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56.帰り道と次の日

 帰りの電車は二人とも座ることが出来た。夕方の帰宅時間なので車内は混雑していたが座っているので行きみたいに手を繋ぐ必要はなかった。

 でも俺の右手はしーちゃんの手をしっかりと握っていて、しーちゃんもぎゅっと握っている。お店を出た後もどちらかというわけではなく気が付くと手を繋いでいた。

 朝の時の緊張感はなく、ごく自然に手を繋いで歩いている。昔と同じように……

 電車を降りた後もずっと手を繋いだまま家の前まで着いた。


「えへへーー、なんか変なのーー」


 門扉を開けて入ろうとしたタイミングでしーちゃんが照れ笑いをして足を止めた。


「突然、どうしたの?」

「ん……今日の朝、同じ家から一緒に出掛けて、そして一緒に同じ家に帰ってくる。まるで同棲してるか新婚みたいだね」

「……えっ!?  いきなり何を言っているんだよ」

「えへへ、みたいだよ、みたい……仮定の話だからね!」


 その割にはしーちゃんはすごくふにゃとした笑顔で妄想をしていみたいだ。でも確かに普通ではない状況で、周りから見ればそう思われても仕方がない気がする。

 ここで立ち止まっていては近所からもっとおかしな目で見られてしまう。玄関に進み扉を開けて家の中に入った所で手を離した。


「あおくん、今日はありがとうね。楽しかったよ!」

「う、うん、俺も楽しかった」

「えへへ、良かった、じゃあ、またデートしようね!」

「えっ、あっ、あぁ、また今度……」


 しーちゃんは嬉しそうな笑顔で部屋に戻っていった。勢いに押されて返事をしてしまったが、今日はデートと言えばデートなのかもしれない。なんだかんだでずっと手を繋いでいて、デートじゃないとは言い切れないのだ。


(誰にも見付かってないよな……見られていたらまた面倒な事になるよなぁ……)


 そんな事を考えながら自分の部屋に戻った。


 翌日、目が覚めてリビングに向かうと誰もいなくて、テーブルにメモとお金が置いてあった。時計を見るともうすぐお昼になろうとしていた。メモには母さんとしーちゃんが一緒に出掛けている事が書いてあった。


(面倒だけど外に出るか……買いたいマンガもるからなぁ)


 ここにお金があるということは家の中に食べる物が無いという事だ。今日は貴重な完全休養日で外に出る気がなかったのだが仕方ない。簡単に準備を済ませると自転車に乗り出発した。

 十五分程の距離でこの辺りではそこそこの規模の本屋だ。種類が豊富で週末は結構賑わっている。本屋に着くと予想通り店内は賑わっていた。普段なら雑誌を見たり新刊をチェックしたりするのだが、今日はあまり気が乗らないので目的のマンガを買うだけにした。

 会計をしようとレジに向かったが少し列が出来ていた。列に並んだが思ったより早く前に進んでいく。良かったと安心してるとすぐに俺の後ろに並び始めた。チラッと背後に並んだ人を見ると本好きの女性だった。


(ん……? なんか見覚えがあるようなないような、でも本好きの子と言えば……)


 思い浮かぶのは一人いるにいるが……しっかりと確認した訳ではないのではっきり誰だとは分からないが何かが違う。まだ会計まで二人程前にいる状況だったので余裕がある。思い切ってもう一度背後を確認する事にした。

 わざとらしくならないように自然な仕草になる様に注意して振り向いた。運良く相手の視線がこちらに向いていなかった。でもその顔に覚えがあって思わず声が出てしまった。


「……い、委員長?!」


 俺の声に気が付き視線を向けられると、すぐに驚いた表情を見せて困惑した顔になった。


「あ、蒼生くん!  わわわ、な、なんでこんな所にいるの?」

「い、いや、委員長……じゃない、結奈は何で……」


 結奈は顔を隠したかったみたいだが、両手で持っていた本と雑誌で無理だった。同時に列が前に進み一気に会計する番になった。先に俺が会計を済ませて出口の所で待つ事にした。


「はぁ……参ったわ、まさか蒼生くんに会うとは思ってもみなかった……」


 大きなため息を吐きながら結奈が足取り重くやって来た。普段とは違って前髪を下ろしているのであまり表情が見えないがへこんだ顔をしているみたいだ。あまりにも落ち込んでいるみたいなので少しでも気分を上げてもらおうと必死に考えた。


「…‥うん、そうだ。今日の結奈は中学時代を思い出して懐かしい気持ちになったよ。そ、そう、俺はほっとするから今日の結奈も好きだよ……」


 気が利いた言葉が上手いこと出てこない、ちょっと必死感が出ていてちょっと情けないと思っていたが、目の前にいる結奈の顔がみるみる赤くなって俯き黙ってしまった。


(あれ? 変なこと言ってしまったかな……)


 もう一度自分が言った言葉を思い出してみると結奈が赤くなった理由が分かった。あれではまるで告白したような状況になっている。

 慌てて誤解を解こうとしたが、いい言葉が思い浮かばない。ない知恵を一生懸命に振り絞る。


「うぅ……ゆ、結奈……あ、あの……あっ、あれ……ははは……」


 そう言いかけたタイミングでいきなりお腹が鳴ってしまい一気に気が抜けてしまった。笑うしかない俺の様子を窺っていた結奈は少し落ち着いたみたいでクスッと笑っている。微妙に空気が緩んできたのでちょっと安心した。


「……よかったら、一緒に昼飯を食べないか?」


 時間もちょうどいい具合で、本来なら俺は昼ご飯を求めて外に出たのだ。ちょっと行った先にファーストフードのお店がある。結奈に断られてもそこで食べる事にしようと考えた。


「ふふっ、蒼生くん、何かいろいろと曖昧にしようとしているみたいだけど……いいよ一緒に行くよ」


 呆れた感じで笑いながら結奈は最後に頷いて仕方ないといった顔をしていたが機嫌は良さそうだった。

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