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魔法の花屋は、今日も花言葉に想いを込める  作者: 夕綾 るか


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31. 強力な後ろ盾


「えっと……ここ、でしょうか?」


 ――何かの間違いでは? と言いたくなるような一等地。


 ジャックの案内で、そんな場所に連れて来られた一行は、三人揃って息を呑んだ。


 ハートラブル公爵の屋敷に程近く、王城にも学園にも、そして商業ギルドにも近い。まさに一等地。


「えっと……うん、そうなんだよね……」


 ジャックは「ほらね、やっぱり。だから言おうと思ったのに……」とボソボソ呟いた。

 リアは不思議そうに首を傾げていたが、アッシュは多分、“赤のあの方”に向けた愚痴のようだと分かり、聞かなかったことにして流す。

 なぜ、ここで“あの方”の愚痴が出るのか、理由はまったく分からないのだが。


「あの……? これが『店舗』なのでしょうか?」


 そして、さらに驚かされたのはそこに建っていた店舗と思われる屋敷である。――それは、もはや『店舗』ではなく、その佇まいは『屋敷』そのものである。それも、かなり立派な。


「うん……まあ、そうなるよね……」


 赤い髪の美青年も、その端正な顔を気まずそうに歪めている。花屋の保証人としてついて来たハイデさえも言葉を失っていた。


「賃借料を支払える気がしないのだが」


 アッシュが呟くと、ジャックは「だよね……」と苦笑いする。ジロリとアッシュが視線を向けると、ジャックはゆっくりと逸らした。


 アッシュは先ほどのジャックの呟きの意味を理解する。


「……現実的な場所の紹介をお願いするよ」

「承知、しました……」


 次に案内された場所に、三人はホッと胸を撫で下ろした。ハイデの屋敷に近く、学園にも近い。ただ公爵家と王城には少し距離がある。それでも充分、いい立地だ。

 リアはアーネスト侯爵から『今後王城に出入りするな』と言われているから、ちょうどよかった。


 店舗となる家屋も、隣り合う商店とさほど変わらない。1階が店、2階が居住スペースになっているようだ。エルダー園芸店の花屋よりも広い。陽当たりも申し分ない。


 ジャックの手元にある資料に書かれた賃料も良心的で現実的だ。アッシュはその資料を受け取ると、顎に手をあて、真剣に読み込んでいる。


(よかった。体調はもう大丈夫みたい――)


 リアはジャックと合流する前までの、ぼんやりとしたアッシュの様子に心配していたのだが、どこか吹っ切れたようだ。


(何かに集中していたほうが思い出さないもの――特に恋心は……)


 ローズマリーに心惹かれてしまったのなら、他に夢中になれることがあれば少しは気が紛れるというものだ。


 リアの胸の奥がチクリと痛む。


 アッシュの正体が、もしも貴族だったとしたら。平民になってしまったリアとは家格が釣り合わなくなる。そして今のような居心地の良い関係には戻れなくなる。


 リアは今のこの自由な時間を、いつまで続くかも分からないこの幸せな時間を、心に刻み込むように噛みしめていた。



 ◇◇◇◇



「では――これですべての書類が整いましたので。後は改装や開店準備、そして、新店舗の屋号の登録がありますので、決めておいてください――っと。さあ、ギルド職員としての仕事は、ここで終わり。これから先はハートラブル公爵家の代理人として、仕事をさせていただきまーす」


 ジャックはテキパキと商業ギルドの登録手続きを済ませ、保証人であるハイデに向き直る。


「クレメンタイン伯爵。ご助力、ありがとうございます。これからもお力添えのほどよろしくお願いいたします。ここからはハートラブル公爵家との話になりますので――」

「――承知した。では二人とも、また近いうちに」


 ガタリと席を立ったハイデに、アッシュとリアも立ち上がり、大きく頭を下げた。


「クレメンタイン教授、ありがとうございました」


 深々と頭を下げている二人の肩にハイデは優しくポンと触れると、顔を上げた二人に笑みを向けた。


「こちらこそ。君たちには礼を言わねば……本当にありがとう。私も、妻も、君たちに心から感謝している。私にできることであれば、全力で協力させてもらおう」


 心強い味方の登場にアッシュとリアは満面の笑みを浮かべ、「はい!」と大きく返事をした。



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