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魔法の花屋は、今日も花言葉に想いを込める  作者: 夕綾るか


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39. 『彼』の正体


(それって――アッシュと私は……本当の兄妹ってこと……?)


 アッシュが言ったことを理解するために、リアは思考をフル回転させた。


「リア。もしかして、本当の兄妹じゃないか、って心配してる? だから最後まで聞いてって言ったんだよ。――大丈夫。僕らに血の繋がりはないから」


 リアが思った通りの反応をしたからか、アッシュは苦笑いする。


「どういうこと?」

「ん、ゆっくり説明するね。まずこの国が昔、『永遠の国』と呼ばれていたのは知っているよね?」


 リアは静かに一つ頷いた。

 妃教育の一環でエルレスト王国の建国史を読んだことがある。確かそこに記述があった。現王の祖父である王の代までは『永遠の国』と呼ばれていた、と。


「理由は……まだ教えてもらっていないよね?」

「理由? まだ?」


 原因不明の『病』が流行したことで『永遠』ではなくなったと記載されていたはずだ。リアは「病のせいで永遠ではなくなったと記載されていたわ」と記憶通り、答えた。


「いや、本当の『理由』さ。多分、()()()王太子妃になっていたら、伝えられていたと思う」

「え……?」


 アッシュは小さく首を振った。


「まずは、なぜ『永遠の国』と呼ばれていたのか、だけど――この国には『死』という存在がなかったからなんだ」

「は、い……?」


 リアの思考が追いつかない。リアは実際に目の前で母が儚くなったのを見ているのだから。

 戸惑うリアを理解するようにアッシュは頷いた。


「分かるよ。難しいよね。理解しようと思わなくていいんだ。何も考えずに、何かの物語を聞いている感覚で流してくれていい」

「何かの、物語……」


 リアの心臓がドクリと違う音を立てた。リアは、うつむいてギュッと服の胸元を握りしめた。

 忘れかけた時に襲ってくる、“物語”という存在。――本当に、このままでよいのだろうか、とリアを苦しめる。


「建国史に載っていた『病』というのは『死』のことだよ。それまでこの国には『死』というものがなくて、この国で『天寿』を(まっと)うした者は、()()()()()()から迎えが来ていたんだ」

「もう一つの、国?」

「そう。それが『アーネスト王国』」

「――え?」


 リアがポカンと口を開ける。もうすでにリアの脳は考えることを止めていた。それでも大きな衝撃を受けたのだ。


「エルレスト王国の対となる裏側を統治しているのがアーネスト王国」

「えっ? あの、じゃあ、アッシュは……その国の王子様ってこと?」

「えっと……まぁ、そうなるのかな」

「えぇーーっ!!」


 リアの悲鳴にも思える大きな声にアッシュは驚き目を瞬かせた。


「でも、そうなるとエルレスト王国の『アーネスト侯爵家』は一体――」

「――嵌められたんだ」


 アッシュは静かに語り始めた。



 ◇◇◇◇



 アーネスト王国。


 世界樹を中心にのどかな街並みが広がる自然豊かな地だ。この場所には『天寿』を全うした者たちがその後の余生をゆったりと過ごしている。


 『死』の存在しない国。それが、エルレスト王国であり、アーネスト王国であった。


 その均衡が崩れたのは先々代の王からだった。

 家臣の一人が『死』の病を患い、死なないはずの人間が死んだ。


 先々代王は国中の学者、医師を集め、原因を追究しようとしたのだが、その間、自身も『死』の病により呆気なく崩御した。その息子だった先代王も、即位してしばらくすると、同じように『死』の病で崩御した。


 『死』は連鎖した。今まで『永遠』だった命が限りあるものへと変化した。それによりエルレスト王国の人々は『命』を大切にするようになった。




 異変は、エルレスト王国の裏側であるアーネスト王国にも広がっていた。


 元々、天寿を全うしていた人間たちだ。皆、呆気ないほど儚くなっていった。中にはエルレスト王国のかつての王族もいた。


 エルレスト王国に異変を感じたアーネスト王家は、エルレスト王国においていた『アーネスト侯爵』の籍を使い、独自に調査を開始した。――それがアッシュの父である、現アーネスト国王の息子であった。


 もちろん、エルレスト王国の四大公爵家も、この事態を把握し、各自調査をしていた。各公爵家には各々、任されている職務があった。


 西のダイヤモント公爵家は足りないものを補う『修復』を、東のハートラブル公爵家は問題を解決する『司法』を、南のシックローバー公爵家は病を治す『医療』を、そして、北のデスペード公爵家は天寿を全うした者たちを送り出す『拝送(はいそう)』を、それぞれ司っていた。

 

 しかし、今まで実態のなかったアーネスト侯爵家が動き出したことにより、焦り始めたのはダイヤモント公爵家だった。

 なぜなら、ダイヤモント公爵家の責務は()()()()()()()()()()()()()()ことだったからだ。


 誰もアーネスト侯爵の顔を知らない、ということに気がつき、アーネスト侯爵を罠に嵌めた。

 そして、ダイヤモント家を継承する順位は遠いが魔力に優れた親類のゼフィランサス・ダイヤモントをアーネスト侯爵として入れ替えたのだ。


 次期アーネスト国王となるはずのアーネスト侯爵を失ったアーネスト王家にとって幸いだったのは、現国王も、四大公爵家も、誰一人として、()()()()()()を知らなかったこと、だった。


 ただ――それは、重大なことを意味していた。


 現王はエルレスト王家の()()()()()()ではない、ということを示していたのである。



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