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51.一緒に部屋で勉強

 やっと自宅前に着いて、ほっとした気持ちで玄関の扉を開けた。中に入ったがいつもと違い違和感がある。


「あっ、そうか!!」


 思わず驚いて大きな声が出てしまった。後ろを振り返ると『どうしたの?』という顔をしたしーちゃんが立っている。

 気が抜けてしまっていたのだろう、完全にしーちゃんの存在を忘れていた。昨日は別々に下校したので一緒に帰るのは今日が初めてだった。


「あれ……よく考えたらずっと一緒なんだよな」

「そうだね。一日中あおくんと一緒だよ! えへへーー」


 しーちゃんは驚く様子を見せなくて、逆に嬉しそうな笑顔でいっぱいだ。確かにしーちゃんの言う通りで、朝のおはようからずっと一緒にいて、そしてこのままおやすみまで一緒にいるのだろう。同じ屋根の下で生活をしているのから当たり前だ。

 家の中に入り、それぞれの部屋に戻って着替えてからリビングに行くと二人分の夕食が準備してあった。しーちゃんはちゃんと遅くなる事を連絡していたようだ。ちょっとしてからしーちゃんもリビングに現れた。

 リビングのテーブルに向かい合って座り、俺としーちゃんは夕食を食べ始めた。食べ始めてからは俺としーちゃんの会話よりも母さんがしーちゃんにいろいろと学校の出来事を聞いていて質問攻めのようだった。それでもしーちゃんは楽しそうな表情で丁寧に母さんの質問に答えていた。


「ごめんな、母さんがうるさくて……落ち着かなくて、それに疲れているのに」

「そんな事ないよ。全然楽しかったし、ご飯も美味しかったからね。えへへ……」

「まぁ、それにしても今日は長い一日だった……」

「ふふふ、そうね……あおくんの部活が見れたし、ゆいちゃんと仲良くなれたし、今日も一日楽しか楽しかったよ」


 夕食を食べ終わり、少しの間リビングのソファでくつろいでいた。しーちゃんもなんとなく家の様子に慣れてきたのかリラックスした表情をしている。こんな表情を見られるのはクラスの男子達からすると羨ましい限りだろう。俺だけの特権みたいな時間を過ごしていたが、そろそろ部屋に戻って課題をやらないといけない時間になってきた。


「あぁ……課題めんどくさいなぁ……」

「……そうだ! ねぇ、一緒に課題をやろうよ!」

「えっ! でも……もう時間が遅いよ」

「ふふふ、なに言ってるの、隣の部屋なのだから関係ないでしょう」


 時計を見て慌てる俺を笑っているしーちゃんは楽しそうだ。まだ俺はしーちゃんと一緒に住んでいるのに慣れていないみたいだ。


「じゃあ、先にお風呂に入ってくるから、あおくんはもうちょっとゆっくりしてから始めてね」


 さっと立ち上がってしーちゃんはお風呂に入る準備を始めた。しーちゃんの姿を目で追いながらまだ頭の整理が出来ていない俺はソファに座ったまま、とりあえず深呼吸をして気持ちを整えようとしていた。

 その後、部屋に戻り課題をする為の準備をしていたが、お風呂からしーちゃんが上がると母さんに次に入るように言われて今度は俺が入ることになった。遅くなるのでしーちゃんには先に始めるように伝えた。


「……ん、あれ?」

「えっと、あおくんのお母さんがいいって……」


 お風呂から上がり部屋に戻ると、既にしーちゃんが俺の部屋で課題を始めていた。ある程度は片付けていたので良かったが、ちょっと不意を突かれてしまった。母さんが許可してしまったからしーちゃんはひとつも悪くはないし、早かれ遅かれこの部屋でするつもりだったので問題はない。


「ううん、いいよ……」

「ふぅ……よかった」


 さすがに勝手に部屋に入ったのが不安だったのか、しーちゃんは安心して大きく息を吐いた。俺もそんな事では腹を立てたりするつもりはさらさらない。それに昔からしーちゃんは勝手部屋に入って来ていた。


「時間も遅くなったし、早く始めるか……」

「うん!!」


 元気よく返事をするしーちゃんだが、時計を見るとかなりいい時間だった。普通の環境だと絶対に一緒にいる時間ではない。それに目の前にはお風呂上がりのラフな姿のしーちゃんがいて、いい匂いがする。と言うより部屋中がしーちゃんの香りだらけだ。もう俺の部屋は異常が続いて正直課題をする状況ではないが、なんとかして課題を終わらせないといけないのだ。


「あれ、どうしたの? あまり進んでないみたいだけど……」

「い、いや……う、うん、だ、大丈夫だよ」


 いつの間にか時間が過ぎて、顔を上げたしーちゃんが心配そうに俺を見ていた。あまり集中出来ていない俺は課題が進んでいなかった。しーちゃんはもうかなり進んでいて、あと少しで終わりそうだ。


「ほら、そこ違うよ。よく問題を読んでみて」

「あっ、本当だ……」


 俺は慌てて指摘された箇所を消しゴムで消す。もう一度問題を見直していくが、変に焦ってしまい回答が分からなくなってきた。


「あおくん、ちゃんと授業を聞いてる? 今日、授業でやったところだよ……」

「う、うん……」

「もう一度私がもう教えてあげるよ、ほら、ここが……」


 しーちゃんが体を寄せてきて問題の解き方を教え始めた。全く無警戒なしーちゃんが真剣な表情で教えてくれる。俺はそんなしーちゃんを裏切る訳にはいかない、ここから真面目に取り組むことにした。

 気持ちを切り替えからはあっという間に課題が進み、無事に終わらせることが出来た。しーちゃんは俺の課題が終わるの最後まで笑顔で見守ってくれていた。


「ふふふ、お疲れ様。明日からも一緒に勉強しようね」

「あぁ、でもいいのか? 俺と一緒だと時間がかかるぞ」

「そんなの心配いらないよ! だって隣の部屋だから遅くなっても問題ないよ」


 嬉しそうに笑っているしーちゃんは明日からも一緒に勉強する気満々だ。編入試験で入学してくる学力があるしーちゃんなので教えてもらいながら課題が出来るのはとても助かる。

 学校では結奈に家ではしーちゃんに勉強を見てみらえる俺はかなりの幸せ者で、もちろん口外には出来ない……もし知れ渡れば俺はクラスの男子から今以上に冷たい仕打ちを受けることになる。


「しーちゃん……このことはあまり喋らないようにね」

「うんうん、二人だけの秘密だね!」


 めちゃくちゃ嬉しそうに笑っているしーちゃんの笑顔を独り占め出来る俺はとても幸せな気分に浸っていた。

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