。
しかし、スリジェ家の娘には使命がある。
大樹を救い、父母を救わねばならぬのだ。
甘く切ないこのひとときに、別れを告げる鐘が鳴り響く!
「あのさ、抱き合ってそろそろ一時間経つんだけど?」
シリンダが苦情を言っている。
「フロルもなんで、そんな格好してるの?」
「ねーちゃんたちの世界じゃ、女同士が抱き合うのか?」
「美人同士だとさまになるわねえ」
外野がうるさい。
いつの間にか、種を苗床へ返しに行っていたふたりが戻ってきていた。
セリスは身を離すと、「お助け願えませんか?」ともう一度、友に身体を寄せようとした。
……が、今度は押しのけられてしまった。
「わ、わたくしは悪の手からアーティファクトを回収しにきただけですの」
怪盗娘はいそいそと樹木の槍を拾い、髑髏の剣のほうは手にしたものの「こっちはダメね」と眉をひそめ、ロボットの頭と同じように大樹の外へとぶん投げた。
「お願い申し上げます。わたくしの力だけじゃ、どうしようもなくって。このままでは、この世界のかたがたは……」
「あなたが王陛下から拝命したことでしょう? この仕事を成し遂げるのはスリジェ家の義務よ。スリジェ家が女神の枕の誇りであることを示しなさい」
フルール家の当主は突き放すように言い、背を向けた。
しかし、今のスリジェの次期当主は、杖を楔にこの世界に縛りつけられたままであった。
「お頼み、申し上げます」
セリスが助けを求め腕を伸ばすと、怪盗の衣装の剥きだしの背に指先が触れた。フロルはいっしゅん首をすくめると振り返り、やはり腕を払ってしまう。
「ダメよ。わたくしはサンゲに命じられて壁を破壊しに来ただけ。ここに来たのはついでなの」
彼女は続ける。「わたくしには、壊すことしかできないから」
「おい、鞭のねーちゃん」
声を掛けたのはウサギ男だ。
彼はフロルを見もせず、懐中時計のゼンマイを巻いている。
「俺たちはズラかるぜ。連中が来るような世界に長居はしたくねえ」
時計のねじからウサギの手が離れると、かちかちかちと忙しない音が鳴りだし、先ほどの研究員のときのように、宙にゲートが現れた。
「助けてもらった礼と言っちゃなんだが、ひとつアドバイスをしてやるぜ。相棒ってのは、大切にするもんだ」
ウサギはそう言うと、ぴょんとゲートの中へと飛びこんだ。
「おでも、さよならだ。鞭のねーちゃんは、きっと助けてくれると思う」
大ネズミのボッコーがこちらを見て言う。
「あんたがくさい死体の王様に怪我をさせられたとき、すっごく怒ってたもんな」
セリスはフロルを見るも、彼女は目を逸らした。
「おで、手伝いたいけど、兄貴と行かなきゃ」
優しげなつぶらな瞳。
セリスは「お気持ちだけでも」と礼を述べる。
「おでは行く。つまりだ、逆さまに考えて……鞭のねーちゃんは、まだここにいるってこったな」
のんびりした声はゲートの彼方へと消えた。
そして、渦はどんどんと小さくなって跡形もなくなってしまった。
「ほらほら、突っ立っててもしょうがないでしょ? それに、子どもたちに、あれを見せてらんないし」
シリンダがそう言うと、クルイロが「うわっ! 大臣が死んでる!?」と叫び、リトが泡を吹いて気絶をした。
それからシリンダはため息をつき、フロルを見やった。
「セリスは、ずっと独りで頑張ってたんだからね」
フロルは長く息を吐き、こわばらせていた肩をほどいた。
「存じておりますわ」
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