表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/69

57.二人との関係は

 目の前に結奈が座っている。いつもとは違う雰囲気でまるで中学時代に戻ったような感覚になってしまいそうだ。


「ん……どうしたの?」

「あぁ……なんか懐かしいなぁ……」


 視線に気が付いた結奈は飲みかけのカップをテーブルに置いて不思議そうな顔で見ている。本屋で会った時よりも髪の毛を纏めているので結奈の表情がはっきりと分かるが、微妙にメガネをしているのでやはり普段とは違った雰囲気がする。


「あっ、メガネの事ね。普段、家の中ではメガネなの、今日はたまたまメガネをしたまま外出したのよ。ちょっと出るだけだからと思って……油断したわ、まさか蒼生くんに会うとはね」


 残念そうな表情をする結奈だが、心の底で俺はちょっと嬉しかった。高校に入学してから結奈はどちらかと言うと目立つ存在になっているので、この姿を知っているのは今の高校では俺ぐらいしか知らないはずだ。


「ううん、全然おかしい事ないよ」

「そ、そうなの、ほんとうに……」


 返事を耳にした結奈は意外そうな表情をしてぱっと嬉しそうな笑みを浮かべた。少し元気になってくれたので安心した。本当に今日の結奈は気持ちがくつろぐような感覚になって、いつもより身近に感じる。決して普段が嫌だという訳ではないのだが……


「うん、だって見慣れていた結奈だからね」

「えへへ、ありがとう……でも蒼生くんは、普段の私と今日の私、どっちがいいのかな?」

「えっ!?」


 突然の質問に戸惑ってしまう。結奈の顔を窺うとちょっと悪戯っぽい笑いをしているが目は真剣なので迂闊な答えは出来ない。

 普段の抜け目がない結奈は誰が見ても美少女で俺にとってはパーフェクトに近い存在だ。でも今日の結奈は一見すると地味なオタクみたいで近寄り難い雰囲気を醸し出している。そもそも普段の結奈は俺の言った事がきっかけで変わったのだ。


「そんなに真面目に悩まなくてもいいよ、どっちも私だからね」

「う、うん。分かってるよ。今も昔も変わってないから選べないな……」

「えっ、そ、それは……そうなの?」

「うん、そうだよ」


 大きく頷くと結奈は凄く可愛く笑って顔を赤くなっている。恥ずかしそうにする結奈を見ているとだんだん俺も恥ずかしくなってきた。結奈が顔を上げて恥ずかしさを抑えるように小さな声で確認をしてくる。


「……ねぇ、蒼生くん、もし私が昔と変わず今日みたいな外見だったとしても今と何も変わってないかな?」

「もちろん、何も変わっていないよ!」


 何も迷いなく自信満々で即答する。俺は結奈が皆んなから騒がれる前から本当の結奈を知っている。ただ見た目が可愛くなってしまい、いろいろと悩まされる事が増えたのも事実だ。

 そもそも高校に入る前から俺は結奈がメガネをとってヘアスタイルを変えれば可愛くなるのは分かっていた。だから俺は結奈に自信を持って欲しかったので、結果として皆んなから騒がれるようになって良かったと思う。ちょっと複雑な気持ちだけど……

 それから一時間くらい結奈と話をしていた。この最近は二人だけでゆっくりと話す機会がなかったので楽しい時間を過ごした。


 結奈と別れた後は真っ直ぐに家へ帰った。家に着くと車があったのでしーちゃん達が帰ってきたようだ。玄関を開けて家の中に入ろうとすると、ちょうどしーちゃんが二階から降りてきてところだった。


「あっ、おかえりーー! あおくん」

「ただいま……」


 何かいい事でもあったのか元気な声のしーちゃんは笑顔でご機嫌な様子だ。反対に俺は一瞬どきっとしてしまい焦ってしまう。なんとなく後ろめたい気持ちが湧いてきた。すぐにしーちゃんは俺の顔色の変化に勘づいたみたいだ。


「……どうしたの? お昼食べてきたのでしょう?」

「えっ!? あぁ、そうだよ……」


 しーちゃんの言葉に心臓が止まるかと思ってしまった。もちろん俺はしーちゃんに連絡をした覚えはないが、まさか結奈自身が知らせたのかそれともしーちゃんが偶然に目にしていたのか、分からない。いろいろと頭の中をフル回転させて考えるが慌てていたが、しーちゃんは誰と食べたのかは言っていないし、追及していない。


(あっ、うん、そうだ、焦る必要はない。しーちゃんとも結奈とも正式に付き合っている訳ではないのだ、たぶん……)


 頭の中では情けない言い訳じみた事を考えていた。確かに逃げているみたいで最低な男だが、今は仕方がないと思う事にした。


「ふふふ、もうそんな所で立ち止まって、あおくんの家なのだから、ほら、中に入って」

「あっ、あぁ、そ、そうだな……」


 しーちゃんは無邪気な笑顔で笑っている。俺はこれ以上慌ててないように落ち着こうとして、しーちゃんが言うとおりにゆっくりと靴を脱いで玄関を上がった。とりあえずは自分の部屋に移動しようとした。


「もう、変なあおくんだね……」


 そう言ってしーちゃんはリビングに入っていった。しーちゃんの姿が見えなくなると俺は体の力が抜けるような感覚になった。無駄に焦ってしまったので、一呼吸をして気持ちを落ち着かせて自分の部屋へ戻ることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ