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58.翌日の学校で

 翌日、しーちゃんと一緒に普段通り登校した。特に変わった様子もなくいつもと変わらなかった。途中でいつもの様に合流した結奈も普段と変わらなかった。しーちゃんと結奈もいつも通りの雰囲気で会話をしていた。俺の心配は杞憂に終わりそうな気がしていた。

 学校に着いた後も普段と変わらず時間が過ぎて問題なく放課後になった。もうこの時間になれば大丈夫だろうと安心して部活に参加した。練習はいつも通りに進み順調にメニューを消化して休憩時間になった。クールダウンをしようと体育館の中で風通しが良い扉の所で座って休んでいた。


「ちょうどよかった蒼生。ちょっと話があるのだけどいいかな?」


 背後から声が聞こえたので振り向くと落ち着いた様子で原田が立っていた。女子バスケ部は隣で同じように練習していて休憩時間みたいだ。


「あぁ、なんだ?」


 俺が返事をすると原田は周りを気にした様子で俺の横に座る。座る前に一度結奈としーちゃんの様子を窺っていた。


「単刀直入に聞くけど、蒼生、土曜日に詩音とデートしてなかった?」

「……えっ!?」


 油断していた状態で予想外の問いかけに俺は思いっきり動揺してしまう。まさかこの場所で週末の事を聞かれるとは思ってもいなかった。顔色の変わった俺を原田はすぐに察した様で呆れた表情に変わる。


「……で、昨日は東條さんとデート?」

「な、な、なんで、知っているんだ……」


 もう顔から血の気が引いていくような感覚になり力なく俯いてしまった。そもそも原田は何故週末の事を全部知っているのか不思議だった。

 現場では見かけていないはずだが、土曜日の人混みの中は仕方ないとして、日曜日の結奈と一緒にお昼を食べた時には……しまった、あの時は結奈だとは分からないだろうとあまり周りを気にしていなかった。同じ高校の同級生は分からなくても中学校からの同級生だと見つかる可能性は十分あったのだ。


「ふふっ、なんで私が分かったのか理解出来たみたいね」

「うぅぅ……不覚……」


 ニヤッと笑う原田の顔を見て俺はガックリと肩を落として再び項垂れた。正直言って一番厄介な人物に見つかってしまった。原田は数少ない二人の共通の仲が良い人物なのだ。


「それで、詩音と東條さんのどっちが本命? そもそも蒼生は東條さんと付き合っていたんじゃないの?」

「うっ、そ、それは……」

「蒼生が誰と付き合うのは自由だけど、知っての通り東條さんと詩音は私の友達なの……どうするつもり、今のままだとただの二股になるよね」

「うぅぅ……確かに……」


 表情はそこまで厳しくはないけど思っていた通りの原田から厳しい言葉だ。痛い所を突かれて何も言い返せない俺は更に俯いてしまう。


「それで、二人はこの事を知っているの? 私も二人にどう接すればいいのか分からないわよ」

「……分からない、でも知らないと思う」


 困った表情を浮かべて原田は顔を傾げている。もちろん俺自身もこの事が一番気になっている。今日一日一緒に近くにいて全く分からなかった。部活が始まる頃には安心しかけていた事が原田のお陰で一気に表面化してしまった。

 休憩時間が終了して練習が再開された。集中力の欠けた俺は休憩前の練習と打って変わってずっとミスをし続けた。正直、途中で練習を切り上げたい気分だった。


 部活が終わり、登校の時と同じ様に三人で帰宅するがちょっと空気が普段と違っていた。あきらかに空気が重たい、原因は俺自身だと分かりきっている。


「……蒼生くん、休憩していた時に原田さんと何を話していたの?」


 三人が揃って歩き始めて少し進んだ所で結奈がちょっと重たそうに口を開いた。隣にいるしーちゃんも気になる様子で俺の顔を窺っている。


「えっ、あっ、あぁ、う、うん……」


 二人の視線に耐えられず言葉に詰まって俯いてしまった。返事をしようにもどうすればいいのか迷っていた。

 正直に話せば関係が拗れてしまうかもしれない……俺はどう責められてもいいのだが、結奈としーちゃんの仲が悪くなるのは避けたい。


「もしかして……原田さんから告白されたとか?」

「えっ、それはないよ」


 突然、結奈がとんでもないこ事を言い始めたので俯いていた顔を上げて速攻で否定をした。しーちゃんは隣で思わず吹き出して笑っている。俺も絶対に有り得ない話なので呆れてしまい肩の力が抜けてしまった。ちょっとだけ空気が軽くなった。


「うぅ……二人してそんな顔をしないでよ……」


 さすがに恥ずかしかったのか結奈が顔を真っ赤にして落ち込んでしまった。結奈のお陰で話が脱線してきたので少し気が緩んでしまった。


「……で、あおくんは何を話していたのかな? なんとなく私は分かったけど、はーちゃんから責められていたんじゃないかな?」

「な、な、な、なんで分かった」


 すました顔でしーちゃんから鋭く問いただされるて完全に油断していた俺は情けないぐらい慌ててしまった。

 さすがは幼馴染で一緒に生活しているだけの事はある。どうやら最初からしーちゃんは分かっていたみたいだ。


「ふふっ、週末の事でしょう……だって土曜日にはーちゃんを見かけたからね」

「あっ、そうだった……私も本屋さんで出会ったわ」


 余裕ある顔でしーちゃんから驚き言葉を聞き、思い出したかのように結奈からの言葉に驚かせる。動揺しながらも俺はここで少し違和感を抱いた。しーちゃんも結奈も週末の事で特に驚いた様子がない事に気が付いた。


「……もしかして、二人とも週末の事、知っているの?」


 恐る恐る俺が二人に聞きながら顔を交互に窺う。もしかしたらどういうことか追及されて責められるかもしれないので、少し身構えて返事を待った。しかし二人とも意外な反応を見せる。


「知ってるよ、昨日、ゆいちゃんから直聞いたよ」

「うん、私は前日にしーちゃん本人から聞いているよ」


 当たり前の様な顔で二人が頷き、微笑んでいる。俺は一気に肩の力が抜けてガックリと項垂れた。気疲れした今日一日を返して欲しくなった。でも何故二人は今日一日この話題に触れなかったのか疑問に思った。確かに原田が言う通り責められても仕方ないはずなのだが……

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