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魔法の花屋は、今日も花言葉に想いを込める  作者: 夕綾 るか


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52. 侯爵の企み


「本人はまだ気がついていないみたいなんだけど。だから今日、彼女が来ることで警戒していたんだ」


 公爵様もご存知らしく、先ほどの青い薔薇の件を上手く処理してくれたようだ。


 『魔法の無効化』


 それを聞いて納得する自分がいることに、リアは気がついた。いつからかローズマリーの前では魔力を抑えなくてもいられた。彼女がリアの魔法を無効化していたからだったのだ。


 今回も、リアがかけた『魔法』をローズマリーが『無効』にした。そしてあの日、王城でアッシュの『変幻の魔法』を無効化したのも、ローズマリーだということだ。すべては、繋がった。


「……二人とも知っていたの?」

「少し前に、ね。クレメンタイン教授の件を調べていて、その時に」

「あの、枯れてしまっていた花の……?」


 アッシュは静かに頷いた。


「しっかり調べてから、リアに話そうと思ってた。まさかこんな形で話すことになるとは思わなかったんだ……ごめん」


 ジャックも申し訳なさそうに見つめている。リアは小さく首を振った。


「ローズマリーが関係していたから、私に話せなかったということは理解できる。だから、大丈夫」


 リアは二人にニッコリと微笑んだ。




 ◇◇◇◇




 “彼”と会うためのフラグ、ではあったが、またも姉が邪魔をした。

 ローズマリーの不満は爆発寸前だ。


(いくら『悪役令嬢』だからって、邪魔しすぎ!)


 アッシュの後ろでまるで護られているかのように身を隠していた姉ウィステリア。


 大勢の前で平民に成り下がった姿をさらし、会場のあちらこちらで囁かれる声に『いい気味だ』と、思わず顔が綻んでしまったのも、つかの間。


 アッシュが姉の手を握り、笑いかけている。 


(何なの!? 一体どうやって誑かしたのよ!)


 ローズマリーはギュッと拳を握りしめた。そこへタイミング良くハートラブル公爵が姿を現した。


(そうよ! 主人公は必ず救われるようになってるんだから!)


 王太子アドルフがローズマリーの味方。すべてを上手く運んでくれる。ローズマリーの望み通りに。


『この薔薇。魔法がかけられている。どういう意図があって魔法を遣ったのか、説明してもらおうかと思ってね』

『そうなんです! ひとつだけあった青い薔薇が、触れた途端、白い薔薇になってしまって……』


 ローズマリーは赤の公爵に無表情を向けられる。思わず、びくりと肩を揺らしてしまった。


『だから――公爵家の花屋をこの場にお呼びになられた、と?』


 ハートラブル公爵が姉の前に立つ。


 姉は問題を起こしてしまったのだ。きっとそれを赤の公爵は許さないだろう。

 アッシュや他の貴族たちの目の前でウィステリアが叱責されるのを思い浮かべ、ローズマリーは心の中で『可哀想に』と笑った。


 しかし、公爵はくるりと向きを変え、アドルフとローズマリーに向き合った。


 まさか、あの『赤の王女』が姉をかばうなんて。


 冷徹で冷酷。しかしその妖艶な姿で魅了し、皆を惑わす。主人公ローズマリーにさえ、優しさの欠片もみせなかった『悪役王女』。


 その彼女が今、ローズマリーの目の前で、異母姉ウィステリアを擁護している。

 それどころかローズマリーに対し、刺さるような視線を向け、口元に恐ろしい笑みを浮かべている。


 まるで――舞踏会を台無しにしたのはお前だ、というかのように。


 ローズマリーは背筋を凍らせた。


 様子をうかがっていた父ゼフィランサスが公爵との間を取り持ち、タイミング良くやってきた医師と共に、何とかその場を切り抜けた。


 その後、ローズマリーが会場に戻ることはなく、気分が悪くなったと、そのまま公爵邸を後にした。



 〜・〜・〜



 舞踏会でのハートラブル公爵のウィステリアに対する態度を見て、ゼフィランサスは彼女の隠された能力を確信した。


(ウィステリアには、間違いなく『能力』がある。そうでなければ、あの公爵があれほどウィステリアに肩を入れるわけがない)


 王城でウィステリアに会ってから、今どこにいるのかを調査させていた。

 居場所は簡単につかめた。アーネスト領の一角にあるエルダー園芸店に身を寄せていたからだ。

 昔からアーネスト侯爵家で使っている園芸店。


 いくらハートラブル公爵が贔屓にしていようと、エルダー園芸店があるのはアーネスト侯爵家の領地である。領主であれば行き来も自由、なのだ。




 まだ夜も明けていない、真っ暗な道を一台の馬車が駆け抜けていく。

 花畑の中心にポツリと建った小さな家の前でその馬車はゆっくりと止まった。


 物音に気づいた住人が外の様子をうかがっていると、馬車から整った身なりの男が降りてきた。


「迎えに来たぞ、ウィステリア。一緒に帰ろう」



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