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49.バレてしまう

 バスの中は少しずつ混み始めてざわざわしてきた。この状況で結奈にしーちゃんと一緒に住んでいることを説明するのは難しい。後回しにしてしまった事を後悔していた。

 バスから降りて学校に向かう。俺が真ん中で右側に結奈で反対側にしーちゃんといった並びで歩いている。


「そうだったーー、今日の放課後にあおくんの部活を見学してもいいかな?」

「えっ!? な、なんで、それなら……」


 何かを思い出したようにしーちゃんが俺を見ている。突然のしーちゃんの問いかけに驚いてしまう。確かしーちゃんは運動が得意だったはずで、だから男子バスケ部を見学しても意味がない。女子バスケ部だってあるし、他にも運動系の部活はある。


「えぇぇーー、ダメなのーー?」


 返事を聞いたしーちゃんが不貞腐れた声で答える。その様子を隣で聞いていた結奈が割って入ってきた。


「蒼生くん、いいんじゃないの、見学くらい」

「ほら! マネジャーがいいって言ってるからいいでしょう?」


 結奈の声を聞いてしーちゃんが嬉しそうな表情に変わって、結奈も楽しそうな顔をしている。二人の顔を見て俺はなにも言えなくなってしまった。


「分かったよ……」


 ただ頷く事しか出来なかった。部活の練習が始まった時に面倒な事が起こりそうな気がしていた。そんな俺の不安をよそに二人は楽しそうに部活の話で盛り上がっている。ただでさえ朝からしーちゃんと結奈の事で頭がいっぱいで大変だったのに、今度は部活の時間まで気が休まる事はないみたいだ。今日もしんどい一日なりそうだ。


「ん……どうしたの? 難しい顔をしてるけど……」


 しーちゃんと話していた結奈が不意に俺の顔覗き込んできた。結奈の声にしーちゃんも反応して俺の顔を見ている。二人の視線が注がれて思わず照れてしまう。


「い、いや、ははは……なんでもない」


 贅沢な悩みなのかもしれない、こんなに美少女の二人から心配される事は……教室に着く頃にはクラスの男子から鋭い視線で身に染みて分かった。

 教室に入ってからはそれぞれ離れていて落ち着いていたが、昼休みには昨日と同様に三人が一緒にお弁当を食べる事になった。


「あれ!? なんで二人のお弁当が一緒なの?」


 俺としーちゃんがお弁当の蓋を開けると結奈が驚きの声を上げた。結奈の声にしーちゃんはちょっと不思議そうに首を傾げている。


「えっ、あっ、こ、これには……」

「どういう事なの、蒼生くん!」


 まさかこの場面で結奈に知れてしまうとは予想していなかったが、よく考えてみると一目瞭然で怪しまれても仕方がない。結奈はちょっと興奮気味に驚いているので、俺が慌てていてもなにも状況は変わらない、正直に話す事にした。


「……俺の家にしーちゃんが居候する事になったんだよ、とりあえず来年の春頃まで」

「うん、そうだよ。あれ、あおくん、話していなかったの?」


 しーちゃんがやっと状況を理解したみたいで責めるような目で俺を見ていた。結奈は驚きのあまり声を出さずに目を見開き俺としーちゃんを見ている。

 本当に失敗だった、もっと早い時点で説明をしておけばこんな状況にならなかった。やはり隠し事はダメだ……いったい結奈はなんて言うのだろうか不安になる。しーちゃんが俺の顔色を察して結奈に経緯を説明し始めた。とりあえず俺は黙って二人の様子を窺う事にしたが、黙っていた事は謝らないといけない。


「……うん、だいたいの状況は分かったわ」


 しーちゃんからの説明を聞いた結奈が視線を俺に向けた。ちょっとだけムッとした表情をしているが怒っている様子はないみたいで少し安心する。


「……黙っていて、ごめんなさい」


 言い訳をする事もないので正直に謝ると結奈は一呼吸してちょっとだけ間を置いて表情が和らいだ。


「……蒼生くんの事だからいろいろと考えたのでしょう、どのタイミングで言うのか、それでチャンスを逃してしまった……そんなところでしょう?」

「……その通りです」


 結奈の察した通りでなにも言えずにただ頷くだけで全く頭が上がらない。この一年足らずの間で俺の思考をよく見抜いてさすがと言ったところだ。しっかりと言いくるめられている俺の様子を見ていたしーちゃんは笑顔で見守っている。


「ふふっ、しーちゃん、もし蒼生くんが変な事をしたらすぐに連絡してね。飛んで行くからね」

「な、なにを言っているんだよ。なにもする訳ないだろう!」


 からかうような言い方で結奈が話すので必死に否定するとしーちゃんが意外な顔をする。


「えぇぇ、そうなの、残念だなぁ、あおくん、なにもしてこないの?」


 今度はしーちゃんがからかうような表情で俺を見ている。二人に振り回せれて一人で焦っている俺はちょっと疲れてきた。


「ふふふ、蒼生くん、これだけはへたれだからね」

「うっ、うぅぅ……」


 またしてもなにも返せずに黙ってしまう。ちょっとだけ勝ち誇った表情を見せる結奈だった。黙っていた事はやはり根に持っているのかもしれない。しーちゃんも楽しそうに結奈と一緒に笑っている。結奈の観察力はさすがだが、ちょっと冷静になって考えてみる。


(俺をへたれだと言っている事は、つまり結奈はその気があって……)


 だんだんと頭の中が混乱してきた。しーちゃんと一緒に住んでいる事は解決したが、今度は違う事が頭の中を巡り始めた。

 これまで結奈にちゃんと返事をしていなかったから、今の状況を引き起こしているのだが、もしへたれじゃなくてきちんと結奈と付き合っていたらどうなっていたのだろう……想像したくないので、ちょっとだけへたれで良かったと思った。

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