僕の名前は「エプスタイン・バール・ウィルス」4週間後に必ず会いに行くよ。
いつもお読み下さりありがとうございます。
よろしくお願いします。
「はじめまして。お嬢さん」
突然目の前に現れた彼。
驚き、動けない私の手をそっと取ると「僕の名前はエプスタイン・バール・ウィルス。次に会えるのは… そうだね…4週間後かな」
必ず会いに来るよ。
そう言って彼はにっこりと笑い、私にキスをした。
「ヤブィ先生のところに行ってみるわ」
夜になると発熱して、朝になると何ともない日が2日続いた。
夜中に熱が出る前は、ガタガタと震え寒気が凄い。
そのうち、かーっと高い熱が出る。
朝になるとケロッと治る。
絶対おかしい。
ヤブィ先生は80歳くらいのお爺ちゃん先生だった。
先生は私を見て言った。
「キミ、熱が出るのに何でそんな薄着なの?何枚着てるの?」
その時の私の服装は、ブレザーに胸元を開けた白いブラウス。ミニスカートに黒のタイツだった。
「二枚…です」
ヤブィ先生はため息を吐いて説明してくれる。
「うすーーい服を何枚も重ねて、その間にうすーーーい空気の層を作るようにしなさい」
「はぁーい」
帰り道、ヤブィの真似をして「うすーーーい服を何枚も…うすーーーい…」と、繰り返しながら自転車を漕いだ。
その日の夜も熱は出た。
喉も痛い。
朝、口を大きくあーーっとして喉の奥を見てゾワッとした。
喉に米粒が一個付いている様に見えるが、あれは米粒ではないだろう…
私は、ヤブィ先生のところではない総合病院に行く事にした。
「コロンさんどうぞ」
診察室へ呼ばれた。
「今日はどうしました?」
「夜になると高い熱が出る日が今日で3日目で、今朝は喉に何か出来ています…」私は今日までの流れをダーメ・ジャン先生に説明する。
「昼間は元気なの?」
「はい」
「じゃあなんで内科来たの?喉なら耳鼻科行ってよ。どこか耳鼻科知ってる?」
「あ、すみません。じゃあこの後知ってる耳鼻科行ってみます」
私は愛車の「ニリンアシコギ」車に跨り、小さい頃から通っているシン・ダン・アッテルー耳鼻科を目指した。
「あそこヤブっぽくてやだなー」と、ぶつぶつ言いなら。
「コロンさんどうぞー」
「え〜っと…」私はダーメ・ジャン先生に話した内容と、耳鼻科に行く様に言われてここに来た事を告げた。
「うーん。コロンさん、奥行ってすぐ点滴して」
えっ!待って!私、何の病気??
初めて点滴を打った私。
診察室の奥の簡易ベッドの上で横になり、針が刺さった腕を見ながら不安で涙がポロリと溢れた。
「コロンさん、明日から1か月くらい会社休んでね。これ、伝染性単核症ってやつだから。一週間は毎日点滴受けに来て。それとこの薬飲んで1か月くらい家で安静にしてて」
「え…あの…もうすぐ舞踏会(友人の結婚式)があるんですけど、出席してもいいですか?」
「あんたねぇ…舞踏会なんてダメに決まってるだろう。この病気は普通即入院する病気だよ?」
私は涙を拭きながら「なんで私は入院しないんですか?」と聞いた。
「あんた元気そうだから」
「え…私…元気なんですか?」
「そう元気。その病気普通は黄疸とか出るから。あんた黄疸出てないでしょ」
おうだん…黄色くなるやつ?
「じゃあ帰っていいよ。絶対安静にしててね」
私はゆっくりニリンアシコギ車を漕いで帰った。
伝染性単核症。
ヘルペスウイルスの一種であるEBウイルス(エプスタイン・バール・ウイルス)などに初感染することが原因で起こる、発熱やリンパ節の腫れなどの症状を起こす急性感染症。EBウイルスは唾液に潜んでおり、回し飲みやキスが原因でうつることが多いため、別名キス病と呼ばれる。多くの人は思春期までに親や周囲の人から感染しているので、EBウイルスに対する免疫力(抗体)を持っている。子どもの頃に感染しても症状はほとんど出ないが、思春期以降になってから初感染すると高熱などの症状が出やすい。
主な症状は高熱や全身の倦怠感・疲労感、喉の腫れ・痛み、全身のリンパ節の腫れと肥大、発疹など。発熱や喉の痛みなどの症状は1~2週間続き、倦怠感は数週間から数ヵ月にわたって長期間続くケースも。肝臓や脾臓が肥大化しやすくなり、悪化すると破裂することがあるので注意が必要。また、重症化すると気道閉塞や球肺炎、リンパ腫、貪食症候群、無菌性髄膜炎、ギランバレー症候群、心筋炎などさまざまな合併症を併発することがある。
《 https://doctorsfile.jp/medication/16/ より 》
私は熱と喉の違和感だけ。
本当だ。
私元気だった。
1か月会社を休み、おとなしくしていた。
アッテルー先生に「もう大丈夫だから。でも、この診断書持って何処かの病院で血液検査して異常がないか調べてね」と言われたので、ダーメ・ジャン先生のいる総合病院へ行った。
今日の担当はエ・ライ先生だった。
持って行った診断書を渡す。
エ・ライ先生の顔色が変わった。
側にいる看護婦さんに「コロンさんの診断したの誰?カルテのこの字誰?」と言った。
看護婦さんが「ダーメ先生です」と、答えると「これ、この時点で即入院だから。誤診だよ。後でダーメ先生呼んで」「はい」
誤診…
誤診かーいっ!
☆ 子どもの頃に、食事の口移しや、飛沫感染、スプーンや箸、コップの使い回しなどから感染し、通常3歳までに90%の小児は感染するらしい。
近年は、虫歯の懸念などの衛生習慣の変化により、感染しないまま成人してしまうケースも増えているそうです。
コロナで徹底した除菌生活になって、こういった軽症の感染での免疫取得が減ると思います。
不調があった場合は、自己判断せずに病院へ行く事をお勧めします。
(誤診されたらどうしようもないけど)
前作「その時私は…」の最後に書いている「…病気になったけど…」の病気の話です。
拙い文章、最後までお読み下さりありがとうございました。