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50.見学と勧誘

 やっと放課後になった。高校に入学してこんなに長く感じた事はない。これから部活が始まるというのに疲れてしまって練習どころではない状態だ。それに練習が始まる頃にはまた騒がしくなるのだろう。


「あれ、マネジャーの隣にいるのは噂の転校生じゃないのか?」

「あぁ……」

「そういえば宅見のクラスだったよな?」

「はぁぁぁ……」


 すぐにこう言った情報に詳しい村野と山西が俺の所へきた。予想していたとは言え、あまりにも予想通りだったので思わずため息が出てしまった。コートの外側でいつものジャージ姿の結奈と制服姿のしーちゃんが楽しそうに会話をしている。


「それで、何で男子バスケ部の見学なんだ? もしかしてマネジャー志望とか?」

「えっ、あっ、どうなんだろうな、よく分からん……」


 落ち着かない様子で村野が二人の姿を目で追いながら俺に聞いてきた。もちろん村野達は俺としーちゃんが幼馴染だという事は知らないし教えていない。今ここで教えれば面倒な事になりそうなので適当に聞き流す事にした。俺もしーちゃんが何故見学をしたいと言ったのか理由を聞いてはいないので、村野が言ったマネジャー志望なのかどうかも分からない。

 ごちゃごちゃと話していると時間になり、村野達がソワソワする中で練習が始まった。


(う〜ん、なんか知らんけど、皆んな気合いが入っているな……)


 練習が始まり薄々気が付いていたが、あきらかにいつもとは雰囲気が違っている。皆んなのやる気が違い、まるで試合の時と同じくらい集中している。


「普段からこんな感じで真剣に練習してくれたらいいんだけどなぁ」


 練習合間の休憩になって、キャプテンの永尾が俺の隣でぼやいていた。休憩になると同時に村野と山西は早速しーちゃんがいる所へ向かっていた。村野達の姿を目で追いながらあきらめ半分に永尾に返事をした。


「……それは無理な願いだろうな」

「そうだなぁ、ははは……」


 力なく肩を落として永尾が笑っているが、そんなところを含めて俺は新しいチームで気に入っているところだ。

 練習も後半になってきて、時々しーちゃんがいろいろと手伝い始めた。パスを出したり実際にボールを触って練習を手伝っている。運動神経の良いしーちゃんなので制服姿でも簡単にこなしていた。

 しーちゃんはじっとしていられなくなったのか、楽しそうな表情をしている。結局、最後までしーちゃんは体を動かして結奈以上に練習を手伝っていた。

 練習が終わった時にはチームの皆んなの見方が変わってきて、真面目にチームに加わって欲しい雰囲気になっている。


「あの転校生にマネジャーになってもらえたらな、お前から伝えてくれないか?」

「う〜ん、そうだな……伝えるだけなら、でも無理強いはしないぞ」

「あぁ、もちろんだ。もうマネジャーは一人いるからな……でももし入部してくれたら絶対にチームのプラスになるはずだ」


 真面目な永尾が真剣な表情をしているので、間違いなく本気なのだろう。俺と永尾の話を聞いていた村野達も練習前の浮ついた感じでなく真剣な顔をして頷いている。


「……分かったよ」


 チーム全員の圧を感じながら、本意ではないが頷くしかなかった。俺も皆んなと同じ意見だが、しーちゃんの運動能力を知っているので素直に従えないのだ。

 マネジャーではなくて、一人の選手としてしーちゃんには活躍して欲しかった。仮にバスケ部でなくても他の運動部でもきっとしーちゃんなら活躍出来るはずで、それだけの能力があるはずだ。それに元々、結奈がいるのに少人数のバスケ部でマネジャーが二人もいるのか、それよりもちゃんと部員を探さないといけないような気がする。

 着替え終わり、結奈としーちゃんを待っていたがちょっと気が重たい、どうやって話せばいいのか悩んでしまう。


「待たせてごめんね!」


 結奈が俺を見つけて駆け寄ってきて、もちろんしーちゃんも一緒だ。まだ何も解決していないが、顔に出さないように気を付けようとした。それにもう外は薄暗いので表情の違いが見つかり難いだろう。


「……いつもこんな感じなんだね」


 待っていた俺の前にしーちゃんが笑顔でやって来た。結奈はしーちゃんの隣に、俺は端になって登校の時とは違う並びになった。


「どうだった?」

「うん、凄く楽しかったよ!」


 楽しそうな表情でしーちゃんが笑っているので、ちょっと安心した。結奈も笑顔で頷いている。


「そうかよかった……」

「それにマネジャーの仕事が思っていた以上に大変だね……あんなに練習に参加するとは思ってなかったよ」


 笑顔のしーちゃんは驚いた表情になったが、普段の結奈は今日のしーちゃんほど練習に加わっていない。結奈の運動神経ではちょっと厳しい……それだけしーちゃんの運動能力は優れているのだ。


「でも間近で見れたでしょう?」


 結奈がひょこっと顔出してしーちゃんの顔の様子を窺っている。しーちゃんはすぐに嬉しそうな笑顔で答える。


「えへへ……そうだね、あんな近くで見れたからね。あおくんがあれ程上手だと思わなかったよ。ゆいちゃんがあんなに興奮して話す訳が分かったわ」

「えっ、そんなに興奮して話してたかな……」


 ちょっとからかうような仕草を見せるしーちゃんに照れた顔をした結奈は楽しそうに会話が弾んでいた。いつの間にか二人がめちゃくちゃ仲良くなっているのは驚いた。

 しーちゃんは昔から人懐っこいので意外ではないけど、結奈は高校に入学してから多少他人とも親しく出来る様になってきたがこんな短期間でここまで仲良くなるのは驚きだった。

 結局、バスの中で別れるまでしーちゃんと結奈は楽しそうに会話をしていた。俺が朝に不安に思っていた事がすっかりと昔の事のような気がしてしまった。

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