59.5 しーちゃんの気持ち【詩音の視点】
今日は色々な意味で疲れた……あおくんに言葉にして気持ちを伝えたのは初めてだった。帰宅してから晩御飯を一緒に食べて、課題をして寝るまでほとんど一緒に居るのは普段通りなのだが、今日はさすがに平常心ではいられなかった。一応いつもと変わらないように振る舞ったつもりだけど……明日の朝どんな顔をしていればいいのか悩んでしまう。
この街に戻ってきて一ヶ月近く過ぎた。本当は違う私立の女子校に通う予定だった。偶然、あおくんの学校に帰国子女の枠があったのでダメ元で受験した。奇跡的に合格してトントン拍子で話が進んで今の同じ屋根の下で生活する事になった。
そして転入してあおくんと同じクラスになれたが彼女の姿があった。凄くショックであの時は表情に出さないように努力した。誤魔化すためにちょっとテンション高めにあおくんに接していた。
(さすがにあざとかったかな……)
今となっては少し反省しているけど、優しいあおくんは嫌な顔をひとつしなかった。救われた気持ちになって更に好きになっていった。
(でもあおくん以上にゆいちゃんはもっと優しかった……)
付き合っていると思っていた二人はまだお互いに微妙な距離感だという事が分かってまだチャンスがあると思った。そこで私は思い切った行動に出ようと、あおくんがいるバスケ部入部してマネージャーをする事にした。
(普通の子だったら嫌な顔するよね、私だったらダメだなぁ……でもゆいちゃんは違ったなぁ)
あおくんにはマネジャーをするのを反対されたが、ゆいちゃんは歓迎してくれた。入部してからゆいちゃんと話す機会が増えて、何度か一緒に遊びににも行った。本当にゆいちゃんは表裏のない純粋な子だと分かってきた。そんなゆいちゃんは私を慕ってくれている。
(……あおくんが好きになる理由が分かった気がするなぁ、私も友達になれて嬉しい……)
久し振りに地元に戻ってきて友達が出来るかとても不安だった。そんな不安はすぐに解消出来たのはゆいちゃんのおかげだった。たった数ヶ月だけどゆいちゃんは親友だと言い切れるぐらいの存在になっている。
(だから手放したくない、あおくんもゆいちゃんも……欲張りだなぁ私は……)
さっきゆいちゃんからあおくんの様子を心配するメッセージが来ていた。大丈夫だよと返事を送ったら安心した様子だった。もう暫く間、こんなユルイ関係でいられたらいいのに……私のわがままかもしれない。
でも最近、あおくんの話を耳にする機会が増えてきた。あのバスケをする姿を見ると惚れてしまうのは分かる気がする。だって本当に格好いいから、早めに対策を立てないいけないと思っている。
(ゆいちゃんと話し合わないといけないな、一時休戦して協力しないとダメかも……)
私が知らない中学時代のあおくんは一時的に超有名人だったらしい、ゆいちゃんも知り合う前で詳しくは分からないみたいだし、いつどのタイミングで新しい女の子が現れるか分からない。ゆいちゃんだけでも手強いのに、これ以上ライバルが増えるのは嫌だなぁ……でも、今の関係は変えたくない。
(ここで悩んでも答えは出ない……とりあえずは明日の朝、どんな顔をすればいいかな……)
まずは明日の朝、あおくんにどんな顔をして会えばいいのか考える事にした。いつも通りに朝一番の自然な笑顔が出来るか少し不安だった。きっとあおくんも悩んでいるに違いない……
ちょっとイタズラして朝起こしに行こうかなって意地悪な事を考えたりしながら眠りについた。




